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製造業は、多くの業種のなかでも特に大型設備や機械などの導入費用が発生する業種です。この費用は高額となるため、自社で購入せず、リースで借りることで導入コストを抑えるケースもあるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、製造業がリースに活用できる補助金を国または自治体といった主管に分けて紹介します。
製造業でリースにつかえる補助金(国主管)
最初に、製造業でリースにつかえる補助金のうち、国が主管する補助金を紹介します。
省エネ補助金
令和5年度における「省エネ補助金」とは、以下2つの補助金の総称です。
・省エネルギー投資促進支援事業
・省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業
いずれも令和5年度分の公募は終了していますが、令和5年度補正予算分にて、今後も継続して実施予定です。
省エネルギー投資促進支援事業
本事業は、事業者が計画した省エネルギーの取組のうち、省エネルギー性能の高いユーティリティ設備・生産設備等への更新、計測・見える化・制御等の機能を備えたエネルギーマネジメントシステムを導入することにより、省エネルギー効果の要件を満たす事業に要する経費の一部を補助する事業です。
省エネ補助金全体には、以下のとおり、A~Dの大きく4つの事業区分があります。
- A. 先進事業
- B. オーダーメイド型事業
- C. 指定設備導入事業
- D. エネルギー需要最適化対策事業
本事業はこのうち、「C. 指定設備導入事業」「D. エネルギー需要最適化対策事業」で構成されています。
「C. 指定設備導入事業」では、SIIがあらかじめ定めたエネルギー消費効率等の基準を満たし、SIIが補助対象設備として登録及び公表したものが補助対象となり、それらへの更新を要件として最大1億円の補助を受けられます。
指定設備一覧:https://sii.or.jp/shitei04r/search/
「D. エネルギー需要最適化対策事業」では、SIIが定める 「EMSのシステム要件」を満たし、エネマネ事業者が提供するエネルギー管理支援サービス等の実施のために必要不可欠なシステム・機器で、あらかじめSIIの確認を受け、補助対象システム・機器として登録されているものを補助対象とし、最大1億円を補助します。
C・D各事業でリースを利用する場合は、設備使用者とリース事業者等が共同申請を行います。リース事業者は、1申請につき1社とされています。申請時、リース料から補助金相当分が減額されていることを証明できる書類(補助金の有無で各々、リース料の基本金額、資金コスト(調達金利根拠)、手数料、保険料、税金等を明示する書類)を提示することが求められます。
また、指定設備導入事業を単独で申請する場合は、バルクリースを利用できます。バルクリースとは、複数事業者の事業所において、既存設備を一括して高効率設備へ更新することにより、初期投資額を低減させ、その低減効果を活かしつつリースを実施する手法のことを言います。
バルクリースを利用する場合は、補助対象設備の使用者とリース事業者等の共同申請とし、バルクリースの取りまとめを行うリース事業者等が一括して申請を行う必要があります。
参照:一般社団法人 環境共創イニシアチブ 省エネルギー投資促進支援事業
省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業
本事業は、事業者が計画した省エネルギーの取組のうち、導入ポテンシャルの拡大等を見込める先進的な設備・システムの導入、機械設計が伴うオーダーメイド型設備への更新やプロセス改修、計測・見える化・制御等の機能を備えたエネルギーマネジメントシステムを導入を支援するものです。
本事業は、「A. 先進事業」「B. オーダーメイド型事業」「D. エネルギー需要最適化対策事業」で構成されています。
「A. 先進事業」は、SIIが公表した補助対象設備へ更新等することにより、原油換算量ベースで指定の要件を満たす事業です。最大15億円が補助されます。補助対象設備は、以下のページで公開されています。
対象設備一覧:https://sii.or.jp/senshin04r/system/search
また、「B. オーダーメイド型事業」は、既存設備を機械設計が伴う設備又は事業者の使用目的や用途に合わせて設計・製造する設備等へ更新等することにより 、原油換算量ベースで指定要件を満たす事業です。最大15億円の補助を受けられます。(非化石転換設備の場合は20億円)
「D. エネルギー需要最適化対策事業」の内容は、省エネルギー投資促進支援事業と同様です。
リースを利用する場合は、省エネルギー投資促進支援事業同様、設備使用者とリース事業者等が共同申請を行います。リース事業者は、1申請につき1社とされています。
また申請時、リース料から補助金相当分が減額されていることを証明できる書類(補助金の有無で各々、リース料の基本金額、資金コスト(調達金利根拠)、手数料、保険料、税金等を明示する書類)を提示することが求められます。
参照:一般社団法人 環境共創イニシアチブ 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業
採択事例
本事業では、2次公募において製造業者とリース事業者の共同申請による採択事例があるので紹介します。
※申請者のうち、製造業者のみについて記載
業種 |
本社 |
従業員数 | 概要 | |
① | テキスタイル・化学素材製造業 | 石川県能美市 | 760名程度 | 生産設備からの廃熱利用と排水処理の高効率化で省エネ化を図る。精練・水洗工程の排水から廃熱回収して蒸気の使用量の削減とセット工程の排ガスを廃熱回収して、LNGの使用量を削減する。又、排水処理設備を高効率機器に更新して、省エネ化を図る。 |
② | 電気機械器具部品製造業 | 北海道帯広市 | 900名程度 | 液化天然ガスに家畜ふん尿から生成するバイオメタンを混合させたオーダーメイド型の高効率コージェネレーションシステムを導入することで、非化石エネルギーへの転換を図る。これにより、現在利用しているA重油ディーゼルエンジンの稼働を減少させ、省エネ化を図る。 |
③ | 食料品製造業 | 大阪府吹田市 | 4,800名程度 | (a)設備として登録されているガスエンジンコージェネレーション設備を導入するとともに、工場間の電力自己託送を行い、省エネ化を図る。 |
④ | 家具製造業 | 石川県小松市 | 30名程度 | フラッシュパネル加工ラインを更新し、生産効率化及び、省エネ化を図る。 |
出典:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金
(A)先進事業、(B)オーダーメイド型事業、(D)エネルギー需要最適化対策事業 複数年度事業 交付決定案件一覧[2次公募]
脱炭素社会の構築に向けたESGリース促進事業
中小企業等がリースで脱炭素機器を導入する場合、かつ、要件を満たす場合、脱炭素機器の種類に応じて総リース料の一定割合を補助するものです。
特に優良な取組の場合は、総リース料の1~4%に1%、あるいは要件を満たす場合に限って2%を上乗せして補助します。
本事業は令和5年度予算にて実施されましたが、令和6年度においても実施予定です。(上図参照)
工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業)
参照:環境省 令和5年度補正予算(案)の概要(令和5年11月) 工場・事業場における先導的な脱炭素化取組の推進
本事業は、年間CO2排出量が50トン以上3,000トン未満の工場・事業場を保有する中小企業等に対し、認定外部支援機関によるCO2排出量削減余地診断(以下「削減余地診断」という。)及び診断結果に基づくCO2削減計画を策定する事業(「CO2削減計画策定支援」、以下「計画策定支援」という。)と、基準年度CO2排出量が50トン以上の工場又は事業場において、意欲的なCO2削減目標を盛り込んだCO2削減計画に基づく高効率設備導入や電化・燃料転換を行う事業(「省CO2型設備更新支援」、以下「設備更新支援」という。)から構成されます。
本事業は令和3年度補正予算にて行われた「グリーンリカバリーの実現に向けた中小企業等のCO2削減比例型設備導入支援事業」を統合したもので、令和5年度から新たな支援メニュー(企業間連携先進モデル支援)が追加されました。
令和5年11月2日(木)まで2次公募が行われ、令和5年度補正予算においても継続して実施される予定です。(上図参照)
参照:環境省 令和5年SHIFT事業企業間連携先進モデル支援の概要
ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
出典:環境省 令和5年度補正予算(案)の概要(令和5年11月) 令和5年度補正予算(案)施策集
本事業は「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」のうちのひとつで、ストレージパリティの達成に向けてオンサイト PPA* モデル等による自家消費型太陽光発電や蓄電池などの導入を行う事業に要する経費の一部を補助するものです。* PPA: power purchase agreement / 電力購入契約
「ストレージパリティ / storage parity: SP」とは、太陽光発電設備の導入に際して、蓄電池(ストレージ / storage)を導入しないよりも蓄電池を導入した方が経済的メリットのある状態を指す言葉です。
「オンサイト PPA モデル」または「リースモデル」の場合、補助対象設備の法定耐用年数が経過するまでに、需要家など(共同事業者)と PPA 事業者またはリース事業者との契約で、補助金額の5分の4以上がサービス料金、リース料金の低減等により需要家など(共同事業者)に還元、控除されるものであることが申請要件となります。
「オンサイト PPA モデル」または「リースモデル」で業務・産業用の定置用蓄電池をセットで導入しない申請の場合については別途要件が設けられています。
また、リース事業者が実施体制に含まれる場合、PPA事業者とリース事業者との契約はファイナンスリースであることが要件となり、オペレーティングリース(一定期間後の下取り予定価格を残価10として設定するなど)は対象外とされています。
補助事業を行うために直接必要で、エネルギー起源CO₂の排出削減に直接資する工事費や設備費、業務費、事務費などが補助対象となります。交付額は基準額・算定方法によって異なります。
令和5年度当初予算にて公募が実施されましたが、令和5年度補正予算においても継続実施予定です。(上図参照)
事業再構築補助金
類型 | 最低賃金枠 | 物価高騰対策 ・回復再生応援枠 |
産業構造 転換枠 |
成長枠 | グリーン成長枠 | サプライチェーン 強靱化枠 |
|
エントリー | スタンダード | ||||||
対象 | 最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な事業者 | 業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者、 原油価格・物価高騰等の影響を受ける事業者 |
国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の事業者 | 成長分野への大胆な事業再構築に取り組む事業者 | 研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う事業者 | 海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組を行う事業者 | |
補助 上限 |
最大 1,500万円 |
最大 3,000万円 |
最大 7,000万円 |
最大 7,000万円 |
最大 8,000万円 (中堅1億円) |
1億円 (中堅1.5億円) |
最大 5億円 |
補助率 | 3/4 | 2/3 (一部3/4) | 2/3 | 1/2(大規模な賃上げ達成で2/3へ引上げ) | 1/2 |
○大規模賃金引上促進枠:上限3,000万円上乗せ
○卒業促進枠(中小企業等からの卒業):上限を2倍に引上げ
参照:経済産業省 事業再構築補助金の概要(中小企業等事業再構築促進事業)
資料掲載ページ:経済産業省 事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編という思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援するものです。
要件を満たす場合、上記の取り組みに要する建物費や機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費 などの一部が補助されます。
中小企業等がリースを利用して機械装置又はシステムを導入する場合には、中小企業等がリース会社に支払うリース料から補助金相当分が減額されることなどを条件に、中小企業等とリース会社の共同申請を認め、機械装置又はシステムの購入費用について、リース会社を対象に補助金を交付することが可能です。
今後実施が予定されている第12回公募以降、申請枠の再編や内容変更が予定されているため、申請検討の際は必ず最新情報をご確認ください。
製造業でリースにつかえる補助金(自治体主管)
続いて、製造業でリースにつかえる補助金のうち、自治体が主管する補助金を紹介します。
東京都:省エネ型ノンフロン機器普及促進事業
東京都が都内における温室効果ガス排出量の約1割を占めるフロン排出量の削減に向けて、脱炭素化を更に推し進めるため、冷媒にフロンを使用しない「省エネ型ノンフロン機器」の導入に要する費用の一部を助成するものです。
具体的な対象機器として、以下が挙げられます。
① 冷凍冷蔵ショーケース(内蔵型・別置型)
② 冷凍冷蔵用又は空調用チリングユニット
③ 冷凍冷蔵ユニット(車載用 、 船舶用 又は 輸送用を除く。)
※②・③は、圧縮機に用いられる原動機の定格出力が7.5kW以上のもの
冷凍冷蔵倉庫及び食品製造工場を除く中小企業者及び個人の事業主は補助対象で、リースを行う場合も対象に含まれます。
本事業の実施期間は令和4年度~令和6年度であり、令和5年11月時点で採択状況は公表されていません。また、申請数や採択数といった具体的な数字が公表されるか不明ですが、令和6年度の最終締切後に採択状況が公表される可能性があります。 ※公募期間内であっても、予算上限に達した時点で公募が打ち切られる可能性があります。
なお、本事業のヘルプデスクは、「本事業は『助成金』であるため、補助金とは異なり不備なく申請完了すれば、原則、不採択となることはありません。また万が一、不備があった場合も事務局から通知し、解消に至るまで修正ができるため、80~90%といった高採択率となる可能性が高いと考えられます。」としています。
神奈川県:自家消費型再生可能エネルギー導入費補助金
この補助金は、自家消費を目的とした再生可能エネルギー発電設備や当該設備と併せて導入する蓄電システム等の導入に係る経費の一部を補助するものです。
要件を満たす太陽光発電や風力発電などの自家消費型再生可能エネルギー発電設備、蓄電システム等を設置する際の設置費、設備工事費が対象となります。
リース等により実施する場合は、リース等事業者が、リース等使用者から領収するリース料、割賦料又は電力販売料の元本相当額について、補助金相当分を減額していることが要件となります。
補助金額・補助上限額:
補助金額 | 補助上限額 | |
自家消費型再生可能 |
発電出力に1kW当たり6万円を乗じた額 ただし、補助対象経費を上限とします。 |
・大企業の場合(リース等の場合は、リース等使用者が大企業の場合)は1,000万円 ・中小企業者の場合、上限なし |
蓄電システム等 |
導入する蓄電システム台数に1台当たり15万円を乗じた額 ただし、補助対象経費を上限とします。 |
– |
本公募は令和4年度にも実施されましたが、採択結果は非公開です。
大阪府:中小事業者LED照明導入促進補助金
大企業を中心としたサプライチェーン全体での脱炭素化が進む中、一層のCO2削減の取組みが求められている中小事業者を対象として、脱炭素化及び電気料金の削減による経営力強化の取組みを促進することを目的とするものです。
中小事業者が大阪府内で運営する工場・事業場において、既設の照明設備をLED照明へ更新する際の設備費・設備工事費を補助します。要件を満たす場合は、リースを活用する場合も申請可能です。
なお、東京都でも同様の補助金の公募が実施されていますが、大阪の本補助金のみリースでの活用が可能です。
補助金額:補助対象経費の2分の1に相当する額以内(補助金額に千円未満の端数が生じた場合は切り捨て)
補助上限金額:1,500万円、下限額 20万円
補助要件を満たしたものについて、予算の範囲内で先着順に受理・審査します。
まとめ
今回は、製造業がリースに活用できる補助金を紹介しました。
大型の設備投資に活用できる補助金を含んでいますので、今後の設備投資を検討している場合は、ぜひ、補助金の活用もあわせてご検討ください。
また、実施内容やスケジュール未公表の補助金もありますので、申請検討の際は必ず最新情報をご確認ください。本メディアでも最新情報を随時公開してまいります。
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