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事業再構築補助金は、新分野展開や業種転換など、思い切った事業再構築を行う中小企業等を支援する補助事業です。
令和6年4月23日から第12回公募が開始されましたが、昨年11月の行政事業レビューにおける有識者からの指摘を踏まえて抜本的な見直しを行った上での実施となりました。
そこでこの記事では、今回公募の概要と主な変更点などについて詳しく解説します。
事業再構築補助金について
事業再構築補助金は、新市場進出、事業・業種転換、事業再編、国内回帰、地域サプライチェーン維持・強靱化又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する、中小企業等の挑戦を支援するものです。
第12回公募はこれまでの内容を見直したうえで実施されることとなりましたが、公募要領には、今なおコロナの影響を受ける事業者への支援及びポストコロナに対応した事業再構築をこれから行う事業者への支援に重点化を行う旨が明記されています。
事業再構築補助金 第12回以降の変更点
今なおコロナの影響を受ける事業者への支援及びポストコロナに対応した事業再構築をこれから行う事業者への支援を重点化する方針を受けて、前回公募から複数の変更点があります。
主な変更点は、次のとおりです。
申請枠の見直し
掲載ページ:事業再構築補助金 公式HP 事業再構築補助金とは?
第11回公募まで6枠あった申請枠を見直し、第12回公募からは3枠での実施となります。
これまでの申請枠が複雑との指摘を受けて、簡素な形に整理したものです。
またあわせて、中小企業等から中堅企業等に成長する事業者に対する上乗せ支援を行う「卒業促進上乗せ措置」、大規模な賃上げに取り組む事業者に対する上乗せ支援を行う「中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置」を設けています。
事前着手制度の原則撤廃
掲載ページ:事業再構築補助金 公式HP 事業再構築補助金とは?
第11回公募まで実施していた事前着手制度は、第12回公募から原則廃止となります。交付決定前に補助事業を開始された場合は、原則として補助金の交付対象とはなりません。
「原則」としているのは、経過措置として、以下の場合に限り、補助金の交付決定前であっても事務局から事前着手届出が受理された場合は、令和4年12月2日以降に購入契約(発注)等を行った事業に要する経費も補助対象経費とすることができるためです。
①第10回、第11回公募において、物価高騰対策・回復再生応援枠又は最低賃金枠の補助金交付候補者として不採択となった事業者が、第12回公募において、コロナ回復加速化枠(通常類型)又はコロナ回復加速化枠(最低賃金類型)に申請する場合
②第10回公募において、サプライチェーン強靱化枠の補助金交付候補者として不採択となった事業者が、第12回公募において、サプライチェーン強靱化枠に申請する場合
売上高等減少要件の廃止
第11回公募まで定められていた「売上高等減少要件」は、第12回公募から廃止となりました。
コロナ債務を抱える事業者への加点措置
すべての申請枠において、「コロナ借換加点」としてコロナで抱えた債務の借り換えを行っている事業者に対する加点措置を講じ、支援を重点化します。
本加点項目は、一部の申請枠において必須要件化しています。またこのほか、特定の事業類型における加点項目が別途加わっていますので、申請の際は公募要領にてご確認ください。
事務局審査の改善・体制強化による厳格化
採択審査において、AIでの重複率確認による類似案件排除を強化します。これは、閾値の見直しや範囲の拡大により、同じ計画書の使いまわしを防止する目的で実施するものです。
一定期間に特定トピックの申請が集中した場合、一時的流行による過剰投資誘発の恐れがあることから、システム上でAIが検知し、審査を厳格化します。
また、新分野進出は事業の新規性を公募毎に再検証します。さらに採択後の交付審査・実績審査用のシステムを刷新し、AIを導入するなどして審査を標準化・高度化し、審査を厳格化します。
EBPM強化
EBPM強化の施策として、以下を行います。
・短期アウトカムとしている事業化段階の報告を四半期毎に行うよう義務化
・他の補助金の申請データを効果検証に活用
例:不採択者のその後の売上・営業利益等のデータを他の補助金データから連携し、比較等に活用
・補助事業者毎に独自様式で提出されていた情報を共通のデジタルデータで取得することで分析しやすくする
例:賃借対照表の一部や補助事業を含めた企業全体の損益計算書等
・補助事業の効果分析・検証を実施し、結果を公表
参照:中小企業庁 中小企業等事業再構築促進基金及び事業再構築補助金の抜本的見直しを行った上で本日から第12回公募を実施します
事業再構築補助金 第12回 概要
補助金額 | 補助率 | |
1. 成長分野進出枠(通常類型) | 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数20人以下】100万円~1,500万円(2,000万円) 【従業員数21~50人】100万円~3,000万円(4,000万円) 【従業員数51~100人】100万円~4,000万円(5,000万円) 【従業員数101人以上】100万円~6,000万円(7,000万円) ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合 |
中小企業者等 1/2(2/3) 中堅企業等 1/3(1/2) ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合 |
2. 成長分野進出枠(GX進出類型) | 中小企業者等【従業員数20人以下】100万円~3,000万円(4,000万円) 【従業員数21~50人】100万円~5,000万円(6,000万円) 【従業員数51~100人】100万円~7,000万円(8,000万円) 【従業員数101人以上】100万円~8,000万円(1億円) 中堅企業等 100万円~1億円(1.5億円) ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合 |
中小企業者等 1/2(2/3) 中堅企業等 1/3(1/2) ※()内は短期に大規模な賃上げを行う場合 |
3. コロナ回復加速化枠(通常類型) | 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員5人以下】100万円~1,000万円 【従業員6~20人】100万円~1,500万円 【従業員21~50人】100万円~2,000万円 【従業員 51 人以上】100 万円~3,000 万円 |
中小企業者等 2/3 (従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場 合は800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは3/4) 中堅企業等 1/2 (従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場 合は800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは2/3) |
4. コロナ回復加速化枠(最低賃金類型) | 中小企業者等、中堅企業等ともに 【従業員数5人以下】100万円~500万円 【従業員数6~20人】100万円~1,000万円 【従業員数21人以上】100万円~1,500万円 |
中小企業者等 3/4(2/3) 中堅企業等 2/3(1/2) ※()内はコロナで抱えた債務の借り換えを行っていない者の場合 |
5. 卒業促進上乗せ措置 | 各事業類型の補助金額上限に準じる | 中小企業者等 1/2 中堅企業等 1/3 |
6. 中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置 | 100万円~3,000万円 | 中小企業者等 1/2 中堅企業等 1/3 |
7. サプライチェーン強靱化枠 | 中小企業者等、中堅企業等ともに 1,000万円~5億円 | 中小企業者等 1/2 中堅企業等 1/3 |
第12回公募の全体像・補助上限額・補助率は上図のとおりです。また、全申請類型の概要は次のとおりです。
1. 成長分野進出枠(通常類型)
ポストコロナに対応した、成長分野への大胆な事業再構築にこれから取り組む事業者や、国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の事業者が取り組む事業再構築を支援
2. 成長分野進出枠(GX進出類型)
ポストコロナに対応した、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組をこれから行う事業者の事業再構築を支援。
3. コロナ回復加速化枠(通常類型)
今なおコロナの影響を受け、コロナで抱えた債務の借り換えを行っている事業者や、事業再生に取り組む事業者の事業再構築を支援。
4. コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)
コロナ禍が終息した今、最低賃金引上げの影響を大きく受ける事業者の事業再構築を支援。
5. 卒業促進上乗せ措置
各事業類型の補助事業を通して、中小企業等から中堅企業等に成長する事業者に対する上乗せ支援。
6. 中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置
各事業類型の補助事業を通して、大規模な賃上げに取り組む事業者に対する上乗せ支援
7. サプライチェーン強靱化枠
ポストコロナの経済社会において、海外で製造等する製品の国内回帰や地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠な製品の生産により、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組を行う中小企業等に対する支援
申請要件
本補助金では、事業類型ごとの補助対象要件に加えて、以下の共通要件を設けています。
【補助対象要件】
下記①、②、③をいずれも満たすこと。
① 事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること。
② 事業計画書を金融機関等(銀行、信金、ファンド等)や認定経営革新等支援機関と策定し、確認を受けていること。
③ 補助事業終了後3~5年で付加価値額を年平均成長率3.0%~5.0%(事業類型により異な
る)以上増加させること。又は従業員一人当たり付加価値額を年平均成長率3.0%~5.0%
(事業類型により異なる)以上増加させること。
事業再構築補助金 第12回 公募スケジュール
公募開始:令和6年4月23日(火)
申請受付:令和6年5月20日(月)
応募締切:令和6年7月26日(金)18:00
補助金交付候補者の採択発表:令和6年10月下旬~11月上旬頃(予定)
※採択発表後に補助事業開始となります。
申請は、電子申請システムでのみ受け付けます。入力については、電子申請システム操作マ
ニュアルに従って作業してください。
なお、審査は書面審査・口頭審査となります。
口頭審査はZoom等を使ったオンラインでの実施で、1事業者15分程度の予定です。会議用 URL は事務局にて発行します。
審査中の音声は録音されますのでご留意ください。
事業再構築補助金 第12回 採択状況
令和6年11月8日に第12回公募の採択結果が公表されました。第12回公募の結果は、次のとおりです。
・公募期間:~令和6年7月26日
・申請数 7,664者 採択数 2,031者 採択率 約26.5%
事業再構築補助金 第12回 採択事例
出典:事業再構築補助金 第12回公募の結果について
掲載ページ:事業再構築補助金 第12回公募 補助金交付候補者の採択結果
第12回公募への業種別応募割合・採択割合を見ると、これまで同様に製造業、卸売・小売業、 建設業、宿泊業・飲食サービス業が多くなっています。
第11回公募の状況と比較すると、応募割合・採択割合ともに製造業の割合が増え、採択割合では半数に迫っています。
本記事では、採択割合の高い業種のうち、製造業、卸売・小売業、 建設業から、主な採択事例を厳選して紹介します。
製造業
所在地 | 東京都墨田区 |
従業員数 | 約30名 |
事業計画名 | サスティナブル生地の海外展開による業界再生ロールモデルも実現 |
事業計画の概要 | 縮小する繊維業界において海外進出のロールモデルとなるべく、カットソー製造のノウハウを生かしたメイドインジャパンの高品質でサスティナブルな生地の製造販売を海外のハイブランドに向けて行う。 |
卸売・小売業
所在地 | 神奈川県鎌倉市 |
従業員数 | – |
事業計画名 | 和牛専門フルオーダーカット精肉店の自社加工工場開設・卸売業への事業転換事業 |
事業計画の概要 | 和牛専門フルオーダーカット精肉店を経営するJNYコーポレーション株式会社が、小売業から卸売業へ事業転換する。 事業再構築にあたって本事業により精肉・肉類加工商品の加工工場を開設し設備投資に取り組む。 |
建設業
所在地 | 千葉県長生郡一宮町 |
従業員数 | 約70名 |
事業計画名 | 木造ホテルの魅力を宿泊体験!非住宅建築市場における脱炭素化の挑戦 |
事業計画の概要 | 観光地の九十九里に根差して不動産事業を営む当社は地域との共存共栄が課題。木造の魅力を訴求する体験型モデルハウスを活用して、宿泊事業者向け木造ホテル建築事業を展開し、新たな収益の柱の構築と観光業の脱炭素化を目指す。 |
※記載の従業員数は、公表されている情報をもとに記載しています。
出典:事業再構築補助金 第12回公募 補助金交付候補者の採択結果
まとめ
事業再構築補助金における第12回公募以降の変更点を解説しました。
これまでの公募とは申請類型も内容も異なりますので、申請検討の際は公募要領をしっかりとご確認のうえ、ご検討ください。
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