経済産業省は先日、令和4年度の第2次補正予算案を公表しました。
全体の予算総額は11兆1,274 億規模となっています。
この記事では、令和4年度第2次補正予算案の骨子と、特に中小企業に関わりの深い予算項目と内容について特に詳しく解説します。
参照:経済産業省
令和4年度第2次補正予算案における主な項目
令和4年度第2次補正予算案における、主な予算項目は次の5つです。
- エネルギー価格高騰への対応と安定供給確保
- 継続的な賃上げを促進するための中小企業等の支援
- 円安を活かした経済構造の強靱化
- 新しい資本主義の加速
- 東京電力福島第一原発の廃炉や福島の復興/防災・減災、国土強靱化の推進
主要項目ごとに内容と予算枠が示されているので、詳細については下記をご参照ください。
中小企業・小規模事業者等関連の施策について
今回示された補正予算案のうち、特に中小企業・小規模事業者に密接に関わる施策について解説します。
目的
この予算を活用することで、中小企業の賃上げを条件とした補助金の拡充や、第8波を迎えたといわれるコロナ禍が続く中小企業の資金繰りに資することを目的としています。
概要
今回の補助金拡充では、新分野への展開や業態転換などを後押しする事業に5,800億円、新商品開発に向けた設備投資やIT化を支援する事業に2,000億円を、それぞれ計上しています。
これにより、中小企業の賃上げを条件として、補助率を高くするなどの優遇策を設けています。
また、資金繰り支援については、財務省の計上分212億円を含めて2,981億円とし、「ゼロゼロ融資」の返済本格化に備えて、長期間の融資に借り換える際の融資保証を支援します。
その他事業を含めると、予算総枠は合計で1兆1,190 億円となります。
以下に、継続的な賃上げを促進するための中小企業等の支援に関する個別の事業について解説します。
中小企業等事業再構築促進事業:5,800 億円
この事業では、主に下記に挙げる項目で中小企業を支援します。
成長分野への転換の支援
- 市場規模が10%以上拡大する業種・業態への転換を支援する「成長枠」を新設する一方、「グリーン成長枠」については、研究開発に関する要件を2年から1年に短縮した「エントリークラス」を新設し、裾野の拡大を図ります。
- 事業終了後3~5年で中小・中堅企業から中堅・大企業へ拡大した場合、上限が2倍となる「卒業促進枠」も新たに用意します。
- 成長分野への転換を図る事業者(成長枠)に対しては、グリーン成長枠と同様に売上減少要件を撤廃します。
- また、大胆な賃上げに取り組む事業者には、更なるインセンティブ(補助率・補助上限の引上げ)を措置します。
- 市場規模が縮小する業種・業態からの転換や、円安を活かした国内回帰を図る事業者を対象とする支援枠を新設し、業況が厳しい事業者には引き続き高い補助率で支援します。
賃上げに対する支援
- グリーン成長枠について、補助事業期間内に事業場内での最低賃金を45円以上引上げた場合には、補助率を1/2から2/3に引上げます。
- 事業終了後、3~5年で同様の水準を達成した場合、上限3,000万円増とします。
産業構造転換等の促進
- 市場規模が10%以上縮小する業種や業態からの転換を支援する「産業構造転換枠」を新設し、廃業費がある場合には上限を2,000万円上乗せします。
- 海外から国内への回帰を促進する「サプライチェーン強靱化枠」を、上限5億円、補助率1/2の内容で新設します。
- 大規模な賃金引上の場合には、上限3,000万円を上乗せします。
- 中小企業から拡大した場合(前述のとおり)、上限を2倍に引上げます。
業況が厳しい事業者への支援
新型コロナや物価高騰の影響で業況が厳しい事業者や、最低賃金引上げの影響を大きく受ける事業者については、売上10%減少を要件として、補助率:2/3~3/4の内容で引き続き手厚く支援します。
中小企業生産性革命推進事業:2,000 億円(国庫債務負担含め総額4,000億円)
この事業では、新型コロナや物価高、またインボイス制度といった事業環境変化への対応に加え、GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)など成長分野に対する前向きな投資や賃上げ、また国内回帰や海外展開を促すために中小企業・小規模事業者が行う、事業再構築や生産性向上の取組みに対して切れ目なく支援します。
各事業については既に広く認知されており、継続支援されるものです。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金)
革新的製品やサービスの開発、または生産プロセス等の改善に必要な設備投資等を支援します。
特に、大幅な賃上げに取り組む事業者へのインセンティブを強化するとともに、海外でのブランド確立などの取組みに対する支援を強化します。
小規模事業者持続的発展支援事業(持続化補助金)
小規模事業者が自ら経営計画を作成して取り組む販路開拓を支援します。
サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)
中小企業・小規模事業者が、自社の労働生産性向上を目的として行う業務効率化や、DX、サイバーセキュリティ対策等のためのITツール(ソフトウェア、アプリ、サービス等)を導入する際にこれを支援します。
事業承継・引継ぎ支援事業(事業承継・引継ぎ補助金)
事業承継やM&A後の新たな取組み(設備投資、販路開拓等)、M&A時の専門家活用(仲介・フィナンシャルアドバイザー、デューデリジェンスなど)の取組を支援します。
資金繰り支援:2,981 億円(財務省計上分212億円を含む)
コロナ関連で受けた融資の借換えによる返済負担軽減に加えて、新たな資金需要にも対応するための信用保証制度を措置するとともに、セーフティネット貸付やスーパー低利融資により、新型コロナや物価高騰の影響を受けた事業者を支援します。
また、認定支援機関のサポートを受けて経営改善計画を策定した際の支援や、創業時に経営者保証を徴求しない信用保証制度の創設、また、中小機構の出資機能の強化を図るものです。
事業環境変化への対応支援など:409 億円
中小企業・小規模事業者のインボイス・省エネといった様々な経営課題に対応するための相談体制・専門家派遣を強化し、地域企業のDX投資を加速するため、支援機関の体制整備を行うとともに、中小企業活性化協議会および、事業承継・引継ぎセンターの体制整備を行います。
また、価格交渉促進月間や下請Gメンの増強(300名体制)による価格転嫁対策の更なる強化や、輸出の初期段階からのプッシュ型のハンズオン支援や商店街が実施する、インバウンド獲得へ向けた取組みに対する支援を行います。
その他:新たな借換保証制度の創設
民間ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)からの借換需要に加えて、他の保証付融資からの借換や新たな資金需要にも対応するため、100%保証に対しては100%保証で借換えが可能となる保証制度を創設します。
金融機関の継続的な支援を受けて経営改善に取り組む事業者(一定の売上減少要件等を満たすことが要件)における保証料の一部を、上限1億円、保証料0.2%の条件で補助します。
経営者保証を徴求しない創業時の信用保証制度の創設
創業時の課題である経営者保証不要の信用保証制度について、保証上限3,500万円の条件で創設します。
最後に
経済産業省が公表した令和4年度の第2次補正予算案の骨子と、特に中小企業に対する個別の支援策について着目し、詳しく解説しました。
コロナ禍は第8波の到来が予想されており、中小企業については引き続き厳しい経営環境が続きますが、この補正予算をうまく活用し、事業の継続・拡大に役立てていただきたいものです。
関連する補助金