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国や自治体が設けている補助金のうち、注目度の高い補助金のひとつに「事業再構築補助金」が挙げられます。
幅広い業種が申請可能であること、補助上限額が高額であることなどから、補助金活用を検討している事業者の多くが注目しています。
この「事業再構築補助金」は、農業にも活用可能ですが、申請時に注意点があります。そこでこの記事では、事業再構築補助金への申請における注意点や採択事例などを解説します。
農業に活用可能な「事業再構築補助金」概要
出典:事業再構築補助金 公式HP 事業再構築補助金の概要(PDF)
事業再構築補助金は、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編という思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援するものです。
このため、申請する補助事業には、新分野展開や業態転換が伴うことが前提となります。
上図のとおり複数の申請類型で構成されています。ただし、第10回公募から新設された「サプリチェーン強靭化枠」については、第11回公募では実施していません。第12回公募以降での実施も未定です。
補助対象者
出典:事業再構築補助金 公式HP 事業再構築補助金の概要(PDF)
本事業の補助対象者は、主に日本国内に本社を有し、要件を満たす中小企業者等および中堅企業等とされています。
農業の場合は、「中小企業者等」に含まれる「中小企業者」以外の法人、あるいは中堅企業等として、農業協同組合法に基づいて設立された農事組合法人、労働者協同組合法に基づいて設立された労働者協同組合もしくは法人税法以外の法律により公益法人等とみなされる法人(従業員数が300人以下である者に限る。)であれば申請可能です。
また、従業員ga300人以下であれば、農業を営む個人事業主も申請できます。
ただし、小売業や製造業といった農業以外の事業者が新たに始める事業が1次産業(農業、林業、漁業)である場合は、補助対象外となるためご注意ください。
補助対象経費
出典:事業再構築補助金 公式HP 事業再構築補助金の概要(PDF)
補助対象となる経費は、事業拡大につながる事業資産(有形・無形)への相応の規模の投資を含むものであり、本事業の対象として明確に区分できるものである必要があります。
具体的には上記を満たす、建物費や機械装置・システム構築費、技術導入費等が対象となります。
原則、交付決定を受けた日付以降に契約(発注)を行い、補助事業実施期間内に支払いを完了したものが補助対象となりますが、最低賃金枠、物価高騰対策・回復再生応援枠に申請する事業者で、事務局から事前着手届出が受理された場合には、令和4年12月2日以降に発生した経費についても補助対象とすることができます。
補助率・補助上限額
・補助率:1/2 ~ 3/4
・補助上限額:1,500万円~1.5億円
補助率・補助上限額は申請類型ごとに定められています。また、中小企業であるか中堅企業であるかといった企業規模やその他要件を満たすかどうかにより異なります。
成長枠・グリーン枠は、事業実施期間中に中小企業から中堅企業へ成長する事業者等に対する上乗せ枠(卒業促進枠)または継続的な賃金引上げに取り組むとともに従業員を増加させる事業者に対する上乗せ枠(大規模賃金引上促進枠)のいずれかに同時応募可能です。
同時応募後、卒業促進枠の採択が決まった場合は上限が2倍に引上げられ、卒業促進枠の採択が決まった場合は上限3,000万円が上乗せされます。
農業で「事業再構築補助金」に申請する際の注意点
農業を営む事業者が事業再構築補助金を申請する際の、主な注意点について解説します。
事業転換や事業展開が前提
既述のとおり、申請する補助事業には、新分野展開や業態転換が伴うことが前提となります。例えば、作物を使った飲食店の開業や作物を使った商品のEC販売などを新たに始める場合が想定されます。
農業に取り組む事業者が 、同一構内の工場において専従の常用従業員を用いて農作物の加工や農作物を用いた料理の提供を行う場合など、 2次または3次産業分野に取り組む場合に必要な経費は補助対象となります。
別の作物を作るだけでは対象外
農業を行う事業者が、単にこれまでと別の作物を作る場合は、事業分野や業態が変わっていないため補助対象外です。
そこで申請の際は、事業計画書に単に作物を変更するだけではないこと、新分野展開や業種転換・業態転換などの内容などを明確に記載してください。
1次産業を始める場合も対象外
さらに、新たに始める事業が農業・林業・漁業といった「1次産業」である場合も、補助対象外となります。
申請する補助事業が1次産業に該当する場合は、補助金交付候補者として不採択または交付取消となります。また、本事業に補助金交付候補者として採択された場合であっても、交付審査において1次産業に該当すると判明した場合には、採択取消となるためご注意ください。
なお、公募要領には、以下の記載があります。
※主として自家栽培・自家取得した原材料を使用して製造、加工を行っている場合は 1 次産業に該当します。ただし、同一構内に工場、作業所とみられるものがあり、その製造活動に専従の常用従業者がいる場合に限り、2 次又は 3 次産業に該当する場合があります。
※例えば農業に取り組む事業者が、同一構内の工場において専従の常用従業員を用いて、農作物の加工や農作物を用いた料理の提供を行う場合など、2 次又は 3 次産業分野に取り組む場合に必要な経費は、補助対象となります。2 次又は 3 次産業に取り組む場合であっても、加工や料理提供の材料である農作物の生産自体に必要な経費は、補助対象外となります。
農業の「事業再構築補助金」採択事例
第10回公募のおける農業の主な採択事例を紹介します。
例1:株式会社H社
事業計画名:農業生産法人から地域商社への業種転換
事業計画概要:地域商社として業種転換を図り、新たに業務用食材製品を製造する。当該製品の量産通年販売体制を構築するために、現在当社で所有している倉庫を食材保管庫・加工工場へと改修し、設備投資を行う。
例2:NPO法人A
事業計画名:農福連携の農作物加工品事業の展開
事業計画概要:障害者雇用と農業の連携させる新しいビジネスモデルとして、本事業では新たに加工品製造業に参入する。既存事業の顧客基盤や農作物栽培、流通網を活かして事業を進めていく。
例3:株式会社K
事業計画名:多品種有機野菜によるゴーストキッチン×フードデリバリー戦略
事業計画概要:作った多品種有機野菜を原材料に、加工後の料理をゴーストキッチンとフードデリバリーにより展開。有機栽培ノウハウ等の強みやデリバリー需要増加等の機会を活用して物価高騰等の脅威や体制面の弱みを打破する大胆な高リスク事業を展開する。
農業の「事業再構築補助金」採択を有利にする「加点項目」
事業再構築補助金の審査項目には、一定の要件を満たすことで審査上の加点を得られる「加点項目」があります。
応募審査では、本補助金の趣旨に沿った事業計画を策定しているかを確認し、評価の高いものから補助金交付候補者として採択されるため、加点を得ることで採択の可能性をより高めることができます。
具体的な加点項目は、次のとおりです。
・大きく売上が減少しており業況が厳しい事業者に対する加点
・最低賃金枠申請事業者に対する加点
・経済産業省が行うEBPMの取組への協力に対する加点
・パートナーシップ構築宣言を行っている事業者に対する加点
・再生事業者に対する加点
・特定事業者であり、中小企業者でない者に対する加点
・サプライチェーン加点
・健康経営優良法人に認定された事業者に対する加点
・大幅な賃上げを実施する事業者に対する加点
・ワーク・ライフ・バランス等の取り組みに対する加点
各項目の詳細や同時に注意すべき減点項目などについては、以下の記事で解説しています。ぜひ、あわせてご参照ください。
まとめ
今回は、農業にも活用可能な事業再構築補助金を申請する際の注意点や採択事例などについて解説しました。
事業再構築補助金は過去の公募回で補助金交付候補者として不採択となった場合でも、事業計画の見直しを行った上で、一定期間後に再度申請することができます。
新たな事業を検討している農業の方々は、ぜひ、本補助金の活用もあわせてご検討ください。
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