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事業再構築補助金は、中小企業等が行う新分野展開や事業転換、業種転換など思い切った事業再構築を支援する補助事業です。
中小企業の場合、最大1億円の補助が受けられるため、注目度が高い補助事業であるものの、「自社事業は申請可能か」「どうしたら採択されるか」といった疑問や不安を持つ事業者の方は多くいます。
そこで、複数回にわたり、業種別に採択事例や採択のポイントを解説します。この記事では宿泊業にフォーカスして解説するので、宿泊事業者の皆様は、ぜひ参考にしてください。
事業再構築に向けた事業検討のポイント
事業再構築補助金で採択されるためには、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の環境変化を受けて「自社の強みを活かしてどのような新しい価値を生み出せるか」を検討し、その内容をしっかりと事業計画書に記載することが重要なポイントとなります。
事業計画への落とし込みまでは、次の3つのフェーズに分けて考えていきます。
- 事業再構築の必要性確認
- 有望な事業テーマの選定
- 事業計画の具体化
各フェーズでの事業検討のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
解説!飲食業における事業再構築補助金の採択事例及びそのポイントとは
宿泊業における事業再構築補助金の採択事例とポイント
ここからは、事業再構築補助金 第8回公募の採択事例のうち、宿泊業の例を挙げて事業計画書の記述例を解説します。採択のためには、自社の強みを明確化し、他社との差別化を図ったうえでターゲット顧客に訴求することが大きなポイントとなります。
※以下の内容は、事業計画書作成ガイドブックをもとに一部を(株)Staywayにて作成しています。実際の事業計画とは異なります。
地域老舗ホテルによる感染症に強くインバウンドに対応する業態転換
※事業計画書作成ガイドブックおよび事業再構築補助金 第8回公募結果をもとに、(株)Staywayが作成
事業概要
①インバウンド需要の拡大の際には訪日外国人の連泊を受け入れること②感染症再流行時には地域の方の日帰り需要を取り込むことの双方を目的とし、館内でのフィットネスジム運営に挑戦します。
既存事業 | 地域に根付いた老舗ホテル |
再構築の背景 | 外部環境の変化による需要の変化 |
再構築の概要 | 館内でのフィットネスジム運営 |
事業再構築の方針決定
事業の外部環境が大きく変化するなか、需要を捉えて、自社の強みや特色を生かしてありたい姿に近づくための施策となる取り組みを、事業再構築の方針として決定します。
<記述例>
①インバウンド需要の拡大、②感染症再流行時の各需要を取り込めるよう、館内でのフィットネスジム運営を実施
<解説>
コロナ禍によって落ち込んだインバウンドの揺り戻し需要、新型コロナウイルスの再流行や新たな感染症流行時に想定される地域住民の日帰り需要といった顧客層の変化を踏まえて、従来の施設・サービスをインバウンド・個人向けに転換しています。
新たな製品/サービスと実現する強み
再構築後の事業の新たな製品やサービスの実現確度を高めるために、今後強みとなる製品・サービスの特色を具体的に記述します。
<記述例>
地元企業と共同でフィットネスプログラムやグッズを開発して独自色を強めるとともに、地域産業の活性化につなげる
<解説>
ホテル周辺のスポーツジムや飲食店など地元企業との提携により、地域の名産品などを活用・提供することで、差別化と地域振興の双方を実現できます。パーソナルトレーナーを招いたフィットネスプログラム、健康器具メーカーとのグッズの企画・販売など、特色ある事業の展開が期待されます。
目標設定と投資対効果の検証
ここでは事業再構築に際して、事業の特性に応じた目標設定と投資対効果の検証などを記載します。
<記述例>
高付加価値の施設・サービスへ移行するために、館内施設の大規模な改修に投資
<解説>
個人・インバウンド向けニーズに応えるために、高付加価値の源泉となる設備改修に資金を集中投下することを記述します。投資回収計画がある場合は、具体的な数値を盛り込んで記載します。
実行可能な計画の策定
事業再構築の構想を具体的な計画に落とし込み、目標達成への見通しを細かく記載します。競合との差別化や新たな強み獲得等、課題/リスクと解決策まで含めて計画に織り込みましょう。
<記述例>
認定支援機関に加えて、特に宿泊プラン策定・価格設定の専門性を持つホテルコンサルの知見を活用し計画の立案、実行、管理を実施
<解説>
外部の専門家を含めた体制を構築することで、計画実現の蓋然性(がいぜんせい)を向上させる旨を記載します。そのほか、自己資金額の割合が高い場合は、その旨を記載することで事業計画の実効性が高いと判断されます。
業種固有観点
さらに、業種固有観点として、市況も踏まえて事業活性のための取り組みやその重要性などを記載します。
<記述例>
フィットネスジム施設を活用したインバウンド・個人向けのビジネスへ移行し、独自色の発揮と地域産業の活性化を目指す
<解説>
市場の変化を捉えて対象セグメントと提供サービスを切り替えるとともに、地元企業との提携で差別化と地域振興を実現する取り組みであることを記述します。
料理民宿から活カニ専門の高級旅館への業態転換
※事業計画書作成ガイドブックおよび事業再構築補助金 第8回公募結果をもとに、(株)Staywayが作成
事業概要
コロナ禍に入り感染者数や緊急事態宣言により宿泊者数が大きく変動している。強みであるカニを活かした活カニ専門の高級旅館へと転換することで数を追う民宿経営から脱却し、安定した経営体質を目指す。
既存事業 | 料理民宿 |
再構築の背景 | コロナ禍の感染者数や緊急事態宣言による宿泊者数の変動 |
再構築の概要 | 強みであるカニを活かした活カニ専門の高級旅館へ転換 |
事業再構築の方針決定
外部環境・事業環境が大きく変化するなか、自社の強みを見つめなおし、その強みを生かしてありたい姿に近づくための施策となる取り組みを、事業再構築の方針として決定します。
<記述例>
強みであるカニを活かした活カニ専門の高級旅館へと転換し、数を追う民宿経営から脱却し、安定した経営体質を目指す。
<解説>
コロナ禍による外部環境の変化で宿泊者数が変動。自社の強みを見直し、その強みであるカニを活かした活カニ専門の高級旅館へと転換する旨を記載します。
新たな製品/サービスと実現する強み
再構築後の事業の新たな製品やサービスの実現確度を高めるために、自社の強みとなる既存事業のリソース活用、または不足する強みの新規構築のやり方を具体化します。
<記述例>
地元産食材を活用し、地域産業の活性化につなげる
<解説>
地元企業との提携により地域の名産品などを活用・提供することで、差別化と地域振興の双方を実現する旨を記載します。食材の加工販売やECサイトでの販売などをする場合はもれなく記載しましょう。
目標設定と投資対効果の検証
ここでは事業再構築に際して、事業の特性に応じた適切な売上・利益目標の設定が必要です。売上増/コスト減の定量目標を顧客セグメント別/商品別等に細分化して、見積精度を高めます。
<記述例>
高付加価値の施設・サービスへ移行するために、 館内の大規模な改修 (客室、露天風呂、調理場等) に投資
<解説>
装置産業である宿泊業において、個人・インバウンド向けニーズに応えるために高付加価値の源泉となる設備改修に資金を集中投下する旨を記載します。改修による集客効果、投資額の回収計画を算出し、具体的な数値を盛り込みましょう。
また、改修によって生産性があがる、光熱費をはじめコストが下がることが見込める場合は、その旨も記載します。
実行可能な計画の策定
事業再構築の構想を具体的な計画に落し込み、目標達成への見通しを細かく記載します。競合との差別化や新たな強み獲得等、課題/リスクと解決策まで含めて計画に織り込みましょう。
<記述例>
認定支援機関に加えて、特に宿泊プラン策定・価格設定の専門性を持つホテルコンサルの知見を活用し計画の立案、実行、管理を実施
<解説>
外部の専門家を含めた体制を構築することで、計画の実現性が高いことをアピールします。
業種固有観点
さらに、業種固有観点として、市況も踏まえて事業活性のための取り組みやその重要性などを記載します。
<記述例>
活カニ専門の高級旅館へと転換し、独自色の発揮と地域産業の活性化を目指す
<解説>
市場やニーズの変化を捉えて、自社の強みを生かしながら対象セグメントと提供サービスを切り替えるとともに、地元企業との提携で差別化と地域振興を実現することを記載します。
他業種の採択事例記事(関連リンク)
宿泊業を除く業種の採択事例を紹介した記事は、以下のリンクからご覧ください。
■飲食業:https://biz.stayway.jp/hojyokin/12347/
■製造業:https://biz.stayway.jp/hojyokin/13888/
まとめ
事業再構築補助金における、宿泊業の採択事例や採択のポイントを解説しました。
「自社で申請可能か」「どうしたら採択されるか」といった疑問や不安をお持ちの方は、本記事を参考にして、ぜひ申請をご検討ください。
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