昨今、現金を直接やりとりせずに支払いを行う「キャッシュレス決済」が定着しつつあります。
特に小売店や飲食店の皆さまにとっては、キャッシュレス決済に使う端末は訪日外国人の受け入れや感染症対策の観点からも今後欠かせないITツールとなります。
そこで今回は、キャッシュレス決済端末を導入する際に活用できる補助金や助成金をわかりやすく解説します。
キャッシュレス決済端末導入時に活用できる補助金
キャッシュレス決済端末を導入する際に活用できる補助金は、次の5つです。
①IT導入補助金
②小規模事業者持続化補助金
③ものづくり補助金
④業務改善助成金
⑤訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業費補助金
IT導入補助金
業務効率化、データ活用、働き方改革、新型コロナウィルス対策などを進めたい事業者が、ITツールを導入する際の費用を支援してくれるのがIT補助金です。IT導入補助金は事業者のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める切り札になる補助金です。
IT導入補助金には、通常枠とセキュリティ対策推進枠、デジタル化基盤導入枠の3種類があります。各申請類型について解説します。
通常枠
中小企業・小規模事業者等のみなさまが自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、みなさまの業務効率化・売上アップをサポートするものです。
補助金額
ソフトウェア購入費・クラウド利用料(1年分)・導入関連費が対象です。
類型 | 補助金額 | 補助率 |
A類型 | 30~150万未満 | 1/2 |
B類型 | 150~450万以下 | 1/2 |
セキュリティ対策推進枠
令和元年度補正予算から追加された枠です。
サイバーインシデントが原因で事業継続が困難となる事態を回避するとともに、サイバー攻撃被害が供給制約や価格高騰を潜在的に引き起こすリスクや中小企業・小規模事業者等の生産性向上を阻害するリスクを低減するための支援を行うものです。
補助金額
独立行政法人情報処理推進機構が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているいずれかのサービスの利用料が対象です。
補助額 | 5万~100万円 |
補助率 | 1/2以内 |
機能要件 | 独立行政法人情報処理推進機構が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているいずれかのサービス |
補助対象 | サービス利用料(最大2年分) |
デジタル化基盤導入枠
「デジタル化基盤導入類型」及び「複数社連携IT導入類型」の2類型を設け、このうち複数社連携IT導入類型では、サプライチェーンや商業集積地の複数の中小企業・小規模事業者等が連携してITツールを導入することにより生産性の向上を図る取組に対して、「通常枠」よりも補助率を引き上げ、複数社へのITツールの導入を支援するとともに、効果的に連携するためのコーディネート費や取組への助言を行う外部専門家に係る謝金等を含めて支援します。
る。出典:IT導入補助金 公式HP(デジタル化基盤導入枠)
補助金額
申請類型(「デジタル化基盤導入類型」「複数社連携IT導入類型」)により、対象経費、補助率、補助上限金額が異なります。
デジタル化基盤導入類型
補助対象経費区分 | ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 | |
補助率 | 3/4以内 | 2/3以内 |
上限額・下限額 |
5万円※1~50万円以下 1:第19次締切回(最終回)に限り「下限額なし」とする。 |
50万円超~350万円 |
複数社連携IT導入類型
補助額 | デジタル化基盤導入類型の要件に属する経費 | デジタル化基盤導入類型の要件に属さない複数社類型特有の経費 | |||
(1)基盤導入経費 | (2)消費動向等分析経費 | (3)補助事業者が参画事業者をとりまとめるために要する事務費、外部専門家謝金・旅費 | |||
5万円~350万円 | 50万円×グループ構成員数 | ((1)+(2))×10% | |||
内、5万円~50万円以下部分 | 内、50万円超~350万円部分 | ||||
機能要件 ※1 | 会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上 | 会計・受発注・決済・ECのうち2機能以上 | |||
補助率 | 3/4以内 | 2/3以内 | 2/3以内 | 2/3以内 | |
補助上限額 | 3,000万 | 200万 | |||
対象ソフトウェア | 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト | 各種システム※2 | |||
賃上げ目標 | なし | ||||
補助対象 | ソフトウェア購入費・クラウド利用費(最大2年分)・導入関連費 | ソフトウェア購入費・クラウド利用費(1年分)・導入関連費 | |||
ハードウェア購入費用 | PC・タブレット等※3 :補助率1/2以内、補助上限額10万円 | AIカメラ・ビーコン・デジタルサイネージ等 | |||
レジ・券売機等:補助率1/2以内、補助上限額20万円 |
1:該当する機能の詳細はITツール登録要領を参照
2:対象例(消費動向分析システム、経営分析システム、需要予測システム、電子地域通貨システム、キャッシュレスシステム、生体認証決済システム等)
3:PC・タブレット・プリンター・スキャナー及びそれらの複合機器
IT導入補助金2023について
IT導入補助金2023では、これまでの実施内容から、次のとおり、内容が拡充されています。
・通常枠(A類型):下限額を30万円から5万円に引き下げ
・通常枠(A類型):クラウド利用料を1年分から最大2年分に、期間を長期化
・デジタル化基盤導入類型:下限額5万円を撤廃

小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者自らが作成した持続的な経営に向けた経営計画に基づく、地道な販路開拓等の取組(例:新たな市場への参入に向けた売り方の工夫や新たな顧客層の獲得に向けた商品の改良・開発等)や、地道な販路開拓等と併せて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援するため、それに要する経費の一部を補助するものです。
対象経費に「機械装置費等」が含まれていて、キャッシュレス決済端末も補助対象となる可能性があります。(申請類型・要件による)6つの枠に分けられていて、補助上限額は枠ごとに異なります。
種類 | 補助上限額 | 補助率 |
通常枠 | 50万円 |
2/3 |
卒業枠 | 200万円 | |
賃金引上げ枠 | 200万円 | |
創業枠 | 200万円 | |
後継者支援枠 | 200万円 | |
インボイス枠 | 100万円 |

ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するものです。
対象経費に「機械装置・システム構築費」が含まれているため、キャッシュレス決済端末が対象となる可能性があります。(申請類型・要件による)ただし、単価50万円(税抜き)以上の設備投資を行うことが必須要件です。
申請類型、補助上限額等は以下のとおりです。
種類 | 類型 | 補助上限額 | 補助率 |
一般型 | 通常枠 | 750万円~1,250万円※1 | 1/2 ※2 |
回復型賃上げ・雇用拡大枠 | 750万円~1,250万円※1 | 2/3 | |
デジタル枠 | 750万円~1,250万円※1 | ||
グリーン枠 | 1,000万円~4,000万円※1 | ||
グローバル展開型 | 3,000万円 | 1/2 ※2 |
※1. 従業員規模により補助上限の金額が異なります。
※2. 小規模事業者の場合は、補助率は2/3になります。
出典元:ものづくり補助金 公募要領

業務改善助成金
業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図るための制度です。
生産性向上のための設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成します。
厚生労働省が挙げている業務改善助成金の活用事例として、パソコンやスマートフォン、タブレット端末、POSレジシステム等の導入が挙げられていて、キャッシュレス決済端末の導入も補助対象となる可能性があります。
<概要>
コース区分 | 助成上限額 |
30 円コース | 引き上げ労働者数に応じて30~120万円 |
45 円コース | 引き上げ労働者数に応じて45~180万円 |
60 円コース | 引き上げ労働者数に応じて60~300万円 |
90 円コース | 引き上げ労働者数に応じて90~600万円 |
<助成率>
・事業場内最低賃金 920円以上 4分の3
※生産性要件を満たした場合は 5分の4
・事業場内最低賃金 870円以上920円未満 5分の4
※生産性要件を満たした場合は10分の9
・事業場内最低賃金 870円未満 10分の9
出典:業務改善助成金について

訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業費補助金
この事業は、観光施設等における感染症対策の充実や災害時の避難所機能の強化、災害時・急病時の多言語対応強化に要する経費の一部を補助するものです。そのため、キャッシュレス決裁端末の導入は補助対象となります。
①補助対象要件
訪日外国人を含む旅行者が現に多く来訪している、もしくは今後多く来訪することが想定される店舗・事業所等(宿泊施設は除く。)において、整備される場合に対象とします。
※本補助事業の対象となる非接触式キャッシュレス決済環境の整備について、散策マップや WEB 等により訪日外国人を含む旅行者に対して分かりやすく対象店舗等を示すことが望ましい。
②立地要件
訪日外国人旅行者数を2030年に6,000万人とするとの目標実現に向けて、訪日外国人旅行者の受入れに関し一定の体制を整えている地域又は訪日外国人旅行者の誘致等、観光振興に意欲を有する地域など。
③補助対象経費
非接触式キャッシュレス決済環境の整備に要する経費
④補助率
補助対象経費の2分の1以内。
出典元:観光庁訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業費補助金

まとめ
スマートフォンの普及とともに、キャッシュレス決済は今後さらに進化すると考えられます。
皆さまの店舗においてクレジットカード、ORコード決済、バーコード決済、スマホ決済、タッチ型カード決済などの導入を検討されている場合は、ぜひ、今回紹介した補助金をご活用ください。
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