※記事内容は、記事更新日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。
令和6年2月、半導体の受託生産において世界最大の台湾企業 TSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)が熊本県で工場の開所式を行いました。
TSMCの工場建設による経済効果は今後10年間で20兆円を超えると言われています。
新たな雇用創出や企業進出等、さまざまなビジネスチャンスを生み出し、県内の他の製造業にとっても事業の維持拡大の好機となります。
そこで本記事では、熊本県の製造業が行う取り組みを後押しする補助金を8つ紹介します。
熊本県の製造業でつかえる補助金(省エネ関連)
国が主管する補助金のうち、熊本県の製造業がつかえる省エネ関連の主な補助金を3つ紹介します。
省エネ補助金
出典:経済産業省 令和5年度補正予算における省エネ支援策パッケージ
「省エネ補助金」は、「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」と「省エネルギー投資促進支援事業」の総称で、省エネ設備・機器の更新費用等の一部を支援する補助金です。
以下のとおり、4つの類型があります。
Ⅰ.工場・事業場型
Ⅱ.電化・脱炭素燃転型
Ⅲ.設備単位型
Ⅳ.エネルギー需要最適化型
Ⅰ.工場・事業場型
生産ラインの入れ替えや集約などによって、工場・事業場全体で大幅な省エネ化を図る場合に設備、先進型設備等の導入を支援するものです。
補助率:中小企業の場合は1/2以内、大企業の場合は1/3以内
※ただし、先進設備導入の場合、中小企業は2/3以内、大企業は1/2以内
補助上限額:15億円
※ただし、非化石転換の要件満たす場合、20億円
Ⅱ.電化・脱炭素燃転型
令和5年度補正予算で新設された事業です。
化石燃料から電気への転換や、より低炭素な燃料への転換などを実現する設備への更新に対して補助するものです。補助の対象は設備費ですが、電化の場合は付帯設備も対象です。
補助率:1/2以内
補助上限額:3億円(電化の場合5億円)、下限:30万円
Ⅲ.設備単位型
設備単位型は他と異なり、更新する機器をリストから選択する方式であるため、申請しやすいと言えます。
予め定めたエネルギー消費効率等の基準を満たし、補助対象設備として登録及び公表された指定設備の導入に対し補助金が交付されます。補助対象となる経費は設備費です。
補助の対象となる設備は、以下のページから検索できます。
補助率:1/3以内
補助上限額:1億円、下限:30万円
Ⅳ.エネルギー需要最適化型
SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)に登録されたエネマネ事業者と「エネルギー管理支援サービス」を契約し、SIIに登録されたEMS(エネルギーマネジメントシステム)を用いて、より効果的に省エネルギー化及びエネルギー需要最適化を図る事業に適用されます。
補助対象経費は、設備費・設計費・工事費です。
補助率:中小企業の場合は1/2以内、大企業の場合は1/3以内
補助上限額:1億円(事業全体)、下限額:100万円(事業全体)
出典:一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII) 省エネ補助金特設ページ
上記4つの類型をもとに、該当する設備更新の内容によって「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」または「省エネルギー投資促進支援事業」のいずれかに申請可能となります。
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業
先進的な省エネ設備や、工場・事業場に合わせた特注品、電化や脱炭素目的の燃転を伴う設備等の更新費用の一部を支援する補助金です。
先進設備やシステム、オーダーメイド型設備の導入を支援する「Ⅰ. 工場・事業場型」、化石燃料から電気への転換等を支援する「電化・脱炭素燃転型」、EMS(エネルギーマネジメントシステム)機器の導入を支援する「エネルギー需要最適化型」から成る事業です。
省エネルギー投資促進支援事業
さまざまな業種で横断的に使われる汎用的な15設備の更新に対応する補助金で、指定設備、EMS機器の導入を対象とします。
設備単位型では、SIIが予め定めたエネルギー消費効率等の基準を満たし、登録及び公表したユーティリティ設備・生産設備の導入を支援するため設備費を補助します。
参照:SII 省エネ設備への更新支援(省エネ補助金)特設ページ
活用事例
製造業における省エネ補助金の活用事例として、金属の熱処理加工を行う金属製品メー カーが工場で使用している低炭素工業炉の更新および、「灯油」から「ガス」への燃料転換を行い、45.9%の省エネルギーを実現した例が挙げられます。
令和6年9月時点で「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」3次公募、「省エネルギー投資促進支援事業」2次公募まで終了しており、次回の公募日程は未定です。
ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
補助対象設備 | 基準額 | |||
太陽光発電設備 | 定額 | 4万 [円/kW] | 「自己所有」「その他のオンサイトPPAモデル」 「その他のリースモデル」 |
×太陽電池出力* [kW] |
5万 ×太陽電池出力* [kW] [円/kW] | 「オンサイトPPAモデル」「リースモデル」 | |||
7万[円/kW] | 「戸建て住宅」 | |||
定置用蓄電池 | 定額 | 4万(業務・産業用**) または4.5万(家庭用**) [円/kWh]×蓄電容量 [kWh] と間接補助対象経費に3分の1を乗じて得た額とを比較して少ない方の額 | ||
車載型蓄電池 | 定額 | 蓄電容量 [kWh]×1/2×4万 [円/kWh]*** | ||
充放電設備 | 2分の1*** | 機器費 | ||
定額 | 設置工事費 (上限額: 1基あたり業務・産業用95万円、家庭用40万円) |
出典:一般財団法人 環境イノベーション情報機構 (EIC) 公募説明会資料
掲載ページ:一般財団法人環境イノベーション情報機構 【三次公募のお知らせ】令和5年度(補正予算)および令和6年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業)ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業の公募について
この事業は「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」のうちのひとつで、電力を使用する民間企業が初期費用ゼロで自家消費型の太陽光発電設備・蓄電池を導入できるよう支援するものです。
ストレージパリティとは、太陽光発電を導入する際、蓄電池を使用しないよりも蓄電池を使用した方がトータルコストが安くなることを指します。
つまり、蓄電池の導入費用よりも運用コストの削減額が上回り、蓄電池を導入した事業者に経済的メリットのある状態を意味します。
令和6年8月30日まで3次公募が行われ、次回の公募日程は未定です。
補助率:
オンサイトPPA・リースの場合:5万円/kW
購入の場合:4万円/kW
※オンサイトPPAとは、発電事業者が、企業の敷地内に発電事業者の費用負担で太陽光発電設備を設置して、所有・維持管理をし、発電設備から発電された電気を企業に供給する仕組みです。
補助上限額:
太陽光発電設備:定額
蓄電池:定額(上限:補助対象経費の1/3)
充放電設備:
参照:環境省 令和6年度予算(案)及び 令和5年度補正予算 脱炭素化事業一覧
工場・事業場における先導的な脱炭素化取組事業(SHIFT事業)企業間連携先進モデル支援
2050年カーボンニュートラルの実現や2030年度温室効果ガス削減目標の達成のために、工場・事業場の脱炭素化を推進し、CO2のさらなる排出量削減に取り組む事業者を支援するものです。
また、企業間で連携してバリューチェーン全体の脱炭素化に取り組む先進的モデルを創出します。補助率と補助上限額は、以下のように事業ごとに異なります。
①CO2削減計画策定支援
補助率: 3/4
補助上限額: 100万円
※DX型計画は、補助上限額:200万円
②省CO2型設備更新支援
標準事業 CO2排出量を工場・事業場単位で15%以上又は主要なシステム系統で30%以上削減する設備更新をする場合
補助率:1/3、補助上限額:1億円
大規模電化・燃料転換事業 主要なシステム系統でi)ⅱ)iii) の全てを満たす設備更新を支援する場合 補助率:1/3、補助上限額:5億円
ⅰ)電化・燃料転換 ⅱ)4,000t-CO2/年以上削減 ⅲ)CO2排出量を30%以上削減
中小企業事業 中小企業等による設備更新に対し、i)ⅱ)のうちいずれか低い額を支援、補助上限額:0.5億円
ⅰ)年間CO2削減量×法定耐用年数×7,700円/t-CO2(円) ⅱ)補助対象経費の1/2(円)
③企業間連携先進モデル支援
Scope3削減に取り組む企業が主導し、サプライヤー等の工場・事業場のCO2排出量削減に向けた設備更新を促進する取組を支援(2カ年以内)
補助率:1/3、1/2
補助全体上限5億円
④補助事業の運営支援(委託)
CO2排出量の管理・取引システムの提供、実施結果の取りまとめ等を行う。
令和6年9月11日現在、省CO₂型設備更新支援、企業間連携先進モデル支援の3次公募・4次公募を行っています。
締め切りを2回とし、1回目の締め切り(令和6年9月24日(火) 12:00まで)を3次公募、2回目の締め切り(令和6年10月15日(火) 12:00まで)を4次公募と称します。
参照:環境省 令和6年度SHIFT事業の三次公募・四次公募について
熊本県の製造業でつかえる補助金(省力化関連)
熊本県の製造業でつかえる省力化関連の主な補助金を3つ紹介します。
中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金
中堅・中小企業が、人手不足等の課題を解消して成長していくための大規模投資を促進し、地方における持続的な賃上げを実現するための補助金です。
製造業の場合、最新の製造設備の導入や工場の増設などが対象となる可能性があります。
令和5年度補正予算で創設された補助金で、投資規模10億円以上、常時使用する従業員数が2,000人以下の中堅・中小企業が対象です。
補助の要件:
・投資額10億円以上
・補助事業の終了後3年間の対象事業に関わる従業員1人当たり給与支給総額の年平均上昇率が、事業実施場所の都道府県における直近5年間の最低賃金の年平均上昇率以上になることが必要です。
補助率:1/3以内
補助上限額:50億円
参照:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金 公式HP
中小企業省力化投資補助金
人手不足に悩む中小企業に対して、IoTやロボットなどの人手不足解消に効果がある汎用製品を導入して売上拡大や生産性向上を後押し、賃上げにつなげるための補助金です。
あらかじめカタログに登録された製品の導入が補助対象となります。製造業で導入できる例として、工場や倉庫で活用できる検品・仕分システムや無人搬送車(AGV・AMR)などが挙げられます。登録製品は今後さらに増える予定です。
補助額は従業員の数によって異なります。補助率は一律で1/2以下です。
従業員数 |
補助額 |
補助率 |
5名以下 |
200万円(300万円) |
1/2以下 |
6~20名 |
500万円(750万円) |
|
21名以上 |
1,000万円(1,500万円) |
※賃上げ要件を達成した場合、補助上限額が括弧内の値に引き上げられます。
公募開始当初は、公募回ごとに締切日を設けて複数回実施予定でしたが、令和6年8月9日(金)より随時受付に変更されました。
ものづくり補助金
枠・類型 |
補助上限額 |
補助率 |
|
省力化 |
5人以下 750万円(1,000万円) 6~20人 1,500万円(2,000万円) 21~50人 3,000万円(4,000万円) 51~99人 5,000万円(6,500万円) 100人以上 8,000万円(1億円) |
1/2※ 小規模・再生 2/3 ※補助金額1,500万円までは1/2、1,500万円 を超える部分は1/3 |
|
製品・サービス 高付加価値化枠 |
通常類型 |
5人以下 750万円(850万円) 6~20人 1,000万円(1,250万円) 21人以上 1,250万円(2,250万円) |
1/2 小規模・再生 2/3 新型コロナ回復加速化特例 2/3 |
成長分野進出類型(DX・GX) |
5人以下 1,000万円(1,100万円) 6~20人 1,500万円(1,750万円) 21人以上 2,500万円(3,500万円) |
2/3 |
|
グローバル枠 |
3,000万円(3,100万円~4,000万円) |
1/2 小規模 2/3 |
ものづくり補助金は、正式名称を「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と言います。
中小企業や小規模事業者が今後数年にわたって直面する働き方改革や賃上げ、インボイスの導入などの制度変更に対応するため、革新的なサービスや製品の開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する事業です。
3つの類型があり、このうち、製品・サービス高付加価値化枠はさらに、「通常類型」と「成長分野進出類型」の2つに分かれます。
補助の上限額は類型ごと・従業員数によって異なります。
・省力化(オーダーメイド枠)
・製品・サービス高付加価値化枠
・通常類型
・成長分野進出類型(DX・GX)
・グローバル枠
なお、令和6年9月時点で18次締切まで終了しており、次回の公募スケジュールは未定です。
採択事例
熊本県の製造業の採択事例を紹介します。
事例1:
所在地 |
熊本県宇城市 |
従業員数 |
約320名 |
事業計画名 |
高強度部材による鉄骨製造の実現に向けた溶接の新たな技術の開発・確立 |
事例2:
所在地 |
熊本県球磨郡多良木町(工場) |
従業員数 |
– |
事業計画名 |
自動落丁機の導入による製造プロセス改革事業 |
熊本県の製造業でつかえる補助金(IT・AI等関連)
熊本県の製造業でつかえるIT・AI関連の主な補助金を2つ紹介します。
IT導入補助金
類型 |
補助額(下限~上限) |
補助率(上限) |
|
通常枠 |
1プロセス以上 |
5万円~150万円 |
1/2 |
4プロセス以上 |
150万円~450万円 |
||
インボイス枠 (インボイス対応類型) |
会計・受発注・決済ソフト(1機能以上) |
50万円 |
3/4(中小企業) 4/5(小規模事業者) |
会計・受発注・決済ソフト(2機能以上) |
50万円~350万円 (ただし補助額のうち50万円以下については上段の1機能の補助額を適用) |
2/3 |
|
PC・タブレット等 |
10万円(上限) |
1/2 |
|
レジ・券売機等 |
20万円(上限) |
1/2 |
|
インボイス枠 (電子取引類型) |
(下限なし)~350万円 |
2/3(中小企業・小規模事業者等) 1/2(その他事業者等) |
|
セキュリティ対策推進枠 |
5万円~100万円 |
1/2 |
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者の労働生産性の向上のために、業務効率化やDXなどに資するITツール(ソフトウェア、サービス等)導入を支援する補助金です。
事前に事務局の審査を受け、補助金ホームページに公開(登録)されているITツール(ソフトウェア、サービス等)のみが補助金の対象となり、類型ごとに補助率・補助上限額が異なります。
補助金申請者は、IT導入補助金事務局に登録された「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組んで申請する必要があります。 ※申請枠による
IT導入補助金2024としての公募は9月20日(金)~10月15日(火)の期間が最後となり、このあと、事務局が変わり、改めて公募が行われる可能性があります。
採択事例
公表されている採択事例のうち、製造業の事例を紹介します。
所在地 |
大阪府八尾市 |
従業員数 |
約70名 |
課題 |
製造現場での帳票類が手書きであったため、ヒューマンエラーが頻発 |
対策 |
帳票を電子化し、ペーパーレス化を実現 |
成果 |
・生産性向上、業務の自動化・無人化により人件費を削減 ・RPAの活用で生まれた時間をデータ分析や事業アイデアの検討に活用できるようになった |
成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech 事業)
成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)は、中小企業の研究開発・試作品開発などを支援する事業です。
補助金を受けるには、中小企業・小規模事業者を中心として大学、公設試験研究機関、最終製品を生産する川下製造業者、自社以外の中小企業者など、2者以上で共同体を組んでいる必要があります。
人件費・謝金、機械装置等の設備備品費、消耗品費、委託費等が補助対象経費です。
補助率:
中小企業者等の場合は2/3以内、大学・公設試等の場合は定額です。
※ただし大学・公設試等の場合、条件により異なります。
補助上限額:
枠 |
上限額 |
通常枠 |
単年度あたり4,500万円以下 |
2年間合計で7,500万円以下 |
|
3年間合計で9,750万円以下 |
|
出資獲得枠 |
単年度あたり1億円以下 |
2年間合計で2億円以下 |
|
3年間合計で3億円以下 |
※ただし、補助上限額はファンド等が出資を予定している金額の2倍が上限です。
本事業は令和6年4月19日(金)まで令和6年度予算での公募が行われていました。今後、令和7年度予算にて新たに公募が行われる見込みです。
まとめ
本記事では、熊本県の製造業でつかえる補助金を紹介しました。
熊本県内に拠点を置く製造業にとっての好機を逃さないよう、ぜひ、補助金を有効活用して事業の維持・拡大を行ってください。
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