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令和6年3月18日に、事業承継・引継ぎ補助金/9次公募の公募要領が公表されました。
4月1日には同補助金の申請受付開始が予定されています。
そこでこの記事では、事業承継・引継ぎ補助金 9次公募(専門家活用枠)について解説します。
事業承継・引継ぎ補助金とは?
事業承継やM&Aを契機とした経営革新等への挑戦や、M&Aによ
- 経営革新枠
- 専門家活用枠
- 廃業・再チャレンジ枠
なお、本記事で紹介する「専門家活用枠」は、M&Aによる経営資源の引継ぎを支援するため、M&Aに係る専門家等の活用費用を補助します。
◆「経営革新事業」「廃業・再チャレンジ枠」の詳細については、別記事で解説しております。あわせてご参照ください。
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)9次公募の変更点
9次公募の開始に伴い、前回から以下のとおり複数の変更点があります。
賃上げ加点未達の場合に関する文言の追記
8次公募において令和6年1月26日付で削除された以下の文言が、9次公募要領に再度掲載されました。
交付申請時点から過去18ヵ月の間において、中小企業庁が所管する補助金※に申請した内容について、賃上げ加点の要件等が未達成の場合、正当な理由が認められない限り大幅に減点されることを了承した上で申請すること。
※令和6年3月時点では、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(第17次公募以降)、サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金2024公募以降)、小規模事業者持続化補助金(第15回公募以降)、事業承継・引継ぎ補助金(第8次公募以降)、成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)(令和6年度公募以降)、事業再構築補助金(第12回公募以降)、(中小企業省力化投資補助事業(第1回公募以降)を含む)
事業承継対象の始期及び期間
9次公募では、事業承継対象期間の始期が2019年(令和元年)11月23日からとなり、事業承継対象期間は令和元年11月23日から令和6年11月22日(予定含む)までとなります。
加点事由について
加点対象となる項目のひとつである賃上げに関し、以下、変更となりました。(太字部分が変更箇所)
以下を満たす賃上げを実施予定であり、従業員に表明していること。
事業化状況報告時に、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上の賃上げ
(交付申請時点で上記を既に達成している事業者は、事業化状況報告時に、事業場内最低賃金+30円以上の賃上げ)
8次公募では補助事業期間終了時での賃上げと記載されていましたが、事業化状況報告時に変更となりました。
補助金交付に際しての追記
補助金の交付に関して、以下の文言が追記されました。
※実績報告内容に不備があった場合は、期限を定めて事務局より補正依頼を実施するが、補正期限までに必要な補正がなされず適正な経理処理が確認できない場合は、当該経費について減額する可能性もあるため、留意すること。このため、公募要領及び「補助金交付のための事務手引書」、「証拠書類等の準備に係る留意点」等をよく確認し、必要となる証拠書類を適切に管理すること。実績報告書等の提出の際には、必要書類の漏れがないように確認の上、提出を実施すること。
補助対象経費について
補助対象経費の支払いについて、(補助対象者ではなく)補助事業者名義による「補助事業者の事業用口座からの銀行振込」または「クレジットカード 1 回払い」のみ対象である旨が明記されました。
これまで「事業用」の記載はありませんでしたが、9次公募から明記されています。なお、あわせて以下の文言が追記されています。
必ず補助事業者名義の口座から支払を実施してください。
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)における過去変更点
出典:令和4年度 補正予算 事業承継・引継ぎ補助⾦ 経営⾰新事業
このほか、大きな変更があった4次公募からの主な変更点について解説します。
制度上のポイントとなる変更は、大きく4つあります。事業承継・引継ぎ補助金の公募ページに掲載されているパンフレットをもとに内容を紹介します。
補助下限額の引き下げ
4次公募では補助下限額100万円とされていましたが、5次公募ではこの補助下限額が50万円に引き下げられ、補助金を活用できる事業の幅が広がりました。
補助対象経費に2/3又は1/2をかけた金額が50万円を下回る申請については、受け付けられません。
補助率の引き上げ
専門家活用事業には、「買い手支援型(Ⅰ型)」「売り手支援型(Ⅱ型)」といった2つの申請類型があります。
売り手支援型において、以下の要件①②のいずれかに該当する場合は、補助率を2/3以内に引き上げ、該当しない場合は補助率1/2以内とします。
事業譲渡時の引継ぎ要件
事業譲渡の場合、有機的⼀体としての経営資源の譲受・譲渡が対象となります。
有機的一体としての経営資源(設備、従業員、顧客等)の譲受・譲渡事実が確認できない有形資産(物品・設備等)のみ、あるいは無形資産(ブランド・ノウハウ等)のみの譲渡は原則対象外となります。
譲渡・譲受対象となった資産・負債については、従業員名簿や譲渡対象不動産の一覧・譲渡設備の一覧等、具体的な譲渡・譲受状況が確認できるものを提出することが求められます。
補助対象者の条件
補助対象者の条件が追加され、補助対象者(法⼈)の代表者が、「M&A⽀援機関登録制度」に登録されたファイナンシャルアドバイザー(FA)・仲介業者またはその代表者であった場合、補助対象外となります。
専門家活用事業の類型
専門家活用事業の類型は、次の2つに分類されます。
■買い手支援型(Ⅰ型)
事業再編・事業統合に伴い株式・経営資源を譲り受ける予定の中小企業等を支援する類型。
■売り手支援型(Ⅱ型)
事業再編・事業統合に伴い株式・経営資源を譲り渡す予定の中小企業等を支援する類型。
どんな人が支援の対象になるの?
補助対象者の主な要件は以下の通りです。
(1)日本国内に拠点もしくは居住地を置き、日本国内で事業を営む者であること。
(2)反社会的勢力との関わりがないこと。
(3)法令遵守上の問題を抱えていないこと。
(4)事務局から質問及び追加資料等の依頼があった場合は適切に対応すること。
(5)事務局が必要と認めるときは、事務局が補助金の交付申請ほか各種事務局による承認及び結果通知に係る事項につき修正を加えて再度通知することに同意すること。
(6)申請その他本補助金の交付にあたり負担した各種費用について、いかなる事由においても事務局が負担しないことについて同意すること。
(7)経済産業省から補助金指定停止措置または指名停止措置が講じられていないこと。
(8)補助対象事業に係る全ての情報について、事務局から国に報告された後、匿名性を確保しつつ公表される場合があることについて同意すること。
(9)事務局が求める補助対象事業に係る調査やアンケート等に協力できること。
(10) ファイナンシャルアドバイザー(以下、「FA」という)・M&A 仲介費用を補助対象経費とする場合は、事務局から M&A 支援機関登録制度事務局に対し情報提供すること及び登録 FA・仲介業者により、M&A 支援機関登録制度事務局に対し実績報告がなされることに同意すること。
補助対象事業
補助対象事業となる経営資源引継ぎは、被承継者と承継者の間で事業再編・事業統合が着手もしくは実施される予定、または廃業を伴う事業再編・事業統合が行われる予定であることとし、下図「経営資源引継ぎ形態に係る区分整理」で定める形態が対象です。
なお、「補助対象者」と「経営資源引継ぎの形態」によって、「交付申請類型番号」と「実績報告類型番号」が振り分けられています。申請の際は、ご自身の該当する類型番号をご確認ください。
(注 1)被承継者が法人又は個人事業主であること
(注 2)共同申請の場合
(注 3)個人事業主を含む
補助対象経費
補助対象となる経費は、以下の通りです。
タイプ | 補助対象経費の区分 |
買い手支援型(Ⅰ型) |
謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料、廃業費:廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転・移設費用 |
売り手支援型(Ⅱ型) |
補助上限額、補助率等
補助金上限額に関して、「売り手支援型」には廃業費用が上乗せされます。
類型 | 補助率 | 補助上限額 | 上乗せ額(廃業費) |
買い手支援型(Ⅰ型) | 2/3以内 | 600万円以内 | – |
売り手支援型(Ⅱ型) | 1/2⼜は2/3以内 | +150万円以内 |
手続きの流れ
【事前準備】
・補助対象事業の確認
・認定経営革新等支援機関へ相談
・gBizIDプライムの取得
↓
【交付申請】
・交付申請
・審査の後、交付決定通知
↓
【事業実施】
・補助対象事業実施
補助事業期間は、交付決定日から最長で2024年9月16日(月)までです。
↓
【事業完了】
・事業完了後に実績報告
↓
【補助金交付】
・確定検査、補助金交付
↓
【補助金交付後】
・事業化状況の報告等
交付申請に必要書類
補助金交付申請書(jGrants 上の申請フォーム)を jGrants にて提出してください。
交付申請類型番号毎に必要な書類が異なるため、詳細は、公募要領にてご確認ください。
なお、交付申請は jGrants での提出となるため、以下に示す必要書類は原則 PDF 形式での提出が必要です。
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)9次公募 スケジュール
申請受付期間 | 2024年4月1日(月)(予定)~2024年4月30日(火)17:00まで |
---|---|
交付決定日 | 未定 |
事業実施期間 | 未定 |
実績報告期間 | 未定 |
補助金交付手続き | 未定 |
問い合わせ先
事業承継・引継ぎ補助金 Web サイト
https://jsh.go.jp/r5h/
事業承継・引継ぎ補助金事務局(専門家活用)
050 – 3000 – 3551
受付時間:10:00~12:00、13:00~17:00 (土・日・祝日を除く)
採択率
公表された採択結果のうち、直近回の結果は以下のとおりです。
■7次締切
・交付申請期間:令和5年11月17日(金)まで
・採択結果:
-経営革新事業 申請数:313者、採択数:190者、採択率:約60.7%
-専門家活用事業 申請数:498者、採択数:299者、採択率:約60.0%
-廃業・再チャレンジ事業 単独申請)2件・併用申請)26件、採択数:10者、採択率:約35.7%
中小企業庁ページ:https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2023/231225shoukei_saitaku.html
事業承継・引継ぎ補助金 公式HP:https://jsh.go.jp/r5h/adoption-result/
採択事例
これまでに採択された事例の一部を紹介します。
専門家活用×買い手支援型
①卸売業・小売業:弊社は薬局の経営を行っている会社であり、昨今の新型コロナウイルスに影響で一時よりは持ち直しているものの、当初の計画より売上2割減くらいの状況が続いている。既存の薬局に関しては、新型コロナの影響が大きい耳鼻科クリニックに通院する患者をメインターゲットにしているが、引継予定である薬局は新型コロナの影響が少ない整形外科病院の患者さんがメインターゲットとなっている。引継予定となる店舗は、人口減の過疎地域に立地しており、後継者となる薬剤師がいないことから、廃業も視野に入れて別の会社で引き継いでくれる先を探していたところ、弊社と秘密保持契約を締結している仲介業者が情報を入手し、交渉を引き続き進めている。交渉中の店舗を引き継ぐことで、地域経済の活性化に貢献するのみならず、今まで店舗を利用していた患者さんが、遠くに足を運ばなくてはならないということを防ぐ点から今回の引継ぎは非常に大きな必要性を感じる。
対象会社の経営資源を引き継ぐことで、対象会社は経営課題であった薬剤師の雇用や取引先との取引を維持することができ、高い水準での売り上げの安定化を図ることができると考える。弊社についても定期的に病院患者さんからの売上が見込めることによって、既存の薬局の事業展開が可能になると考える。従来は既存の薬局は近隣のクリニックに通院している患者さんをターゲットにして、収益の安定化を図っていたが、高い水準で収益の安定が見込める店舗を引き継ぐことで、既存の店舗は近隣のクリニックのみならず、介護施設やサービス付き高齢者向け住宅への在宅訪問の事業展開を行うことができる。外来よりも在宅訪問のほうがよりお客様単価が見込めるため、利益の質の向上につながり、地域密着型の高水準のサービスを提供する薬局として拡大していく。
専門家活用×売り手支援型
②建設業:当社は戸建住宅の解体工事業を行っており、上場系企業との厚い取引を背景に安定した収益を上げている。現在設立より4期目を迎え、業容も順調に伸張しているものの中長期的な目線に立ち、当社の人員構成や事業環境等に鑑みる中で、大手他企業と提携しているみるのも一案ではないかと考え、取引行に相談をおこなった。その後、取引行より当社から車で20分程度の位置に本社を構える会社の紹介を受け、買い手候補先の社長とも面談を実施した。面談を通じ、相手先は注文住宅の建築から公共工事、高齢者向け施設の建築等を行う総合建築業者であり、当社事業との親和性も高く、相乗効果も大いに得られるのではないかと考えた。自身も仮に本事業が成就した後も社内に残り、取引先や外注先との関係性維持を図っていく予定である。
引用:事業承継・引継ぎ補助金 事例集(令和3年度当初予算 事業承継・引継ぎ補助金)
まとめ
事業承継・引継ぎ補助金/9次公募の変更点を解説しました。
事業承継をお考えの方は、本補助金をぜひご活用ください。
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