政府は、令和3年度補正予算の中で、中小企業・小規模事業者関係事業支援施策のポイントとして、グリーン投資やデジタル投資の推進を挙げています。
将来を見据えた戦略的な産業政策として、グリーン・デジタルなど、新分野への展開や生産性向上を目指す中小企業への支援策が中核です。
グリーンデジタル分野の支援について詳しく解説します。
グリーンデジタル化の背景
新型コロナウイルスの感染拡大を契機に、世界的なグリーンデジタル投資の加速と、これ伴う経済・産業構造の急速な変化が進んでいます。
世界各国で、カーボンニュートラルに向けたグリーン投資の拡大や、情報の利活用・デジタル化の急激な進展、またドローンや自動運転といった将来技術の拡大など、コロナ禍を契機とした成長拡大に向けて大きな転換が進んでいます。
政府(中小企業庁)も、こうした大きな潮流に乗り遅れないよう、そしてポストコロナの持続的な成長基盤を作るためにも、世界的な大転換の流れに乗ってグリーンやデジタル分野の取り組みを推進する旨公表しています。
グリーン・デジタル分野に使える補助金4選
こうした取り組みを支援するため、グリーンデジタル分野で活用できる補助金が提示されています。
主な補助金について解説します。
参照:経済産業省
事業再構築補助金
今回示された補正予算では、新分野展開や業態転換等の取り組みなどを支援するための事業再構築補助金を拡大し、新たにグリーン成長枠を設け、中小事業者の活動を支援することが示されています。
内容としては、グリーン成長戦略における実行計画(14分野)に掲げられた課題の解決に向けた取り組みが補助対象となります。
グリーン成長枠の創設と、グリーン成長枠での売上高減少要件撤廃がポイントです。
グリーン成長枠の補助骨子
補助の骨子は次のとおりです。
- 補助上限:中小企業1億円、中堅企業1.5億円
- 補助率:中小企業1/2、中堅企業1/3
ものづくり補助金
革新的な商品開発に加え、新規サービスや生産方法、提供方法の導入などが対象となるものづくり補助金では、グリーン枠とデジタル枠を新たに創設し、グリーン、デジタル化に貢献する革新的製品やサービス開発、あるいは、生産プロセスの改善に必要な設備投資などを支援するものです。
グリーン枠、デジタル枠が新規に創設され、補助率も2/3(通常枠(中小)の補助率は1/2)に引き上げられるのがポイントです。
補助骨子
グリーン枠・デジタル枠それぞれの補助骨子は次のとおりとなっています。
グリーン枠
- 補助上限:最大2,000万円
- 補助率:2/3
デジタル枠
補助上限:最大1,250万円
補助率:2/3
令和5年10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式が適格請求書等保存方式になる「インボイス制度」が適用されます。
このインボイス制度下では、適格請求書を7年間保管する必要があり、書面での交付に代え、電子データでの提供(電子インボイス)も可能なため、管理が効率化されます。
また、データによる検索によって検索性の向上というメリットもあるため、インボイス制度を契機として各種業務の自動化や効率化に向けたデジタル化の推進が期待されます。
インボイス制度を活用した補助金は下記のとおりです。
IT導入補助金
インボイス制度への対応により、ITツールやハードウェアの導入等を支援するものです。
補助骨子
IT導入補助金における各種補助の骨子は次のとおりです。
ITツール
- 補助上限:450万円
- 補助率:2/3~3/4
PC
- 補助上限:10万円
- 補助率:1/2
レジ等
- 補助上限:20万円
- 補助率:1/2
持続化補助金
IT導入補助金同様、令和4年度からインボイス制度対象となります。
これに伴い、小規模事業者が免税事業者からインボイス発行事業者へと転換する活動を支援します。
補助骨子
持続化補助金のインボイス枠補助骨子は次のとおりです。
インボイス枠
- 補助上限:100万円
- 補助率:2/3
補助金の活用例
今回のグリーンデジタル補助金支援制度では、各種補助金の具体的な活用例が示されています。
事業再構築補助金
情報サービス業での事業再構築補助金グリーン成長枠の活用例として、下記下の例が挙げられています。
顧客情報を蓄積した事業者が、当該情報を有効活用できる新規事業として、個人や企業に向けたCO2削減に貢献するためのアプリを制作する場合、デザイン外注費用やシステム開発用ソフトウェア購入費用、また従業員の研修費用などが補助対象になります
ものづくり補助金(グリーン枠)の活用例
ものづくり補助金は、名前のとおり主に製造業を支援する制度ですが、製造業のグリーン枠活用例として以下の取り組みが示されています。
この事例では、脱炭素化に寄与する設備・システム導入を行う一方、電気自動車向け部品製造のために関連機械装置導入を行うことで、生産工程の脱炭素化と付加価値向上の両立を目指しています。
こうした取り組みに対し、専門家による技術導入費用や脱炭素化へ向けたシステム構築費用、エネルギー効率に優れた機械導入費用などが補助されます。
ものづくり補助金(デジタル枠)の活用例
ものづくり補助金のデジタル枠活用例も示されています。
下図では、飲食・小売店と食品製造工場を所有している場合の例として、店舗への需要予測システムの導入や、新製品開発と並行して自社工場にAIを活用した不良品察知システムを導入し、生産性と付加価値の向上を目指す取り組みが挙げられています。
この事例では、需要予測システムに関するクラウドサービス利用料や、新商品開発用の機械装置費用、AI活用のシステム構築費用などが補助対象になります。
最後に
政府は、令和4年度において、カーボンニュートラルに向けたグリーン投資の拡大やデジタル化の進展といった変化に対する中小・中堅企業の取り組みに対し、今回解説した各種補助金などを通じて支援する方針を示しています。
補助金の詳細については、今後公表される公募要領などで明らかにされる見込みですが、事業者にとって、自社の置かれた事業環境の変化に対応しながら、成長へ向けた取り組みに活用できる有効な補助金制度です。
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