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令和6年7月1日に、事業承継・引継ぎ補助金の10次公募の交付申請受付が開始となりました。 (10次公募は専門家活用枠の実施のみ)
この補助金は、事業承継や事業統合を行う際に課題となる、後継者の確保・育成、資金不足などへの対策の一環として国が実施しているものです。
中小企業の事業承継や事業統合を支援する補助金・助成金は、国に限らず地方自治体も実施しており、それらを活用することで、事業承継・事業統合などを円滑に行うことができます。
そこでこの記事では、事業承継につかえる補助金・助成金を紹介します。あわせて、優遇税制についても紹介いたします。
事業承継につかえる補助金・助成金
事業承継に活用できる補助金には、国が主管する「事業承継・引継ぎ補助金」と地方自治体が主管するさまざまな補助金・助成金があります。
そのなかから、全国または主要都市が交付対象、かつ、交付金額が50万円以上である補助金・助成金を紹介します。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継、事業再編及び事業統合を契機として新たな取組を行う中小企業者等を支援するものです。
事業承継、事業再編・事業統合を促進して、国内経済を活性化することを目的としています。令和6年7月1日に、10次公募の交付申請受付が開始されました。
本補助金には3つの枠があります。各枠の詳細については、以下のページで解説していますので、あわせてご参照ください。なお、10次公募は「専門家活用枠」のみの実施となります。
事業承継やM&Aを契機として経営や事業を引き継いだ(または引き継ぐ予定である)中小企業者が、引き継いだ経営資源を活用して経営革新等を行う際の費用の一部を補助するものです。
後継者不在や経営力強化といった経営資源引継ぎ(M&A)のニーズをもつ 中小企業者が、経営資源の引継ぎに際して活用する専門家の費用等の一部を補助するものです。
M&Aによって事業を譲り渡せなかった中小企業者等の株主や個人事業主が、地域の新たな需要の創造や雇用の創出にも資する新たなチャレン ジをするために、既存事業を廃業する場合にかかる経費の一部を補助するものです。
補助率:1/2~2/3以内
補助上限額:800万円
※申請枠・要件による
岩手県:地方創生起業支援金
本支援金事業では、地域課題の解決を目的にデジタル技術を活用して新たに起業する人、事業承継又は第二創業によって付加価値の高い産業分野でデジタル技術を活用した新たな事業を実施する人を支援します。
申請の際、事業承継または第二創業する場合、基準日以降、支給対象事業期間完了日までに、付加価値の高い産業分野で新たな事業を事業承継または第二創業により実施する個人事業主もしくは法人の代表者となる方であることなどの要件があります。
対象経費:直接人件費、店舗・事務所等賃借料、設備費、原材料費、賃借料、知的財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費、マーケティング調査費、広報費等、起業又は新たな事業の実施に係る経費
補助額:最大200万円
補助率:1/2以内
千葉県:事業承継支援助成金
事業承継に係る計画策定、企業価値の算定、後継者の育成、M&Aの仲介を支援するものです。 ※M&Aにおける買収側の企業は本助成金の対象外です。
対象企業:以下のような条件を満たしている必要があります。
・県内に本社または事業所を有する中小企業者(個人事業主を含む)
・事業承継を行うにあたり、引き続き県内で事業を営む者
・支援機関から推薦を受けた者
・株式会社の場合、発行済み株式総数の2分の1超を中小企業以外の会社に保有されていない
対象事業と対象経費:
助成の対象事業 | 対象経費 |
(1)事業承継計画の策定委託 | ・事業承継計画の策定委託料 |
(2)企業価値の算定委託 | ・株価など企業価値の算定委託料 |
(3)後継者の育成 | ・後継者の育成のためのセミナー等受講料 |
(4)M&Aの仲介委託等 | ・仲介委託料、マッチング登録料、着手金 |
補助率:1/2以内
補助上限額:50万円
東京都:事業承継支援助成金
事業承継、経営改善を実施する際に外部専門家等に委託して行う取り組みを支援するものです。
東京都内の中小企業が持続的に成長・発展し、円滑な事業承継、経営改善につなげることを目的としています。
令和6年7月12日まで初回公募が行われたあと、同年10月~12月頃に第2回公募が行われる予定です。
対象事業者:中小企業支援法第2条第1項第1号から第3号に規定する中小企業者
対象事業、対象経費:
対象事業 |
対象経費 |
【Aタイプ(後継者未定)】 |
ファイナンシャルアドバイザー(FA)、M&A仲介業者等との契約締結に要する経費等 |
【Bタイプ(後継者決定)】 |
株式譲渡、相続手続きに関する外部専門家への委託経費、中核人材(幹部社員)の確保や育成に向けた人材紹介会社等のサービス利用や研修の業務委託経費等 |
【Cタイプ(企業継続支援)】 |
生産・営業管理システム等のシステム開発委託経費、新市場開拓や新たな販路開拓に向けた、ホームページ・パンフレット等の作成や更新のための業務委託経費 |
【Dタイプ(譲受支援)】取引先の事業又は株式の譲受のための取組 |
譲受対象企業のデューデリジェンスや契約書作成等に要する経費、事業統合(PMI【注1】)計画の策定のための業務委託経費 |
神奈川県:事業承継補助金
物価高騰や人手不足等の影響によって、優れた経営資源を持ちながら事業継続に課題を抱える中小企業の事業承継を促進し、経営資源・雇用の喪失を防ぐことを支援するものです。
対象事業、対象経費、補助率等:
支援区分 |
事業の内容 |
対象経費 |
補助率 |
買い手支援A |
第三者への事業承継に伴い、譲渡者において常時使用する従業員だった者を引き続き県内で雇用する取組 |
人件費(基本給に限る) |
補助対象経費の1/2以内 (小規模事業者にあっては2/3以内) |
買い手支援B |
第三者への事業承継に係る、専門家等と連携する取組 |
謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料 |
|
売り手支援 |
第三者への事業承継に係る、専門家等と連携する取組 |
謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料 |
補助対象経費の1/2以内 (小規模事業者※にあっては2/3以内) |
参照:神奈川県 事業承継補助金
滋賀県:事業承継円滑化補助金
県内中小企業の事業承継の促進を図るために、「円滑な承継に向けた設備投資等」「M&Aに係るコンサルタント料等」「店舗改修費用等の承継準備費用」に要する経費の一部を支援します。
対象事業、対象経費等:
対象事業(補助メニュー) |
条件 |
対象経費(例) |
1.円滑な承継に向けた売上確保のための新たな商品開発・サービス導入費および生産性向上のための設備投資 |
・現在の事業主が60歳以上である者 |
機器購入費、店舗改修費等 |
2.M&Aにかかる仲介を受ける事業 |
・本社所在地が県内であり、事業の全部または一部を売却する者 |
コンサルタント料等 |
3.廃業に係る事業 |
・現在の事業主が60歳以上である者 |
備品廃棄費用、(退去に向けた)店舗改修費等 |
対象経費の具体例として、次のような費用が挙げられます。
・建設業:業務に係るソフトウェアの導入費、パソコンの導入費
・小売業:会計ソフトの導入費、レジ導入費、プリンターの導入費
・製造業:老朽化した備品の買換えに係る費用
・飲食業:老朽化した店内エアコンの改修費
一方、以下のような経費は補助金の対象となりません。
・顧問料
・官公庁等の手続きおよび書類作成、訴訟・トラブル対応に要する経費
・諸経費、公租公課(消費税および地方消費税額を含む)
・補助事業期間外の経費(月割経費を申請される場合は注意が必要)
・飲食費、接待費、交際費、遊興・娯楽に要する費用
・他の国、県、市町の補助金により、補助対象となっているもの
・その他、公的資金の使途として社会通念上、不適切と判断する経費
対象者:以下のすべての条件を満たしている必要があります。
・中小企業基本法第2条に規定する中小企業者
・滋賀県事業承継ネットワーク参加機関と連携して事業計画を策定する者
補助率:1/3以内
補助上限額:50万円
京都府:起業支援事業費補助金
地域課題の解決に効果的な起業の促進を通して地方創生を実現することを目的とした補助事業です。新たに社会的事業を京都府内で起業する人や新たに事業承継・第二創業する人に対して、起業等に要する経費の一部を支援します。
補助対象者:
(1)京都府内に居住または居住を予定していて京都府内で新たに起業する人
※ただし、公募開始日(2024年4月22日)以降2025年1月31日までに個人事業の開始届出または法人の設立を行い、その代表者となっていることなどが条件
(2)京都府内に居住または居住を予定していて京都府内で新たにsociety5.0関連業種等の付加価値の高い産業分野を事業承継又は第二創業する人
※ただし、公募開始日(2024年4月22日)以降2025年1月31日までに事業承継、または第二創業により実施する個人事業主もしくは法人の代表者となることなどが条件
対象事業:
補助の対象となる事業は、以下の4つの要件を満たしていなければなりません。
・社会性:地域社会が抱える課題(地域課題)の解決に資すること
・事業性:事業の対価として得られる収益によって自律的な事業の継続が可能であること
・必要性:解決しようとする地域課題に対して、当該起業等の事業を実施しなければ課題解決に資するサービスの供給が十分でないこと
・デジタル技術の活用:起業等をする人の生産性の向上・機会損失の解消および顧客の利便性の向上につながるデジタル技術を活用していること
対象事業の具体例として、以下のような事業が挙げられます。
・人口減少地域の活性化や若者等の地域定着に向けて、農林水産物や優れた自然環境・景
勝、文化財などの地域資源を活用した特産品開発・販売や地元 食材を活用した飲食・サービス等の魅力ある地域活性化に資する事業等
・少子高齢化や核家族化の進展により需要が高まっている高齢化や子育て世 帯向けの福祉・教育等の生活支援サービスの供給及びそれに付随する事業等
対象経費:従業員の人件費、店舗等借入費、設備費、原材料費、借料、知的財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費、マーケティング調査費、広報費など
補助率:1/2
補助上限額:200万円
参考:事業承継に関する税制
中小企業等がスムーズに事業承継や事業統合等をできるよう、税制面でも優遇策があります。ここでは、事業承継につかえる主な税制優遇策を3つ紹介します。
法人版事業承継税制(特例措置)
後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与または相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。
法人版事業承継税制(一般措置)
平成30年度の税制改正により、これまでの措置(一般措置)に加えて、10年間の特例措置として納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の3分の2まで)の撤廃や納税猶予割合の引上げ(80%から100%)等が実施されています。
経営資源集約化税制
経営力向上計画の認定を受けてM&Aを実施した場合、「設備投資減税」と「準備金の積立」の措置が活用できます。
設備投資減税は経営力向上計画に基づいて一定の設備を取得するなどした場合、投資額の10%の税額控除または全額即時償却が可能となる制度です。
準備金の積立は、一定の要件を満たしてM&Aを実施した場合、投資額の70%以下の金額を準備金として積み立てられる制度です。
参照:中小企業庁 経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)の活用について
まとめ
この記事では、事業承継につかえる補助金・助成金を紹介しました。
こうした支援制度を活用することで、より円滑な事業承継が可能となります。事業承継をお考えの場合は、ぜひ、補助金や助成金の活用もあわせてご検討ください。
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