収束に向かっているコロナ禍ですが、この影響で多くの飲食店が深刻な打撃を蒙(こうむ)りました。
回復を期待するとともに、今後飲食店を開業する際に必要となる費用や、現状と補助金の活用、留意点などについて解説します。
飲食店の現状と分類
飲食店の現状と分類について解説します。
現状
飲食店を含む外食産業市場規模は、2019年で26兆439億円でしたが、新型コロナウイルスの影響で飲食業界は大きな打撃を受け、2020年における売上前年比は89.4%(*)と、1割以上の減少となっています。
(*)日本フードサービス協会(日本全国で800社以上の企業が加盟、外食企業各社のサポートなどを行う一般社団法人)の調査による。
一見、深刻なコロナ禍の割には減少幅が少ないようにも思われますが、大規模チェーン店のテイクアウト需要など、売上げが伸びた分野なども総合的に含まれており、いわゆる中小・個人経営の飲食店そのものを抽出したデータではありません。
分類(業種)
飲食店の形は多様化が進んでいますが、総務省の統計項目では下記の業種に分類されています。
- 食堂,レストラン(専門料理店を除く)
- 専門料理店
- 日本料理店
- 料亭
- 中華料理店
- ラーメン店
- 焼肉店
- その他の専門料理店
- そば・うどん店
- すし店
- 酒場,ビヤホール
- バー,キャバレー,ナイトクラブ
- 喫茶店
- その他の飲食店
- ハンバーガー店
- お好み焼・焼きそば・たこ焼店
- 他に分類されない飲食店
必要な費用の概算
飲食店を開業する際に必要となる費用について解説します。
全体像
政府系金融機関である日本金融政策公庫が実施した調査(2020年度新規開業実態調査)によれば、飲食店に限らず、全業種での開業費用平均額は989万円であり、開業時の資金調達額は平均で1,194万円となっています。
参照:日本政策金融公庫
飲食店の場合
飲食店についても、全体像とほぼ同様の傾向となっています。
飲食店の開業資金は、業態や物件によって1,000万円前後の初期投資が必要になることがあり、物件取得費用の他にも人件費や広告宣伝費など、さまざまな費用が必要となります。
また、飲食店を開業する際には、物件取得費用と店舗投資費用がそれぞれ必要となります。なお、当該費用は物件を新規に構築する場合(スケルトン物件)と、既存物件を活用する場合(居抜き物件)に大別されます。
物件取得費用
開業する物件が「賃貸」店舗と仮定し、物件取得費用をみていきます。
物件取得費用は毎月の賃料の12ヶ月分が必要になるのが一般的ですが、必要な費用(概算)は次のとおりです。
前提:家賃20万円の場合
- スケルトン物件:270万円前後
- 居抜き物件:470万円前後
店舗投資費用
店舗投資費用は、物件の規模や取得条件によって大きく変動しますが、平均的なレベルについて解説します。
- スケルトン物件:1,530万円前後
- 居抜き物件:700万円前後
開業資金合計:スケルトン物件1,800万円前後、居抜き物件1,170万円前後
補助金・助成金などの活用は
飲食店を開業する際、融資(借金)などに頼るよりも、国や自治体、また関連団体が支援する補助金や助成金などを活用することが有効です。一定の資格要件が伴い、審査も簡単ではありませんが、返済の必要がないため、経営が安定します。
ピンポイントで「飲食店限定」で利用できる制度はありませんが、飲食店でも活用可能な支援制度について挙げていきます。
補助金
主な補助金は次のとおりです。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で業態を変えざるをえなかったり、新規事業にチャレンジする事業者を支援するための補助金で、飲食店でも利用が可能です。支給上限金額は通常枠8,000万円、グリーン成長では1億5,000万円です。
参照:中小企業庁
小規模事業者持続化補助金
小規模事業持続化補助金は、中小企業や個人事業主が行う販路開拓や生産性向上の取り組みに対して経費の一部を支援する制度です。
一般型は通常枠と特別枠に分かれ、最大200万円が補助されます。
参照:日本商工会議所
IT導入補助金
中小企業・小規模事業者がITツールを導入する際に活用できる補助金です。
通常枠(A・B類型)とデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型・複数社連携IT導入類型)に分かれ、最大450万円が支給されます。
助成金
助成金についてみていきます。
雇用調整助成金
新型コロナウイルスの影響によって事業活動の縮小を余儀なくされた場合、従業員の雇用維持のために休業手当などの一部を助成する制度が活用できます。
参照:厚生労働省
キャリアアップ助成金
有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者など、非正規雇用労働者の正社員化や、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成します。有期雇用から正規雇用への転換の場合には、一人あたり57万円が支給されます。
参照:厚生労働省
補助金・助成金活用にあたっての留意点
飲食店を開業し、継続的に利益を上げて経営を安定させるには、飲食店特有の構造、すなわち「薄利多売」で、集客が落ちるとすぐに資金繰りが厳しくなる点を考慮する必要があります。こうした観点からも、融資(借金)ではなく、補助金や助成金の活用を積極的に検討すべきです。
ただし、補助金や助成金を受けることを見込んで、無計画に人件費を増大させたり、出費を拡大させれば、結果として資金繰りを圧迫する要因になるので注意が必要です。
補助金や助成金は、あくまで受給者が将来、事業を成長させることを支援するために支援されるものであり、また資格要件などのハードルは高いので、飲食店が抱える目先の資金繰りを助けるためのものではありません。
日々の資金繰りを安定させるためには、補助金や助成金に頼るのではなく、日々の営業努力が重要です。
最後に
飲食店を開業するには、本文で分析したとおり、物件や店舗投資費用に概ね1,000万円以上の費用が必要となります。
費用を可能な限り抑えて開業するためには、資金を細分化して洗い出しながら、優先順位をつける工夫が必要です。そして、資金が不足している場合には、補助金や助成金などを活用する方策があります。
有効な手段をよく検討し、飲食店開業を成功させていただきたいものです。
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