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生産性向上や採用力の強化、CRE(Corporate Real Estate)戦略の一環といった観点で工場や本社の移転を検討するものの、高額な費用がかかるため躊躇する企業は少なくないのではないでしょうか。
こうした企業をサポートする目的で、多くの自治体が補助金・助成金をはじめとした支援制度を設けています。
そこでこの記事では、工場・本社の移転を検討している事業者が活用できる補助金・助成金等を紹介します。
工場移転・本社移転につかえる補助金・助成金等
各都道府県が工場・本社移転の支援を目的に設けている補助金・助成金等を紹介します。
本記事公開時点で公募実施中の補助金・助成金等のうち、主要都市に関わるもの、交付額10億円以上のものを中心に厳選しています。
北海道:企業立地促進補助金
北海道内に製造施設や研究施設の新設・増設、本社機能の移転を行う事業者に対して、予算の範囲内で補助金を交付する制度です。
本社機能とは、本店登記されている住所に設置されている事業所における総務・人事・経理・企画・研究開発部門などの中枢機能を指します。
この本社機能移転に伴う設備投資に対して、投資額の10%、最大1億円を補助します。ただし、投資額1億円以上であること、雇用人数が20人以上増加していることが申請要件となります。
また、本社機能移転事業(賃借)の場合は、1年間の賃料の2分の1に相当する額を最大3年間補助します。1年あたりの限度額は1,000万円です。
※その他補助制度、要件あり
▼対象業種
次世代自動車関連製造業や医薬品製造業といった成長産業分野に属する業種が対象です。
▼補助額
本社機能移転事業(設備投資):投資額の10%、最大1億円
本社機能移転事業(賃借):1年間の賃料の2分の1に相当する額を最大3年間、1,000万円/年
▼対象経費
本社機能移転事業(設備投資):設備投資費用
本社機能移転事業(賃借):賃料
埼玉県:産業立地促進補助金
新たに土地を取得(借地)して、工場等の操業を開始した場合に、土地や建物の取得に係る不動産取得税相当額を補助するものです。
工場・研究所の場合、不動産取得税相当額(限度額1億円)を補助します。複数の交付条件があり、県内で事業所の移転を行う場合は従前の事業所と比較して敷地面積が1,000㎡以上、かつ、建築面積が500㎡以上拡張することが必要です。
また、流通加工施設の場合も工場・研究所と同様に不動産取得税相当額(限度額1億円) を補助します。
交付条件のひとつとして、敷地面積1,000㎡以上、かつ、流通加工施設の建築面積500㎡以上であることを定め、県内で事業所の移転を行う場合は従前の事業所と比較して敷地面積が1,000㎡以上、かつ、建築面積が500㎡以上拡張することを必要としています。
そのほか、新たに建物を建築(取得)して、本社を新たに設置(創業)又は県外から移転するものを対象として、不動産取得税相当額(限度額1億円) を補助します。
要件のひとつに、土地売買(借地)契約締結後、3年以内にその場所に本社を新たに設置(創業)又は県外から移転することを定めています。
▼対象業種
対象業種指定の記載はありませんが、以下に該当する場合は、限度額が増額となる場合があります。 ※別途、審査あり
医薬品製造業・化粧品製造業、医療機器製造業・ヘルスケア関連事業、航空・宇宙関連事業、食料品製造業、新エネルギー・省エネルギー関連事業、輸送用機械器具製造業、ロボット・AI・IoT関連事業
▼対象経費
不動産取得税相当額にあたる費用
▼補助額
限度額 1億円
※ただし、上記の補助対象業種に該当する事業を行う工場・研究所・本社施設を立地する場合は、限度額2億円となります(別途審査あり)。
富山県:企業立地助成制度(本社機能を富山県に移転する場合の助成)
本社機能を富山県外から富山県に移転する場合の助成制度です。
本社機能とは、 調査及び企画部門、情報処理部門、研究開発部門、国際事業部門、情報サービス事業部門(ソフトウェア開発含む)、その他管理業務部門のいずれかを指します。
土地・建物・設備を対象に投資額の10%、あるいは事業所移転費・従業員転居費・社員寮設置費の50%、最大30億円を助成します。
なお、東京23区からの本社機能等(全部・一部)の移転の場合、地方拠点強化税制による支援
として、設備投資減税、固定資産税・不動産取得税に加えて事業税の減税などを受けることができます。
▼対象業種
対象業種の指定に関する記載はありません。
▼対象経費・助成率・限度額
助成対象 |
交付要件 |
助成率 |
限度額 |
---|---|---|---|
土地 建物 設備 事業所移転費 従業員転居費 社員寮設置費 |
5千万円以上かつ5人以上(中小企業は1人以上) |
10% (事業所移転費及び従業員転居費は50%) |
5億円 |
100億円以上かつ60人以上 |
30億円 |
福井県:企業誘致補助金
原則、福井県内での事業開始から10年以内の県外企業が工場等を新増設する場合を対象に、工場等の移転経費等を補助する制度です。
製造業のうち、先端技術産業で要件を満たす場合は最大10億円を補助します。
▼対象業種・対象経費・限度額
上図を御参照ください。
参照:福井県 企業誘致補助金
長野県:本社等移転促進助成金
長野県外の企業が長野県に本社機能を有する事務所等を整備して事業を行う場合、その費用の一部を助成するものです。
本社機能および本社機能を有するサテライトオフィスを対象に、県外から県内へ本社機能を移転することを要件のひとつとして最大3億円を助成します。
対象施設
本社機能および本社機能を有するサテライトオフィス
▼対象要件
1. 県外から県内へ本社機能を移転
2. 一定数上の雇用(県外からの転入者を含む)
3. 優遇制度(固定資産税の課税特例立地助成等)のある市町村
▼助成額
助成限度額 | 建物・設備等の取得費用 | 賃貸料 | 雇用に係る経費 |
---|---|---|---|
3億円 | 最大12% | 50% | 80万円/1人(1年限り) |
岐阜県:本社機能移転促進事業補助金
他都道府県から岐阜県へ本社機能を移転される企業に対して補助金を交付する制度です。
東京23区内からの移転の場合、移転に係る経費(初期投下固定資産取得費、事務所移転費、従業員転居費、シャトルバス借上費、機器リース料等)について最大10億円を補助します。
▼対象施設
補助対象施設本社機能を有する事業所
①調査および企画部門、情報処理部門、研究開発部門、国際事業部門、情報サービス事業部門、その他管理業務部門の事務所
②研究所または研修所
▼対象要件・補助額
本社機能を有する事業所に係る家屋の新設増設に対して初期投下固定資産額の10%(最大5億円)、または、本社機能を有する事業所に係る家屋の賃借に対して操業後60か月以内の事業所賃料の50%(最大3億円)
このほか、東京23区内から本社機能を移転し、移転常用雇用者10名以上が岐阜県に転居する場合には、さらに上乗せ補助として事業所移転費、従業員転居費、シャトルバス借上費、機器リース料等を補助
参照:岐阜県 企業の本社機能の移転・拡充に対する支援制度(本社機能移転促進事業補助金)
静岡県:県内立地工場等事業継続強化
事業継続計画(BCP)等に基づき、静岡県第4次地震被害想定において被害が想定される区域に立地する工場等を、その区域外またはより被害の程度が低いと想定される区域に移転または分散する企業の設備投資に対して補助するものです。
平成23年3月11日以前から県内で操業を行っている製造業(工場)、物流施設、研究所を対象に、建物建設費及び機械設備購入費・安全対策費を最大5億円補助します。
▼対象施設
平成23年3月11日以前から県内で操業を行っている、以下の施設
・製造業(工場)
・物流施設
・研究所
▼対象経費
・建物建設費および機械設備購入費
(生産、研究、開発、事務、流通加工、事業継続に係るもの)
・安全対策費
(被害が想定される区域の外ではなく、より被害の低いと想定される区域に移転する場合に必要な安全対策に係る費用に限る)
▼補助率・限度額
補助率:7%
限度額:5億円
広島県:企業立地促進助成制度
令和3年4月以降に設備投資やオフィスの移転・拡充を計画している事業者を対象に助成を行う制度です。
本社機能の移転・新設の場合、建物・施設・人材を対象に最大1億円を助成します。また、オフィスの移転・新設の場合は賃料・通信回線使用料等を対象に最大500万円を助成します。
▼助成対象
本社機能の移転・新設:建物・施設・人材
オフィスの移転・新設:賃料・通信回線使用料等
▼助成率・限度額
以下、本制度のパンフレットにてご確認ください。
企業立地促進助成制度 【オフィスの移転・拡充】R5パンフレット
福岡県:企業立地促進交付金(補助金)
製造・事業施設の移転、本社機能部門を有する施設の移転等に対して補助金を交付する制度です。要件を満たす場合、最大5億円を交付します。
▼対象業種
製造・事業施設の移転:製造業、ソフトウェア業、情報処理・提供サービス業、データセンター、デザイン業、機械設計業
本社機能部門を有する施設の移転:全業種
▼助成率・算出根拠
製造・事業施設の移転:
1. 業務施設の床面積(㎡)×3,000円
2. 社宅の取得・改修費の2%
3. 社宅の年間賃借額の1/2
4. 県民1名×30万円(操業から3年間の雇用が対象)
本社機能部門を有する施設の移転:
1. 設備投資額の2%
2. 業務施設・設備機器の年間賃借額の1/2
3. 社宅の取得・改修費の2%
4. 社宅の年間賃借額の1/2
5. 県民1名(移転者含む)×30万円
(操業から3年間の雇用が対象)
上記1~5の合計に業務施設が立地する市町村の財政力指数に応じた交付率を乗じる。
なお、グリーンアジア国際戦略総合特区特例に該当する場合は上記1に市町村の財政力指数を加味した交付率に5%加算
▼限度額
製造・事業施設の移転:5億円
本社機能部門を有する施設の移転:
研究開発部門以外:1億円
研究開発部門:5億円
なお、設備分交付額の限度額は1億5千万円
鹿児島県:企業立地促進補助金
鹿児島県外から県内への特定業務施設の移転を対象に、移転経費の50%をはじめ最大6,000万円を補助します。
特定業務施設とは、以下のいずれかに該当する施設を指します。
・複数の事業所に対する業務または全社的な業務を行う事務所
・事業者による研究開発において重要な役割を担う研究所
・事業者による人材育成において重要な役割を担う研修所の
▼対象業種
製造業、ソフトウェア業、情報処理・提供サービス業、インターネット付随サービス業、研究開発施設、流通施設等
▼助成率・算出根拠
設備投資額×2/100 + 30万円×新規雇用者数 + 移転経費×50/100 + 貸借料×50/100
▼限度額
6,000万円
まとめ
本記事では、工場・本社の移転を検討している事業者が活用できる補助金・助成金等を紹介しました。地域によってさまざまな制度が用意されていることが、おわかりいただけたのではと思います。
こうした支援制度の活用によって、移転に伴う初期費用を抑えることができ、その経済効果も変わってきます。
どういった地域へ工場を移設すべきなのか、どこへ事業所を移転すべきなのか、をご検討いただくうえでの大切な判断材料のひとつとなるでしょう。ぜひ、制度の活用をご検討ください。
なお、以下の記事では、工場を新設する場合に活用できる支援制度について紹介しています。あわせてご一読ください!
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