※記事内容は、記事更新日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。
物価高や人手不足といった問題が社会全体において喫緊の課題となるなか、小売業でもこうした問題が深刻化しています。この解決のため、国や自治体では、小売業の業況改善に向けてさまざまな補助事業を実施しています。
そこでこの記事では、大阪府内で小売業を営む事業者がつかえる主な補助金を6つ解説します。
大阪府資格取得等人材育成支援事業補助金(NEXTステージ総合支援事業)
本補助金は、コロナ禍等の影響を受け、離職(求職)期間が長引いている方や非正規雇用で長期間働いている方等を対象に、府内人材不足企業への正規雇用につなげるとともに、求職者を雇用した事業主に対して、資格取得等を目的とした研修など、人材育成に資する取組みに必要な費用の一部を補助することで、新規雇用者の職場定着を支援するものです。
令和5年4月1日から令和6年2月20日までの間に開始・完了し、就業に必要な資格取得等をめざす社内研修又は社外研修が補助対象です。なお、上記に該当する研修を実施する場合は、小売業も補助対象となります。
補助対象研修
補助対象となる研修の要件は次のすべてを満たす必要があります。
(1)就業に必要な資格取得等をめざす社内研修又は社外研修
(2)交付申請時に提出する研修計画に従って行う研修
(3)令和5年4月1日から令和6年2月20日までの間に開始・完了した研修
(4)従前より実施している場合は、より効果を高めるための工夫や内容を付加した研修
補助率・補助額
・研修の実施に係る費用:
ア)補助対象経費の合計額×1/2以内
イ)研修日数×8,000円
上記ア、イを比較して低い方が補助金の額となります。また、研修日数は20日が上限のため、補助金の上限は160,000円となります。
・研修を受けた被雇用者に係る賃金相当額:
1時間当たり1,100円×研修時間数(1時間未満の端数は切り捨て)
補助対象となる研修時間数は1日あたり8時間、20日が上限となるので、補助金の上限は176,000円となります。
参照:大阪府資格取得等人材育成支援事業補助金 NEXTステージ総合支援事業)
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自社の経営を見直し、自らが持続的な経営に向けた経営計画を作成した上で行う販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度です。
小売業の場合、常時使用する従業員数が5人以下であれば小規模事業者に該当し、補助対象となる可能性があります。 ※その他要件あり
本補助金は、令和5年度補正予算以降も継続して実施予定です。
補助対象経費
対象経費は、次のとおりです。
・機械装置等費
・広報費
・ウェブサイト関連費
・展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)
・旅費
・新商品開発費
・資料購入費
・雑役務費
・借料
・設備処分費
・委託・外注費
注意事項として、機械装置等費において車やパソコンなど、汎用性が高く目的外の使用となりえるものは対象外です。なお、要件を満たす場合は、店舗改装やバリアフリー化工事が補助対象となる可能性があります。
補助率・補助上限額
類型 | 通常例 | 賃金引上げ枠 | 卒業枠 | 後継者支援枠 | 創業枠 |
補助率 | 2/3 | 2/3 (赤字事業者については3/4) |
2/3 | ||
補助上限 | 50万円 | 200万円 | |||
インボイス特例 | 50万円 ※インボイス特例の要件を満たす場合は、上記補助上限額に50万円を上乗せ |
補助率、補助上限額は上図のとおりです。インボイス特例に該当する場合、全枠の補助上限額に50万円が上乗せされます。
例として、賃金引上げ枠・卒業枠・後継者支援枠・創業枠のいずれかで要件を満たし、インボイス特例が認められた場合、最大250万円が補助されることとなります。
採択事例
これまでに採択された事業のうち、大阪府の小売業の事例を紹介します。
【事例1】
所在地 | 大阪府大阪市 |
従業員数 | - |
補助事業名 | パン製造販売設備設置事業 |
※製造した商品をその場所で個人又は家庭用消費者に販売するいわゆる製造小売業(菓子屋、パン屋などにこの例が多い)は、製造業とせず小売業に分類されます。(参照:経済産業省大臣官房調査統計グループ 産業分類表及び商品分 類表)
【事例2】
所在地 | 大阪府大阪市 |
従業員数 | - |
補助事業名 | 即日印鑑販売のための機械導入とHP作成新規顧客獲得事業 |
【事例3】
所在地 | 大阪府大阪市 |
従業員数 | - |
補助事業名 | 国産植物油にこだわった新商品ヘアオイルの宣伝広告 |
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールの導入を支援する支援制度です。本補助金は、以下の申請類型で構成されています。
・通常枠
-A類型
-B類型
・セキュリティ対策推進枠
・デジタル化基盤導入枠
-デジタル化基盤導入類型
-商流一括インボイス対応類型
-複数社連携IT導入類型
補助対象経費
類型ごとに対象経費は異なりますが、IT導入支援事業者が提供しているサービス利用料や導入関連費等が対象となります。
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)では、会計や決済の機能を持つソフトウェアの導入に加えてパソコンやPOSレジといったハードウェアの導入も補助対象となるため、小売業の方におすすめです。
補助率・補助上限額
類型・概要 |
補助額 |
補助率 |
通常枠(A類型・B類型) 業務のデジタル化をソフトウェアやシステムの導入 |
A類型:5万円以上150万円未満 |
A類型:補助率1/2以内 B類型:補助率1/2以内 |
デジタル化基盤導入類型 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフトに補助対象を特化。 |
ソフトウェア等: ハードウェア:30万円以下 |
ソフトウェア等: ・3/4 ・2/3 ハードウェア: ・1/2 |
セキュリティ対策推進枠 |
5万円以上100万円以下 | サービス利用料の1/2以内 |
商流一括インボイス対応類型 |
(下限なし)~350万円以下 |
中小企業・小規模事業者等が申請する場合の補助率:2/3以内 その他の事業者等が申請する場合の補助率:1/2以内 |
補助率・補助上限額は、上図のとおり、申請類型ごとに設定されています。類型によっては下限額も定められていますのでご注意ください。
採択事例
過去の採択事例から、小売業の事例を紹介します。大阪府の小売業の採択事例が公開されていないため、全国を対象に製造業の事例となります。
【事例1】
会社所在地 | 愛知県名古屋市 |
従業員数 | 3名程度 |
事例概要 | 課題:既存の自社ECサイトによる受注が少なく、新たなECサイト構築が課題となっていた。 ↓ 対策・成果:選び抜いたITツール導入で、自社ブランドに合った新規ECサイト構築に成功。 |
【事例2】
会社所在地 | 福岡県うきは市 |
従業員数 | 352名 |
事例概要 | 課題:既存のPOSシステムのライセンス期間が終了し、次期システムの導入が必要となった。同時に、業務の効率化が課題となっていた。 ↓ 対策・成果:全店舗への新システム導入で棚卸時間が50%削減見込み! |
出典:IT導入補助金2023後期 公式HP ITツール活用事例
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行い、生産性を向上させるための設備投資等を支援する制度です。資本金や常勤従業員数等の要件を満たす場合は、小売業も補助対象者となる可能性があります。
令和5年度補正予算分からは申請枠が再編され、補助金額も大幅に変更されました。2024年2月13日(火)から2024年3月1日(金)の期間行われる第17次公募では、再編された申請枠のうち「省力化(オーダーメイド)枠」のみの実施となります。
省力化(オーダーメイド)枠は、人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・
システム投資等を支援するものです。
申請要件
申請には、基本要件に加えて、省力化(オーダーメイド)枠の追加要件を満たす必要があります。
【基本要件】
以下の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定していること。
1. 事業者全体の付加価値額を年平均成長率(CAGR)3%以上増加
2. 給与支給総額を年平均成長率(CAGR)1.5%以上増加
3. 事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
【追加要件】
1. 3~5年の事業計画期間内に補助事業において設備投資前と比較して労働生産性が2倍以上となる事業計画を策定すること
2. 3~5年の事業計画期間内に投資回収可能な事業計画を策定すること。
3. 外部SIerを活用する場合、3~5年の事業計画期間内における保守・メンテナンス契約を中小企業等とSIer間で
締結し、SIerは必要な体制を整備すること
補助対象経費
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 17次公募要領 概要版
補助対象経費は、上図のとおりです。
ただし、いずれの場合も、本事業に申請する場合は単価50万円(税抜)以上の設備投資が必要となります。また、パソコンやタブレット端末といった汎用性の高いものは補助対象ではないためご注意ください。
補助率・補助上限額
従業員規模 | 補助上限額 | 補助率 |
5人以下 | 750万円(1,000万円) | 1/2 小規模・再生 2/3 ※補助金額1,500万円までは1/2もしくは2/3、1,500万円を超える部分は1/3 |
6~20人 | 1,500万円(2,000万円) | |
21~50人 | 3,000万円(4,000万円) | |
51~99人 | 5,000万円(6,500万円) | |
100人以上 | 8,000万円(1億円) |
※( )内は大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例を適用した場合
補助率・補助上限額は、上表のとおりです。これまで行われていたものづくり補助金からは、上限額が大きく引き上げられています。
活用イメージ
本申請枠は令和5年度補正予算から創設されたため、採択事例がなく、公式ホームページ上に活用イメージが掲載されています。
熟練技術者が手作業で行っていた組立工程に、システムインテグレータ(SIer)と共同で開発したAIや画像判別技術を用いた自動組立ロボットを導入し、完全自動化・24時間操業を実現。組立工程における生産性が向上するとともに、熟練技術者は付加価値の高い業務に従事することが可能となった。
引用:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 17次公募要領 概要版
補助金早期受け取りサービス”前ほじょくん”
前ほじょくんは、「補助金申請したいが補助事業を自己資金で行うことが難しい」「採択されたが資金調達先を探している」といった課題を抱える事業様向けの補助金早期受け取りサービスです。
交付決定後に、補助金を受け取れる権利を債権化し、弊社と提携している大手金融機関の関連会社がその債権を“買い取る”というスキーム(=ファクタリング)で、補助事業実施前に事業者様に買い取り額をお支払いします。
なお、2024年9月現在ものづくり補助金に限定したサービスです。
サービスの詳細は下記記事をご覧ください。
中小企業省力化投資補助事業
本事業は令和5年度補正予算における新規事業です。令和6年1月15日において、公募日程は未定ですが、事務局となる団体は採択済みです。
IoT、ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品を「カタログ」に掲載し、中小企業等が選択して導入できるようにすることで、簡易で即効性がある省力化投資を促進します。
補助対象経費
令和6年1月15日時点では、具体的な対象経費は明記されていません。
ただ、IT導入補助金の補助対象経費が、あらかじめ登録済みのものであるのと同様に、本事業でもカタログに掲載されたもののみが補助対象となるのでご注意ください。
補助率・補助上限額
枠 | 申請類型 | 補助上限額 | 補助率 |
省力化投資補助枠 (カタログ型) |
従業員数5名以下:200万円(300万円) 従業員数6~20名:500万円(750万円) 従業員数21名以上:1000万円(1500万円) ※賃上げ要件を達成した場合、()内の値に補助上限額を引き上げ |
1/2 |
コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業
国民生活に欠かせないコールドチェーンを支える冷凍冷蔵倉庫、食品製造工場、食品小売店舗を営む中小企業等の脱炭素型自然冷媒機器の導入費用に対して補助を行うものです。
令和5年に実施された公募の2次公募として、令和6年に再度実施予定です。
補助率・補助上限額
補助率:原則1/3
補助上限額:令和6年実施分の情報は未公表です。
前回令和5年実施分では、以下のとおりです。
1事業者当たりの補助金:5億円
(フランチャイズ形態のコンビニエンスストアにあっては、2億5千万円)
採択事例
令和5年度第2次公募において、食品小売店舗におけるショーケースその他の交付決定事業者として11事業者、40事業所が採択されています。
参照:環境省 令和5年度「コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業」【複数年度事業】
第2次 補助金交付決定事業者
掲載ページ:環境省 令和5年度「コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業」の第2次 補助金交付先の公表について
(参考)事業再構築補助金
事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するための企業の思い切った事業再構築を支援するものです。
小売業が補助対象となる例として、小売業から製造業への転換を行う場合やこれまでと異なる事業を新たに展開する場合が挙げられます。
ただし、本補助事業は令和6年に行われる第12次公募以降、内容や運営の見直しが予定されています。申請検討の際は必ず最新情報をご確認ください。
なお、令和6年1月15日時点で詳細未公表のため、以下、参考として第11次公募までの内容を紹介します。
補助対象経費
主な対象経費の例として、以下が挙げられます。
建物費(建物の建築・改修等)、機械装置・システム構築費、技術導入費(知的財産権導入に要する経費)、外注費(加工、設計等)、広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)、研修費(教育訓練費等)等
【注】 補助対象企業の従業員の人件費、従業員の旅費、不動産、汎用品の購入費は補助対象外です。
いずれの経費も、事業転換や事業展開を前提としたもののみが対象です。既存事業に活用する経費は対象になりません。
補助率・補助上限額
類型 | 最低賃金枠 | 物価高騰対策 ・回復再生応援枠 |
産業構造 転換枠 |
成長枠 | グリーン成長枠 | サプライチェーン 強靱化枠 |
|
エントリー | スタンダード | ||||||
対象 | 最低賃金引上げ の影響を受け、その原資の確保が困難な事業者 |
業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者、 原油価格・物価高騰等の影響を受ける事業者 |
国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の事業者 | 成長分野への大胆な事業再構築に取り組む事業者 | 研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う事業者 | 海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーン の強靱化及び地域産業の活性化に資する 取組を行う事業者 |
|
補助 上限 |
最大 1,500万円 |
最大 3,000万円 |
最大 7,000万円 |
最大 7,000万円 |
最大 8,000万円 (中堅1億円) |
1億円 (中堅1.5億円) |
最大 5億円 |
補助率 | 3/4 | 2/3 (一部3/4) | 2/3 | 1/2(大規模な賃上げ達成で2/3へ引上げ) | 1/2 |
本事業には次の類型があり、上表のとおり、それぞれ補助率と補助上限額が定められています。ただし、サプライチェーン強靭化枠の公募は、第11回公募以降行われていません。
・最低賃金枠
・物価高騰対策・回復再生応援枠
・産業構造転換枠
・成長枠
・グリーン成長枠
・サプライチェーン強靱化枠
・卒業促進枠
・大規模賃金引上促進枠
大幅な賃金引上げを実施した場合や一定の企業規模から卒業した場合、補助上限の上乗せが行われます。
まとめ
本記事では、大阪府内で小売業を営む事業者がつかえる主な補助金を6つ解説しました。
情報未公開のものもありますが、人材育成や設備投資を行う場合は、ぜひ補助金の活用もあわせてご検討ください。
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