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解説!製造業の事業再構築補助金の採択事例及びそのポイントとは

公開日 2023/06/24
更新日 2023/10/20
この記事は約7分で読めます。

※記事内容は、記事更新日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。

事業再構築補助金は、中小企業等が行う新分野展開や事業転換、業種転換など思い切った事業再構築を支援する補助事業です。

この事業では、中小企業の場合、最大1億円が補助されます。そのため注目度が高いものの、いざ申請しようとすると「自社の事業が申請可能であるか」「どうしたら採択されるか」といった疑問や不安を持つ事業者も多くいます。

そこで本メディアでは複数回にわたり、業種ごとに採択事例や採択のポイントを解説します。

本記事では【製造業】にフォーカスしていますが、製造業以外の業種については、本記事末尾に関連リンクを記載しております。

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事業再構築補助金

事業再構築に向けた事業検討のポイント

出典:経産省 事業再構築に向けた事業計画書作成ガイドブック

事業再構築補助金で採択されるためには、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の環境変化を受けて「自社の強みを活かしてどのような新しい価値を生み出せるか」を検討し、その内容をしっかりと事業計画書に記載することが重要なポイントとなります。

事業計画への落とし込みまでは、次の3つのフェーズに分けて考えていきます。

  • 事業再構築の必要性確認
  • 有望な事業テーマの選定
  • 事業計画の具体化

各フェーズでの事業検討のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。

解説!飲食業における事業再構築補助金の採択事例及びそのポイントとは

製造業における事業再構築補助金の採択事例とポイント

ここからは、事業再構築補助金 第9回公募の採択事例のうち、製造業の例を挙げて事業計画書の記述例を解説します。自社の強みを明確にし、他社との差別化を図ったうえでターゲット顧客に訴求することが、採択のための大きなポイントとなります。

※以下の内容は、事業計画書作成ガイドブックをもとに一部を(株)Staywayにて作成しています。実際の事業計画とは異なります。

半導体製造装置部品からドローン運用・カスタム部品製造への転換

事業計画書作成ガイドブックおよび事業再構築補助金 第9回公募結果をもとに、(株)Staywayが作成

事業概要

半導体製造装置用整流器の売上比率が高いが、コロナによる中国での工場停止、さらに中国への出荷停止があり売上が急減している。その状況からV字回復を図るためドローン運用・カスタム部品製造への業態転換を図る。

既存事業 半導体製造装置の部品製造
再構築の背景

コロナ禍における海外工場の稼働停止、海外への出荷停止による売上減少

再構築の概要

ドローン運用・カスタム部品製造への業態転換

事業再構築の方針決定

事業の外部環境が大きく変化するなか、需要を捉えて、自社の強みや特色を生かしてありたい姿に近づくための施策となる取り組みを、事業再構築の方針として決定します。

<記述例>
これまで実施してきた半導体製造装置の部品製造の知見を活かし、ドローン運用・カスタム部品製造への業態転換で売上のV字回復を図る。

<解説>
製造業による事業再構築補助金への申請においてロボット技術の活用・開発は、統計上、採択の有望度高・中のテーマとされています。ただし、その分競争が激しくなるため、自社の強みを活かせるか見極める必要があります。

記述例の場合、今後の成長市場という市場機会と、これまでに蓄積したノウハウといった強みにより、事業の成功確度を高め、勝ち筋を見出せていると考えられます。

新たな製品/サービスと実現する強み

再構築後の事業の新たな製品やサービスの実現確度を高めるために、今後強みとなる製品・サービスの特色を具体的に記述します。  

<記述例>
強みである3次元CAD/CAMの技術とIoTを取り入れた加工プロセスに新設備を組み合わせることで、短納期・高精度で納品が可能

<解説>
技術面から製品価値を高めるために、既存技術の強みとデジタル技術を活用して新設備を効率的に活用することを明記し、クオリティを保障した製品製造の実現を伝えています。

目標設定と投資対効果の検証

ここでは事業再構築に際して、事業の特性に応じた目標設定と投資対効果の検証などを記載します。

<記述例>
5品目の平均単価1万円と、既存取引先の受注4,000個/年、新規の受注4,000個/年をもとに8,000万円の売上を5年後に見込む

<解説>
売上の因数分解、特に既存・新規の取引先別の算出により、審査員は説得力のある数値目標を確認できます。

実行可能な計画の策定 

事業再構築の構想を具体的な計画に落とし込み、目標達成への見通しを細かく記載します。競合との差別化や新たな強み獲得等、課題/リスクと解決策まで含めて計画に織り込みましょう。

<記述例>
資金調達については、支援機関かつメインバンクである金融機関から支援を頂く旨の内諾が得られている

<解説>
支援機関のコメントにて資金調達の承諾がとれていることで、審査員は実行可能な計画であると判断できます。

業種固有観点 

さらに、業種固有観点として、市況も踏まえて事業活性のための取り組みやその重要性などを記載します。

<記述例>
既存の大口取引先から新製品に関する引き合い/見積打診を既に得られている

<解説>
既存取引先との関係性が重要な製造業で、 既に新規事業への引き合いを受けていることを明記することで、採択の可能性を高めます。

脱炭素社会を見据え、バイオマス原料を活用し環境に配慮した容器を製造

事業計画書作成ガイドブックおよび事業再構築補助金 第9回公募結果をもとに、(株)Staywayが作成

事業概要

プラスチック業界においても脱炭素化に向けた取組みが進展する中、本事業は、従来の化石資源由来の原料とは異質のバイオマス原料を使用することによりカーボンニュートラルに向けた環境に優しい新製品を開発するグリーン成長戦略である。

既存事業 化石資源由来の原料を使用したプラスチック製品、食品容器等の製造
再構築の背景

脱炭素化に向けた取組みの進展

再構築の概要

バイオマス原料を使用した製品製造

事業再構築の方針決定

事業の外部環境が大きく変化するなか、需要を捉えて、自社の強みや特色を生かしてありたい姿に近づくための施策となる取り組みを、事業再構築の方針として決定します。

<記述例>
バイオマス原料を使用することにより、カーボンニュートラルに向けた環境に優しい新製品を開発するグリーン成長戦略の実施

<解説>
製造業による事業再構築補助金への申請においてプラスチック・樹脂の新展開やSDGsリサイクル分野は、統計上、採択の有望度高・中のテーマとされています。

ただし、ロボット技術の活用・開発と同様、競争が激しくなるため、自社の強みを活かせるか見極める必要があります。

本事例では、市場の変化や環境への配慮により、新製品の開発・製作・販売、 及び新規顧客の獲得を目指す旨を記載しています。

新たな製品/サービスと実現する強み

再構築後の事業の新たな製品やサービスの実現確度を高めるために、今後強みとなる製品・サービスの特色を具体的に記述します。  

<記述例>
既存顧客の商社を通じて販売網を拡大

<解説>
既存事業のネットワークを強みとして、新たなチャネル・顧客を開拓する旨を明記します。

目標設定と投資対効果の検証

ここでは事業再構築に際して、事業の特性に応じた目標設定と投資対効果の検証などを記載します。

<記述例>
既存製品の製造数減により、空いた人的資源を新たな製品製造に割り当て 

<解説>
再構築の初期段階は、戦略視点から強み構築に繋がる活動に資金・人的資源を集中することが重要視されます。そのため、既存製品の製造数が減少することで空いたリソースを、新規事業に充足させる旨を明記します。

実行可能な計画の策定 

事業再構築の構想を具体的な計画に落とし込み、目標達成への見通しを細かく記載します。競合との差別化や新たな強み獲得等、課題/リスクと解決策まで含めて計画に織り込みましょう。

<記述例>
・2023年1月 従業員6名採用予定
・2023年4月 新製品の製造設備導入 
・2023年7月 新規事業販売開始予定

<解説>
本事例の場合、3ヶ月単位でマイルストンと人員増の計画を整理しており、実行スケジュールが明確です。このように、具体的かつ明確な計画内容を記載しましょう。

業種固有観点 

さらに、業種固有観点として、市況も踏まえて事業活性のための取り組みやその重要性などを記載します。

<記述例>
新製品専用の製造ラインを導入することで、 関連する法令に準じて新規事業への参入を実現

<解説>
事業により遵守すべき法令・ルールが異なります。本事例では、新規/既存事業それぞれに関わる法規制を理解し、すみ分けをしながら事業・プロセスを構築する旨を記載することとしています。

他業種の採択事例記事(関連リンク)

製造業を除く業種の採択事例を紹介した記事は、以下のリンクからご覧ください。

■飲食業:https://biz.stayway.jp/hojyokin/12347/

■宿泊業:https://biz.stayway.jp/hojyokin/13140/

全国:事業再構築補助金
2024/04/23追記:第12回公募が開始されました。 ----- 2024/02/13追記:第11回公募の採択結果が公表されました。 ----- 2023/08/10追記:第11回公募が開始されました。 ----- 2023...

まとめ

事業再構築補助金における、製造業の採択事例や採択のポイントを解説しました。ポイントをしっかりとおさえた申請で、採択の可能性を高めましょう。

「自社の事業が申請可能であるか」「どうしたら採択されるか」といった疑問や不安をお持ちの方は、ぜひ、本記事をご参照ください。

監修金澤 正/公認会計士
デロイト トウシュ トーマツ出身。 大手国際会計事務所に15年以上在籍し、日本基準、米国会計基準、国際会計基準に基づく監査業務や、IFRS導入コンサルティング業務などに従事し、財務会計や内部統制、監査業務に深い知見と経験をもつ。その後M&Aアドバイザリー業務に携わり、国内及びクロスボーダーM&A取引における助言、評価、調査業務、PMI業務及びその他財務会計に関するコンサルティング業務など幅広い業務を経験。

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