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事業再構築補助金の加点項目とは?減点項目は要注意

公開日 2023/08/02
更新日 2023/10/30
この記事は約11分で読めます。

※記事内容は、記事更新日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。

長引く原油価格高騰やウクライナ情勢などによって、引き続き厳しい経営環境に立たされている中小企業・小規模事業者等は少なくありません。

しかしこうした状況下、中小企業・小規模事業者等を対象とした補助事業として「事業再構築補助金」があります。

この記事では、事業再構築補助金への申請を予定している事業者の皆様をサポートできるよう、採択の可能性を高める加点項目や注意すべき減点項目について解説します。

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補助金クラウド 事業再構築補助金
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事業再構築補助金

事業再構築補助金 概要

事業再構築補助金は、中小企業等が行う新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編という思い切った事業再構築を支援する補助金です。中小企業の場合、最大1億円が補助されます。※申請類型、要件による

参照:事業再構築補助金 公式HP

事業再構築補助金 加点項目

事業再構築補助金の審査項目には、一定の要件を満たすことで審査上の加点を得られる「加点項目」があります。

加点要件を満たすための準備は自社の経営方針を見直す好機となりますが、項目によっては準備に時間を要するものもあります。そのためここでは事業再構築補助金の加点項目を紹介するほか、そのうち、特に加点を得やすい項目を紹介します。

なお、複数の事業者が連携して事業に取り組む場合は、連携体を構成する事業者の半数以上が条件に該当する場合に限り、以下の項目で加点されます。

大きく売上が減少しており業況が厳しい事業者に対する加点

① 2022年1月以降のいずれかの月の売上高が対2019~2021年の同月比で30%以上減少していること(または、2022年1月以降のいずれかの月の付加価値額が、対2019~2021年の同月比で45%以上減少していること)。

引用:事業再構築補助金 公募要領

指定されている期間と比較して売上高・付加価値額が減少している場合、業況が厳しいと判断され、加点対象となります。本項目はエビデンスとなる添付書類を提出し、要件に合致することが確認できた場合にのみ加点されます。

最低賃金枠申請事業者に対する加点

② 指定の要件を満たし、最低賃金枠に申請すること。

引用:事業再構築補助金 公募要領

最低賃金枠は、最低賃金引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等の事業再構築を支援する申請類型です。本類型で指定されている要件は、以下のとおりです。

① 事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること【事業再構築要件】
② 事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けていること【認定支援機関要件】
③ 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること【付加価値額要件】
④ 2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が対2019~2021年の同3か月の合計売上高と比較して10%減少していること(当該要件を満たさない場合は、2022年1月以降の連続する6か月のうち、任意の3か月の合計付加価値額が対2019~2021年の同3か月の合計付加価値額と比較して15%以上減少していることでも可。)【売上高等減少要件】
⑤ 2021年10月から2022年8月までの間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること【最低賃金要件】

引用:事業再構築補助金 公募要領

なお、公募要領には、【最低賃金枠】は加点措置を行い、【物価高騰対策・回復再生応援枠】に比べて採択率において優遇される旨が記載されています。

経済産業省が行うEBPMの取組への協力に対する加点

③ データに基づく政策効果検証・事業改善を進める観点から、経済産業省が行うEBPMの取り組みに対して、採否に関わらず、継続的な情報提供が見込まれるものであるか。

引用:事業再構築補助金 公募要領

EBPMは「Eveidence based policy making(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)」の略で、証拠に基づく政策立案と訳されます。このEBPMの取組への協力が見込める場合、加点の可能性があります。

ただし、本項目は不採択となった場合でも、継続的に「ミラサポplus」へ財務情報を入力することが求められます。なお、事務局から他の報告書類の提出を求められる可能性もあるため、その分だけ業務負担が増える可能性があります。

参照:内閣府 内閣府におけるEBPMへの取組

参照:ミラサポplus

本項目の加点を申請する場合は、電子申請システム上でチェック事項を入力してください。

パートナーシップ構築宣言を行っている事業者に対する加点

④ 「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイト(https://www.biz-partnership.jp)において宣言を公表している事業者。(応募締切日時点)

引用:事業再構築補助金 公募要領

本加点項目は、成長枠・グリーン成長枠のみが対象です。

「パートナーシップ構築宣言」とは、「発注者」側である企業が、サプライチェーンの取引先や価値創造を図る事業者との連携・共存共栄を進めることで新たなパートナーシップを構築することを宣言するものです。

企業の代表者の名前で宣言するもので、業種・規模を問わずに宣言できます。加点を希望する場合、応募締切日前日時点で宣言文がポータルサイトに公開されている必要があります。

宣言までの手順は、ダウンロードしたひな形をもとに「パートナーシップ構築宣言」を作成し、登録・公開するのみです。登録内容に修正がなければ、登録後3~4日で宣言文がポータルサイトにアップロードされます。

ほかの加点項目と比較すると所要日数が少なく、加点を得やすい項目といえます。

参照:パートナーシップ構築宣言ポータルサイト

本項目の加点を申請する場合は、電子申請システム上でチェック事項を入力してください。

再生事業者に対する加点  

⑤ 中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)等から支援を受けており、応募申請時において以下のいずれかに該当していること。
(1) 再生計画等を「策定中」の者
(2) 再生計画等を「策定済」かつ応募締切日から遡って3年以内(令和2年7月1日以降)に再生計画等が成立等した者

引用:事業再構築補助金 公募要領

事業再生を行う事業者に対する加点です。再生計画に関する詳細な要件、再生計画等における「策定中」の定義は、公募要領にてご確認ください。

本項目はエビデンスとなる添付書類を提出し、要件に合致することが確認できた場合にのみ加点されます。

特定事業者であり、中小企業者でない者に対する加点  

⑥別途指定の要件に該当し、補助対象者に記載のある【中小企業者】及び【「中小企業者等」に含まれる「中小企業者」以外の法人】に該当しないこと。

引用:事業再構築補助金 公募要領

本項では、製造業・建設業・運輸業、卸売業等が規定の常勤従業員数以下となる会社又は個人のうち、資本金の額又は出資の総額が 10 億円未満であるものや、生活衛生同業組合や酒造組合等に該当しないことが加点条件となります。

サプライチェーン加点  

⑦複数の事業者が連携して事業に取り組む場合であって、同じサプライチェーンに属する事業者が、以下を満たし、連携して申請すること。
・直近1年間の連携体の取引関係(受注金額又は発注金額)が分かる書類(※)について、決算書や売上台帳などの証憑とともに提出すること。
・電子申請の際、該当箇所にチェックをすること。
※連携体に含まれる全ての事業者が、連携体内での取引関係があることが必要

引用:事業再構築補助金 公募要領

証憑(しょうひょう)とは、決算書や売上台帳のほか、請求書や領収書など取引・契約の事実を証明する書面を指します。上記の要件に基づき、直近1年間の証憑提出が求められます。

本項目はエビデンスとなる添付書類を提出し、要件に合致することが確認できた場合にのみ加点されます。

健康経営優良法人に認定された事業者に対する加点

⑧令和4年度に健康経営優良法人に認定されていること。
健康経営優良法人認定事務局ポータルサイト

引用:事業再構築補助金 公募要領

出典:経済産業省 「健康経営優良法人2023」認定法人が決定しました!

「健康経営優良法人認定制度」は、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、健康の保持・増進につながる取組(=健康経営)を実践している大企業や中小企業等の法人を「見える化」する制度です。

この制度に基づき認定された法人を「健康経営優良法人」として表彰することで、優れた健康経営を行なっていることが第三者から見てもわかるよう「見える化」しています。

参照:経済産業省 「健康経営優良法人2023」認定法人が決定しました!

本項目の加点を申請する場合は、電子申請システム上でチェック事項を入力してください。

大幅な賃上げを実施する事業者に対する加点  

⑨事業実施期間終了後3~5年で以下の基準以上の賃上げを実施すること(賃上げ幅が大きいほど追加で加点)。

1.給与支給総額年率平均3%
2.給与支給総額年率平均4%
3.給与支給総額年率平均5%

引用:事業再構築補助金 公募要領

本加点項目は、成長枠・グリーン成長枠のみが対象です。賃上げ幅に応じて加点されます。賃上げの可否は社内の判断によるものなので、状況が許せば実施可能である点から、加点申請しやすい項目と言えます。

本項目はエビデンスとなる添付書類を提出し、要件に合致することが確認できた場合にのみ加点されます。

ワーク・ライフ・バランス等の取り組みに対する加点 

⑩応募申請時点で、以下のいずれかに該当すること。
1. 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく認定(えるぼし1段階目~3段階目又はプラチナえるぼしのいずれかの認定)を受けている者又は従業員数 100 人以下であって、「女性の活躍推進データベース」に女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を公表している者
※厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」(https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/)
2. 次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく認定(くるみん、トライくるみん又はプラチナくるみんのいずれかの認定)を受けた者又は従業員数 100 人以下であって、「一般事業主行動計画公表サイト(両立支援のひろば)」に次世代法に基づく一般事業主行動計画を公表している者
※厚生労働省「一般事業主行動計画公表サイト(両立支援のひろば)」(https://ryouritsu.mhlw.go.jp/hiroba/search_int.php)

引用:事業再構築補助金 公募要領

出典:厚生労働省 女性活躍推進企業認定「えるぼし・プラチナえるぼし認定」

「えるぼし認定」とは、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づいて一定基準を満たし、女性の活躍促進に関する状況などが優良である企業を認定する制度です。

えるぼし認定を受けた企業のうち、より高い水準の要件を満たした企業は「プラチナえるぼし認定」として認められます。

出典:厚生労働省 くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて

またくるみん認定とは、次世代育成支援対策推進法に基づいて一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業を「子育てサポート企業」と認定する制度です。

厚生労働大臣に「子育てサポート企業」として認定された企業には、「くるみんマーク」が付与されます。

一般事業主行動計画を立てて計画書を作成・公表するのみで条件を満たせる点で、比較的、条件を満たしやすい項目といえます。

本項目の加点を申請する場合は、電子申請システム上でチェック事項を入力してください。

事業再構築補助金 申請方法

申請は電子申請システムのみで受け付けます。申請時、GビズIDプライムアカウントの取得が必要となります。未取得の事業者は必ず事前に利用登録が必要です。同アカウントは、事業者情報の再入力の手間を省くため補助金交付候補者の採択後の手続きでも活用可能です。

加点申請を行う場合は、追加提出書類の準備が求められます。

審査における加点を希望する場合に必要な追加書類等
・加点①: 2022年1月以降のいずれかの月の売上高が対2019~2021年の同月比で30%以上減少していること(又は、2022年1月以降のいずれかの月の付加価値額が、対2019~2021年の同月比で45%以上減少していること)を示す書類
※ 詳細は「<別添1>売上高減少等に係る証明書類について」をご参照ください。

・加点②: 中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)等から支援を受けており、応募申請時において以下のいずれかに該当することを証明する書類
(1) 再生計画等を「策定中」の者
(2) 再生計画等を「策定済」かつ公募終了日から遡って3年以内に再生計画等が成立等した者
※⑯の書類をもって物価高騰対策・回復再生応援枠に応募申請する事業者は、追加提出は不要です。

引用:事業再構築補助金 公募要領

減点項目に注意!  

事業再構築補助金には、加点項目のほか、減点項目も設定されています。以下に該当する場合は減点対象となるためご注意ください。

過去補助金交付候補者として採択された事業者

本項目はグリーン成長枠、産業構造転換枠のみが対象です。

既に過去の公募回で補助金交付候補者として採択されている、または交付決定を受けている場合には、一定の減点を受けることとなります。

加えて、別事業要件及び能力評価要件についても審査され、追加での減点となる場合もあります。これらについては、別事業要件及び能力評価要件の説明書に基づき評価されます。

複数の事業者が連携して事業に取り組む場合 

連携体の必要不可欠性について審査された結果、減点の対象となる場合があります。

複数の事業者が連携して事業に取り組む場合、追加提出書類として「連携の必要性を示す書類(代表申請者が提出)」が必要となります。本減点項目はこの書類に基づいて審査されます。

事業による利益が第三者のものになる事業に取り組む場合

ビジネスモデル上、補助事業の実施により発生した付加価値額の大部分が、従業員や株主を含む補助事業者以外にわたる事業等は、事業再構築に挑戦する中小企業等の成長を支援し、日本経済の構造転換を促す本事業の目的に沿わないため、当該事業を含む事業計画に基づく申請は、減点対象となります。

全国:事業再構築補助金
2024/04/23追記:第12回公募が開始されました。 ----- 2024/02/13追記:第11回公募の採択結果が公表されました。 ----- 2023/08/10追記:第11回公募が開始されました。 ----- 2023...

まとめ

事業再構築補助金の審査上、有利になる加点項目と注意すべき減点項目について解説しました。

事業再構築補助金は通年で公募が行われ、対象範囲や補助金額もほかと比べて大きな補助金です。ひとつでも多くの加点項目を満たして、採択を目指しましょう!

監修佐藤淳 / 公認会計士
中小企業庁認定 経営革新等支援機関 有限責任監査法人トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu)の東京オフィスに6年間、シアトルオフィスに2年間勤務。 2015年よりアジア最大級の独立系コンサルティングファームの日本オフィスにて事業戦略の構築支援、M&Aアドバイザリー、自己勘定投資の業務に従事。 2017年 自身で旅行スタートアップ(Stayway)を立ち上げ資金調達をした経験を生かしながら、補助金・ファイナンス・M&Aのサポートを実施

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