※記事内容は、記事更新日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。
財務省は令和6年7月前半をめどに、新しい日本銀行券つまり1,000円・5,000円・10,000円札の発行を開始することを発表しています。
全国の小売店や飲食店等では新札に対応するレジシステム・券売機等への入れ替えが必要となりますが、レジシステム・券売機等の導入には費用がかかり小売店や飲食店にとって大きな費用負担となります。
そこでこの記事では、新札に対応したレジシステム・券売機等の導入につかえる補助金を紹介します。
新札発行について
新しい日本銀行券の発行については、平成31年4月9日、偽造抵抗力強化等の観点から様式を新たに発行することを財務省が公表しました。発行開始時期は令和6年7月前半とされていますが、所要の準備が整った段階で公示されます。
これまでに発行された日本銀行券、現在流通している日本銀行券は、新日本銀行券が発行された後も使用可能です。
ただし、上記のとおり、新日本銀行券はこれまでと様式が異なります。このため、小売店や飲食店など金銭を扱う業種では新日本銀行券に対応するレジや券売機への入れ替えが必要となります。
【新札対応】レジシステム導入につかえる補助金(国による支援)
国が主管している補助金のうち、新札対応のレジシステム導入に活用できる補助金を紹介します。
※令和5年11月現在公表されている補助金・助成金で“新札対応に特化した事業”はなく、すべて各補助事業の意図に沿う取り組み実施が前提となり、そのうえで新札対応のレジシステムが欠かせない場合のみ補助対象となります。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編という思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する補助事業です。
このため、新分野展開や事業転換を前提としたレジシステム等の導入が対象経費となり、単にレジシステム等を導入するだけでは補助対象となりません。
対象経費
事業再構築補助金では、「機械装置・システム構築費」が対象経費に挙げられています。
事業再構築に伴い、新しく券売機等を購入する場合は「①専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、製作、借用に要する経費」として、レジシステムを導入する場合は「②専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入・構築、借用に要する経費」として対象経費となる可能性があります。
※令和5年度補正予算において、事業再構築補助金の制度見直しが行われているため、今後の実施内容が変更される可能性があります。また、実施予定についても令和5年11月17日時点では未公表です。
ものづくり補助金
出典:ものづくり補助金公式HP 公募要領(16次締切分) 概要版
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するものです。
このため、単にレジシステムや券売機等を導入するだけでは対象経費として認められず、革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善が伴うことが前提となります。
対象経費
事業再構築補助金と同様に「機械装置・システム構築費」として対象経費となる可能性があります。
ただし、先述のとおり、補助対象となる事業が生産性を向上させるための取り組みであるなど、「ものづくり補助金」の趣旨に沿っていることが前提であり、その事業再構築補助金の実施に要する機械装置・システムであることが要件です。
小規模事業者持続化補助金
出典:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金 公式HP ガイドブック
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者自らが作成した持続的な経営に向けた経営計画に基づく、地道な販路開拓等の取組や、地道な販路開拓等と併せて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援するため、それに要する経費の一部を補助する補助事業です。
販路開拓・業務効率化及び生産性向上の取組の例として、以下が挙げられています。
・新たな市場への参入に向けた売り方の工夫
・新たな顧客層の獲得に向けた商品の改良・開発等
対象経費
新札に対応するレジシステム・券売機等の購入は小規模事業者持続化補助金の対象経費のうち、「①機械装置等費」として補助対象となる可能性があります。
ただし、事業再構築補助金やものづくり補助金と同様に単なるシステム入れ替え・装置購入では補助対象となりません。必ず販路開拓・生産性向上等を伴う事業である必要があります。
また、POSソフトは公募要領内「3.業務効率化(生産性向上)」の取組内容に記載されている場合に限定されます。
参照:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金 公式HP 公募要領
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けた ITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する補助金です。
対象経費
通常枠・デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)において、補助対象となる可能性があります。ただしIT導入補助金の対象経費は、IT事業者・ITツールが事前に登録されたものであることが前提となります。
通常枠の場合は顧客対応・販売支援や決済・債権債務・資金回収管理などの業務プロセスを保有するソフトウェアを申請することが必須要件です。
通常枠ではハードウェア(機械・装置)の購入費は対象とならず、ソフトウェア購入費、クラウド利用料等のみが対象となります。
一方、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)は要件を満たす場合のみハードウェアも補助対象となり得ます。
会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの導入費用に加え、それらを機能させるハードウェアの導入費用として、レジ・券売機の場合は20万円まで補助されます。
【新札対応】レジシステム導入につかえる補助金(自治体による支援)
続いて、自治体が主管している補助事業のうち、新札対応につかえる補助金を解説します。
※一部は“新札対応に特化した事業”ではなく、各補助事業の意図に沿う取り組み実施が前提となり、そのうえで新札対応のレジシステムが欠かせない場合のみ補助対象となります。
高知県:インボイス対応IT導入補助金(令和4年度12月補正予算)
この補助金は、長引く新型コロナウイルス感染症の影響に加え、エネルギー価格や物価の高騰など厳しい経営環境の中、IT導入による業務効率化に取り組む中小企業者の経営基盤の強化を図るとともに、インボイス制度への対応を加速させることを目的としています。
要件
以下の全ての要件を満たしている必要があります。
・令和4年11月30日以降に申請の締切を迎える、国のIT導入補助金デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)を活用していること
・令和4年11月30日以降に適格請求書(インボイス)発行事業者の登録申請を行い、県補助金の実績報告までに適格請求書発行事業者登録が完了していること
国のIT導入補助金の採択が前提であるとともに、インボイス対応が必須となります。つまり、インボイスに対応したうえで導入するレジや券売機が補助対象として認められます。
補助対象経費
・ソフトウェア購入費、クラウド利用費、導入関連費
・ハードウェア購入費(パソコン、タブレット、レジ、券売機、等)
補助率・補助上限額
補助率:国補助金の自己負担相当分の2/3以内
補助上限額:1事業者あたり25万円
参照:高知県 インボイス対応IT導入補助金(令和4年度12月補正予算)
愛知県丹羽郡大口町:中小企業支援事業補助金<新紙幣対応支援事業>
令和6年7月頃に発行が予定されている新紙幣に対応するため、現在、事業に使用している無人で金銭を収受する機器(自動券売機等)を改修又は更新を行う町内事業者に補助金を交付するものです。
補助対象経費
現に町内に設置し、事業の用に供する自動券売機、現金収受機、つり銭機などの無人で金銭を収受する機器を、新紙幣(令和6年度に一新する予定の紙幣)の発行に伴い、金種識別や真贋判定(※)に対応するために紙幣識別機ユニットの交換等、必要な機器の改修又は更新に要する経費
ただし、令和5年4月から令和7年3月末までの間に実施された事業に限る。
※真贋判定:本物と偽物を判定すること
補助率・補助上限額
補助率:補助対象経費合計額の1/2以内
補助上限額:50万円
参照:愛知県丹羽郡大口町 大口町中小企業支援事業補助金<新紙幣対応支援事業>
大阪府豊中市:令和5年度 IT化促進補助金
この補助金は、IT化に関する課題を抱える市内中小企業者が課題解決に資するソフトウェア・クラウドシステムの導入やIT機器の購入、ホームページの高機能化などを実施する場合、市から補助金を交付することにより、中小企業者のIT化の促進や業務の効率化・生産性の向上、販路拡大につなげることを目的とするものです。
豊中市と豊中商工会議所が連携して行っている「ITコンシェルジュ派遣事業」を通して、ITコンシェルジュからIT化の推進による業務効率化、販路拡大等を提案された中小企業者を対象に、IT化に必要な費用等を一部補助します。
対象経費の例としてPOSシステム、クラウドやソフトウェアを使用するために必要な情報機器(PC、複合機、スマートフォンは除く)などが挙げられているため、業務効率化・生産性向上等を目的とした導入であれば新札対応のレジシステムや券売機等の導入も補助対象となる可能性があります。
補助率・補助上限額
補助率:
・IT機器、システム導入の場合:対象経費の1/2
・ホームページの制作・改修の場合:対象経費の1/3
補助上限額:10万円
福岡県久留米市:中小企業DX促進補助金
久留米市中小企業DX促進診断事業で、専門家よりITツール導入・利活用の提案を受けた取組の実施により、業務効率化や経営課題の解決に取り組む事業者を支援します。
このため、業務効率化や経営課題の解決に取り組むうえで必要なパソコンやタブレット、レジ、券売機等の機器購入費、ソフトウェア購入費等が補助対象経費となります。
ただし、国が実施する「IT導入補助金2023」の補助対象とならない事業であることが要件とされています。
※久留米市中小企業DX促進診断事業の申し込みは令和5年11月30日(木)まで
補助率・補助上限額
補助率:1/2
補助上限額:20万円(機器購入費は10万円)
参考:キャッシュレス決済の導入につかえる補助金
本記事では新札に対応するレジシステムや券売機等の導入につかえる補助金を紹介しました。
近年ではクレジットカードや電子マネーを使った決済、QR決済、バーコード決済といったキャッシュレス決済も急速に普及しています。こうした状況下、レジやレジシステムを新たに購入するよりも、キャッシュレス決済を導入した方がコストを抑えられるケースがあります。
キャッシュレス決済の導入につかえる補助金は以下の記事で紹介しています。ぜひ、あわせてご一読ください。
参照:補助金クラウド キャッシュレス決済に使える補助金・助成金5選を徹底解説!
まとめ
今回は、新札に対応したレジ・券売機等の導入につかえる補助金を紹介しました。新札の流通は令和6年7月以降の見込みですが、その際に対応できるよう、お早めに対応機器の導入をご検討ください。
また、機器導入にはコストがかかるため、自社の取り組みにマッチする補助金がある場合は補助金もあわせてご活用ください。
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