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解説!事業再構築補助金「産業構造転換枠」とは

公開日 2023/06/24
更新日 2023/06/24
この記事は約9分で読めます。

※記事内容は、記事更新日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。

事業再構築補助金は、新分野展開や事業転換、業種転換などの思い切った事業再構築を行う中小企業等を支援する制度です。

2023年6月30日まで行われている第10回公募では、これまでの公募内容から大幅な変更が行われました。そのひとつに、「産業構造転換枠」の新設が挙げられます。

産業構造転換枠は、国内市場の縮小を主な原因とする産業構造の変化によって、事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者を支援する申請類型です。本記事では、この産業構造転換枠について解説します。

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事業再構築補助金

産業構造転換枠の概要

産業構造転換枠は、国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の中小企業等が取り組む事業再構築を支援するものです。事業再構築に廃業を伴う場合は、補助最大上限額に最大2,000万円が上乗せされます。

参照:事業再構築補助金 公式HP 公募要領

産業構造転換枠の要件 

産業構造転換枠の要件には、基本要件に加え、第1回~第9回公募で補助金交付候補者として採択されている・または交付決定を受けている場合の要件があります。

産業転換枠 基本要件

出典:事業の再構築に挑戦する皆様へ

掲載サイトページ:電子申請用資料(事業再構築補助金リーフレット)

産業転換枠への申請には、以下①~③の基本要件(必須要件)に加え、④・⑤の要件を満たすことが必要です。

【①事業再構築要件】
・事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること

【②認定支援機関要件】
・事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けていること。
・補助金額が3,000万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び金融機関(金融機関が認定経営革新等支援機関であれば当該金融機関のみでも可)の確認を受けていること

【③付加価値額要件】
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること

【④市場縮小要件】
現在の主たる事業が過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属しており、当該業種・業態とは別の業種・業態の新規事業を実施すること、または地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域で事業を実施しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占めること

<市場規模が10%以上縮小する業種・業態とは>
上記④の「市場規模が10%以上縮小する業種・業態」には、対象となる業種・業態が指定されています。対象業種・業態については、後述します。

<市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域とは>
上記④の「市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域」には、要件を満たす自治体が指定されます。対象地域については、後述します。

過去公募で補助金交付候補者として採択されている・または交付決定している場合

過去行われた第1回~第9回公募で、補助金交付候補者として採択された事業者(※)であっても、以下の【⑤および⑥】を満たす場合は産業構造転換枠に申請することができます。

ただし、第1回~第9回公募において、グリーン成長枠で補助金交付候補者として採択されている事業者(※)は、応募することができません。

補助金額は、第10回応募申請時点における1回目採択分の採択額、交付決定額または確定額のいずれか最も低い金額と第10回公募の産業構造転換枠の補助上限額との差額分を上限とします。また、支援を受けることができる回数は2回が上限となります。

(※)補助金交付候補者として採択された事業を辞退した場合を除く

【⑤別事業要件】
既に事業再構築補助金で取り組んでいる、または取り組む予定の補助事業とは異なる事業内容であること

【⑥能力評価要件】
既存の事業再構築を行いながら、新たに取り組む事業再構築を行うだけの体制や資金力があること

参照:事業再構築補助金 第10回公募 公募要領

対象業種・業態リスト 

No. 業種・業態名 業種・業態の定義・外縁
1 出版業(電子出版のみの事業者は除く)
及び書籍・雑誌小売業
書籍・雑誌(電子出版を除く)を出版する事業所又は販売する事業所
2 粘土かわら製造業 主として粘土製の棟飾りを含む粘土製屋根かわらを製造する事業所
産業分類(2131 粘土かわら製造業)
3 石油卸売業・ガソリンスタンド・燃料小
売業
日本標準産業分類
・5331石油卸売業
・6051ガソリンスタンド
・6052燃料小売業
4 写真機・ 写真材料小売業・写真プリン
ト・ 現像・焼付業
日本標準産業分類
・6081写真機・ 写真材料小売業
・7993写真プリント・ 現像・焼付業
5 自動車部品製造業 日本標準産業分類
・3113自動車部分品・附属品製造業上記の中で、「主として自動車用内燃機関部品、内燃機関用電装品・電子部品、駆動・伝導部品、排気系部品を製造する企業」が対象
6 綿・スフ織物業 日本標準産業分類
・1121綿・スフ織物業
7 靴下製造業 日本標準産業分類
・1184靴下製造業
8 国産ニット生地・ニット生地製造業 日本標準産業分類
・1131丸編ニット生地製造業
・1132たて編ニット生地製造業
・1133横編ニット生地製造業
・1166ニット製外衣製造業(アウターシャツ類,セーター類などを除く)
・1167ニット製アウターシャツ類製造業
・1168セーター類製造業
9 印刷業・製版業・製本業・印刷物加工業 日本標準産業分類
・151印刷業
・152製版業
・153製本業・印刷物加工業
10 自動車事故整備業 日本標準産業分類
・8919 その他の自動車整備業に分類される自動車車体整備業のうち、事故整備に係るもの
11 寝具製造業・毛布製造業 日本標準産業分類
・1191寝具製造業
・1192毛布製造業
12 外衣・シャツ製造業(和式を除く) 日本標準産業分類
・116外衣・シャツ製造業(和式を除く)
13 美容業 日本標準産業分類
・7831美容業
14 普通洗濯業・洗濯物取次業 日本標準産業分類
・7811 普通洗濯業
・7812 洗濯物取次業
15 印刷産業機械製造業 日本標準産業分類
・2644 印刷・製本・紙工機械製造業

2023/06/09現在の情報です。
参照:産業構造転換枠の対象となる業種・業態の一覧

産業構造転換枠に申請するためには、要件④に記載のように、現在の主たる事業が、過去〜今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属しており、当該業種・業態から別の業種・業態に転換する必要があります。対象となる業種・業態は上記のとおりです。

なお、上記10にある「自動車事故整備業」は、2023年5月下旬に追加が決定されました。先進運転支援システム(ADAS)の普及で、車体整備の需要が減ると見込まれていることが背景にあります。

自動車事故整備業が対象に追加されたことについては、2023年5月31日の日刊自動車新聞に掲載されています。また同記事は以下のリンクからもご確認いただけます。(有料記事)

参照:日刊自動車新聞 電子版

対象地域リスト

要件④の「市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域」は、以下の要件を満たし、対象地域としての指定を希望する自治体が、「事業再構築補助金産業構造転換枠対象地域の指定申請書」を事業再構築補助金事務局へ提出し、認められた場合のみ対象となります。

要件
・地域における基幹大企業及びその子会社等が撤退した、若しくは撤退することが公表されており、それに伴い市区町村内総生産の10%以上が失われると見込まれること。※2020年4月以降の撤退に限る。
・事業者から「市場縮小要件を満たすことの説明書(基幹大企業撤退)」が提出された場合、取引状況を確認の上対象企業として認定することを誓約すること。

参照:産業構造転換枠における地域指定の公募に関して

対象地域における基幹大企業は、次のとおりです。

市区町村名 地域における基幹大企業
広島県呉市 日本製鉄株式会社
和歌山県有田市 ENEOS株式会社(和歌山製油所)
北海道名寄市 王子マテリア株式会社(名寄工場)

参照:産業構造転換枠の対象となる地域の一覧

参考:全類型共通要件

ここまでは産業構造転換枠のみを対象とした要件について紹介しましたが、事業再構築補助金には、全申請類型共通の要件があります。共通要件は、次のとおりです。

①事業計画書の作成と認定経営革新等支援機関による確認
当該事業申請の際に求められる事業再構築指針に沿った3~5年の事業計画書を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けることが必要です。

補助金額が3,000万円を超える事業計画の場合には、認定支援機関の確認書とは別に金融機関による確認書が必要となります。

②付加価値額の向上
申請した補助事業終了後3~5年で、自社の付加価値額を年率平均3.0%~5.0%(事業類型により異なる)以上、または従業員一人当たり付加価値額を年率平均3.0%~5.0%(同上)以上増加させることが必要です。

事業再構築補助金への申請時、収益計画に付加価値額の算出根拠を記載することが求められます。

産業構造転換枠の補助率、補助上限額

産業構造転換枠における補助率と補助上限額は、次のとおりです。

補助率
 中小企業者等 2/3
 中堅企業等 1/2
補助(下限~)上限額
 従業員数20人以下 100万円~2,000万円
 同21~50人 100万円~4,000万円
 同51~100人 100万円~5,000万円
 同101人以上 100万円~7,000万円

※廃業を伴う場合には廃業費を最大2,000万円上乗せ

産業構造転換枠の補助対象経費

産業構造転換枠における補助対象経費は、次のとおりです。
建物費、機械装置・システム構築費(リース料を含む)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費、広告宣伝・販売促進費、研修費、廃業費

申請スケジュール

産業構造転換枠を含む事業再構築補助金 第10回公募の申請スケジュールは、次のとおりです。

公募期間
公募開始:令和5年3月30日(木)
申請受付:令和5年6月9日(金)12:00
応募締切:令和5年6月30日(金)18:00
補助金交付候補者の採択発表:令和5年8月下旬~9月上旬頃(予定)

補助事業実施期間
交付決定日~12か月以内(ただし、補助金交付候補者の採択発表日から14か月後の日まで)
※交付決定後自己の責任によらないと認められる理由により、補助事業実施期間内に完了することができないと見込まれる場合には事故等報告を提出してください。補助事業実施期間の延長が認められる場合があります。

まとめ

事業再構築補助金第10回公募から新設された、産業構造転換枠について解説しました。

第10回公募以降、これまでの公募内容から複数の変更点があるため、申請検討している場合は公募要領をしっかりと確認のうえ、申請を行ってください。

監修金澤 正/公認会計士
デロイト トウシュ トーマツ出身。 大手国際会計事務所に15年以上在籍し、日本基準、米国会計基準、国際会計基準に基づく監査業務や、IFRS導入コンサルティング業務などに従事し、財務会計や内部統制、監査業務に深い知見と経験をもつ。その後M&Aアドバイザリー業務に携わり、国内及びクロスボーダーM&A取引における助言、評価、調査業務、PMI業務及びその他財務会計に関するコンサルティング業務など幅広い業務を経験。

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