経営革新計画のメリットは?仕組みと申請方法、承認率まで徹底解説!

公開日 2021/10/19
更新日 2021/10/19
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収束の気配をみせつつある新型コロナウイルスの感染拡大ですが、社会・経済環境の変化や少子高齢化など、様々な課題を抱える中小・中堅企業の多くは厳しい経営環境を余儀なくされています。

こうした事業者を支援し、経済回復を主な目的として、政府は様々な制度を展開していますが、「経営力向上計画」と並んで実施される有力な施策に「経営革新計画」があります。

経営革新計画について詳しく解説します。

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経営革新計画とは

経営革新計画は、政府・中小企業庁が主管する支援施策の一環で、中小企業が「新事業活動」に取り組み、「経営の相当程度の向上」を図ることを目的として策定する、中期的な経営計画書のことを指します。

この経営計画策定を通じ、対象事業者における現状の課題や目標が明確になるといった効果が期待できるほか、国や都道府県に計画が承認されると、様々な支援策の対象となります。

参照:中小企業庁

経営革新計画によるメリット

経営革新計画は、申請する事業者自身の経営改善に資する計画であり、この計画策定によって政府や公的機関が行っている各種支援を得られるため、結果的に自社の経営改善が進められます。

経営革新計画の主なメリットについて細かく具体的に解説します。

メリット1:融資や保証における様々な支援

信用保証制度における特例措置が可能

経営革新計画の承認事業を行うために必要となる資金融資の信用保証に関し、通常の保証枠とは別枠で最大2.8億円の支援が受けられます。
内訳は、1社単独の場合普通保証2億円と無担保証0.8億円となります。

日本政策金融公庫の特別利率が可能

事業者が政府系金融機関である日本政策金融公庫からの融資を受ける際に、同公庫の「新事業活動資金・新事業活動促進資金」制度を利用することによって特別利率の適用が受けられます。

高度化融資制度の利用が可能

経営革新計画の承認を受けて事業者が「高度化事業」(*)に取り組む場合に、関連する融資を無利子で利用可能です。

(*)中小・中堅企業が共同で工業団地を建設したり、商店街にアーケードを設置するなど、同じ目的をもつ企業同士で組織する中小企業組合等のグループに対して、主管する都道府県と中小企業基盤整備機構(中小機構)が協力し、当該事業計画に対する助言や施設・設備資金に対する融資について支援する事業です。

詳細は下記をご参照ください。

参照:中小機構(高度化事業)

食品流通構造改善機構による債務保証が可能

事業者が食品製造業の場合、金融機関から融資を受ける際に食品流通構造改善機構からの債務保証が受けられます。

参照:食品流通構造改善機構

メリット2:海外展開に伴う支援

「スタンドバイクレジット(信用状)制度」による支援が可能

当該中小企業者における外国関係法人が、海外の金融機関から1年以上の長期借入を行う場合に、日本政策金融公庫によるスタンドバイクレジット(信用状)の発行を受け、債務保証が可能となります。

中小企業信用保険法の特例

事業者が国内の金融機関から融資を受ける際に、海外投資関連保証の限度額が通常よりも引き上げられます。

日本貿易保険(NEXI)による支援措置の適用

外国関係法人が、日本貿易保険が設定する「海外事業資金貸付保険を活用することが可能となります。

メリット3:投資、補助金などの支援

起業支援ファンドからの投資の可能性

民間ファンドに中小機構が出資し、株式や新株予約権付社債等による資金調達といった、ファンドからの投資可能性があります。

中小企業投資育成株式会社からの投資の可能性

中小企業投資育成株式会社から、原則として資本金の額が2億円以下のところ、3億円を超える場合でも投資対象になる場合があります。

経営革新に関係する補助金受給の可能性

主管する各都道府県の中には、経営革新計画を対象とする補助金を運用している場合があります。

メリット4:販路開拓の支援

販路開拓コーディネート事業による支援が可能

中小機構による商社・メーカーOBによる販路開拓支援が可能です。

新価値創造展への出展

中小機構が行うイベントへの出展審査時に、加点の対象となります。

メリット5:その他の支援

特許関係料金の減免が可能

経営革新計画に関して事業者が出願する特許申請について、審査請求料および1~10年の特許料への半額免除制度が利用可能となります。

ものづくり補助金における加点・優遇措置

ものづくり補助金の審査上、有効期間の経営革新計画承認による加点や、補助率アップなどの優遇措置があります。

経営革新計画の仕組みと取り組み

経営革新計画の承認を受けるための計画内容は、以下の5種類に該当する新たな取り組みが必要となります。

  • 新商品の開発又は生産
  • 新役務の開発又は提供
  • 商品の新たな生産又は販売の方式の導入
  • 役務の新たな提供の方式の導入
  • 技術に関する研究開発及びその成果の利用その他の新たな事業活動

詳細については下記をご参照ください。

参照:中小企業庁(経営革新計画進め方ガイドブック)

経営指標について

経営改革計画の承認にあたっては、下記に示す基準を満たす必要があります。

付加価値額または一人当たりの付加価値額

  • 事業期間が3年の場合:計画終了時に9%以上向上
  • 事業期間が4年:同12%以上
  • 事業期間が5年:同15%以上

付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費、1人あたりの付加価値額=付加価値額/従業員数

給与支給総額

  • 事業期間が3年の場合:計画終了時に4.5%以上向上
  • 事業期間が4年:同6%以上
  • 事業期間が5年:同7.5%以上 

給与支給総額に含まれる経費:従業員や役員に支払う給料、賃金、賞与、各種手当(残業手当、休日出勤手当、家族(扶養)手当、住宅手当等)といった給与所得
給与支給総額=給与賃金+専従者給与+青色申告特別控除前の所得金額

申請方法

経営革新計画の申請から承認までの流れについて解説します。

経営革新計画策定の準備

経営革新計画を策定するには、その前に自社の事業内容をよく検討し、計画策定に向けた準備を整える必要があります。自社のおかれた現状を考慮し、経営内容を刷新するために適切と思われる新規事業を策定すべきです。

経営革新計画には、上述のとおり他社との共同・協働によって複数社で実現する場合でも対象となるため、構想した新規事業に対して自社単独のリソースで対応すべきか、他社との連携の中で対応すべきか含め、幅広い視点で検討することがポイントとなります。

なお、計画立案にあたっては、申請窓口である都道府県のほか、各地域で経営革新計画策定を行う中小企業診断士などが委託されて行っているケースもあるため、こうしたチャネルを効活用することも有効です。

経営革新計画の策定

準備が整ったら、次に経営革新計画を策定します。

経営革新計画に際しては所定のフォーマットが定められているので、当該書式(申請書本文および別表1~7)で構成される計画書を作成します。その際に検討すべき事項は以下のとおりです。

計画の概要と付加価値向上目標(別表1)

経営革新計画における事業の概要、および計画実施前後の付加価値額・経常利益額の向上額を記載します。

実施計画と実績(別表2)

経営革新計画として実行する実施内容と評価基準・周期および実施時期を整理して記入します。計画が採択された後は実績欄にも記入し、進捗管理が必要となります。

経営計画および資金計画(別表3)

経営革新計画の実施による業績の進展に関する計画値を算定します。
収支計画部分と資金調達計画部分があり、経営革新計画の実施による将来の収支計画と、付加価値額・一人当たり付加価値額・経常利益額の推移および、必要な資金の調達計画を記載します。
各指標の計算方法は以下の通りです。

  • 付加価値額 = 営業利益+人件費+減価償却費
  • 一人当たり付加価値額 = 付加価値額÷従業員数
  • 経常利益 = 営業利益-営業外費用(支払利息・新株発行費用)

設備投資計画および資金計画(別表4)

経営革新計画に基づき、必要となる設備投資額および運転資金必要額について記載します。
それらを数値計画として策定するほか、研究開発に関する負担金の設定や希望する支援策に対する要望事項などを取りまとめ、所定のフォーマットに記載して提出します。

経営革新計画の承認申請

経営革新計画の承認は、基本的には事業者の本店が所在する都道府県における担当部署への申請となります。ただし、複数社で共同・協同して申請する場合には、その関係性によって申請先が異なる事があります。

経営革新計画の承認は、形式審査・内部審査を経て毎月1回の審査会での決定に基づき、通常1カ月程度で認可されます。

経営革新計画の承認率

経営革新計画の承認率について、明確な数字は公表されていませんが、概ね10%程度とみられています。

これを東京都の申請事例に当てはめると、2017年における月々の承認件数は月間平均約30件であり、採択率から逆算すると、実際に申請を行った事業者は月々約300社以上となります。

経営革新計画との違い

経営革新計画について詳しく解説してきましたが、さまざまな補助金の募集要項には、これと並んで「経営力向上計画」が記載されています。

経営革新計画と経営力向上計画の違いについて解説します。

大きな違いは計画の目的

経営革新計画と経営力向上計画いずれも、中小企業等経営強化法に基づいて実施されるものですが、計画を作成する目的が異なっています。経営革新計画は、新しい事業分野への進出や、革新的な事業を実施するための計画です。

このため、中小・中堅企業などが新しい事業活動に取り組み、経営を相当程度向上させることを目的として策定されるものです。従って、経営革新計画を申請する際には、今後自社が取り組む予定の事業がどれだけ革新性があるのかについて詳しく説明する必要があります。

一方、経営力向上計画は、現在企業が取り組んでいる事業をより一層成長させるために策定する計画です。人材育成や財務内容の分析、マーケティングの実施やITの利活用、また生産性向上のための設備投資などを通して、事業者が自社の経営力を向上することを目的に策定されるものです。

前者は新規事業展開に、後者は既存の事業改善に、それぞれ取り組む違いがあります。

計画認定機関も異なる

経営革新計画は事業者が所在している都道府県の知事が認定するのに対し、経営力向上計画は対象事業の分野を主管する大臣が認定認定します。業種で認定するか地域で認定するか、の違いとなります。

このため、前者では各地域での条件を、後者では自社事業の所属事業分野を、それぞれ確認する必要があります。

優遇制度の違い

経営革新計画が認定されると、政府系金融機関による低利融資制度や信用保証協会の保証枠の拡大などの優遇対象となります。一方、経営力向上計画が認定されれば、固定資産税の減免や金融支援の特例措置などの優遇が受けられます。

両者とも、税金の減免や金融支援・法的支援など、さまざまな優遇を受けられます。

最後に

経営革新計画について、経営力向上計画との比較も踏まえ、考え方と支援策や、計画策定内容と申請方法などについて解説しました。

支援策を活用するための実務的な側面もありますが、新事業へのチャレンジを通じて自社の経営を革新していくことが経営革新計画の大きな目的です。

自社の事業活動をしっかり分析し、計画を立案して、今後の事業の進展につなげていくことが期待されます。

Stayway / メディア事業部
監修Stayway / メディア事業部
日本国内の補助金の獲得から販路開拓・設備投資を一貫して支援。 中小企業庁認定 経営革新等支援機関

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