※2022/03/02追記 特例措置実施期間は、令和4年6月末まで延長される見込みです。現時点での延長に伴う追記事項は、青字で記しています。
—–
雇用調整助成金とは、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって事業活動の縮小を余儀なくされた事業者が、従業員の雇用維持を図るため、労使間の協定に基づいて雇用調整(休業)を実施する際に、休業手当などの一部を助成する制度です。
また、事業主が労働者を出向させることで雇用を維持した場合も、本制度の支給対象となります。
この記事では、この助成金の概要や休業補償、特例措置などについて詳しく解説します。
雇用調整助成金の概要
雇用調整助成金の概要は以下のとおりです。
支給対象となる事業主
新型コロナウイルス感染症に伴う特例措置において、以下の条件を満たす全ての業種の事業主が対象となります。
- 新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が悪化し、事業活動が縮小していること
- 最近1か月間の売上高または生産量などが前年同月比で5%以上減少していること
- 労使間の協定に基づき休業などを実施し、休業手当を支払っていること
助成対象となる労働者
助成対象となる労働者は、次のとおりです。
- 事業主に雇用された雇用保険被保険者に対する休業手当などが助成対象
- 学生アルバイトなど、雇用保険被保険者以外の方に対する休業手当は緊急雇用安定助成金の助成対象
助成額と助成率、支給限度日数
助成額と助成率、支給限度日数は下記および下表のとおりです。
※令和2年4月1日~令和3年9月30日令和4年6月30日までの期間、感染拡大防止のため「特例措置」が実施されています。そのため、下記は「特例措置」での助成額および助成率となります。(通常時の助成額および助成率とは異なります。)
(平均賃金額) × 休業手当等の支払率)× 下表の助成率 (1人1日あたり15,000円もしくは13,500円が上限)
判定基礎期間の初日 |
令和3年 |
令和4年 1月・2月 |
令和4年 3月 |
令和4年 4月~6月 |
|
中小企業 | 原則的な措置【全国】 | 4/5(9/10) 13,500円 |
4/5(9/10) 11,000円 |
4/5(9/10) 9,000円 |
4/5(9/10) 9,000円 |
業況特例【全国】 |
4/5(10/10) 15,000円 |
4/5(10/10) 15,000円 |
4/5(10/10) 15,000円 |
||
大企業 | 原則的な措置【全国】 | 2/3(3/4) 13,500円 |
2/3(3/4) 11,000円 |
2/3(3/4) 9,000円 |
2/3(3/4) 9,000円 |
業況特例【全国】 地域特例 |
4/5(10/10) 15,000円 |
4/5(10/10) 15,000円 |
4/5(10/10) 15,000円 |
(注)金額は1人1日あたりの上限額、括弧書きの助成率は解雇等を行わない場合
上表における中小企業の定義は次のとおりです。
- 小売業(飲食店を含む):資本金5,000万円以下または従業員50人以下
- サービス業:資本金5,000万円以下または従業員100人以下
- 卸売業: 資本金1億円以下または従業員100人以下
- その他の業種: 資本金3億円以下または従業員300人以下
特例措置とは
特例措置とは、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主を対象に、雇用調整助成金の支給要件を緩和するもので、具体的には助成率と上限が引き上げられています。令和2年4月1日~令和3年9月30日令和4年6月30日までの期間、感染拡大防止のため、全国で特例措置を実施しています。
中小企業は総額の5分の4(解雇しない場合は満額)、大企業の場合は3分の2(解雇しない場合は4分の3)まで助成してきましたが、特例措置では、大企業であっても各府都県の知事による営業時間短縮要請に協力した場合には、満額まで助成を引き上げるものです。
なお、解雇しない場合の助成率の判断について、原則的な措置としては2020年1月24日以降の解雇等の有無で適用する助成率を判断し、後述する地域・業況の特例では2021年1月8日以降の解雇等の有無で適用する助成率を判断するとされています。
延長の対象と時期
延長の対象となる特例はいつまで適用されるのでしょうか。
厚労省では上限額と助成率を縮小を検討していますが、複数回にわたって緊急事態宣言などが出されるなかで、一部地域と業況について、2022年2月も特例措置を延長することにしました。
この記事では、2022年6月30日までの緊急対応期間における制度の概要について解説しますが、特例措置の対象となるのは下記のいずれかに当てはまる場合で、2022年7月以降の詳しい助成内容については5月中に公表される予定となっています。
業況特例
業況特例(特に業況が厳しい全国の事業主)については下記のとおりです。
休業の初日が属する月からさかのぼって3か月間の月平均値の売上高などが、2021年同期または2020年同期、2019年同期よりも3割以上減少していること。ただし、比較に用いる月は、雇用保険適用事業所設置後であり、労働者を雇用している場合に限定。
地域別の特例
地域別の特例 (営業時間の短縮等に協力する事業主)としては、以下の4点を満たす飲食店やイベントなどを開催する事業主が対象です。
- まん延防止等重点措置の対象区域において都道府県知事による要請等を受け
- まん延防止等重点措置を実施すべき期間を通じ
- 要請等の対象となる施設(要請等対象施設)のすべてにおいて
- 営業時間の変更、収容率・人数上限の制限、飲食物提供、カラオケ設備利用の自粛に協力すること
なお、地域特例に当てはまるかどうかは、それぞれの施設ごとに判断されるため、詳細については各自治体に確認する必要があります。
受給できる期間は2022年6月末まで延長予定
雇用調整助成金について、1年を超えて受給できる期間は2022年3月31日までと定められていましたが、特例措置の延長が続いているため、受給できる期間が2022年6月30日まで延長される見込みです。
支給までの流れ、必要書類や注意点など
雇用調整助成金の申請手続き、必要書類や注意点については下記のとおりです。
支給までの流れ
- 休業等計画・労使協定:休業等の具体的な内容を検討し、労使間で休業に関する協定を締結します。
- 休業等の実施:計画に基づいて休業等を実施します。
- 支給申請:休業等の実績に基づき支給申請を行います。
- 労働局の審査:申請内容について労働局が審査します。
- 支給決定:支給決定額が振り込まれます。
必要書類
支給申請に必要な書類については、下記の厚労省サイトからダウンロード可能です。
当てはまる様式に必要事項を記入し、申請します。
なお、制度の見直し等により、その都度支給申請様式の改定を行っているため、支給申請を行う場合は最新様式のダウンロードを行うよう注意が必要です。
旧様式で申請を行った場合には、申請内容の確認のため審査に時間を要する場合があります。
最後に
企業の経営者であれば、従業員の生活は何としても守りたいものです。
変異株などの影響で一向に収束の気配がない新型コロナウイルスの感染拡大によって、事業を休業せざるを得なくなった際、従業員に支給する休業手当などを助成するため活用できる有効な援制度が雇用調整助成金となります。
特例措置の適用や休業補償の期間など、状況に鑑みて適宜アップデートされているため、最新の内容をよくチェックし、事業継続のため本制度を有効に活用することがポイントです。
関連する補助金