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事業再構築補助金は、中小企業等が行う新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編という思い切った事業再構築を支援する補助事業です。
この補助金への申請を検討している事業者の多くは、同業種の採択事例・採択のためのポイントを知りたいと感じるのではないでしょうか。そこで、複数回にわたり、業種別に過去の採択事例・採択のポイントを解説します。
この記事では、飲食業にフォーカスして紹介します。
事業再構築に向けた事業検討のポイント
事業再構築補助金の活用を検討する際、「事業再構築を考えるハードルが高い」と考える事業者にとって、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の環境変化を受けて「自社の強みを活かしてどのような新しい価値を生み出せるか」を検討することが重要なポイントとなります。
具体的には、以下の3つのフェーズに分けて考えていきます。
- 事業再構築の必要性確認
- 有望な事業テーマの選定
- 事業計画の具体化
事業再構築の必要性を確認
中小企業等事業者の多くは、新型コロナウイルスの影響を受けて、事業を行う環境が大きく変化したのではないでしょうか。
そうした変化のなか、まずは自社の「ありたい姿」つまり「5-10年後に実現したい事業・経営や顧客への価値」を改めて見つめ、明確にすることが必要です。
自社の現状を踏まえ、ありたい姿とのギャップを埋めるための方法として、事業再構築が最適であるか考えましょう。
有望な事業テーマの選定
続いて、有望な事業テーマの選定を行います。
事業再構築に向けた事業テーマ選定の考え方として、自社が置かれている環境分析や強み・弱みを棚卸し、「いま流行りのテーマ」ではなく、「自社にとって有望な事業テーマは何か」を見定めることが重要です。
具体的な手順は、以下のとおりです。
①市場/競合/顧客を調査して、自社がいま置かれている事業環境を明らかにする
②事業環境の調査結果をSWOT分析※で整理し、事業テーマを考える際に重要となる自社の強みの検討材料をまとめる
③事業テーマ候補を幅広に洗い出したうえで、「事業環境」「強み」の観点で評価して絞込み、事業テーマを選定
※SWOT分析・・・自社の外部環境と内部環境をStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つのカテゴリーで要因分析する経営戦略策定方法のひとつ
事業計画の具体化
最後に、事業計画の具体化を行います。手順として、有望な事業計画書に共通して含まれる「検討が必要な項目」(市場/顧客、競合、SWOTなど13トピック)に沿って事業計画を具体化します。
現状のギャップとありたい姿を埋めるために取るべきアクションの詳細を、事業計画書に落し込めるまで具体化しましょう。
事業成長に繋がる有望な事業計画は、調査・分析、戦略、財務等、多岐にわたり検討が必要なので、経営の専門家に相談し、客観的な助言を得ながら考えを深めることが有効です。
飲食業における事業再構築補助金の採択事例とポイント
ここからは、事業再構築補助金 第8回公募の採択事例のうち、飲食業の事例を2つピックアップして解説します。
紹介する2例のように採択されるには、競争環境が激しいなかで自社の強みを明確化し、ターゲット顧客に訴求することが大きなポイントとなります。
※以下の内容は、事業計画書作成ガイドブックをもとに一部を(株)Staywayにて作成しています。実際の事業計画とは異なります。
多様な販路を持つ新時代の地域資源活用レストラン事業への事業転換
※事業計画書作成ガイドブックおよび事業再構築補助金 第8回公募結果をもとに、(株)Staywayが作成
事業再構築補助金計画を立てる際や事業計画書を作成する際は、図のように、事業再構築の方針決定・新たな製品/サービスと実現する強みなどをわかりやすく書き出してみましょう。
事業概要
新しい生活様式により、飲食店舗の客席稼働率低下に伴い売上が減少した為、地方都市における高単価レストランへの事業転換を行う。北海道観光の閑散期における売上確保策として自社製造冷凍食品のEC販売と出張シェフの事業で売上確保を行う。
既存事業 | 地域密着型のカフェ・レストラン |
再構築の背景 | 新しい生活様式による飲食店舗の客席稼働率低下に伴う売上減少 |
再構築の概要 | 地域資源活用レストランへ事業への転換 |
事業再構築の方針決定
事業環境が大きく変化するなか、自社の強みを生かしてありたい姿に近づくための施策となる取り組みを、事業再構築の方針として決定します。
<記述例>
北海道観光の閑散期における売上確保策として新商品である冷凍食品のEC販売・出張サービスを開発し、多様な販路を開拓
<解説>
コロナ禍を経て新しい生活様式が定着するなか、観光閑散期も含めて客席稼働率の低下により売上が減少していた。そこで売上を補填・確保できるよう、店内での商品提供に留まらず、冷凍食品のEC販売や出張シェフ事業を展開。
こうした新たな販路開拓をすることで、売上確保の勝ち筋を見出しています。ECの活用による販路拡大・冷凍食品事業の展開は、これまでの採択率・申請率などを含むビッグデータの統計上、有望度が高いとされています。
新たな製品/サービスと実現する強み
再構築後の事業の新たな製品やサービスの実現確度を高めるために、自社の強みとなる既存事業のリソース活用、または不足する強みの新規構築のやり方を具体化します。
これにより、事業再構築に向けた取り組みをよりブラッシュアップします。
<記述例>
試行販売(店舗/自社ECサイト)にて〇食分、出張依頼〇件の販売を達成したことから商品・サービスの販売需要を確認
<解説>
具体的な試算が難しいときは、試行販売やアンケートなどが有効な場合があります。試行販売を行った場合、その販売実績を記載すると、実際の顧客ニーズを確認していることで、商品・サービスの販売実現性が高いと評価されます。
目標設定と投資対効果の検証
ここでは事業再構築に際して、事業の特性に応じた適切な売上・利益目標の設定が必要です。売上増/コスト減の定量目標を顧客セグメント別/商品別等に細分化して、見積精度を高めます。
<記述例>
・EC販売にて単価〇円の商品を月間〇個販売、〇円の売上、出張サービス単価〇円を月間〇件見込む。
・設備投資額は回収期間が〇年と算出でき、設備の耐用年数〇年に対して短期間で改修可能
<解説>
売上想定を因数分解した算出により、説得力のある数値目標を確認できます。また、投資額に対する評価を実施し、改修期間を算出、併記することで投資の妥当性も確認できます。
実行可能な計画の策定
事業再構築の構想を具体的な計画に落し込み、目標達成への見通しを細かく記載します。競合との差別化や新たな強み獲得等、課題/リスクと解決策まで含めて計画に織り込みましょう。
<記述例>
投資資金は自己資金〇割、金融機関からの借入〇割で賄うことを予定。金融機関からの借入については、計画策定時に承諾を頂いている。
<解説>
自己資金にて補助事業を実施することで、事業者の本気度が伝わります。また、資金調達の承諾が既にとれていることは、すぐに実行可能な計画であると判断できます。
業種固有観点
さらに、業種固有観点として、市況も踏まえて事業活性のための取り組みやその重要性などを記載します。
<記述例>
・ECを通じて地方の特産物を購入したいニーズに対し、地元の食材の強みを差別化ポイントとして訴求
・出張サービスでプロによる自宅での食事提供を望む顧客に対し、実績等を差別化ポイントとして訴求
<解説>
競合が多い飲食のEC販売において、ターゲット顧客のニーズに対する自社の強みを明確にすることで、事業性の高い計画と判断できます。
和食店のこだわりメニューを再現する冷凍食品販売事業
※事業計画書作成ガイドブックおよび事業再構築補助金 第8回公募結果をもとに、(株)Staywayが作成
事業概要
既存の飲食店は席数が多く長引くコロナ禍に加え、物価高騰等の経済環境による甚大な影響を受け、再構築が急務である。そこで自社の経営リソース活用し市場の伸長が期待できる冷凍食品製造販売でV字回復を目指す。
既存事業 | 和食メニューを提供する飲食店 |
再構築の背景 | 長引くコロナ禍に加え、物価高騰等の経済環境による甚大な影響 |
再構築の概要 | 自社の経営リソースを活用した冷凍食品製造販売 |
事業再構築の方針決定
事業環境が大きく変化するなか、自社の強みを生かしてありたい姿に近づくための施策となる取り組みを、事業再構築の方針として決定します。
<記述例>
自社の経営リソースを活用できること、新しい生活様式により市場の伸長が期待できることから、冷凍食品製造販売でV字回復を目指す
<解説>
自社の強みや市場の動向を分析したうえで、新商品開発および販売による勝ち筋を見出している
新たな製品/サービスと実現する強み
再構築後の事業の新たな製品やサービスの実現確度を高めるために、自社の強みとなる既存事業のリソース活用、または不足する強みの新規構築のやり方を具体化します。
これにより、事業再構築に向けた取り組みをよりブラッシュアップします。
<記述例>
試行販売(店舗/自社ECサイト)にて、〇食分を完売したことから製品の販売需要を確認
<解説>
既述のとおり、具体的な試算が難しいときは、試行販売やアンケートなどが有効な場合があります。上記の場合、試行販売で実際の顧客ニーズを確認していることで、商品の販売実現性が高いと判断できます。
目標設定と投資対効果の検証
事業再構築に際して、事業の特性に応じた適切な売上・利益目標の設定が必要です。売上増/コスト減の定量目標を顧客セグメント別/商品別等に細分化して、見積精度を高めます。
<記述例>
・EC販売にて単価〇円の商品を月間〇個販売、〇円の売上を見込む。
・設備投資額は回収期間が〇年と算出でき、設備の耐用年数〇年に対して短期間で改修可能
<解説>
・売上想定を因数分解した算出により、具体的かつ説得力のある数値目標を確認できます。
・投資額に対する評価を実施し、改修期間を算出することで投資の妥当性を確認できます。
実行可能な計画の策定
事業再構築の構想を具体的な計画に落し込み、目標達成への見通しを細かく記載します。競合との差別化や新たな強み獲得等、課題/リスクと解決策まで含めて計画に織り込みましょう。
<記述例>
投資資金は自己資金〇割、金融機関からの借入〇割で賄うことを予定。金融機関からの借入については、計画策定時に承諾を頂いている
<解説>
・自己資金にて補助事業を実施することで、事業者の本気度が伝わります。
・支援機関のコメントにて資金調達の承諾がとれていることは、すぐに実行可能な計画と判断できます。
業種固有観点
事業再構築の構想を具体的な計画に落し込み、目標達成への見通しを細かく記載します。競合との差別化や新たな強み獲得等、課題/リスクと解決策まで含めて計画に織り込みましょう。
<記述例>
ECを通じて実店舗同様に、自宅で手軽にこだわりの味を楽しみたいニーズを持つターゲット顧客に対し、地元の食材及び実績等の強みを差別化ポイントとして訴求
<解説>
競合が多い飲食のEC販売において、ターゲット顧客のニーズに対する自社の強みを明確にすることで、事業性の高い計画と判断できます。
他業種の採択事例記事(関連リンク)
飲食業を除く業種の採択事例を紹介した記事は、以下のリンクからご覧ください。
■宿泊業:https://biz.stayway.jp/hojyokin/13140/
■製造業:https://biz.stayway.jp/hojyokin/13888/
まとめ
事業再構築補助金における、飲食業での採択事例を2つ取り上げ、概要や採択のポイントを解説しました。
いざ申請しようとすると「ハードルが高い」と感じる方が多い補助事業ですが、過去の類似事例から採択のポイントを学び、自社の事業計画にしっかりと落とし込みましょう。
事業再構築を行う予定の方は、ぜひ、本補助事業をご活用ください。
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