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2023年現在も続く円安の進行は、海外展開を考える事業者にとっては好機であり、これまで海外展開を検討していなかった事業者にとっても検討すべき機会であると言えます。
長引く原油・物価高に多くの企業が苦しむなか、海外展開に活路を見出し、輸出を検討する中小企業や地域企業を支援するため、経済産業省や独立行政法人日本貿易振興機構(通称 JETRO)は「新規輸出1万者支援プログラム」を開始しました。
こうした背景を踏まえ、今後、海外展開を行なう事業者が増えることが予想されます。そこでこの記事では、EC販売や海外展示会への出展、通訳など、海外展開に関する費用が対象となる補助金を紹介します。
新規輸出1万者支援プログラムについて
新規輸出1万者支援プログラムは、経済産業省・中小企業庁・JETROおよび中小機構等が一体となり、中小企業・地域企業の輸出に関する取組をサポートするプログラムです。
①新たに輸出に挑戦する事業者の掘り起こし、②専門家による事前の輸出相談、③輸出用の商品開発や売込みにかかる費用への補助、④輸出商社とのマッチングやECサイト出展への支援など、国内取引での輸出から海外バイヤーとの商談まで一気通貫で支援するものです。
補助金や助成金に加えて、こうしたサポートプログラムの活用もおすすめします。
海外展開に活用できる補助金(国主管)
ここでは海外展開に活用できる補助金のうち、国が主管しているものを紹介します。
事業再構築補助金
事業再構築補助金はポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するために中小企業等の事業再構築を支援する事業で、新分野展開や事業転換、業種転換、業態転換、事業再編といった取り組みを支援するものです。
このため、例えば申請要件を満たす食品製造業を営む事業者が越境ECサイトを開設し、自社で製造している商品の販売を開始した場合は補助対象となります。
また、新製品・サービスの開発成果の事業化にあたり必要となる特許権等の知的財産権等の取得のための弁理士の手続代行費用や外国特許出願のための翻訳料など、知的財産権等取得に関連する経費も補助対象経費として認められます。
ものづくり補助金(グローバル市場開拓枠)
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以降、ものづくり補助金)の申請類型のひとつである「グローバル市場開拓枠」は、海外事業の拡大・強化等を目的とした「製品・サービス開発」または「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援する制度です。
以下のとおり、4つの類型に分かれています。
①海外直接投資類型
②海外市場開拓(JAPANブランド)類型
③インバウンド市場開拓類型
④海外事業者との共同事業類型
このうち、②海外市場開拓(JAPANブランド)類型は、令和4年度まで実施された「JAPANブランド育成支援等事業」が統合する形で実施されています。
そのため「JAPANブランド育成支援等事業」の性質を継いでおり、海外展開に係るブランディング・ プロモーション等に係る経費が支援対象となるほか、通訳や翻訳費、広告宣伝費、販促費も対象となります。
参照:ものづくり補助金 公式HP
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自社の経営を見直し、自らが持続的な経営に向けた経営計画を作成した上で行う販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度です。
ウェブサイト関連費として、販路開拓等を行うためのウェブサイトや越境ECを含むECサイト等の開発、構築、更新、改修、運用をするために要する経費が補助対象となります。
また、オンラインによる展示会・商談会等を含む展示会への出展料、関連する運搬費(レンタカー代、ガソリン代、駐車場代等は除く)・通訳料・翻訳料等も補助対象です。
IT導入補助金
IT導入補助金は、自社の課題解決に資するITツールの導入を支援するものです。なかでもデジタル化基盤導入類型は越境ECサイト開設に活用できるほか、セキュリティ対策推進枠はECサイトのセキュリティ強化に活用可能です。
海外展開とは反対に、インバウンド対策となる決済ソフトの導入なども対象となるため、幅広い用途につかえる補助金といえます。
海外展開に活用できる補助金(外郭団体主管)
続いて、外郭団体が主管する補助金を紹介します。
中小企業等外国出願支援事業
JETROが主管している事業で、外国出願にかかる費用の半額を助成します。
中小企業等の諸外国での戦略的な産業財産権の取得に向けた外国出願の支援を目的に、中小企業等が海外で国内出願(特許、実用新案、意匠、商標)と同じ内容を出願する場合に必要となる費用の半額を助成するものです。
2023年9月15日まで公募を行ない、1中小企業者あたり最大300万円を補助します。
参照:JETRO 外国出願費用の助成(中小企業等外国出願支援事業)
中小企業等海外侵害対策支援事業
特許庁がJETROを通じて実施する補助事業では、以下のとおり、海外の模倣品への対策や冒認商標の取り消し等を支援します。
模倣品対策支援
海外で取得した特許・商標等の侵害を受けている中小企業を支援するものです。
模倣品の製造元や流通経路等を把握するための侵害調査及び調査結果に基づく模倣品業者への警告文作成、行政摘発、税関差止申請、模倣品が販売されているウェブページの削除等を実施し、その費用の一部を最大400万円助成します。
防衛型侵害対策支援
中小企業等が悪意のある外国企業から訴えられた場合に、弁理士・弁護士への相談等訴訟前費用、訴訟費用、対抗措置、和解に要する費用の一部を助成するものです。
弁理士・弁護士への相談等訴訟前費用、訴訟費用、対抗措置、和解に要する費用などが補助対象で、最大500万円を助成します。
外国出願「中間応答」費用の助成
JETROが主管する事業で、外国特許出願の中間応答にかかる費用の1/2を助成します。中間応答とは、海外での特許出願の際、出願国で出た拒絶理由を解消するために必要となる手続きです。
JETROは、外国へ特許出願を行った案件で、拒絶理由通知を受領し、応答を検討している中小企業者等に対し、当該経費の1/2、1事業者あたり最大30万円を助成します。
中間応答に要する国内代理人・現地代理人費用や翻訳費用が助成対象となります。
参照:JETRO 外国出願「中間応答」費用の助成(中小企業等外国出願中間手続支援事業)
外国出願「審査請求」費用の助成
JETROが主管する助成事業で、外国特許出願の審査請求にかかる費用の1/2を助成します。海外で特許の権利化を進める際、出願後に審査を開始するための「審査請求」が必要な場合があります。
そこで、外国特許庁へ審査請求を予定している中小企業者等に対し、JETROが審査請求にかかる費用を1事業者あたり60万円まで助成します。
参照:JETRO 外国出願「審査請求」費用の助成(中小企業等外国出願中間手続支援事業)
海外展開に活用できる補助金(自治体主管)
最後に、自治体が主管する支援策を紹介します。
大阪府堺市:グローバル展開促進補助金
堺市内に本社機能を有する中小企業のグローバル展開を促進し、市内産業の活性化を図るため、市内中小企業の海外に向けた販路開拓や海外拠点設立などの支援を行うものです。
海外で開催される展示会等への出展時にかかる小間料や商品輸送費、通訳翻訳費、越境ECサイトの構築や越境ECモールへの出展にかかるデジタルコンテンツ制作費、広告宣伝費などが補助対象となります。
交付申請は、一事業者あたり同一年度に1回限りで、最大30万円を補助します。
まとめ
海外展開に活用できる補助金を紹介しました。
海外展開と一言で言っても、越境ECの構築や海外出展、通訳費、翻訳費など、幅広い経費が補助対象となります。海外展開を検討中の方は、ぜひ、補助金の活用もあわせてご検討ください。
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