※記事内容は、記事更新日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。
研究開発現場での精度向上や製造現場での生産性向上には、性能の良い機器や作業を自動化するソフトの導入が欠かせません。
しかし、それらの導入にはコストが伴うため、予算がとれずに実現できないケースも少なくないでしょう。そんなとき、補助金の活用でコストを抑えて導入することができます。
そこでこの記事では、研究開発や製造現場で使われることの多い測定器・マイクロスコープ・顕微鏡、RPAソフトに焦点を当てて、その導入に活用できる補助金を紹介します。
測定器・マイクロスコープ・顕微鏡、RPAソフトいずれにもつかえる補助金・助成金
まずは、測定器・マイクロスコープ・顕微鏡、RPAソフトいずれにもつかえる補助金・助成金を紹介します。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業の生産性向上、持続的な賃上げに向けて、新製品・サービスの開発や生産プロセス等の省力化に必要な設備投資等を支援するものです。
革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス等の省力化のための設備投資・システム構築を行い、指定されている基本要件等を目指す3~5年の事業計画に取り組んだ場合、実施に要する機械装置・システム構築費、技術導入費、クラウドサービス利用費などを補助します。
機械装置・システム構築費には、専ら補助事業のために使用される機械・装置、工具・器具(測定工具・検査工具、電子計算機、デジタル複合機等)の購入、製作、借用に要する経費、専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費などが含まれます。
補助上限額・補助率は次のとおりです。
枠・類型 | 補助上限額 ※カッコ内は大幅賃上げを行う場合 |
補助率 | |
省力化(オーダーメイド)枠 | 5人以下 750万円(1,000万円) 6~20人 1,500万円(2,000万円) 21~50人 3,000万円(4,000万円) 51~99人 5,000万円(6,500万円) 100人以上 8,000万円(1億円) |
1/2※ 小規模・再生 2/3 ※補助金額1,500万円までは1/2、1,500万円 を超える部分は1/3 |
|
製品・サービス 高付加価値化枠 |
通常類型 | 5人以下 750万円(850万円) 6~20人 1,000万円(1,250万円) 21人以上 1,250万円(2,250万円) |
1/2 小規模・再生 2/3 新型コロナ回復加速化特例 2/3 |
成長分野進出類型(DX・GX) | 5人以下 1,000万円(1,100万円) 6~20人 1,500万円(1,750万円) 21人以上 2,500万円(3,500万円) |
2/3 | |
グローバル枠 | 3,000万円(3,100万円~4,000万円) | 1/2 小規模 2/3 |
➡大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例:補助事業終了後、3~5年で大幅な賃上げに取り組む事業者(給与支給総額 年平均成長率+6%以上等)に対して、補助上限額を100万円~2,000万円上乗せ (申請枠・類型、従業員規模によって異なる。新型コロナ回復加速化特例適用事業者を除く。)
参照:中小企業庁 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 チラシ
過去、以下のような採択事例があります。
・製造業において画像寸法測定器を導入し、簡単な操作で、自動測定できるようになった
・技術サービス業において電子顕微鏡を導入し、電子顕微鏡を用いた測定技術サービスを開発
本補助金はすでに18次締切まで公募実施済みです。令和6年9月4日時点、次回公募予定は未定となっています。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編という思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等による挑戦を支援するものです。
ものづくり補助金同様に、対象経費のひとつとして、専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、製作、借用に要する経費、専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入・構築、借用に要する経費といった「機械装置・システム構築費」が補助対象となります。
補助率・補助上限額は次のとおりです。
補助金額 | 補助率 | |
1. 成長分野進出枠(通常類型) | 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数20人以下】100万円~1,500万円(2,000万円) 【従業員数21~50人】100万円~3,000万円(4,000万円) 【従業員数51~100人】100万円~4,000万円(5,000万円) 【従業員数101人以上】100万円~6,000万円(7,000万円) ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合 |
中小企業者等 1/2(2/3) 中堅企業等 1/3(1/2) ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合 |
2. 成長分野進出枠(GX進出類型) | 中小企業者等【従業員数20人以下】100万円~3,000万円(4,000万円) 【従業員数21~50人】100万円~5,000万円(6,000万円) 【従業員数51~100人】100万円~7,000万円(8,000万円) 【従業員数101人以上】100万円~8,000万円(1億円) 中堅企業等 100万円~1億円(1.5億円) ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合 |
中小企業者等 1/2(2/3) 中堅企業等 1/3(1/2) ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合 |
3. コロナ回復加速化枠(通常類型) | 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員5人以下】100万円~1,000万円 【従業員6~20人】100万円~1,500万円 【従業員21~50人】100万円~2,000万円 【従業員 51 人以上】100 万円~3,000 万円 |
中小企業者等 2/3 (従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場 合は800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは3/4) 中堅企業等 1/2 (従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場 合は800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは2/3) |
4. コロナ回復加速化枠(最低賃金類型) | 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数5人以下】100万円~500万円 【従業員数6~20人】100万円~1,000万円 【従業員数21人以上】100万円~1,500万円 |
中小企業者等 3/4(2/3) 中堅企業等 2/3(1/2) ※()内はコロナで抱えた債務の借り換えを行っていない者の場合 |
5. 卒業促進上乗せ措置 | 各事業類型の補助金額上限に準じる | 中小企業者等 1/2 中堅企業等 1/3 |
6. 中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置 | 100万円~3,000万円 | 中小企業者等 1/2 中堅企業等 1/3 |
7. サプライチェーン強靱化枠 | 中小企業者等、中堅企業等ともに 1,000万円~5億円 | 中小企業者等 1/2 中堅企業等 1/3 |
当初は一部の申請枠を除いて「売上減少要件」が設けられており、前年度の任意の期間と比較して売り上げが減少していることが申請の要件となっていました。
しかし、第10回公募からはこの要件が撤廃され、売り上げの変化にかかわらず申請できることとなりました。
過去、以下のような採択事例があります。
・製造業における旋盤と測定器の導入による一貫生産体制の確立
・サービス業におけるRPAを活用した小規模事業者特化事務・経理業務を丸ごと遂行するアプリケーションの提供
これまで第12回まで公募が行われましたが、令和6年9月4日時点、次回の公募実施については未定です。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自社の経営を見直し、自らが持続的な経営に向けた経営計画を作成した上で行う販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度です。
申請類型 | 補助上限額 | 補助率 | |
通常枠 | 50万円 | 2/3 (※賃金引上げ枠において、赤字事業者は3/4) |
|
特別枠 | 賃金引上げ枠 | 200万円 | |
卒業枠 | 200万円 | ||
後継者支援枠 | 200万円 | ||
創業枠 | 200万円 |
※別途、災害支援枠あり
インボイス特例の要件を満たす場合は、上記補助上限額に50万円を上乗せされるため、最大250万円が補助されます。(申請枠による)
RPAソフトの想定事例として、新たに労務管理システムのソフトウェアを購入し、人事・給与管理業務を効率化する事例が考えられます。
また、測定器の導入に関し、携帯型スコープメータ等の測定器を導⼊によって、⾃動的・瞬時に測定し、点検数値の⾒える化・記録が可能となったという採択事例があります。
参照:東北経済産業局 産業部 経営⽀援課 ⼩規模事業者持続化補助⾦ 採択事例集 平成29年度補正予算事業(平成30年度実施分)
なお、小規模事業者持続化補助金は、令和6年5月27日をもって第16回受付締切分が終了いたしました。次回公募予定は未定ですが、今後情報公開されましたら本記事も更新いたします。
業務改善助成金
業務改善助成金は、事業場内で最も低い労働者の賃金(事業場内最低賃金)を引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行う中小企業事業主に対して助成を行うものです。
そのため、生産性向上につながる測定器・マイクロスコープ・顕微鏡・RPAであることが言えれば、その導入が助成対象となります。
・助成率:設備投資等に要した費用の3/4~9/10
・助成上限額:引き上げる賃金額および引き上げる労働者数に応じて30万円~600万円
※要件により変動します。
参照:厚生労働省 令和6年度雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)
中小企業生産性向上促進事業費補助金(神奈川県)
本補助金は、事業の売上増加や効率化など、生産性向上に資する設備の導入を補助するものです。
補助対象事業は生産性向上や業務プロセスの改善、人手不足の解消に資する設備の導入等で、
具体的には検査工程の改善に資する設備や調理工程、サービス提供方法の改善に資する設備などが想定されています。
公募ページに掲載されているチラシには、マイクロスコープの導入が想定事例として記載されています。
補助率
(1)小規模事業者:補助対象経費の3分の2以内
(2)中小企業者:補助対象経費の2分の1以内
補助限度額
500万円(下限額:25万円)
掲載ページ:神奈川県 令和6年度中小企業生産性向上促進事業費補助金について
設備導入(測定器・マイクロスコープ・顕微鏡)につかえる補助金
続いて、測定器・マイクロスコープ・顕微鏡の導入につかえる補助金を紹介します。
ディープテック・スタートアップ支援基金/ディープテック・スタートアップ支援事業
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主管している事業のひとつで、「ディープテック・スタートアップ」を支援するものです。
量子、AI、ロボティクス、半導体、電子機器、エネルギー・環境、バイオテクノロジー、新素材、医療機器、航空宇宙等の鉱工業技術などを扱う「ディープテック・スタートアップ」は、日本経済をけん引するといわれる一方で、技術が確立するまでに長期の研究開発と大規模な資金を要するため、その事業化リスクが高いという課題を抱えています。
そこで本支援事業では、対象となる助成事業を進めるために必要な、研究開発やF/S調査、量産化実証、海外技術実証に関する経費であって、本事業に専用として使用する機械装置等経費、労務費、その他経費、及び委託・共同研究費などを助成します。
測定器・マイクロスコープ・顕微鏡は、この機械装置等経費に該当する可能性があります。
DTSU事業はフェーズに分かれて支援を行うもので、各フェーズ・支援内容は次のとおりです。
〔1〕STS フェーズ(実用化研究開発(前期))
要素技術の研究開発や試作品の開発等に加え、事業化に向けた技術開発の方向性を決めるための事業化可能性調査の実施等を支援します。
〔2〕PCA フェーズ(実用化研究開発(後期))
試作品の開発や初期の生産技術開発等に加え、主要市場獲得に向けた事業化可能性調査の実施等を支援します。
〔3〕DMP フェーズ(量産化実証)
量産技術に係る研究開発や、量産のための生産設備・検査設備等の設計・製作・購入・導入・運用等を通じ、商用化に至るために必要な実証等の実施を支援します。
- ※STS:Seed-stage Technology-based Startups
- ※PCA:Product Commercialization Alliance
- ※DMP:Demonstration development for Mass Production
いずれのフェーズからも申請可能で、SG(ステージゲート)審査を経ることで次のフェーズも連続的に支援可能です。そのため、トータルで6年・30億円の支援が上限となります。
直近の公募は令和6年7月24日で終了していますが、2034年度まで公募実施予定です。
参照:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 「ディープテック・スタートアップ支援基金/ディープテック・スタートアップ支援事業(DTSU)」に係る第5回公募及び「GX分野のディープテック・スタートアップに対する実用化研究開発・量産化実証支援事業(GX)」に係る第2回公募について
医療機器産業参入促進助成事業(東京都)
本事業は、臨床現場のニーズを踏まえた医療機器等の開発を支援し、都内ものづくり中小企業の医療機器産業分野への参入を促進するものです。
この事業はさらに開発から事業化までを対象とする「医療機器等事業化支援助成金」、開発初期に利用できる「医療機器等開発着手支援助成金」に分かれて支援を行います。
このうち、測定器・マイクロスコープ・顕微鏡の導入につかえるのは「医療機器等事業化支援助成金」となります。
出典:公益財団法人 東京都中小企業振興公社 医療機器製品開発にあたって助成いたします
掲載ページ:公益財団法人 東京都中小企業振興公社 医療機器産業参入促進助成事業
新たに医療機器等製品の開発から事業化を行う経費を助成するもので、当該研究開発の実施に直接使用する機械装置・工具器具等の購入、リース、レンタル、据付費用であれば助成対象となり得ます。
公募要領では具体的な例として、試作品を製作するための試作金型、計測機械、測定装置等が挙げられています。ただし、生産用の機械設備導入は助成対象外ですのでご留意ください。
なお、申請の際は、ものづくり企業と医療機器製販企業で連携体を構築する必要があります。また、本事業の助成率は2/3、助成限度額は5,000万円です。
参照:公益財団法人東京都中小企業振興公社 医療機器産業参入促進助成事業
システム導入(RPAソフト)につかえる補助金・助成金
終わりに、業務の自動化を実現し、生産性向上に寄与するRPAソフトの導入につかえる補助金・助成金を紹介します。
中小企業デジタルツール導入促進支援事業(東京都)
本補助金は、公益財団法人東京都中小企業振興公社が主管するものです。
東京都内の中小企業等が、自社の事業活動のためにデジタルツールを導入する費用が対象となります。公募要領には以下の内容が想定事例として挙げられています。
・複数の業務改善ソフトウェアまたはクラウドサービス(例:財務会計・⼈事労務・給与計算・税務管理等のソフトウェアまたはクラウドサービス)を組み合わせて新たに導⼊することで、バックオフィス業務の⼯数を削減する
・RPAツールを新たに導⼊し、バックオフィスにかかる単純作業を⾃動化することで⼯数を削減する
・グループウェアやコミュニケーションツールを新たに導⼊することで、社内コミュニケーションの活性化やナレッジ共有を促進する
・マーケティングオートメーションツールを新たに導⼊し、営業・マーケティング活動の⾃動化を促進する
補助率
1/2以内(小規模企業者は2/3以内)
助成限度額
最大100万円
参照:公益財団法人東京都中小企業振興公社 令和6年度 中小企業デジタルツール導入促進支援事業
観光事業者のデジタル化促進事業補助金(東京都)
本補助金は、東京都及び公益財団法人 東京観光財団が主管するものです。
都内の中小企業の観光事業者、これから観光事業を営む予定の事業者が、デジタル技術を活用し、新たに実施する自社の生産性向上の取組や新サービス・商品開発等の取組が補助対象事業となります。
公募要領には以下の内容が想定事例として挙げられています。
・業務の効率化を図るための独自システムの開発・導入
・IoTを活用した混雑・空室情報サービスの提供
・旅行者の行動・購買履歴等のデータを活用した販売促進 等
より具体的な例として、観光施設についてオンライン上での予約を可能にしたり、混雑状況や予約の可否などを閲覧できたりと顧客満足度向上につながる事例、観光施設の満足度やイベントへの集客度などをはかりマーケティングにつなげる事例などが考えられます。
こうした取り組みに要するシステム構築、ソフトウェア導入、クラウド利用等に要する経費としてRPAソフトの導入が対象となる可能性があります。
補助率
(1)賃金引上げ計画なし:補助対象経費の3分の2以内
(2)賃金引上げ計画あり:補助対象経費の4分の3以内
補助限度額
3,000万円(下限額:100万円)
参照:東京都 観光事業者のデジタル化促進事業(第2回)募集開始
まとめ
この記事では、研究開発や製造現場で使われることの多い測定器・マイクロスコープ・顕微鏡、RPAソフトに焦点を当てて、その導入に活用できる補助金・助成金を紹介しました。
予算の確保が難しいこれらの設備導入をご検討中の場合は、ぜひ、補助金・助成金の活用もあわせてお考えください。
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