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徹底解説!事業再構築補助金 第12回公募以降の変更点とは

公開日 2023/06/23
更新日 2024/04/26
この記事は約11分で読めます。

※記事内容は、記事更新日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。

事業再構築補助金は、新分野展開や業種転換など、思い切った事業再構築を行う中小企業等を支援する補助事業です。

 

令和6年4月23日から第12回公募が開始されましたが、昨年11月の行政事業レビューにおける有識者からの指摘を踏まえて抜本的な見直しを行った上での実施となりました。

 

そこでこの記事では、今回公募の概要と主な変更点などについて詳しく解説します。

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事業再構築補助金

事業再構築補助金について

事業再構築補助金は、新市場進出、事業・業種転換、事業再編、国内回帰、地域サプライチェーン維持・強靱化又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する、中小企業等の挑戦を支援するものです。

第12回公募はこれまでの内容を見直したうえで実施されることとなりましたが、公募要領には、今なおコロナの影響を受ける事業者への支援及びポストコロナに対応した事業再構築をこれから行う事業者への支援に重点化を行う旨が明記されています。

事業再構築補助金 第12回以降の変更点 

今なおコロナの影響を受ける事業者への支援及びポストコロナに対応した事業再構築をこれから行う事業者への支援を重点化する方針を受けて、前回公募から複数の変更点があります。

主な変更点は、次のとおりです。

申請枠の見直し

出典:経済産業省 事業再構築補助金 第12回公募の概要

掲載ページ:事業再構築補助金 公式HP 事業再構築補助金とは?

 

第11回公募まで6枠あった申請枠を見直し、第12回公募からは3枠での実施となります。

これまでの申請枠が複雑との指摘を受けて、簡素な形に整理したものです。

 

またあわせて、中小企業等から中堅企業等に成長する事業者に対する上乗せ支援を行う「卒業促進上乗せ措置」、大規模な賃上げに取り組む事業者に対する上乗せ支援を行う「中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置」を設けています。

事前着手制度の原則撤廃

出典:経済産業省 事業再構築補助金 第12回公募の概要

掲載ページ:事業再構築補助金 公式HP 事業再構築補助金とは?

 

第11回公募まで実施していた事前着手制度は、第12回公募から原則廃止となります。交付決定前に補助事業を開始された場合は、原則として補助金の交付対象とはなりません。

 

「原則」としているのは、経過措置として、以下の場合に限り、補助金の交付決定前であっても事務局から事前着手届出が受理された場合は、令和4年12月2日以降に購入契約(発注)等を行った事業に要する経費も補助対象経費とすることができるためです。


①第10回、第11回公募において、物価高騰対策・回復再生応援枠又は最低賃金枠の補助金交付候補者として不採択となった事業者が、第12回公募において、コロナ回復加速化枠(通常類型)又はコロナ回復加速化枠(最低賃金類型)に申請する場合


②第10回公募において、サプライチェーン強靱化枠の補助金交付候補者として不採択となった事業者が、第12回公募において、サプライチェーン強靱化枠に申請する場合

売上高等減少要件の廃止

第11回公募まで定められていた「売上高等減少要件」は、第12回公募から廃止となりました。

コロナ債務を抱える事業者への加点措置

すべての申請枠において、「コロナ借換加点」としてコロナで抱えた債務の借り換えを行っている事業者に対する加点措置を講じ、支援を重点化します。

本加点項目は、一部の申請枠において必須要件化しています。またこのほか、特定の事業類型における加点項目が別途加わっていますので、申請の際は公募要領にてご確認ください。

事務局審査の改善・体制強化による厳格化

採択審査において、AIでの重複率確認による類似案件排除を強化します。これは、閾値の見直しや範囲の拡大により、同じ計画書の使いまわしを防止する目的で実施するものです。

一定期間に特定トピックの申請が集中した場合、一時的流行による過剰投資誘発の恐れがあることから、システム上でAIが検知し、審査を厳格化します。

 

また、新分野進出は事業の新規性を公募毎に再検証します。さらに採択後の交付審査・実績審査用のシステムを刷新し、AIを導入するなどして審査を標準化・高度化し、審査を厳格化します。

EBPM強化

EBPM強化の施策として、以下を行います。

・短期アウトカムとしている事業化段階の報告を四半期毎に行うよう義務化

・他の補助金の申請データを効果検証に活用

 例:不採択者のその後の売上・営業利益等のデータを他の補助金データから連携し、比較等に活用

・補助事業者毎に独自様式で提出されていた情報を共通のデジタルデータで取得することで分析しやすくする

 例:賃借対照表の一部や補助事業を含めた企業全体の損益計算書等

・補助事業の効果分析・検証を実施し、結果を公表

 

参照:中小企業庁 中小企業等事業再構築促進基金及び事業再構築補助金の抜本的見直しを行った上で本日から第12回公募を実施します

事業再構築補助金 第12回 概要

補助金額 補助率
1. 成長分野進出枠(通常類型) 中小企業者等、中堅企業等ともに
【従業員数20人以下】100万円~1,500万円(2,000万円)
【従業員数21~50人】100万円~3,000万円(4,000万円)
【従業員数51~100人】100万円~4,000万円(5,000万円)
【従業員数101人以上】100万円~6,000万円(7,000万円)
※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合
中小企業者等 1/2(2/3)
中堅企業等 1/3(1/2)
※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合
2. 成長分野進出枠(GX進出類型) 中小企業者等【従業員数20人以下】100万円~3,000万円(4,000万円)
【従業員数21~50人】100万円~5,000万円(6,000万円)
【従業員数51~100人】100万円~7,000万円(8,000万円)
【従業員数101人以上】100万円~8,000万円(1億円)
中堅企業等 100万円~1億円(1.5億円)
※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合
中小企業者等 1/2(2/3)
中堅企業等 1/3(1/2)
※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合
3. コロナ回復加速化枠(通常類型) 中小企業者等、中堅企業等ともに
【従業員5人以下】100万円~1,000万円
【従業員6~20人】100万円~1,500万円
【従業員21~50人】100万円~2,000万円
【従業員 51 人以上】100 万円~3,000 万円
中小企業者等 2/3
(従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場
合は800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは3/4)
中堅企業等 1/2
(従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場
合は800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは2/3)
4. コロナ回復加速化枠(最低賃金類型) 中小企業者等、中堅企業等ともに
【従業員数5人以下】100万円~500万円
【従業員数6~20人】100万円~1,000万円
【従業員数21人以上】100万円~1,500万円
中小企業者等 3/4(2/3)
中堅企業等 2/3(1/2)
※()内はコロナで抱えた債務の借り換えを行っていない者の場合
5. 卒業促進上乗せ措置 各事業類型の補助金額上限に準じる 中小企業者等 1/2
中堅企業等 1/3
6. 中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置 100万円~3,000万円 中小企業者等 1/2
中堅企業等 1/3
7. サプライチェーン強靱化枠 中小企業者等、中堅企業等ともに 1,000万円~5億円 中小企業者等 1/2
中堅企業等 1/3

出典:事業再構築補助金 公募要領(第12回)

第12回公募の全体像・補助上限額・補助率は上図のとおりです。また、全申請類型の概要は次のとおりです。

 

1. 成長分野進出枠(通常類型)
ポストコロナに対応した、成長分野への大胆な事業再構築にこれから取り組む事業者や、国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の事業者が取り組む事業再構築を支援

 

2. 成長分野進出枠(GX進出類型)
ポストコロナに対応した、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組をこれから行う事業者の事業再構築を支援。

 

3. コロナ回復加速化枠(通常類型)
今なおコロナの影響を受け、コロナで抱えた債務の借り換えを行っている事業者や、事業再生に取り組む事業者の事業再構築を支援。

 

4. コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)
コロナ禍が終息した今、最低賃金引上げの影響を大きく受ける事業者の事業再構築を支援。

 

5. 卒業促進上乗せ措置

各事業類型の補助事業を通して、中小企業等から中堅企業等に成長する事業者に対する上乗せ支援。

 

6. 中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置

各事業類型の補助事業を通して、大規模な賃上げに取り組む事業者に対する上乗せ支援

 

7. サプライチェーン強靱化枠
ポストコロナの経済社会において、海外で製造等する製品の国内回帰や地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠な製品の生産により、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組を行う中小企業等に対する支援

 

申請要件

本補助金では、事業類型ごとの補助対象要件に加えて、以下の共通要件を設けています。

【補助対象要件】
下記①、②、③をいずれも満たすこと。
① 事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること。
② 事業計画書を金融機関等(銀行、信金、ファンド等)や認定経営革新等支援機関と策定し、確認を受けていること。
③ 補助事業終了後3~5年で付加価値額を年平均成長率3.0%~5.0%(事業類型により異な
る)以上増加させること。又は従業員一人当たり付加価値額を年平均成長率3.0%~5.0%
(事業類型により異なる)以上増加させること。

事業再構築補助金 第12回 公募スケジュール

公募開始:令和6年4月23日(火)
申請受付:調整中
応募締切:令和6年7月26日(金)18:00
補助金交付候補者の採択発表:令和6年10月下旬~11月上旬頃(予定)
※採択発表後に補助事業開始となります。

申請は、電子申請システムでのみ受け付けます。入力については、電子申請システム操作マ
ニュアルに従って作業してください。

 

なお、審査は書面審査・口頭審査となります。

 

口頭審査はZoom等を使ったオンラインでの実施で、1事業者15分程度の予定です。会議用 URL は事務局にて発行します。

 

審査中の音声は録音されますのでご留意ください。

事業再構築補助金 第11回 採択状況

公開されている採択結果のうち、直近の第11回公募結果は、次のとおりです。ただし、現在行っている第12回公募とは事業類型や公募内容が異なりますので、あくまで参考としてください。

・公募期間:~令和5年10月6日
・申請数 9,207者 採択数 2,437者 採択率 約26.5%

事業再構築補助金 第11回 採択事例

出典:事業再構築補助金 第11回公募の結果について
掲載ページ:事業再構築補助金 第11回公募 補助金交付候補者の採択結果

 

第11回公募への応募割合・採択割合を見ると、製造業、卸売・小売業、 建設業、宿泊業・飲食サービス業が多くなっています。

 

第10回の各割合と比較すると、前回20.3%を占めていた製造業の応募割合が、19.7%に下がりました。同様に、宿泊業・飲食サービス業の応募割合が12.5%から11.5%に下がりました。

 

代わりとして割合が著しく上がった業種はなく、上記2業種を除いては微増・微減となっています。

 

採択割合については前回24.6%だった製造業が30.9%を占める結果となりました。一方、宿泊業・飲食サービス業の割合が下がり、11.0%から8.4%に落ち込みました。

 

本記事では、採択割合の高い業種のうち、製造業、卸売・小売業、 建設業から、主な採択事例を厳選して紹介します。

製造業

所在地 大阪府東大阪市
従業員数 5人未満
事業計画名 ファイバーレーザー溶接機を使用したピラティスマシンの製造・販売に進出
事業計画の概要 当社は産業用機械部品の製造を主軸としているが、物価・原油価格の高騰の影響を受け売り上げが不安定になっている。そこで、既存顧客からの引き合いがあるピラティス機械の製造・販売に対応することで、業績の安定化を図る。

卸売・小売業

所在地 東京都品川区
従業員数 5人未満
事業計画名 飲食店居抜きマッチングサイトシステム導入による高付加価値の出店退店開業コンサルティング業へ転換
事業計画の概要 飲食店を主とした販促物の制作での集客サポートから退店、出店希望者をつなげるマッチングサイトを運営するシステムを導入し川上から店舗出店にかかわる必要な業務のサポートとアドバイスをトータルで行う業態への変換

建設業

所在地 富山県富山市
従業員数 10名
事業計画名 古民家廃材(古材)を生かした趣のある家具・建具で伝統を守りSDGsに貢献
事業計画の概要 個性的な風合いを特徴とする古民家廃材を活用した高付加価値な建具・家具の製造販売事業を立ち上げる。伝統・技術を次代に継承しながら、日本の良さを広くアピールし、脱炭素・SDGs、地域経済活性化に貢献。

※記載の従業員数は、公表されている情報をもとに記載しています。
出典:事業再構築補助金 第11回公募 補助金交付候補者の採択結果

全国:事業再構築補助金
2024/04/23追記:第12回公募が開始されました。 ----- 2024/02/13追記:第11回公募の採択結果が公表されました。 ----- 2023/08/10追記:第11回公募が開始されました。 ----- 2023...

まとめ

事業再構築補助金における第12回公募以降の変更点を解説しました。

これまでの公募とは申請類型も内容も異なりますので、申請検討の際は公募要領をしっかりとご確認のうえ、ご検討ください。

監修佐藤淳 / 公認会計士
中小企業庁認定 経営革新等支援機関 有限責任監査法人トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu)の東京オフィスに6年間、シアトルオフィスに2年間勤務。 2015年よりアジア最大級の独立系コンサルティングファームの日本オフィスにて事業戦略の構築支援、M&Aアドバイザリー、自己勘定投資の業務に従事。 2017年 自身で旅行スタートアップ(Stayway)を立ち上げ資金調達をした経験を生かしながら、補助金・ファイナンス・M&Aのサポートを実施

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