中小企業省力化投資補助金(一般型)は、オーダーメイドの省力化設備・システムの導入について、国から支援を受けられる制度です。補助率は1/2〜2/3、補助額は最大で1億円に設定されており、国の補助金の中でも大型に分類されます。
本補助金の本質は、省力化によって企業の生産性向上を図り、従業員の賃上げを実現することです。申請における賃上げ要件・対象期間は厳密に設定されており、目標未達に終わった場合は補助金の返還が求められます。
補助金の申請を検討している企業は、賃上げ要件はもちろん、対象者・対象期間についても慎重に検討し、現実的な事業計画を立てることが必要です。
本記事では、中小企業省力化投資補助金(一般型)の賃上げ対象者や賃上げ期間、賃上げがチェックされるタイミングについて詳しく解説します。
中小企業省力化投資補助金(一般型)の概要
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項目 |
内容・詳細 |
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事業の目的 |
IoTやロボット等のデジタル技術を活用した専用設備(オーダーメイド設備)を導入し、賃上げを実現すること |
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補助対象者 |
日本国内に本社・実施場所を有する中小企業、小規模事業者、一部の特定事業者、特定非営利活動法人(NPO法人)、社会福祉法人等 |
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補助率 |
中小企業:1/2(特例適用時は2/3)・小規模事業者・再生事業者:2/3 |
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補助上限額 |
従業員数に応じて750万円〜8,000万円 (大幅な賃上げを行う特例適用時は1,000万円〜1億円) |
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補助対象経費 |
機械装置・システム構築費(必須、単価50万円税抜以上)、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費 |
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基本要件 |
以下の全てを満たす3〜5年の事業計画を策定・実行すること 1. 労働生産性:年平均成長率(CAGR)4.0%以上向上 2. 1人当たり給与支給総額:年平均成長率3.5%以上増加 3. 事業場内最低賃金:都道府県別最低賃金+30円以上の水準を維持 従業員21名以上の場合、一般事業主行動計画を公表 |
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事業実施期間 |
交付決定日から18ヶ月以内(採択発表日から20ヶ月後の日まで) |
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実施主体 |
出典:中小企業省力化投資補助事業(一般型)応募申請の手引き(第6回公募)|独立行政法人中小企業基盤整備機構
オーダーメイド型の省力化投資を支援する制度
一般型の最大の特徴は、自社の課題や業務内容に合わせた「オーダーメイド設備」を導入できることです。一般化された既製品ではなく、事業所のレイアウトや作業工程に応じて設計・開発された機械装置・システムが補助対象となります。
また一般型では、AIやIoT、ロボット、センサーなどのデジタル技術を活用し、業務や生産工程の自動化を進められる点も特徴です。一般的な設備であっても、複数の機器を組み合わせたり自社向けにカスタマイズしたりすることで高い省力化効果が見込める場合は、補助対象となります。
なお、一般型は公募制で実施されており、申請すれば必ず採択されるわけではありません。省力化による効果や付加価値向上の見込み、事業の革新性などが審査され、採択企業が決定されます。
企業が達成すべき賃上げの要件
中小企業省力化投資補助金(一般型)において、企業が必ず達成しなければならない賃上げの要件は、「1人当たり給与支給総額」と「事業場内最低賃金」の2つです。
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指標 |
内容 |
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1人当たり給与支給総額の増加 |
補助事業終了後の事業計画期間(3〜5年間)において、「1人当たり給与支給総額」を年平均成長率+3.5%以上増加させること。 |
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事業場内最低賃金の維持 |
事業計画期間中の毎年3月末時点において、事業場内で最も低い賃金(時給換算)が、「地域別最低賃金+30円以上」の水準であること。 |
本補助金で注意したいのは、賃上げ要件を満たす期間です。
一般型では、事業計画期間中に「地域別最低賃金+30円以上」の水準を維持しなければならず、地域別最低賃金は毎年10月頃から地域毎に施行日が異なりますが、順次施行されるため、注意が必要です。
申請を検討する場合は「今」の財務状況だけで判断するのは控えましょう。「3〜5年後に人件費の底が跳ね上がっても、特注設備で利益を出せるか?」という中長期のシミュレーションを行うことが重要です。
中小企業省力化投資補助金(一般型)の「賃上げ対象者」の定義と給与項目の範囲
本補助金では、事業計画期間(3〜5年)を通じて、従業員1人当たりの給与支給総額を年平均3.5%以上引き上げることが求められます。
ここからは、賃上げ要件における算定対象と、給与項目の範囲を整理します。
「賃上げ対象者」の定義
【算出対象】
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基準年度(応募申請時の直近決算期)および事業計画期間の各事業年度において、「全月分」の給与等の支給を受けた従業員 |
本補助金における賃上げ対象者は、その事業年度において全ての月で給与が支払われている従業員です。雇用形態による決まりはなく、正社員はもちろん、パート、アルバイト、契約社員、非正規社員、出向者も全て対象に含まれます。
なお、年度途中で入社した人や退職した人は、その年度の全月分の給与を受けていません。その年度においては、算出対象から除外してください。
「賃上げ対象者」の対象外となる人
以下に該当する人は、全ての月で給与が支払われていたとしても、賃上げ対象者には含まれません。
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役員や事業主本人および専従者の人数や報酬は、本補助金の対象から除外されます。
また福利厚生による時短勤務等とは、事業者の福利厚生等により時短勤務を行っている従業員です。産前・産後休業、育児休業、介護休業などを利用している社員は、算定対象から除外できます。
このほか、常勤従業員の定義に含まれない社員も賃上げ対象外です。日々雇い入れられる人、2ヶ月以内の期間を定めて使用される人、季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される人、試用期間中の人は算定対象に含める必要はありません。
賃上げ対象となる給与項目の範囲
本補助金においては「1人当たり給与支給総額の増加」が求められます。ここで述べられている給与支給総額とは、所得税の課税対象となる『額面』の報酬・手当の全てです。
具体的には、以下の給与や手当が対象に含まれます。
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基本給(給料・賃金)、賞与、各種手当(残業手当、休日出勤手当、職務手当、地域手当、家族手当、住宅手当など) |
一方、「人件費」や「福利厚生費」に計上していても、以下の経費は算出対象から除外されます。
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法定福利費(社会保険料の会社負担分)、退職金・退職給付引当金、福利厚生費 |
中小企業省力化投資補助金(一般型)の賃上げ要件の期間
本補助金の申請を検討している企業は、開始時点から終了時点までの実行期間だけでなく、事業完了後の年次報告期間まで含めて理解する必要があります。
ここからは、中小企業省力化投資補助金(一般型)における、賃上げ要件の「期間」について詳しく解説します。
事業計画期間
本補助金では、企業が事業計画期間として3年・4年・5年のいずれかを選択して申請する仕組みです。
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基準年度:応募申請時の直近決算期 |
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事業計画1年目:補助事業(設備の導入・支払等)を完了した日が属する事業年度の翌年度 |
企業が事業計画を策定するにあたり、基準となるのは応募申請時の直近決算期です。そして設備の導入や支払いが全て完了した翌年を、事業計画1年目とします。
本補助金の対象となるオーダーメイド設備は、設計や開発に時間がかかります。交付決定から導入完了までは、最長18ヶ月(約1年半)の猶予があると考えてよいでしょう。
すなわち設備の納期が長いほど、賃上げの原資を作る準備期間を長く確保できるということです。
効果報告の期間
補助事業が完了して事業計画がスタートした後も、企業には継続的な報告義務が課されます。報告のタイミングは、事業計画期間の1年目が終了した後の最初の4月から毎年5年間です。
企業は事業場内最低賃金の達成状況を提示できるよう、賃金台帳や労働条件通知書・確定申告書などを添えて報告を行わなければなりません。
給与支給総額の目標が計画終了時に未達だった場合や、事業場内最低賃金が毎年の確認時点で未達だった場合は、補助金の返還を求められることがあります。
中小企業省力化投資補助金(一般型)における賃上げ要件の比較タイミング
本事業における賃上げ要件の「比較タイミング」は、2つの主要な指標(給与支給総額と事業場内最低賃金)ごとに異なります。
「1人当たり給与支給総額」の比較タイミング
会社全体の賃上げ水準を測るこの指標は、「各事業年度(決算期)」を単位として比較します。
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比較の起点(基準年度) |
応募申請時の直近決算期の数値を基準とする |
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判定のタイミング |
事業者が設定した事業計画期間(3〜5年間)の終了時点において、目標を達成しているかを確認する |
「事業場内最低賃金」の比較タイミング
この指標では、事業計画期間中、「毎年」継続して要件を満たしている必要があります。
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比較の対象 |
各時点における「事業実施都道府県の最低賃金+30円(特例適用時は50円)」 |
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判定のタイミング |
補助事業を完了した事業年度の翌年度(事業計画1年目)以降、毎年3月末時点 |
最低賃金が上がるのは、地域ごとに異なり毎年10月~翌年3月です。補助金のチェック日とは最長で約半年のタイムラグがあるため、先回りで自社の時給をメンテナンスしておくことが必要です。
「事業場内最低賃金引き上げ」の加点を受ける場合の比較タイミング
本事業では、すでに賃上げを実施している企業について、申請審査での優遇措置があります。
「事業場内最低賃金引き上げ」の加点を受ける場合、比較タイミングは以下のようになります。
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比較月 |
2025年7月と応募申請直近月 |
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達成すべき引き上げ額 |
「全国目安(63円)」以上 |
加点を希望する企業は、「2025年7月時点」の事業場内最低賃金と「応募申請の直近月」の事業場内最低賃金を比較します。
加点の対象となるには、2つのタイミングを比較して、自社の最低時給が「63円以上」引き上がっていることが必要です。
まとめ
中小企業省力化投資補助金の賃上げ要件で企業が意識すべきなのは、「設備導入費を確保できるか」ではなく、「数年後まで賃上げを継続できるか」です。原材料費の高騰や売上の変動などがあった場合でも、継続して給与を引き上げられるかを検討しなければなりません。
ただし多くの企業にとって最大の課題は、賃上げそのものではなく、「設備投資によって本当に十分な利益を生み出せるか」です。省力化によって削減できる工数やコスト、増加が見込める売上をできるだけ具体的に試算し、賃上げ原資を確保できるよう計画を立てましょう。
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