ZEBの実現・普及は、我が国のエネルギー需給の抜本的改善の切り札となる等、極めて社会的便益が高いものであり、経済産業省資源エネルギー庁は、2015年4月に「ZEBロードマップ検討委員会」を設置し、同委員会のとりまとめの一部として、同年12月に「ZEBの定義」と「実現・普及に向けたロードマップ」を公表した。その後、2020年10月、政府による2050年脱炭素社会宣言が行われ、同年12月に公表されたグリーン成長戦略では、ZEBの普及推進の必要性が述べられた。2021年に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」では、『2030年度以降に新築される建築物についてZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保※1を目指す』とする政策目標を設定している。そして、2025年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」においても、引き続き2050年ストック平均でのZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保に向けた施策の方向性が示されている。
また、本年4月から全ての新築非住宅建築物において省エネ基準への適合が義務化される。ここから更に2030年度目標の達成に向け、ZEBへの関心や必要性を広めZEBを建築するプレーヤーの裾野拡大に取り組むことが引き続き重要である。
エネルギー消費量が大きく、建築物全体のエネルギー消費量に与える影響が大きい延べ面積10,000㎡以上の新築建築物においては、「大きな平面計画であるが故にパッシブ技術の利用の難度が上がる」「搬送動力等のエネルギー消費量が課題となり得る」等の理由から、ZEB Readyの実現難度が高く、一般社団法人住宅性能評価・表示協会が公表している建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)の延べ面積10,000㎡以上のZEB化(ZEB Ready以上)の認証事例は少ない状況が続いている。また、建築制約やコストの増大等の課題から、既存建築物の改修によるZEB建築物も依然として少ない状況である。
本事業では以上の課題を受け、ZEB設計ノウハウが確立されていない民間の大規模建築物(新築:10,000㎡以上、既存建築物:2,000㎡以上)について、先進的な技術等(エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)(以下「WEBプログラム」※2という。)において未評価の技術等)の組み合わせによるZEB化を通じ、その設計ノウハウ(掛かり増し費用含む)、運用実績の蓄積・公開・活用を図り、ロードマップに基づくZEBの実現を目指す。また、平成29年度より開始した2つの登録制度を引き続き行うことで更なる相乗効果を図るものとする。
①ZEBプランナー登録制度・・・・・・・・・ ZEBの実現に向けたオーナーへの働きかけを積極的に行う設計会社、コンサルティング企業等を「ZEBプランナー」として登録し広く公表する制度。
②ZEBリーディング・オーナー登録制度・・・ 建物オーナーに対するインセンティブとして、単に補助を行うのみではなく、省エネルギー建築物への取組みが積極的である優良な事業者を「ZEBリーディング・オーナー」として登録し広く公表する制度。
※1:建築物について、再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量を現行の省エネルギー基準値から用途に応じて30%又は40%(小規模建築物については20%)削減。
※2:WEBプログラムは、国立研究開発法人建築研究所のホームページに公開されている。
⚫ 第6次エネルギー基本計画:https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/past.html
⚫ 第7次エネルギー基本計画:https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/
⚫ ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)に関する情報公開について:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/support/index02.html
⚫ 設計実務者向けZEB設計ガイドライン、ビルオーナー等事業者向けパンフレット公開ページ:https://sii.or.jp/zeb/zeb_guideline.html
■事業規模
本事業は、令和7年度にのみ事業を行う単年度事業と単年度での実施が困難な複数年度事業を対象とした事業である(P.15参照)。
複数年度事業で申請する場合、各年度の事業規模を超えて採択できないため、各年度ごとの事業規模の配分を十分に鑑みて事業計画を行うこと。
単年度事業及び複数年度事業における1年目(令和7年度分):約 5億円
複数年度事業における2年目(令和8年度分) :約18億円
複数年度事業における3年目(令和9年度分) :約17億円