2021年度の目玉補助金とも言える事業再構築補助金。
しかし、この補助金は不動産の取得が補助対象外となっていることから、申請を諦めている不動産業の人も多いのではないでしょうか?
しかし不動産業でも事業再構築補助金を受給できる可能性があります。
不動産業で受給ができないケースとできるケースを実際に採択された事例をもとに詳しく解説していきます。
事業再構築補助金の概要
事業再構築補助金は結論的に言えば不動産業でも支給の対象になります。
事業再構築補助金の対象事業者は資本金3億円、従業員数300人以下であれば不動産業であっても申請をすることができます。
条件を満たしていれば法人でも個人事業主でも申請することは可能です。
売上や事業計画の策定の面で、次の3つの条件を満たしている必要があります。
- 売上高減少要件
- 認定支援機関要件
- 付加価値額要件
事業再構築補助金を申請するための3つの条件について詳しく解説していきます。
・売上高減少要件
事業再構築補助金の対象になるためには売上の減少要件を満たしている必要があります。
『2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高 が、コロナ以前(2019年又は2020年1月~3月)の同3か月の合計売上 高と比較して 10%以上(または15%以上)減少していること』(2次公募時の要件)
例えば、2020年10月〜2020年12月までの3ヶ月間の売上高が、2019年10月〜2019年12月までの3ヶ月間の合計売上高よりも10%以上減少している必要があります。
・認定支援機関要件
事業再構築補助金の申請は認定支援機関という経済産業省が認可した機関を通す必要があります。
認定支援機関は税理士・会計士・金融機関などが一般的ですが、全国に33,000機関以上あります。
お近くの認定支援機関を探したい場合には中小企業庁の認定支援機関一覧を参照してください。
・付加価値額要件
事業再構築補助金の申請をする際に作成する事業計画において補助事業終了後の付加価値額が年率平均3%アップするというものでなければなりません。
付加価値額とは営業利益+人件費+減価償却費の合計のことです。
補助金によって営業利益が上がり、雇用が増えて人件費も上がり、設備も増えたことによって減価償却費も上がるということを経済産業省は求めています。
付加価値額が年率平均3%上昇するという計画を立てましょう。
補助金額
一般の事業が受けることができる通常枠の補助金額と補助率は次の通りです。
補助金額 | 補助率 | |
中小事業者等 | 100万円〜6,000万円 | 2/3 |
中堅企業等 | 100万円〜8,000万円 | 1/2 (4,000 万円超は 1/3) |
補助対象経費
補助の対象になる「補助対象経費」は次の通りです。
- 建物費
- 機械装置・システム構築費
- 技術導入費
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 外注費
- 知的財産権等関連経費
- 広告宣伝・販売促進費
- 研修費
- 海外旅費
上記に該当しない経費は補助の対象にはならないので注意しましょう。
事業再構築補助金は不動産業も対象
事業再構築補助金の条件を満たしていれば中小の不動産業者でも事業再構築補助金を申請することは可能です。
しかし、事業再構築補助金で不動産を購入することはできませんし、不動産賃貸業をすることもできません。
不動産業では注意すべき、お金の使い道が対象外になるケースを見ていきましょう。
不動産と土地の購入は補助対象外
事業再構築補助金の公募要領には、不動産の購入は補助対象経費の対象外とされています。
そのため、不動産会社が不動産購入のために事業再構築補助金を使用することはできません。
不動産賃貸業やアパート経営も補助対象外
また、事業再構築補助金では、不動産を長期間貸し付けるだけの不動産賃貸も採択されません。
公募要領の不採択または交付取消になる事例として次のように記載されています。
『建築又は購入した施設・設備を自ら占有し、事業の用に供することなく、特定の第三者に長期間賃貸させるような事業』
施設や設備を事業用に使うのではなく、第三者に貸し付ける不動産賃貸業は事業再構築補助金の対象にはなりません。
不動産業が事業再構築補助金の採択を受けるには
不動産業でも不動産の購入や、設備を賃貸に回すようなことをしなければ事業再構築補助金の対象になります。
しかし、対象になるためには採択されるための5つのパターンに該当しなければなりません。
実際の採択事例とともに具体的に解説していきます。
採択される5つのパターンに該当すること
不動産業でも、以下の5つのパターンに該当する事業計画であれば採択される可能性があります。
- 新分野展開:不動産賃貸業から新しい分野への展開など
- 事業転換:不動産業から別の他の事業へ転換を図ることなど
- 業種転換:不動産業から飲食業などの別の業種へ転換すること
- 業態転換:不動産業が賃貸からレンタルオフィス経営など別のジャンルへ転換すること
- 事業再編:「合併」「会社分割」「株式交換」「株式移転」「事業譲渡」などによって採算化を行うこと
不動産業であれば新分野展開によって新規事業を始めることで補助対象になるのが最も現実的だと言えるかもしれません。
不動産領域での活用事例
実際に不動産業の中で事業再構築補助金が活用されている事例をご紹介していきます。
事例1:老舗旅館による販路拡大のためのグランピング新規事業
密回避状況下における販売客室数の確保および販路拡大を目的に、老舗旅館によるグランピング事業を開始。
選べる食事サービス(バーベキュー、会席料理)と渓谷美、温泉をウリにして新規若年層を集客します。
既存旅館宿泊との相乗効果を狙い、旅館とは異なる層の売上拡大を狙うことを目的としています。
事例2:霧ヶ峰車山の大自然を活用した非日常体験を提供するアウトドア事業
別荘・ペンション開発地をアウトドア施設へ改装する事業。
開発地は見晴らしの良い場所に用意されているため、遊休地を活用してキャンプ場・グランピング場など4か所を設置・運営します。
各キャンプ場は見晴らしがよく車山山頂と同様な絶景を楽しめ、近隣キャンプ場との差別化を図ることができます。
また、グランピングについては金利に競合がないので独占的に新規客を狙うことが可能です。
事例3:トレーラーハウスを活用したグランピング施設開業
旅館業。
新型コロナウイルス感染症の発生により宿泊客が大幅に減少し業績が著しく悪化している。
状況打破のためファミリー層をターゲットとした和風グランピング事業を新分野展開として開始することにより事業再構築に取り組む事業です。
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