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令和8年度に新設された「経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業(賃上げ重点コース)」は、既存事業の深化・発展に取り組みながら賃金引上げ計画を策定することで、助成率が最大5分の4まで引き上げられる制度です。
本記事では、賃上げ重点コースについて申請要件や助成対象経費、申請スケジュールなどを解説します。
賃金引上げ計画の策定が不要な「業務改善コース」との違いについても触れていますので、コース選びで迷っている方もぜひ参考にしてください。
経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業(賃上げ重点コース)とは
本事業は、中小企業が創意工夫によって既存事業を発展・強化する取り組みを支援し、賃上げの実現と経営基盤の強化を後押しすることを目的とした制度です。
中でも賃上げ重点コースは、業務改善コースの基本要件(既存事業の深化・発展)に加えて、賃金引上げ計画の策定・実行をセットにすることで、より高い助成率が適用されるコースです。
通常の業務改善コースが助成率3分の2以内であるのに対し、賃上げ重点コースは最大3/4以内(小規模事業者は最大4/5以内)まで引き上げられます。
業務改善コース・新市場進出コースとの違い
3つのコースの対象となる取組内容や助成率などを、以下の表で比較しました。
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コース |
対象となる取組 |
助成率 |
助成限度額 |
|
業務改善コース |
既存事業の深化・発展 |
2/3以内 |
600万円 |
|
賃上げ重点コース |
既存事業の深化・発展+賃金引上げ計画の策定 |
3/4以内(小規模事業者は4/5以内) |
600万円 |
|
新市場・新分野進出コース |
新市場・新分野への進出 |
2/3以内(賃上げ計画策定の場合は3/4・4/5以内) |
1,000万円 |
賃上げ重点コースは、業務改善コースより高い助成率が適用されるのが特徴です。
設備投資などの事業発展とあわせて従業員の賃上げを検討している事業者にとって、メリットの大きいコースとなっています。
対象となる取組・対象外の取組
本事業が対象になるのは、既存の事業を「深化」または「発展」させる取組です。
取組内容が「既存事業の深化・発展」に該当するかどうかは審査で判断されるため、自社の事業との関連性を明確に説明できることが採択されるポイントの一つになります。
対象取組例
対象となる取組は「深化」と「発展」の2種類です。ここでは、それぞれの具体的な例を紹介します。
「深化」の取組例
「深化」とは、既に営んでいる事業自体の質を高めるための取組を指します。具体的には以下のとおりです。
・高性能な機器・設備の導入による競争力強化
・既存の商品・サービスの品質向上
・高効率機器・省エネ機器の導入による生産性の向上など
「発展」の取組例
「発展」は、既存事業をもとに新たな事業展開を図る取組です。具体的な例としては以下の取組が該当します。
・新たな商品・サービスの開発
・商品・サービスの新たな提供方法の導入(例:店舗販売からECへの展開など)
・既存事業で得た知見に基づく新たな取組
対象外の取組
一方で、以下のような競争力や生産性の向上に直接寄与しない取組、または事業の趣旨に合わない取組は助成対象外となります。
・申請者がこれまで営んできた事業内容との関連性が薄い、または全く無い取組
※まったく新しい分野への進出は「新市場・新分野進出コース」の対象
・法令改正やJIS規格等の対応など、対応せざるを得ない義務的な取組
・単なる老朽設備の維持更新など(性能が変わらない既存設備の単純な買い替え)
申請要件
申請に必要な要件は(1)~(10)まであり、基本的に助成対象期間が終了するまで満たし続ける必要があります。
ここでは、申請要件を内容別に解説します。
企業規模・所在地の要件(要件①②)
都内の中小企業者で、大企業が経営に参画していないことが要件の一つです。なお、中小企業者には個人事業主も含まれます。
業種別での中小企業の定義は以下のとおりです。
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業種 |
資本金または従業員数 |
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製造業・情報通信業・建設業・運輸業・その他 |
3億円以下または300人以下 |
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卸売業 |
1億円以下または100人以下 |
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サービス業 |
5,000万円以下または100人以下 |
|
小売業・飲食業 |
5,000万円以下または50人以下 |
また、小規模事業者の定義については以下のようになります。
|
業種 |
常時使用する従業員数 |
|
製造業・その他 |
20人以下 |
|
商業(※)・サービス業 |
5人以下 |
※卸売業・小売業
加えて、法人は本店(事業の実施場所が都内なら支店でも可)の登記が都内にあること、個人事業者は納税地が都内にあることが求められます。
財務要件|営業利益の減少または損失の計上(要件③)
財務に関しては、以下のいずれか1つを満たしていることが要件です。
・直近決算期の営業利益が前期決算期と比較して減少していること
・直近決算期において損失を計上していること
成長局面にある企業や黒字が続いている企業は、この要件を満たせないケースがあるため注意が必要です。
【固有要件】賃金引き上げ計画の策定(要件④)
賃金引上げ計画の策定は、賃上げ重点コース固有の最重要要件です。
助成事業完了日の属する月の翌月からの最大12ヶ月間(計画期間)の間に、申請時に提出した賃金引上げ計画を実際に達成・維持する必要があります。
策定した計画を達成できなかった場合、助成率は2/3以内となります。
ただ計画を立てるだけでなく、計画期間中に実際に達成することが助成率アップの条件であり、常時使用する従業員が1名以上いることも必要です。
重複申請・併用不可の要件(要件⑤⑥)
他コースと重複して申請した場合は受け付けられません。また、令和8年度中小企業収益力強化サポート事業のハンズオン支援の決定通知を受けた事業者は申請を受け付けられません。
その他の要件(要件⑦〜⑩)
実施場所は、申請者が所有または賃借する本社・事業所・工場等です。
東京都内のほか、神奈川・埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬・山梨の1都7県に所在する自社事業所も対象となります(ただし本社は東京で登記されている必要がある)。
さらにその他の要件として、以下の内容が定められています。
・申請に必要な書類を提出できること
・反社会的勢力・不適切業種に該当しないこと
・東京都および公社に対して税金・賦課金の滞納がないこと など
助成対象経費
助成対象経費は以下の11種類です。
|
経費の種類 |
内容・注意点 |
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原材料・副資材費 |
取組に直接必要な原材料・副資材の購入費 |
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機械装置・工具器具費 |
取組に必要な機械・設備・工具・器具の購入費 |
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委託・外注費 |
取組の一部を外部に委託・外注する費用 |
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産業財産権出願・導入費 |
特許・実用新案・意匠・商標の出願・取得費用 |
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規格等認証・登録費 |
ISO認証取得など規格・認証・登録にかかる費用 |
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設備等導入費 |
リース・レンタルによる設備導入費 |
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システム等導入費 |
業務に必要なシステム・ソフトウェアの導入費 |
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専門家指導費 |
外部専門家への指導・コンサルティング費用 |
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不動産賃借料 |
取組に必要な施設・スペースの賃借料 |
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販売促進費 |
新商品・新サービスの販促にかかる費用(上限150万円) |
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その他経費 |
上記に該当しない合理的な経費(上限100万円) |
助成対象外・申請上の注意点
「委託・外注費」のうち市場調査費、専門家指導費、販売促進費、その他経費の単独での申請はできません。
また、販売促進費は既存事業に係る販売促進については対象外で、発展による新たな商品・サービスのみが対象となります。
賃金引上げ計画の仕組みと注意点
賃金引上げ計画は、助成事業が完了した日の属する月の翌月から起算して実施する計画です。計画期間は最大12か月になります。
計画の達成には、以下の2つの条件を同時に満たす必要があります。
1.給与等総額を基準期間より2.0%以上増加させること
2.事業実施場所の最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にすること
なお、計画実施期間であっても、賃上げを達成した時点で実績報告書の提出は可能です。
計画を達成できなかった場合はどうなる?助成金交付の注意点
賃金引上げ計画を達成できなかった場合、助成率は2/3以内となります。
助成金の支払いフローとしては、まず2/3の額が支払われ、賃金引上げ計画の達成確認後に差額分(3/4または4/5との差)が精算されます。
また、3年間は実績報告を行う必要があります。計画期間中に賃上げを達成しても、最終的に特例分の返還が求められるリスクもある点を念頭に置いておきましょう。
令和8年度の申請スケジュールと申請方法
令和8年度の募集スケジュールは以下のようになっています。
|
募集回 |
申請受付期間 |
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第1回 |
令和8年6月1日(月)〜6月12日(金)16時まで |
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第2回 |
令和8年9月1日(火)〜9月14日(月)16時まで |
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第3回 |
令和8年12月1日(火)〜12月14日(月)16時まで |
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第4回 |
令和9年3月1日(月)〜3月12日(金)16時まで |
審査は先着順で締め切られることはなく、期間内に申請した全件が対象になります。
申請はJグランツ(国のオンライン補助金申請システム)を通じた電子申請のみです。Jグランツを利用するには「GビズID」でアカウントを取得する必要があります。
取得には書類審査等により通常1〜3週間程度かかるため、申請受付期間が始まってから取得しようとすると間に合わない恐れがあります。
申請を検討している場合は、すぐにアカウントの取得手続きを開始することをおすすめします。

審査の視点・採択を勝ち取るための5つのポイント
書類審査では「発展性」「市場性」「実現性」「優秀性」「自己分析力」がチェックされます。
1.発展性(既存事業の深化・発展に資する取組か)
単なる現状維持ではなく、その取り組みによって「既存事業がどう進化するか」が問われます。
具体例: 導入する設備によってサービスの質がどう向上し、既存事業の競争力がどう強化されるのか、その具体的なストーリーを示す必要があります。
2.市場性(事業環境の変化前後の市場分析は十分か)
物価高騰や社会情勢の変化といった「外部環境の変化」をどう捉え、客観的に分析しているかが評価されます。
具体例: ターゲットとする市場の現状や競合他社の動向、環境変化による顧客ニーズの変化などを、データや具体的な根拠を挙げて説明できているかがポイントです。
3.実現性(取り組むための体制は整っているか)
計画を実行するための具体的な社内体制やスケジュールが現実的であるかがチェックされます。
具体例: 誰が担当し、いつまでに何を完了させるのかという計画の具体性と、それを実行するための資金繰り(助成金は後払いであるため)の準備状況などが含まれます。
4.優秀性(事業者としての創意工夫、今後の展望はあるか)
この助成金の名称にもある通り、事業者独自の「創意工夫」が重要です。
具体例: 他社にはない独自のノウハウをどう活かすのか、その取組が将来的に自社の経営基盤をどう強固にするのかという「将来のビジョン(展望)」を熱意を持って伝える必要があります。
5.自己分析力(自社の状況を適切に理解しているか)
自社の強みや弱み、現在の経営課題を客観的に把握できているかが評価されます。
具体例: なぜ今、この取り組みが必要なのかを、自社の財務状況(営業利益の減少など)や現状の課題と結びつけて論理的に説明できる能力が求められます。
採択後および賃金引上げ計画の流れ
採択から助成金受取までの主な流れは以下のとおりです。
出典:東京都中小企業振興公社 経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業(賃上げ重点コース) 募集要項
助成金の交付額は実績に基づく「精算払い(後払い)」です。助成事業の実施の段階では、事業者自身で資金を用意する必要があります。
設備投資等の先行支出に備え、融資や自己資金の確保を検討しておく必要がある点にも留意してください。
まとめ
経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業(賃上げ重点コース)は、設備投資と従業員への賃金引上げを同時に進めたいと考えている都内中小企業・小規模事業者にとって活用しやすい制度です。
ただし、賃上げ計画が達成できなければ、助成金の一部の返還を求められるリスクもあります。賃上げが難しい場合は、他のコースへの申請も検討してださい。
賃金引上げ計画が不要な「業務改善コース」について詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
」を徹底解説!申請要件・対象経費・審査のポイント-160x90.jpg)
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