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事業者を支援する制度として多くの補助金・助成金があるなか、おすすめの制度のひとつに「業務改善助成金」があります。
生産性向上のための設備投資等につかえる助成金で、かつ、助成額が比較的高いことから、注目度の高い助成金と言えます。
そこでこの記事では、業務改善助成金について解説します。
業務改善助成金 概要
業務改善補助金は、生産性向上につながる設備投資を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するものです。
中小企業者等が行う機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練などの設備投資等、事業場内最低賃金の引き上げ等を支援します。
業務改善助成金 対象事業者
対象事業者は、以下の3つの要件をすべて満たしている必要があります。申請は工場・事務所など、事業場ごとに行う必要があります。
①中小企業・小規模事業者であること
②事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
③解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
各要件の詳細は、次のとおりです。
①中小企業・小規模事業者であること
中小企業・小規模事業者に該当するかは、下表のとおり業種ごとに定められた「A 資本金または出資額」または「B 常時使用する労働者」によって判断します。
業種 | A 資本金または出資額 | B 常時使用する労働者 | |
小売業 | 小売業、飲食店など | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 物品賃貸業、宿泊業、医療、福祉、複合サービス事業 など | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 農業、林業、漁業、建設業、製造業、運輸業、金融業 など | 3億円以下 | 300人以下 |
②事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
地域別最低賃金と業務改善助成金を申請する事業場内最低賃金とを比較し、差額が50円以内であることも要件となっています。
例として、2024年10月現在、東京都の地域別最低賃金は1,163円です(令和6年10月1日発効)。したがって、都内の事業者が本助成金の申請を行う場合、事業場内最低賃金が1,213円以下でなければなりません。
各都道府県の地域別最低賃金は、以下のページでご確認いただけます。
③解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと
本助成金では不交付要件を定めており、過去一定期間において、労働者を不当に解雇したり、賃金の引き下げ・労働時間の短縮などを行ったりしていた場合、申請できません。
不交付要件の詳細は、以下の申請マニュアルにてご確認ください。
参照:中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金 (業務改善助成金) 申請マニュアル
業務改善助成金 特例事業者について
以下①②の要件に当てはまる場合、特例事業者に該当することとなります。特例事業者は、助成上限額や対象経費の拡充が認められることがあります。
① 賃金要件 | 申請事業場の事業場内最低賃金が950円未満である事業者 |
② 物価高騰等要件 | 原材料費の高騰など社会的・経済的環 境の変化等の外的要因により、申請前3か月間のうち任意の1か月の利益率が前年同月に比べ3%ポイント※以上低下している事業者 |
※「%ポイント(パーセントポイント)」とは、パーセントで表された2つの数値の差を表す単位です。
①に該当する場合、助成上限額を拡大(助成上限額の区分10人以上)を拡大します。
②に該当する場合は、助成対象経費の拡充も受けられます。対象経費に関して、一定の自動車の導入やパソコン等の新規導入が認められる場合があります。
掲載ページ:厚生労働省 業務改善助成金 公式HP
業務改善助成金 対象経費
業務改善助成金の対象となる経費は、生産性向上、労働能率の増進に資する設備投資等であって、以下に区分される経費です。
謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製本費、原材料費、機械装置等購入費、造作費、人材育成・教育訓練費、経営コンサルティング経費、委託費 |
例として、次の経費が挙げられます。
・POS レジシステム導入による在庫管理の短縮
・リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
・顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化
・国家資格者による経営コンサルティング(顧客回転率の向上を目的とした業務フロー見直し)
・店舗改装による配膳時間の短縮
参照:中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金 (業務改善助成金) 申請マニュアル
掲載ページ:厚生労働省 業務改善助成金 公式HP
業務改善助成金 助成率・助成上限額
本助成金の助成率・助成上限額は、次のとおりです。
助成率
事業場内最低賃金 |
900円未満 |
900円以上950円未満 |
950円以上 |
助成率 |
9/10 |
4/5(9/10) |
3/4(4/5) |
※括弧内は生産性要件を満たした場合の助成率です。
生産性要件について:
「生産性」とは、企業の決算書類から算出した、労働者1人当たりの付加価値を指し、「生産性要件を満たした場合」とは、助成金の交付申請時の直近の決算書類に基づく生産性と、その3年度前の決算書類に基づく生産性を比較し、6%以上伸びている場合又は1%以上(6%未満)伸びている場合をいいます。1%以上(6%未満) の場合は、金融機関から一定の事業性評価」を得ている必要があります。
出典:中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金 (業務改善助成金) 申請マニュアル
掲載ページ:厚生労働省 業務改善助成金 公式HP
助成上限額
助成上限額は、引き上げる最低賃金額、引き上げる労働者の人数、事業所の規模によって変わります。引き上げ後の事業場内最低賃金額は、就業規則等に定めなければなりません。
業務改善助成金 助成金額の計算方法
助成金額は、生産性向上に資する設備投資等にかかった費用に一定の助成率(本記事内「業務改善助成金 助成率・助成上限額」に掲載の表参照)をかけた金額(ア)と 助成上限額(イ)とを比較し、いずれか安い方の金額となります。
ア. <対象となる経費>×<事業場内最低賃金に応じて定められている助成率>
イ. 助成上限額(引き上げる最低賃金額、引き上げる労働者の数、事業場の規模により異なる)
業務改善助成金 活用事例
業務改善助成金の活用事例のうち、主な業種における事例を紹介します。
製造業
①調理器具類
導入前 | 手作業で食品を加工、計量、製造していたため、製品の出来具合にばらつきが生じていた。また、人員を多く割く必要があり、作業効率が悪かった。 |
導入後 | 調理器具類の導入によって出来具合にばらつきがなくなり、作業時間を削減することができた。また、人員を削減することができ、他の業務に回すことが可能となったことで作業効率が向上した。 |
②包装機
導入前 | 包装を手作業で行っていたため、製品の出来具合にばらつきがあり、作業時間が長くなっていた。また、一度に生産できる量も限られていたため、作業効率が悪かった。 |
導入後 | 包装機の導入で均一な仕上がりが実現し、一度に多くの量を生産することができるようになったことで、 作業効率が向上した。 |
③冷凍冷蔵庫類
導入前 | 既存の設備では十分な冷凍が行えず、食材や製品の状態によって処理作業が生じていた。 |
導入後 | 冷凍冷蔵庫類を導入することで十分な冷凍が行えるため、保存中の食材や製品の品質が改善され、処理作業が軽減され作業効率が向上した。 |
出典:業務改善助成金業種別事例集(製造業編)
掲載ページ:厚生労働省 業務改善助成金 公式HP
小売業
①POSレジシステム、自動釣銭機等
導入前 | 入金・売上の集計や、領収書、釣銭支払等、作業時間が長くなっていた。 |
導入後 | POSレジシステム、自動釣銭機等の導入によって清算業務が自動化され、時間短縮されることにより、顧客の回転率も向上した。 |
出典:業務改善助成金業種別事例集(卸売業・小売業編)
掲載ページ:厚生労働省 業務改善助成金 公式HP
飲食業
①調理器具類
導入前 | 仕込みや調理等作業に時間がかかり、他の作業に手が回らず製造できる量も少なかった。 |
導入後 | 調理器具類の導入で仕込み時間・調理時間が短縮され、一度に製造できる量も増えて効率が上がった。 |
②洗浄機(食器洗浄機)
導入前 | 手作業で食器を洗浄していたため、作業効率が悪く時間がかかっていた。 |
導入後 | 洗浄機(食器洗浄機)を導入したことで、食器の洗浄にかかる時間が大幅に短縮し、作業効率の向上を図ることができた。 |
出典:業務改善助成金業種別事例集(宿泊業・飲食サービス業編)
掲載ページ:厚生労働省 業務改善助成金 公式HP
まとめ
この記事では、設備投資に使える業務改善助成金を紹介しました。
設備投資や賃上げをご検討中の場合は、ぜひ、本助成金への申請もあわせてご検討ください。https://biz.stayway.jp/hojyo_detail/1034/
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