※記事内容は、記事更新日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。
「キャッシュレス決済」は、現金を直接やりとりしない支払い方法です。
商品やサービスを購入する人にとっては現金を持ち歩かずに済む手軽さがあり、商品やサービスを提供する側にとっても店舗に現金を多く用意する必要がなく安全であることから、なくてはならないものとなりました。
また、訪日外国人の受け入れや感染症対策の観点からもメリットのあるツールと言えます。
そこでこの記事では、販路開拓や安全・安心対策の一環としてキャッシュレス決済対応の精算機器導入を検討する事業者様に向けて、キャッシュレス決済端末を導入する際に活用できる主な補助金や助成金を紹介します。
IT導入補助金
IT導入補助金は業務効率化やDXの推進、セキュリティ対策に向けたITツール等の導入費用を支援する制度です。
IT導入補助金2025では、以下の申請枠で公募を実施します。
・通常枠
・複数社連携IT導入枠
・インボイス枠
-インボイス対応類型
-電子取引類型
・セキュリティ対策推進枠
このうち、キャッシュレス決済導入に使える枠は「インボイス枠(インボイス対応類型)」です。
インボイス対応類型は、令和5年10月1日に開始されたインボイス制度への対応に特化した支援枠で、会計・受発注・決済ソフトに加えてPC・タブレット・レジ・券売機等のハードウェア導入費用も支援します。
なお、IT導入補助金2025からはIT活用の定着を促す導入後の”活用支援”も対象となります。
▼インボイス枠(インボイス対応類型)
補助対象:
<ソフトウェア(必須)>
インボイス制度に対応した、「会計」「受発注」「決済」の機能を有するソフトウェア
<ハードウェア>
PC、タブレット、レジ、券売機等のうち、上記ソフトウェアの使用に資するもの
(例)キャッシュレス対応POSレジ、モバイルPOSレジ 等
補助率:
・~50万円以下:3/4(小規模事業者:4/5)
・50万円~350万円:2/3
・ハードウェア購入費:1/2
補助上限額:
・ITツール:1機能:~50万円
2機能以上:~350万円
・PC・タブレット等:~10万円
・レジ・券売機等:~20万円
インボイス枠(インボイス対応類型)における最新採択状況は、以下の通りです。
公募期間:令和6年7月3日(水)まで
申請:2,408者、採択:2,269者、採択率:約94.2%
参照:IT導入補助金2024 公式HP
参照:中小企業庁 中小企業対策関連予算

ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等の生産性向上や持続的な賃上げに向けた
新製品・新サービスの開発に必要な設備投資等を支援する制度です。
令和6年度補正予算による公募からは、以下の申請枠で公募を実施します。
・製品・サービス高付加価値化枠
・グローバル枠
新たなサービスの提供に必要なキャッシュレス対応機器等を導入する場合、かつ、各申請枠の要件を満たす場合、いずれの枠においても補助対象となる可能性があります。
※令和7年1月20日時点で公募内容の詳細が未公開のため、確定情報ではありませんのでご了承ください。
▼製品・サービス高付加価値化枠
要件:革新的な新製品・新サービスの開発による高付加価値化
補助対象経費:機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費
補助率:中小企業1/2、小規模・再生2/3
補助上限額:750万円~2,500万円
▼グローバル枠
要件:海外事業の実施による国内の生産性向上
補助対象経費:機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費、海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費
補助率:中小企業1/2、小規模2/3
補助上限額:3,000万円
※大幅な賃上げに取り組む事業者には、補助上限額を100~1,000万円上乗せ
※最低賃金の引き上げに取り組む事業者は、補助率を2/3に引き上げ
参照:ものづくり補助金 公式HP
参照:中小企業庁 中小企業対策関連予算

中小企業省力化投資補助金
中小企業省力化投資補助金は、中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするため、IoT・ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品の導入を支援する制度です。
公募への申請受付は随時行っていますが、今後、申請枠が以下の2つになる予定です。
・カタログ注文型
・一般型
キャッシュレス決済導入の例として、飲食店や小売店、サービス業におけるキャッシュレス決済に対応した自動精算機や自動券売機の導入が挙げられます。
参照:中小企業省力化投資補助金 公式HP 製品一覧(自動精算機)
参照:中小企業省力化投資補助金 公式HP 製品一覧(自動券売機)
この例の場合、上記申請枠の各要件を満たす場合、いずれの枠においても補助対象となる可能性があります。
※令和7年1月20日時点で公募内容の詳細が未公開のため、確定情報ではありませんのでご了承ください。
▼カタログ注文型
補助率:1/2
補助上限額:200万円~1,500万円
▼一般型
補助率:1/2、小規模・再生 2/3
補助上限額:750万円~1億円
参照:中小企業省力化投資補助金 公式HP
参照:中小企業庁 中小企業対策関連予算

小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、持続的な経営に向けた経営計画に基づく、小規模事業者等の地道な販路開拓等の取り組みや、業務効率化の取り組みを支援するため、それに要する経費の一部を補助する制度です。
令和6年度補正予算による公募からは、以下の申請枠で公募を実施します。
・一般型
-通常枠
-インボイス特例
-賃金引上げ特例
-災害支援枠
・創業型
・共同・協業型
・ビジネスコミュニティ型
一般型、創業型において対象経費に「機械装置費等」が含まれていて、地道な販路開拓等と併せて行う業務効率化に必要であれば、キャッシュレス決済端末も補助対象となる可能性があります。
※令和7年1月20日時点で公募内容の詳細が未公開のため、確定情報ではありませんのでご了承ください。
▼一般型
対象経費:機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)、旅費、開発費、資料購入費、借料、設備処分費、委託・外注費(税理士等への相談・コンサルティング費用など)
補助率:2/3 (賃金引上げ特例活用事業者のうち赤字事業者については3/4)
補助上限額:50万円~250万円
▼創業型
対象経費:一般型(通常枠)同様
補助率:2/3
補助上限額:200万円~250万円
過去公募におけるキャッシュレス決済導入に関する活用事例は、次のとおりです。
事例1:
・本社:大阪市天王寺区
・業種:不動産業
・補助事業名:キャッシュレス対応設備等を導入した省人化コインパーキング事業
事例2:
・本社:大阪市中央区
・業種:不動産業
・補助事業名:コインランドリーのキャッシュレス対応で新規顧客拡充
参照:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金 公式HP 採択者一覧(第16回受付締切分)

業務改善助成金
業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図るための制度です。
生産性向上のための設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成します。
厚生労働省が挙げている業務改善助成金の活用事例として、パソコンやスマートフォン、タブレット端末、POSレジシステム等の導入が挙げられていて、キャッシュレス決済端末の導入も補助対象となる可能性があります。
申請期限が延長され、当初は令和6年12月27日(金)だった期限が令和7年1月31日(金)までとなっています。
なお、業務改善助成金は令和7年度概算要求に盛り込まれており、今後も継続して公募を行う可能性が高いと考えられます。
▼業務改善助成金
対象経費:生産性向上のための設備投資等を行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合の設備投資などにかかった費用
助成率:3/4~9/10
助成上限額:30万円~600万円

地域公共交通確保維持改善事業費補助金(MaaSの実装に向けた基盤整備事業)
地域公共交通確保維持改善事業費補助金は、交通事業者のデジタル化や、地域交通のキャッシュレス決済導入など、MaaS 実装に向けた基盤整備を図るための支援を実施する制度です。
以下3つの事業をもって公募を行います。
(1) 地域交通キャッシュレス決済導入支援事業
(2) 地域交通データ化推進事業
(3) 混雑情報提供システム導入支援事業
このうち、キャッシュレス決済導入につかえるのは(1) 地域交通キャッシュレス決済導入支援事業です。
本事業では、公共交通事業者においてキャッシュレス決済(QRコード、交通系ICカード、非接触型クレジットカード決済、顔認証等)に対応するための、所要の設備やシステムの導入を支援します。
▼(1) 地域交通キャッシュレス決済導入支援事業
補助対象事業者:
・鉄道事業者、軌道経営者
・一般乗合旅客自動車運送事業者、一般乗用旅客自動車運送事業者、自家用有償旅客運送者並びにこれらの者に車両を貸与する者
・一般旅客定期航路事業を営む者及びこれらの者に船舶を貸与する者
・地方公共団体
・上記いずれかを構成員とする協議会
補助対象経費:
・公共交通においてキャッシュレス決済の利用を可能とするシステム導入費及びシステム改修費
・公共交通においてキャッシュレス決済の利用を可能とする端末費(旅客施設又は車両内・船内に決済端末機器(読み取り機等)を設置する費用)
補助率:最大1/3(ただし、クラウド型キャッシュレス決済の導入に要する経費については最大1/2)
なお、令和6年11月29日(金)正午まで公募実施しており、今後の公募実施予定については未確定です。
参照:国土交通省 MaaSの実装に向けた基盤整備事業にかかる追加公募について

ICT等を活用した観光地のインバウンド受入環境整備の高度化事業
ICT等を活用した観光地のインバウンド受入環境整備の高度化事業は、訪日外国人旅行者の周遊の促進・消費の拡大を図るため、ICT等を活用した観光地の受入環境整備を支援する制度です。
補助対象事業に「飲食店、小売店等も含めた地域における多言語対応、先進的決済環境の整備」を含んでおり、「キャッシュレス決済環境(ストレスフリーな旅行環境の整備の一環)」も対象となります。
▼ICT等を活用した観光地のインバウンド受入環境整備の高度化事業(飲食店、小売店等も含めた地域における多言語対応、先進的決済環境の整備)
補助対象経費:以下の実施に要する経費
ア)多言語対応
イ)先進的な決済環境の整備
ウ)店内表示及びメニューの多言語化・オンライン化対応
エ)ホームページ
オ)免税販売手続を行う自動販売機の整備
カ)その他
補助率:
1. 面的整備事業:1/2
2. 拠点機能強化事業:1/3
※上記1.2.いずれも補助対象事業に「飲食店、小売店等も含めた地域における多言語対応、先進的決済環境の整備」を含んでいます。
なお、本事業の公募は令和6年10月30日(水)17:00まで行われました。令和7年度当初予算にも計上されているため、今後の予算成立を受けて改めて公募が実施される見込みです。
参照:観光庁 「インバウンド受入環境整備高度化事業」の二次公募を開始します

地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業
地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業は、地域で立案する宿泊施設の改修等を含む、観光拠点再生計画に基づき実施される取り組みを支援する制度です。
以下、5つの事業で公募を行っています。
1. 宿泊施設の高付加価値化改修
2. 観光施設の改修
3. 廃屋の撤去
4. 公的施設の観光目的での利活用のための民間活力の導入
5. 実証実験
6. 面的DX化
このうち、キャッシュレス決済導入につかえる事業は、「面的DX化」です。
「面的DX化」で補助対象となる取り組みのひとつとして「地域の複数事業者が一体となってキャッシュレス化を行うことにより、旅行者の利便性の向上、生産性の向上、地域全体の消費額の増加等を図る取り組み」が挙げられ、「キャッシュレス決済システムを地域の複数事業者で導入するとともに、決済データを地域で共有し、マーケティング等に活用する取り組み」を例示しています。
▼地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業(面的DX)
補助対象事業者:地域における相当程度の数の民間事業者等
補助対象経費:システム等の導入・カスタマイズ費、機器等の導入・レンタル・リース費 等
補助率:1/2
補助上限額:5,000 万円
なお、地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業は令和6年度補正予算に計上されており、すでに予算が成立しているため、今後も公募を行います。
参照:観光庁 令和5年度事業 地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業

インバウンド安全・安心対策推進事業
インバウンド安全・安心対策推進事業は、観光施設等における非常時等の対応や医療機関の訪日外国人旅行者への対応の強化を図ることで、安全・安心な訪日旅行環境の整備を支援する制度です。
以下4つの補助メニューを設けて、さまざまな取り組みを支援します。
(1)災害時の観光施設等における避難所機能の強化
(2)災害時の観光施設等における多言語対応機能の強化
(3)訪日外国人患者受入機能の強化
(4)災害時等における観光危機管理の強化
このうち、キャッシュレス決済の導入につかえる事業は、(3)訪日外国人患者受入機能の強化です。
医療機関において、訪日外国人患者受け入れを目的としたキャッシュレス決済環境の整備を行う場合に、その実施に要する費用の一部を補助するものです。
▼訪日外国人患者受入機能の強化
補助対象事業者:病院・診療所等を設置し、又は管理する者
補助対象経費:以下の実施に要する経費
1)多言語案内機能の整備
2)無料公衆無線LAN環境の整備
3)キャッシュレス決済環境
4)スタッフ研修
5)その他
補助率:1/2
なお、インバウンド安全・安心対策推進事業は令和6年度補正予算に計上されており、すでに予算が成立しているため、今後も公募を行います。
参照:観光庁 令和6年度当初予算事業「インバウンド安全・安心対策推進事業」の公募を開始します

国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業
「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」は、観光地域づくり法人(DMO)、協議会等がスキー場事業者等の地域関係者と共同で策定する「国際競争力の高いスノーリゾート形成計画」に基づいて行うコンテンツの造成、受入環境の整備、スキー場インフラの整備等を支援する制度です。
観光庁が認めた形成計画において記載された以下の取り組みに対する支援を行います。
1. スノーコンテンツやアフタースキー・グリーンシーズンのコンテンツ造成
2. 受入環境の整備(多言語対応、Wi-Fi 整備、キャッシュレス対応、公衆トイレの洋式化、スキーヤー向け設備、DX対応等)
3. 外国人対応可能なインストラクターの確保
4. 二次交通の確保(スキー場間の周遊のためのバス運行等の実証実験)
5. 情報発信(プロモーション資材の作成等)
6. スキー場インフラの整備(索道施設の撤去・新設、搬器の更新(機能向上分に限る。)、スノーエスカレーターの導入、高機能な降雪機の導入、ICゲートシステムの導入及びレストハウス等の改修・撤去)
このうち、キャッシュレス決済導入が補助対象となるのは「受入環境の整備」です。
▼国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業(受入環境の整備)
補助対象事業者:形成計画において個別事業の実施主体として記載されている登録DMO、地方公共団体及び民間事業者
補助対象経費:訪日外国人旅行者の受入環境整備のために必要な以下の事業に係る経費
a)多言語案内環境の向上
b)データ通信利便性向上に関する事業経費
c)キャッシュレス決済環境の整備経費
d)外国人対応可能な人材の育成
e)安全管理に関する事業
f)公衆トイレの洋式便器の整備及び清潔等機能向上に関する事業
g)スキーヤー向け設備の導入に関する事業
h)デジタル技術を活用したサービス向上に関する事業
補助率:1/2
補助上限額:スキー場インフラの整備:個別事業計画1事業につき、3億円
なお、「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」は令和7年度当初予算にも計上されているため、今後の予算成立を受けて改めて公募が実施される見込みです。
参照:観光庁 「国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業」に係る地域公募開始のお知らせ

まとめ
キャッシュレス決済の導入に対する需要は、今後さらに加速すると考えられます。
クレジットカード、ORコード決済、バーコード決済、スマホ決済、タッチ型カード決済などの導入を検討されている場合は、ぜひ、補助金の活用もあわせてご検討ください。
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