※記事内容は、記事更新日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。
近年、人手不足が深刻な問題となっている農業において、ITやデジタル技術活用の重要性が高まっています。IT・デジタル技術の活用は、インターネット販売をはじめとした販路開拓への効果も期待できます。
そこで農林水産省は、令和3年3月に農業DXの意義・目的や基本的考え方、デジタル技術を活用したさまざまなプロジェクトを取りまとめた「農業DX構想」を発表しました。
また「農林水産業・食関連産業のデジタルトランスフォーメーション」として令和5年度予算を確保し、農林⽔産省共通申請サービス(eMAFF)等による⾏政⼿続の抜本的効率化を図っています。
こうした背景から、今後も農業のDXに関する動きは加速すると考えられます。そこでこの記事では、農業のDX化に活用できる補助金を国と自治体の主管別に紹介します。
農業×DXに使える補助金(国主管)
農業×DXに活用できる補助金のうち、国が主管する補助事業を紹介します。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、中小企業等が行う新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編という思い切った事業再構築を支援する補助金です。
農業×DXとして、ドローンを使った事業の再構築やIoTを活用した業態転換が補助対象となります。具体的な例として、育てた作物をEC販売する場合は農業から小売業への転換に該当するため申請が可能です。
ただし、農業者が、単にこれまでと異なる作物を育て始めるだけでは事業転換と認められず補助対象外となるため注意しましょう。
採択事例
事業計画名 | 日本から世界へ ~農業からGI加工品製造・販売への事業展開~ |
事業計画の概要 | 景気・相場に左右される不安定な野菜生産主体の事業形態から高単価・高付加価値な果物加工品(GI産品である市田柿)を製造し、またITを利用し直販路線を開拓することにより新たな収益の柱と雇用を生み出します。 |
IT活用による販路開拓で事業再構築を行った事例です。
出典:事業再構築補助金 第9回公募 補助金交付候補者の採択結果(農業,林業)
なお、2023年10月時点で公表されている採択結果のうち、直近の採択状況は以下のとおりです。
第10回公募採択結果
・公募期間:令和5年3月30日(木) ~ 令和5年6月30日(金)18:00
・申請 10,821件、採択 5,205件、採択率 約48.1%
ものづくり補助金
出典:ものづくり補助金公式HP 公募要領(16次締切分) 概要版
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するものです。
補助対象となる例として、農業用ドローンの導入が挙げられます。ドローンを導入した肥料・農薬の散布によって、生産プロセスの改善が見込めるためです。
なお、農事組合法人や農業協同組合は補助対象外となるため、申請できません。
採択事例
事業計画名 | 農業生産管理を一元化するシステムを構築し、産地ブランド化を確立 |
農産物の生産~運送までを一元管理できるシステムを構築し、ビジネスフローの簡略化・スピード化を図った事例です。
2023年10月時点で公表されている採択結果のうち、直近の採択状況は以下のとおりです。
15次公募採択結果
公募期間:~令和5年7月28日
申請数 5,694者 採択数 2,861者 採択率 約50.2%
-通常枠 :申請数 3,872者 採択数 1,936者 採択率 50.0%
-回復型賃上げ・雇用拡大枠:申請数 236者 採択数 117者 採択率 約49.6%
-デジタル枠 :申請数 1,211者 採択数 672者 採択率 約55.5%
-グリーン枠 :申請数 155者 採択数 62者 採択率 40.0%
-グローバル市場開拓枠 :申請数 220者 採択数 74者 採択率 約33.6%
補助金の早期受け取りサービス”前ほじょくん(ものづくり補助金限定)
前ほじょくんは、「補助金申請したいが補助事業を自己資金で行うことが難しい」「採択されたが資金調達先を探している」といった課題を抱える事業様向けの補助金早期受け取りサービスです。
交付決定後に、補助金を受け取れる権利を債権化し、弊社と提携している大手金融機関の関連会社がその債権を“買い取る”というスキーム(=ファクタリング)で、補助事業実施前に事業者様に買い取り額をお支払いします。
なお、2024年9月現在ものづくり補助金に限定したサービスです。
サービスの詳細は下記記事をご覧ください。
小規模事業者持続化補助金
出典:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金公式HP ガイドブック
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)に対応するために取り組む販路開拓等に関する経費の一部を補助するものです。
野菜の生産販売拡大のための冷凍冷蔵庫購入やチラシ・カタログの外注や発送などが補助対象となります。ただし、農事組合法人や農業協同組合は補助対象外となり、申請できませんのでご注意ください。
参照:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金 第14回公募 公募要領
採択事例
補助事業名 | ドローンを活用して農業からインフラ整備・点検 |
ドローンを活用した事例で、補助対象経費の費目のうち、機械・装置等費に該当します。
出典:小規模事業者持続化補助金 採択者一覧(第11回受付締切分)(東海)
2023年10月時点で公表されている採択結果のうち、直近の採択状況は以下のとおりです。
第12回受付締切分
・公募期間:~令和5年6月1日(木)
・申請数:13,373者 採択数:7,438者 採択率:約55.6%
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールの導入を支援するものです。この補助金では、loTを使った農業の実施に際して、事前に登録されたITツールを使用する場合のみ対象となります。
※上図に記載された申請類型のほか、「デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)」があります。
採択事例
事業計画名 |
地域の特産品に特化したECサイトへの出店で新たなチャンスを狙う |
事業計画の概要 |
個人消費者向けのご当地グルメ特化型ECサイト「47CLUB」を導入し、オンライン出店 |
事前に登録されたEC販売ツールの導入、EC販売を開始した事例です。
2023年10月時点で公表されている採択結果のうち、直近の採択状況は以下のとおりです。
・公募期間:~令和5年8月28日(月)まで
・申請数:4,561者 採択数:3,663者 採択率:約80.3%
以下、内訳
-通常枠(A類型・B類型) 5次締切
申請数:1,209者 採択数:925者 採択率:約76.5%
-セキュリティ対策推進枠 5次締切
申請数:15者 採択数:11者 採択率:約73.3%
-デジタル化基盤導入類枠(デジタル化基盤導入類型) 7次締切
申請数:3,337者 採択数:2,727者 採択率:約81.7%
スマート農業機械等導入支援
この事業は農林水産省が主管する農業支援サービス事業インキュベーション緊急対策のうち、農業支援サービス事業の拡大に必要となるスマート農業機械等の導入支援を行うものです。
農業支援サービスの提供を目的としたスマート農業機械等の購入・リース導入に対し、上限1,500万円を補助します。
ただし、対象事業者は農業者ではなく「農業支援サービス事業者」となり、対象経費は農業支援サービスの提供に必要なスマート農業機械等の購入費用です。
参照:農林水産省 令和4年度農業支援サービス事業インキュベーション緊急対策のうちスマート農業機械等導入支援の公募について(第4次公募)
本支援策の採択状況は非公表となっています。ただし、大まかな数字として各地方農政局等の数値を平均すると、採択率は3割程度とされています。このうち、関東での採択率は2割程度となっています。
また、関東農政局管轄エリア内での第3次公募における申請者数は、200者以上となりました。
農業×DXに使える補助金(自治体主管)
続いて、自治体が主管する補助事業を紹介します。
宮崎県:農業雇用人材マッチング促進支援事業
デジタル技術等を活用した新たな手法による人材確保の取組や人材がより定着しやすい環境の整備等の取組を支援するものです。特に、環境整備については、農業の働き方改革に資する施設(休憩所、更衣室、男女別トイレ、シャワー)の導入・改修、宿泊施設等の既存施設の改修などの取組に対して支援するものです。
令和4年度に実施していた別事業の内容をリニューアルして実施します。農業協同組合や農業法人等を対象に、以下の2つの事業で支援を行います。
1. 農業人材マッチングデジタル化支援事業
雇用マッチングのデジタル化や地域内外の多様な人材の呼び込み等の取組を支援します。
2. 農業人材受入れ環境整備事業
多様な人材の受入れに必要な施設等の改修・整備への取組を支援します。
新潟県新潟市:農業DX・SDGsモデル事業補助金
農業分野での脱炭素やSDGsの実現に向け、環境保全型農業や資源循環型農業及び省エネルギーに資する農業者等の取組を支援するものです。令和5年4月1日より事業開始となりました。
補助事業及び補助対象経費等は、次のとおりです。
(1)農業DX普及加速化支援事業
ソフトウェア等の新規導入に要する経費
補助対象経費の2分の1以内(補助上限20万円)
(2)新規モデル事業
事業に直接係る機械・備品費、消耗品費、通信費、印刷製本費、借料及び損料、会議費、賃金、旅費、雑役務費、システム開発・改修費
補助対象経費の2分の1以内(補助上限200万円)
(3)モデル事業普及支援
事業に直接係る機械・備品費、消耗品費、通信費、印刷製本費、借料及び損料、会議費、賃金、旅費、雑役務費、システム開発・改修費
補助対象経費の2分の1以内(補助上限20万円)
愛知県岡崎市:新技術・農力向上プロジェクト事業費補助金
農業者の AI、ICT、IoT 等の最新技術を活用したスマート農業を推進するための機器、品質向上のための機器等の試験的な導入、またそれらに関係する取組みのために支出する経費の一部を補助するものです。
具体的にはスマート農業、農作業省力化、及び農林産物の品質向上を推進するための機器・設備等の購入や設置、リース・レンタル費用等が対象となります。
補助率:1/2
補助上限額:15万円
参照:愛知県岡崎市 令和5年度農務課補助金等制度一覧(新技術・農力向上プロジェクト事業費補助金)
本事業は平成23年から毎年実施していて、直近公募では申請数6件に対して採択数6件の結果となりました。提出書類等に不備がなければ、予算の範囲内で採択が見込めます。
愛知県豊橋市:営農継続応援補助金
経営規模拡大等を行うための、農業機械の導入、施設の導入等の費用の一部を助成するものです。
導入する機械や施設がAI・IoT等最先端技術を活用するものである場合、補助率2分の1、補助限度額は200万円以内となります。これに該当しない場合は、補助率10分の3、補助限度額は100万円以内になります。
ただし補助要件として、市内に住所を有する認定農業者や補助事業実施年度の前年度4月1日以降に就農かつ就農時に
45歳未満である後継者の就農である、もしくは法人化の設立が求められます。
本補助金の公募は令和4年度も実施されましたが、採択件数や採択率、採択事例は非公表となっています。
まとめ
今回は、農業のDXに活用できる補助金を主管別に紹介しました。
DXへのはじめの一歩となるシステム導入や人材育成には費用が必要です。DXを検討している事業者の皆様はぜひ、補助金の活用もあわせてご検討ください。
関連する補助金