※記事内容は、記事更新日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。
長引く原材料高、深刻化する人手不足など、多くの食品関連事業者が厳しい業況に置かれているのではないでしょうか。状況打開に向けて新たな取り組みをしようと検討しても、新たなコストの発生は避けられません。
しかし、補助金の活用で費用負担を軽減することができます。
そこで今回は、愛知県の食品関連事業者におすすめな補助金を紹介します!
食品関連事業者とは
一般財団法人 環境イノベーション情報機構による、食品関連事業者の定義は次のとおりです。
食品の製造・加工・卸売・小売等を業として行う者(食品メーカー、百貨店、スーパー、八百屋、魚屋などの事業者。動植物性の素材の残渣や廃棄食品が発生する。)と、飲食店業その他、食事の事業を行う者(食堂、レストラン、ホテル、旅館、給食などの事業者。調理くず、食べ残しを含む調理済み食料などの残渣や廃棄物が発生する。)とを指していう。
引用:一般財団法人 環境イノベーション情報機構 食品関連事業者
本記事では、上記の定義にあわせて、食品の製造・加工・卸売・小売業、飲食店等を営む方を対象に補助金の紹介・解説をいたします。
愛知県の食品事業者におすすめの補助金(国主管)
愛知県の食品関連事業者が活用できる補助金のうち、国が主管している補助金を紹介します。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編という思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援するものです。
食品製造業を営む事業者が新たに飲食サービスを展開する場合や食品卸売業者が製造業へ転換する場合などに申請対象となり、補助事業を行うために導入する機械・装置費、広告宣伝費などの補助を受けることができます。
なお、申請類型のひとつである「成長枠」は、事業再構築補助金 第10回公募新設されたもので、成長分野に向けた大胆な事業再構築に取り組む事業者を支援するものです。
成長枠を除く申請類型では「売上高減少要件」が設けられている一方、成長枠にはこの要件がありません。そのため申請のハードルが下がり、誰でも申請可能と思われてしまいますが、実際は補助事業として取り組む事業が、過去〜今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属する必要があります。
具体的には、これから行う事業が飲食店経営である場合は申請対象外となりますが、食品製造や食品卸売業となる場合は申請可能です。
採択件数・採択率
公表されている採択結果のうち直近の結果は、次のとおりです。
・公募期間:令和5年1月16日~3月24日
申請数 9,369者 採択数 4,259者 採択率 約45.46%
採択事例
採択された事業計画のうち、愛知県内の食品関連事業者の事例を紹介します。
<製造業>
事業計画名 |
新製品・菓子・総菜パンの量産化に対応する多品種少量生産体制の構築事業 |
事業計画の概要 |
本事業では、コロナ禍で拡大する中食需要に対応するため、新製品となる菓子・総菜パンを開発し、量産化に対応できる多品種少量生産体制の構築によって、一般消費者向け市場への事業展開を目指します。 |
<卸売業、小売業>
事業計画名 |
完全予約制の卵かけご飯専門店を併設する最高級卵・加工品販売店の開業 |
事業計画の概要 |
本事業は、こだわりの高級卵を製造・販売している当社が、価値をわかってくださるお客様に卵を楽しんでいただく完全予約制の卵がけごはんも提供し、卵と加工品を販売するブティックのような店舗を開設する。 |
出典:第9回公募 補助金交付候補者の採択結果(製造業、卸売業・小売業)
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するために取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行い、生産性を向上させるための設備投資等を支援する制度です。
補助対象の例として、食品製造業における生産性向上のための袋詰真空包装機や混合撹拌機の導入、品質管理のためのソフトウェア導入などが挙げられます。
採択件数・採択率
公表されている採択結果のうち直近の結果は、以下のとおりです。
・公募期間:~令和5年4月19日
・申請数 4,865者 採択数 2,470者 採択率 約50.8%
以下、内訳
-通常枠
申請数 3,322者 採択数 1,661者 採択率 50.0%
-回復型賃上げ・雇用拡大枠
申請数 190者 採択数 95者 採択率 50.0%
-デジタル枠
申請数 1,015者 採択数 569者 採択率 約56.1%
-グリーン枠
申請数 131者 採択数 72者 採択率 約55.0%
-グローバル市場開拓枠
申請数 207者 採択数 73者 採択率 約35.3%
採択事例
採択された事業計画のうち、愛知県内の食品関連事業者の事例を紹介します。
<卸売業>
事業計画名 |
製菓・製パン原材料卸売業から、最新鋭の機械の導入で発酵ロングライフ菓子メーカーへ進出 |
事業計画の概要 |
酵母の独自開発によるロングライフ菓子の製造OEM・ODM生産体制の構築で高まる顧客ニーズへの対応 |
出典:ものづくり補助金 成果事例のご紹介(株式会社アイ・エム・コーポレーション)
<製造業>
事業計画名 |
日本の伝統「金平糖」を世界へ!生産包装工程の改革と生産性の向上 |
事業計画の概要 |
蒸気ボイラーの導入による品質の向上と安定供給の実現付加価値の高い金平糖の生産 |
出典:ものづくり補助金 成果事例のご紹介(マルタ食品株式会社)
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールの導入を支援する制度です。
飲食店や食品の小売店等がPOSレジを導入する場合、飲食店がモバイルオーダーのシステムを導入する場合などに活用できる補助金です。
採択件数・採択率
公表されている採択結果のうち直近の結果は、以下のとおりです。
・公募期間:~令和5年7月10日(月)
・申請数:7,984者 採択数:6,198者 採択率:約77.6%
以下、内訳
-通常枠(A類型・B類型) 3次締切
申請数:2,907者 採択数:2,180者 採択率:約75.0%
-セキュリティ対策推進枠 3次締切
申請数:16者 採択数:16者 採択率:100%
-デジタル化基盤導入類枠(デジタル化基盤導入類型) 5次締切
申請数:5,061者 採択数:4,002者 採択率:約79.1%
参照:中小企業庁HP
–デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)
申請数:0者
参照:IT導入補助金2023(前期)商流一括インボイス対応類型
・公募期間:~令和5年5月31日(水)
-デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型) 1次締切
申請数:2者 採択数:1者 採択率:50.0%
採択事例
以下は、飲食店における財務・会計管理、原価・業務管理 システム導入の事例です。
IT導入のきっかけ |
経理業務の安定性と効率性の両面で課題を抱えていた |
取組みの内容 |
クラウド型会計ソフトへの移行と販売管理システムとの連携を実現 |
効果 |
バージョンアップ作業の手間からの解放されるとともに業務の正確性も向上 |
出典:IT導入補助金活用による生産性向上事例(H29)株式会社 川千家
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自社の経営を見直し、自らが持続的な経営に向けた経営計画を作成した上で行う販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度です。
飲食店内改装に要する外注費や広報費、食品製造業における新商品の試作品開発等に伴う経費などが補助対象となります。
参照:小規模事業者持続化補助金
採択件数・採択率
公表されている採択結果のうち直近となる第12回受付締切分の採択結果は、以下のとおりです。
・公募期間:~令和5年6月1日(木)
・申請数:13,373者 採択数:7,438者 採択率:約55.6%
採択事例
以下、愛知県の飲食店の採択事例です。
補助事業名 |
移転をきっかけにチラシとHPで販路拡大。そして生産性向上を実現 |
美味さ・栄養を詰め込んだ惣菜の食品自動販売機による販路開拓 |
令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業
出典:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業公募情報(3次公募)
この支援事業は、事業者の省エネルギー対策支援として、運営主体である一般社団法人 環境共創イニシアチブ(略称:SII)が公表した先進設備やシステム、オーダーメイド型設備、エネルギー・マネジメント・システム(EMS)等への更新をサポートするものです。
省エネルギー効果の要件を満たす事業である必要がありますが、この要件を満たすことで設備費や工事費が補助されるだけでなく、以降のエネルギーにかかるランニングコストを抑えることにも繋がります。
補助率
中小企業者等:2/3
大企業等:1/2
補助額
下限:100万円/年度
上限:15億円/年度(非化石申請時20億円/年度)
参照:一般社団法人 環境共創イニシアチブ 令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業
採択件数・採択率
本事業で公表されている採択結果のうち、直近の結果は以下のとおりです。
・公募期間:2023年7月10日(月)~ 2023年8月25日(金)
・(単年度事業)採択なし
・(複数年度事業)申請数:14者 採択数:10者 採択率:約71.4%
参照:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業 新規採択事業の結果について[3次公募]
https://biz.stayway.jp/hojyo_detail/9114/
二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業)(SHIFT事業)
「SHIFT(シフト)事業」と呼ばれるこの支援事業は、工場・事業場における脱炭素化のロールモデルとなる取り組みを支援するものです。以下に該当する事業に対して補助金を交付します。
・意欲的なエネルギー起源CO₂削減目標を盛り込んだ脱炭素化促進計画を策定する事業(脱炭素化促進計画策定支援事業。以下「計画策定支援事業」という。)
・脱炭素化促進計画に基づき高効率機器導入・電化・燃料転換・運用改善を実施してCO₂排出量を削減し、排出量の算定及び排出枠の償却を行う事業(設備更新補助事業)
複数の支援事業のうち「省CO₂型設備更新支援」は、令和5年11月2日まで2次公募が行われています。
一般財団法人 省エネルギーセンターの資料によると、令和4年度の「設備更新補助事業」において食料品製造業は13件、飲食料品小売業は9件、飲食料品卸売業は7件採択されていることがわかります。
補助率
補助対象経費の1/3~3/4
補助上限額
算定方法の詳細は交付要領にてご確認ください。
採択事例
過去の採択事例として、工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業のうち、省CO2型設備更新支援(標準事業)において、飲食関連事業者の例には「大塚食品株式会社徳島工場における脱炭素化事業」が挙げられます。
補助事業区分:設備更新補助事業 A 主要なシステム系統でCO2排出量30%以上削減
令和6年度 食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業
令和5年9月8日(金曜日)から「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備緊急対策事業(令和4年度補正予算)」及び「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業(令和5年度当初予算)」の追加募集を行っています。
農林水産物・食品の輸出拡大を図るため、輸出向けHACCP等の認定・認証の取得による輸出先国の規制等への対応に必要となる施設や機器の整備を支援するものです。
交付率
1/2
交付額
・令和4年度補正予算:上限3.1億円、下限250万円
・令和5年度当初予算:上限590万円、下限500万円
本事業の詳細は、こちらの記事で解説しています。
最大3.1億円の補助!「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業」を解説
コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業
冷凍冷蔵倉庫、食品製造工場、並びに食品小売店補におけるショーケースその他の脱炭素型自然冷媒機器の導入事業に要する経費に対して、当該経費の一部を補助する事業です。
令和5年10月10日まで第2次公募が実施されました。要件を満たす場合は、大企業も本事業に申請できます。
補助率
原則、3分の1以下。
ただし、「先進的な中小企業」に合致し、かつ審査時の得点順上位10%以内の事業者は、補助率2分の1以下。
補助上限額
1事業者当たりの補助金:5億円(フランチャイズ形態のコンビニエンスストアにあっては、2億5千万円)
参照:環境省 令和5年度「コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業」の第2次公募について
採択状況
令和5年5月11日(木)~ 6月12日(月)の間、実施された第1次公募の結果、採択件数は以下のとおりです。
【単年度事業】
◆冷凍冷蔵倉庫:66事業者、71事業所 ◆食品製造工場:19事業者、19事業所
◆食品小売店舗におけるショーケースその他:25事業者、256事業所
【複数年度事業(国庫債務負担行為の事業)】
◆冷凍冷蔵倉庫:20事業者、21事業所 ◆食品製造工場:4事業者、4事業所
◆食品小売店舗におけるショーケースその他:3事業者、5事業所
参照:環境省 令和5年度「コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業」の第1次 補助金交付先の公表について
愛知県の食品事業者におすすめの補助金(自治体主管)
続いて、愛知県の食品関連事業者が活用できる、自治体主管の補助金について解説します。
愛知県:燃料電池産業車両導入費補助金
この補助金は、燃料電池産業車両(FCフォークリフト等)を導入する場合に、ガソリンで稼働する通常のフォークリフトとの「差額」の一部を補助するものです。
食品や食品原料を扱う倉庫・物流センター等で燃料電池産業車両を導入する場合が想定されます。
補助率
中小企業:差額の1/2
大企業:差額の1/4
補助上限額
中小企業:550万円
大企業:275万円
愛知県:先進環境対応自動車導入促進費補助金
愛知県はまた、自動車からの温室効果ガス排出量の削減及び大気環境の改善を目的として、先進環境対応自動車の導入を行う旅客・貨物運送事業者、中小企業等の事業者、自動車リース事業者に対して、その経費の一部を補助します。
食品関連事業を営む中小企業者が電気自動車トラック・乗用車、天然ガストラックなどを導入する場合に補助対象となります。なお、本補助金は、車両の導入前に交付申請を行う必要があります。
補助率・補助上限額については公募ページにてご確認ください。
愛知県刈谷市:小規模企業者設備投資促進補助金
小規模企業者が設備投資の促進および経営基盤の強化を図るため、愛知県刈谷市内に所在する事業所における設備の更新等を行う場合に、その費用の一部を補助するものです。
補助率
経営革新計画に基づく設備更新等:100分の10
上記以外の設備更新等:100分の5
補助上限額
1事業者あたり500万円
愛知県安城市:ものづくりデジタル化推進事業補助金
この補助金は、愛知県安城市内で製造業を営む事業者の製造現場におけるデジタル化を支援するものです。このため、食品関連事業者のうち食品製造業が対象となり得ます。ただし、申請時に、がんばる中小企業応援事業補助金の現場改善相談事業の交付決定が必要です。
補助率
補助対象経費の1/2
補助上限額
1事業者につき100万円
まとめ
愛知県の食品関連事業者におすすめ補助金について、国および自治体による支援策を12例紹介しました。
自社で行う新たな取り組みの内容にあわせて、ぜひ補助金の活用もご検討ください。
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