経営環境改善を目指す中小企業等の事業再構築を支援し、日本経済の構造転換を促すことを主な目的として、事業再構築補助金が設定されています。
今般、第5回の補助金受給企業が公表されたので、その内容や特徴、第3回、第4回との比較などについて詳しく解説します。
第5回結果サマリー
第5回公募の応募件数は、合計21,035件でした。申請内容を審査した結果、合計で9,707件が採択されました。
適用対象は中小企業等と中堅企業等に分類されていますが、ほとんどは中小企業等となっています。
採択の主な内容は、通常枠が6,441件、緊急事態宣言特別枠が3,006件、卒業枠が9件となっています。
第3回、第4回結果との比較
直近第3回、第4回結果との比較について主要項目ごとに解説します。
通常枠の採択率
第5回(2022年6月)に採択された案件の通常枠における採択率は39.8%(申請件数16,185、採択件数6,441)となっています。
第4回(2022年3月)が37.9%(申請件数15,036、採択件数5,700)、第3回(2021年11月)が37.0%(申請件数15,423、採択件数5,713)であったため、第4回よりも1.9ポイント上昇し、第3回からは2.8ポイント上昇していることが確認できます。
※ここでの採択率は、システムで受け付けた件数(応募件数)を母数としています。
緊急事態宣言特別枠の採択率
第5回の緊急事態宣言特別枠における採択率は66.7%(申請件数4,509、採択件数3,006)でした。
第4回が66.5%(申請件数4,217、採択件数2,806)、第3回が66.7%(申請件数4,351、採択件数2,901)だったため、第4回よりも0.1ポイント上昇し、第3回とは同じ採択率となりました。3回を通して、ほぼ同じ採択率であることがわかります。
※ここでの採択率は、システムで受け付けた件数(応募件数)を母数としています。
業種ごとの採択シェア
採択された申請のうち、各業種が占める割合を第1回から追うと、次のとおりとなっています。
第1回 | 第2回 | 第3回 | 第4回 | 第5回 | |
製造業 | 31.7% | 23.2% | 21.8% | 22.7% | 22.3% |
宿泊・飲食サービス業 | 21.8% | 23.8% | 20.7% | 19.5% | 18.4% |
卸売業・小売業 | 12.4% | 14.1% | 15.3% | 15.1% | 15.2% |
建設業 | 6.7% | 8.1% | 9.3% | 10.4% | 10.5% |
生活関連サービス業・娯楽業 | 6.1% | 6.8% | 7.2% | 7.3% | 6.6% |
上記において、第5回の採択率が前回から上がった業種は、「卸売業・小売業」「建設業」です。しかしいずれも0.1%のみの上昇にとどまり、前回から大きな変化はありません。
「建設業」を初回から追ってみると3.8%上昇しており、回を追うごとに採択率が上がっています。一方、「製造業」「宿泊・飲食サービス業」では変動があるものの、徐々に採択率が下がってきています。
ただし、他業種と比較して採択率が高い点は、注目すべきポイントです。
なお第5回のみの業種別シェアは、次のとおりです。
N=9,707
出典:事業再構築補助金 第5回公募の結果について
申請額・採択額
第5回公募の申請額の分布と採択額の分布は、次のとおりです。
また、分布順に比較すると、以下のようになります。
- 100~1,500万円:申請額41%・採択額43%
【内訳】100~500万円:申請額16%・採択額18%、501~1,000万円:同14%・15%、1,001~1,500万円:同11%・10% - 1,501~3,000万円:28%・22%
- 3,001~4,500万円:21%・22%
- 4,501~6,000万円:7%・9%
- 6,000万円~1億円:3%・4%
最も多い分布である100~1,500万円をみると、第3回の採択額は47%、第4回が44%であったため、第3回よりも4ポイント下降し、第4回と比較すると1ポイント下降しています。
第5回での採択事例
今回の採択事例について、主要な業種ごとに1例ずつ取り上げます。
なお、今回公表事例については、第1回・第2回と異なり、通常枠・緊急事態宣言枠といった区分が明らかにされていない状況です。
製造業(採択件数:2,164件)
企業名:MAOI株式会社(北海道)
北海道原産にこだわったジャパニーズウイスキー製造への新規参入および職業体験施設事業
既存のワイン醸造設備に新たにウイスキー蒸留設備を追加し、製品の付加価値を向上させるとともに、来場者に「ワイン醸造とウイスキー蒸留が体験できる職業体験施設」として公開するものです。
宿泊・飲食サービス業(採択件数:1,786件)
企業名:株式会社たけまる(岡山県)
蕎麦屋が挑戦する!食とアートのカフェレストラン
和モダンな商品力・店舗力・器へのこだわりを活かして、「食とアートの融合」をテーマにカフェ兼ギャラリーという新たなビジネスモデルを構築します。具体的には、古民家を改装した非日常空間で、他社には無い和モダンなスイーツを味わえるアフタヌーンティとこだわり抜いた器類を贅沢に楽しめる空間を創出します。
卸売業・小売業(採択件数:1,475件)
企業名:株式会社ライジングコーポレーション(茨城県)
メンテナンス経験とIOT活用による選択されるコインランドリー
自動車整備業やコインランドリーメンテナンス業の経験とIOTを活かし、地域エリアに合わせたコインランドリーを開業し、激減してしまった売上の向上と雇用を生み出します。
建設業(採択件数:1,019件)
企業名:谷防株式会社(東京都)
中古建築資材の販売プラットフォーム運営事業計画
谷防株式会社は主に建物大規模修繕時の防水工事を請け負っておりますが、余剰建築資材を在庫として保有せざるを得なくなるという課題解決のために建築業者間の資材販売が可能となるプラットフォームを構築し運営する事業を行います。
生活関連サービス業・娯楽業(採択件数:640件)
企業名:株式会社ウォータームーン(福岡県)
無添加で栄養価の高いプレミアムドッグフードの製造販売
テレワークが出来ない対面の職種でコロナウイルスによる大きな影響を受けた為、専門の獣医師・管理栄養士とタッグを組み『完全無添加のプレミアムドッグフード』を全国へ向けEC販売。地元農家のフードロスの実現やウェブに強い会社に生まれ変わる為の新分野展開。
最後に
一旦収束の気配を見せた新型コロナウイルスの感染拡大ですが、ここへきてオミクロン株の発生による新たな制限など、まだまだ社会・経済の先行きが見通せない状況です。
こうした状況下、事業再構築補助金は厳しい経営環境にある中小・中堅企業を支援することを目的として設定され、今般、第5回の採択結果が公表されました。
通常枠では徐々に採択率が上昇している傾向にあります。2022年6月8日~30日までは第6回公募が行われていますので、ぜひこの制度を活用し、経営再建を図っていただきたいものです。
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