新型コロナウイルスの感染拡大により、特に中小・中堅企業は大きなダメージを受けました。
今後もしばらくは苦しい経営環境が予想されますが、こうした事業者を支援するために事業再構築補助金が設定されています。
この記事では、この制度をフランチャイズ事業展開に活用する方法と事例について詳しく解説します。
事業再構築補助金とは
事業再構築補助金とは、政府・厚生労働省主管により実施される制度で、上述のとおり中小企業が新分野展開や業態転換、事業・業種転換や事業再編、またはこれらの取組を通じた規模の拡大など、思い切った事業再構築にチャレンジすることを支援するものです。
今回、第3回の公募が本年7月30日から開始され、9月21日に締め切られました。
事業再構築補助金(第3回)概要
今回の事業再構築補助金では、ポストコロナ・ウィズコロナ時代における経済社会の変化に対応するため、中小企業の大胆な事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的としています。
この趣旨に沿って、コロナ禍の影響で厳しい経営環境にある中小・中堅企業や個人事業主、企業組合などを対象としています。
詳細については下記をご参照ください。
事業再構築補助金申請採択への経費条件
コロナ禍で苦しむ事業者が事業再構築補助金受給を目指し、申請することは、現下の経営環境を改善するために非常に有効な手段です。
その際に利用可能な経費と、認められない経費などについて解説します。
利用可能な経費
事業再構築補助金を受給するためには、当該事業拡大につながる事業資産(有形・無形)への相応規模の投資が必要で、本事業の対象として明確に区分する必要があります。
特徴的なものとして、建物費(建物の建築・改修、建物の撤去、賃貸物件等の原状回復)が補助対象経費となっています。
具体的な経費項目は次のとおりです。
- 建物費(建物の建築・改修、建物の撤去、賃貸物件等の原状回復)
- 機械装置・システム構築費(設備、専用ソフトの購入やリース等)、クラウドサービス利用費、運搬費
- 技術導入費(知的財産権導入に要する経費)、知的財産権等関連経費
- 外注費(製品開発に要する加工、設計等)、専門家経費
- 広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
- 研修費(教育訓練費、講座受講等)
利用できない経費
一方、利用できない経費としては次のような項目があります。
- 補助対象企業の従業員の人件費、従業員の旅費
- 不動産、株式、公道を走る車両、汎用品(パソコン、スマートフォン、家具等)の購入費
- フランチャイズ加盟料、販売する商品の原材料費、消耗品費、光熱水費、通信費
FC加盟料は対象外
利用できない経費項目に上げているとおり、フランチャイズ事業を展開する際に必要となる、いわゆるFC加盟料は対象外となります。
フランチャイズ展開例
事業の再構築目的だと認められれば、フランチャイズ加盟に際しての事業再構築補助金受給も可能となります。
フランチャイズに加盟して事業転換が可能となれば、自社の強みとフランチャイズのノウハウを生かした事業が可能となります。
展開可能なフランチャイズ例と採択事例について解説します。
展開可能なフランチャイズ業種例
展開可能なフランチャイズ例としては、次のような分野が挙げられます。
飲食業
今回のコロナ禍で経営上のダメージを最も大きく受けた業種の一つです。
多くの飲食店が閉店や廃業に追い込まれ、ウィズコロナの社会でも客足が戻るのか不安な面が残ります。
一方、コロナ禍で業績を大きく拡大したのが宅配・デリバリー業です。
このため、飲食店もデリバリー事業への業種転換を図ることで、売り上げの回復が見込まれます。
サービス業
サービス業も多岐にわたっていますが、コロナにより高齢者向けのデイサービスなどが特に大きな打撃を受けています。コロナ感染で高齢者へのクラスターが発生すると大きな被害が出るため、デイサービスの封鎖などが進んでいます。こうした高齢者向けデイサービスの事業転換としては、病院向け食事の提供や病院事務の受託などへの転換が可能です。
また、人が集まることで収益を上げるサービス業などでは、積極的なオンライン活用に活路を見出すことができます。
オンライン型のサービスを提供しているフランチャイズ企業も非常に多くなっているため、フランチャイズとの提携が事業転換のポイントとなります。
小売業
さまざまな販売を手掛ける小売業の中で、店頭販売型の経営を行っている企業も緊急事態宣言により外出を控えられており、売り上げは大きく減少しています。こうした事業形態でも、オンライン販売へのサービス展開に活路を見出すことができます。
大手企業などではオンライン販売が充実しており、経営ノウハウも充実していまるため、こうした企業へのフランチャイズ加盟によって回復が見込まれます。
オンライン販売が主流となれば店舗を構える必要性もなくなり、余計な固定費も圧縮できるため、非常にメリットのある事業展開が可能となります。
製造業
製造業でも、事業転換などによって事業再構築補助金の受給への道が開けます。
例えば、航空機部品を製造していたところ、コロナで需要が減少したことで、既存事業の一部である関連設備の一部廃棄等を行い、医療機器製造事業を新規に立ち上げ、全国的な販売網のフランチャイズ化する場合などが挙げられます。
その他業種
上記に挙げた事業分野以外にも、フランチャイズ化によって事業拡大を目指すことは可能です。
建設業では、自社保有の土地を有効活用してキャンプ場へと事業転換し、このビジネスモデルをフランチャイズとして全国展開したり、情報サービス業では画像処理技術を活かしてフランチャイズ店舗化を図るなど、また、サービス業ではヨガ教室のオンライン化事業を立ち上げ、フランチャイズ展開するなど、様々な業種で可能性があります。
採択事例
具体的な採択事例を取り上げます。
カテゴリ1:FC展開を企画・推進する例
①とり卓(宮城県・緊急事態宣言特別枠)
資本金:非公開
持続可能な飲食経営モデルを輩出する焼鳥店FC本部構築事業
既存の飲食事業ではコロナの影響で回復の見通しが立たない中、同社の経営者兼職人が持つ焼鳥店経営ノウハウを活かしてFCオーナー事業を展開する。小規模低リスクで開業可能なモデルを輩出し、事業再構築および拡大を目指す。
②株式会社L・C・V(北海道・緊急事態宣言特別枠)
資本金:1百万円
トレンドのキャッチ力を活かした「町の八百屋」への新分野展開
近隣にはない野菜や果物を扱った八百屋が運営する産地直送野菜と、その野菜を使った弁当なども販売しているお店のフランチャイズ化を推進する。
③株式会社シルヴァンブリーズ(岐阜県・通常枠)
資本金:3百万円
学習塾経営に革新をもたらす七色システムの開発
少子化が進む中、新型コロナの影響が追い打ちをかけ、学習塾では生徒確保に厳しさが増している。それを解決すべく、現在ニーズが増している高校生を対象とした市場にフォーカスし、七色システムを開発してFC展開を図り、事業拡大につなげる。
カテゴリ2:FCに加盟・参加する例
④株式会社シモン(東京都・通常枠)
資本金:490百万円
FC加盟によるリハビリ型デイサービス事業への参入および主軸事業化
コロナ後で安定さを欠く婚礼事業が唯一の事業である同社では、事業を多角化することが将来の企業存続のために必要である。堅い需要が今後も継続成長する介護事業への新規参入と主軸事業化により、環境変動に強い事業体を迅速に構築する。
⑤株式会社パレット(兵庫県・通常枠)
資本金:非公開
接客力と品揃え豊富さを活かした韓国化粧品販売事業
日用品の品揃えを強化し、経済ショックが起きても来店客現象を防ぐことが課題となっており、解決策として韓国化粧品の有名ブランドメーカーのフランチャイズに加盟して化粧品を販売することで、若年層を中心として集客を図る。
最後に
事業再構築補助金を活用する上で、フランチャイズは有力な手段のひとつです。
フランチャイズでは、事業を展開する前提としてブランドやノウハウをしっかりと共有する前提で開業できるため、実現可能性が高いビジネス分野です。
自社のフランチャイズビジネスを成功させるため、この補助金を有効活用していただきたいものです。
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