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0.リード文
資材価格の高騰、人手不足、設備の老朽化など、農林水産業を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。現状を改善すべく、国は「農業構造転換集中対策」として、令和7〜11年度の5年間で予算を集中的に投入することを決定しました。
令和7年度補正予算・令和8年度当初予算は一体型の編成となり、スマート農業の導入、輸出体制の整備、生産基盤の強化を後押しする補助金が大幅に拡充されています。
「設備投資をしたいが資金が足りない」「輸出に挑戦したいがハードルが高い」…このような課題を抱える事業者にとっては、補助金を活用する絶好のタイミングです。
本記事では、補助金利用を検討している事業者に向け、農林水産省所管の注目補助金を厳選して解説します。
●令和7年度補正予算および令和8年度当初予算のポイント
●食料安全保障の強化、スマート農業の推進、輸出拡大に関する施策の充実
●本記事では「農林水産省所管の注目補助金」を厳選して解説
1.予算編成の基本方針
令和7年度補正予算および令和8年度当初予算は、「強い経済を実現する総合経済対策」を軸に、「短期的な物価・供給リスクへの対応」と「中長期的な成長投資を一体で進める方針」を基本としています。
物価高への緊急対応と成長投資を継続的に実施することで、日本の潜在的な成長力を底上げするのが狙いです。
成長投資の柱の一つとされる農林水産分野においては、以下への取り組みが中心に据えられています。
●農林水産業の構造転換による「食料安全保障の確立」
●農林水産物・食品の輸出拡大による「稼ぐ力の強化」
近年の農林水産分野においては、国際情勢の不安定化や資材価格の高騰、担い手不足といった構造的な課題が顕在化しています。
令和7年度補正予算および令和8年度当初予算では、2024年6月に施行された改正「食料・農業・農村基本法」に基づき、構造転換や経営の高度化を後押しする支援に重点が置かれているのが特徴です。
参照:内閣府 令和8年度予算編成の基本方針(p1~3)
参照:内閣府 「「強い経済」を実現する総合経済対策」について(p35~37)
2.農林水産省 予算の概要
令和8年度の農林水産関係予算は、概算決定で総額2兆2,956億円となり、3年連続での増額となりました。
農林水産関係予算は、農林水産業の持続可能な成長を実現するため、主に以下のテーマに対して充てられます。
●食料安全保障の強化(農業構造転換集中対策)
●農業の持続的な発展
●農村の振興
●環境と調和のとれた食料システムの確立
●多面的機能の発揮
●2050年ネット・ゼロ等に貢献する「森の国・木の街」の実現に向けた森林資源循環利用
●施策の総合的な展開
●海洋環境の激変に適応するための水産業の強靱化
特に優先度が高いとされる「食料安全保障の強化」の中心にあるのは、改正「食料・農業・農村基本法」に基づく重点施策「農業構造転換集中対策」です。
政府は施策の実施により、令和7〜11年度の初動5年間で、農林水産業における食料安全保障の強化と収益性の高い成長産業への抜本的な転換を目指しています。
令和8年度の農林水産関係予算は「農業構造転換集中対策」に基づき、スマート農業技術の開発や施設整備、販路拡大等を通じた輸出産地の育成、国内原材料への転換などについて重点的に予算が割かれているのが特徴です。
参照:JAcom 農業協同組合新聞 農業予算250億円増 2兆2956億円 構造転換予算は倍増
3.【農林水産省】注目補助金とそのポイント
「農業構造転換集中対策」に予算が重点配分されたことにより、関連事業を対象とした補助金が拡充されています。
ここからは、農林水産事業者が注目したい補助金とポイントを解説します。
食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業
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補助上限額 |
上限6億円、下限250万円 |
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補助率 |
1/2以内(交付対象事業費の50%以内) |
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補助対象経費 |
1.施設等整備事業(輸出先国等の政府機関が定める、HACCP等の要件に適合する施設の認定など) 2.効果促進事業(認定・認証取得に向けたコンサルティング費など:1の事業費の20%以内) |
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申請窓口 |
事業所所在地を管轄する都道府県庁(農水省地方農政局経由) |
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申請期限 |
令和8年1月20日~2月上旬(都道府県要望調査締切) |
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公式ページ |
出典:農林水産省 食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業 案内チラシ
輸出先国が求める衛生規制(HACCP、ISO22000、FSSC22000、JFS-C、有機JAS等)に対応するための施設・機器整備を支援する事業です。補助対象には認証取得に向けたコンサルティング費用・研修費用も含まれており、社内体制の構築についても支援を受けられます。
この事業が目指すのは、日本産食品の輸出拡大・食品産業の収益力強化・国内食品事業者の国際競争力向上です。申請には「輸出事業計画書」の提出と農林水産大臣認定が不可欠となり、輸出意欲のない事業者は対象外となります。
【補助金の利用がおすすめの対象事業者】
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【活用事例】
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【施設等整備事業:施設等整備例】
【効果促進事業:コンサルティング例】
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参照:農林水産省 食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業 案内チラシ
持続的な食料システム確立緊急対策事業
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補助上限額 |
上限2億円、下限:100万円 (産地支援の取組を行う場合は上限3億円) |
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補助率 |
1/2以内(交付対象事業費の50%以内) |
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補助対象経費 |
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申請窓口 |
農林水産省によって採択された事務局 |
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申請期限 |
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公式ページ |
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食料システム全体の持続可能性を高めるため、原材料調達・サプライチェーンの強化・生産性向上につながる取り組みを支援する事業です。
事業内容は「産地連携支援緊急対策事業」「地域の食品産業ビジネス創出プロジェクト支援事業」の2つがあり、「企業単体での原材料確保」と「地域一体でのビジネス創出」という、異なるアプローチから「強い食料サプライチェーン」の構築を後押しします。
事業の目的は、輸入原材料の価格高騰や供給不安定というリスクを、「国産原材料への切り替え」と「産地との直接連携」により回避することです。原材料を国産へ切り替えるために必要な設備投資や、産地との連携に必要な経費などについて、国から支援を受けられます。
【補助金の利用がおすすめの対象事業者】
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【活用事例】
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【産地を支援する取組】
【産地との連携による国産食品原材料の取扱量増加に伴う取組】
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スマート農業・農業支援サービス事業導入総合サポート緊急対策
【スマート農業・農業支援サービス事業加速化総合対策事業】
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補助上限額(農業支援サービスの育成加速化支援 ) |
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補助率(農業支援サービスの育成加速化支援 ) |
(定額補助) |
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補助対象経費(農業支援サービスの育成加速化支援 ) |
ニーズ調査、人材育成、機械導入等 |
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申請窓口 |
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申請期限 |
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公式ページ |
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出典:農林水産省 スマート農業・農業支援サービス事業導入総合サポート緊急対策事業 事業の概要
出典:福岡県 スマート農業・農業支援サービス事業導入総合サポート緊急対策(スマート農業・農業支援サービス事業加速化総合対策事業)に係る要望調査(第2次)について
農業支援サービス事業者の育成・活動促進と、スマート農業技術の現場導入を総合的に支援する事業です。
現在、日本の農家は深刻な担い手不足と高齢化に直面しています。農業のスマート化による労働生産性の向上は必須ですが、農家単独でのスマート化は難しいのが実情です。国は農業のスマート化を支援するサービス事業体を育成することで、持続可能な農業構造への転換を目指しています。
事業メニューは、「スマート農業技術と産地の橋渡し支援」「農業支援サービスの育成加速化⽀援」「農業支援サービスの土台づくり支援」の3つです。対象経費や補助上限額はメニューによって異なるため、補助を受けたい事業内容で確認しましょう。
採択されるための要件としては、「継続的な農業支援サービス事業の実施が見込まれること」「サービス提供先を限定せず、複数の利用者にサービスを提供する者であること」などが挙げられています。
【補助金の利用がおすすめの対象事業者】
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【活用事例】
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参照:農林水産省 スマート農業・農業支援サービス事業導入総合サポート緊急対策事業 事業の概要
地域計画の実現に向けた支援(農地利用効率化等支援交付金など)
【農地利用効率化等支援交付金】
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補助上限額 |
地域農業構造転換支援タイプ:1,500万円 融資主体支援タイプ:300万円 |
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補助率 |
事業費の 3/10以内 |
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補助対象経費 |
農業用機械の取得、ビニールハウスの整備など |
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申請窓口 |
地方農政局 |
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申請期限 |
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公式ページ |
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地域計画の実現に向けた支援とは、定められた目標を確実かつ迅速に達成させるための国・自治体の補助事業群です。 担い手確保・育成、経営規模拡大、農地集約を目的に、必要な機械・施設の導入などといった多角的な支援が実施されます。
地域計画とは、農業経営基盤強化促進法に基づく法定計画です。農業者・自治体・関係者が話し合い、10年後を見据えた地域農業の将来像と農地利用の姿を明確化した設計図を作成しています。
地域計画実現のための支援は主に以下の4つの柱で構成され、それぞれ具体的な補助事業が展開されています。
1.地域計画に沿った産地化・施設整備への支援(強い農業づくり総合支援交付金【R8当初】など)
2.目標地図に沿った農地の集約化への支援(農地集約化促進事業【R7補正】)
3.地域計画に位置付けられた農業を担う者の経営発展等(農地利用効率化等支援事業【R8当初】など)
4.受け手不在農地解消のための外部からの担い手の誘致(農業経営・就農支援体制整備推進事業【R8当初】など)
補助金は「地域計画」の達成と連動しており、地域計画に位置付けられていない農業者や、担い手に該当しない農業者は対象外です。
補助金の採択においては、地域の農地集約や将来の農地利用に対し「どのように貢献するか」が問われる仕組みになっています。
【補助金の利用がおすすめの対象事業者(農地利用効率化等支援交付金)】
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【活用事例(農地利用効率化等支援交付金)】
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産地生産基盤パワーアップ事業
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補助上限額 |
事業によって異なる |
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補助率 |
1/2以内または定額(事業によって異なる) |
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補助対象経費 |
整備事業(施設整備)
基金事業(生産支援事業)
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申請窓口 |
都道府県、地方農政局等 |
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申請期限 |
- |
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公式ページ |
地域が策定した「産地パワーアップ計画」に基づいて農業生産基盤を強化するため、農業者の機械・施設導入・体制整備などを総合的に支援する事業です。産地の強みを生かしたイノベーションやスマート農業を実現することにより、農業の国際競争力強化を目指しています。
要件を満たした事業者は、以下の事業メニューから必要な支援を受けることが可能です。
1.新市場獲得対策:輸出や加工・業務用等の新市場獲得に向けた拠点整備、産地の体制強化
2.収益性向上対策:生産コスト低減・販売額増加等の収益力強化に向けた機械・施設整備、生産資材導入
3.生産基盤強化対策:ハウス・園地等の再整備・改修、堆肥活用による土づくり
この事業の特徴は、単なる設備導入支援ではなく、「産地全体で取り組む計画の実行を支える制度」であることです。
補助金の対象は産地パワーアップ計画に参加する農業者や農業者団体であり、事業者単体で利用できる補助金ではありません。
採択を受けるためには、各市町村の地域農業再生協議会が作成する「産地パワーアップ計画」に、取組主体として位置づけられることが必要です。
【補助金の利用がおすすめの対象事業者】
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【活用事例】
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参照:農林水産省 産地生産基盤パワーアップ事業(収益性向上対策・生産基盤強化対策)パンフレット
4.まとめ
令和7年度から始まった「農業構造転換集中対策期間」により、農林水産省関連の補助金は大幅に拡充されています。設備投資やスマート化を検討している事業者にとって、この5年間は補助金を活用する絶好のタイミングです。
設備投資の負担を軽減したい・スマート農業へシフトしたい・農業関連の事業を始めたいなどと考えている事業者は、各地域の担当窓口に相談してみましょう。
ただし補助金の申請には、多大な手間と時間がかかります。詳細な事業計画書が必要なものは、準備期間に数カ月以上かかることも珍しくありません。確実に書類を仕上げて採択率を上げたい場合は、専門家による支援を受けることも検討しましょう。



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