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令和6年2月16日、中小企業庁が令和6年度予算「成長型中小企業等研究開発支援事業」の公募を開始しました。
この事業は、中小企業者等によるものづくり基盤技術及びサービスの高度化に向けた研究開発を支援する施策です。民間ファンド等から出資を受ける予定がある場合、最大3億円の補助を受けられる可能性があります。
補助金額が大きく、研究開発を行なう企業からの注目度が高いため、本記事では「成長型中小企業等研究開発支援事業」について解説します。
成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)の趣旨と背景
特定ものづくり基盤技術(情報処理、精密加工、立体造形等の 12 技術分野)及び IoT、AI 等の先端技術を活用した高度なサービスに関する研究開発や試作品開発等の取組を支援し、中小企業のものづくり基盤技術及びサービスの高度化を通じて、イノベーションによる我が国製造業及びサービス業の国際競争力の強化を図ることを目的としています。
具体的には、中小企業者等が大学・公設試等の研究機関等と連携して行う、事業化につながる可能性の高い研究開発、試作品開発及び販路開拓への取組を最大3年間支援します。あくまでも研究開発を支援するための事業であり、生産を目的とした設備備品の導入や営利活動に関する補助事業ではありません。
※令和4年度より、旧戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)および旧商業・サービス競争力強化連携支援事業(サビサポ事業)が統合され、成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)として制度化されました。
抜粋:中小企業庁 令和6年度成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech 事業)(旧サポイン事業、旧サビサポ事業)
成果目標
出典:経済産業省 令和6年度予算案の事業概要(PR資料:一般会計)
掲載ページ:経済産業省 令和6年度経済産業省予算のPR資料一覧:一般会計
本事業では、事業終了時点で以下の達成を目指します。
・個々のプロジェクトの研究開発達成度50%超
また、事業終了後5年経過時点で、以下の達成を目指します。
・事業化を達成するプロジェクトが50%超
・補助事業者全体の付加価値額が15%以上向上
・補助事業者全体の給与支給総額が7.5%以上向上
・補助事業の総売上累計額が総予算投入額の150%
対象事業
出典:「中小企業の特定ものづくり基盤技術及びサービスの高度化等に関する指針」内、「令和3年度改正の改正概要」
ものづくり基盤技術及びサービスの高度化に向けて、中小企業が大学・公設試等と連携して行う研究開発、試作品開発及び販路開拓への取り組みが本事業の支援対象となります。
事業化につながる可能性の高い研究開発、試作品開発及び販路開拓への取組までですが、事業化までの道筋が明確に描けているものが対象となります。
そのため、研究開発計画の終了後1年以内までに、サンプル出荷等川下製造業者等からの評価を受けることが可能な計画となっていることが必要です。研究開発を伴わない販路開拓のみの事業等は申請することができません。
対象事業者の要件
対象となる事業者の要件は次のとおりです。
・中小企業を中心とした、事業管理機関、研究実施機関を含む2者以上の共同体であること
・事業の中核的な役割を中小企業が担う必要があるため、中小企業者が受け取る補助金額が、国から受け取る補助金額の2/3以上であること(=中小企業要件)
支援の区分
本事業における支援の区分(申請類型)は、次のとおりです。
通常枠
中小企業者等が大学・公設試等と連携し、高度化指針を踏まえて行う研究開発等を支援する枠です。令和3年度まで実施していた「サポイン事業」と「サビサポ事業」を統合したものです。
出資獲得枠
以下の項目を満たすことが見込まれる事業者を支援する枠です。令和4年度の本事業(Go-Tech事業)開始にあたり、創設されました。
・高度化指針を踏まえて研究開発等を行う中小企業者等である
・補助事業開始(初年度交付決定日)から補助事業終了後1年までの間に、当該研究開発プロジェクトに関し、ファンド等の出資者からの出資を受けることができる
出資獲得枠における出資者の要件
中小企業が出資獲得枠で申請する際の出資者の要件は、次のとおりです。
・「業」として中小企業への投資機能を有し、中小企業の事業化支援機能を有する法人等(地銀ファンド等)であること。
・日本国内において、現に中小企業の事業化を支援する拠点を有し、中小企業をハンズオン支援できる常駐スタッフを配置していること。
・高度化指針を踏まえた研究開発の事業化を目指す中小企業に対して支援する能力(ハンズオン能力。事業・組織・資本戦略の策定、財務会計、市場分析や取引先の紹介等の販路開拓のサポート等)を有すること。
補助事業期間・補助率・補助上限額
本事業の補助期間と補助率、補助上限額は次のとおりです。
補助事業期間
2年度または3年度
補助率
通常枠・出資獲得枠いずれも、
中小企業者等:補助率2/3以内
大学・公設試等:補助率定額(*)
(*)大学・公設試等が事業管理機関として共同体に参加している場合に限り、定額で補助されます。ただし、補助率2/3が適用される場合があります(下記注参照)。
(注1)事業管理機関である場合は、通常枠では300万円、出資獲得枠では600万円まで定額とし、それ以上については、採択審査委員会で高い評価を受けた上位50%については定額とし、下位50%については補助率2/3以内を適用します。研究等実施機関である場合は、補助金額の1/6まで定額とし、それ以上については上記基準と同等とします。
(注2)2年目及び3年目については、中間評価の結果により算定します。
補助金額(上限額)
(1) 通常枠
・単年度あたり4,500万円以下
・2年間合計で7,500万円以下
・3年間合計で9,750万円以下
(2) 出資獲得枠
・単年度あたり1億円以下
・2年間合計で2億円以下
・3年間合計で3億円以下
ただし、補助上限額はファンド等が出資を予定している金額の2倍を上限とします。
公募期間
令和6年2月16日(金)~令和6年4月19日(金)【17時締切】
※あくまで見込みであり予告なく変更することがあります。
※令和6年度においては、第2回公募を行うことは第1回公募開始時点で予定しておりません。
採択率
本事業は、令和2年度から実施しております。公表されている採択結果のうち、直近の令和5年度の採択状況を紹介します。
採択状況(令和5年度 第1回)
公募期間:令和5年2月22日~4月20日
申請件数:170件(通常枠160件、出資獲得枠10件)
採択件数:83件(通常枠80件、出資獲得枠3件)の事業を採択しました。
採択率:約48.8% (通常枠 50.0%、出資獲得枠 30.0%)
当初、採択予定件数は通常枠:100件程度、出資獲得枠:5~10件程度とされていたため、通常枠は概ね想定内に収めた一方、出資獲得枠は想定以下の結果となっています。
採択事例
<通常枠>(埼玉県)
ポスト5G及び6Gの高周波の情報通信システムに対応した電子回路基板用の低誘電化中空粒子の開発
研究の概要:我が国における5Gの本格利用並びに今後のポスト5G及び6Gの高周波の情報通信システムへの移行に伴い、情報通信機器等に内蔵されている電子回路基板の低誘電化、低誘電正接化が求められている。電子回路基板中に空気の気泡を含有させて従来よりも大幅な低誘電化、低誘電正接化を実現するために、電子回路基板に配合可能な粒子内部に空気を内包し、かつ、低誘電化、低誘電正接化の効果を発揮する低誘電化中空粒子を開発する。
<出資獲得枠>(熊本県)
研究開発計画名:生活習慣病の予防と医療費削減に貢献する食を通じた革新的な「塩分吸収抑制技術」及び応用食品の研究開発
研究の概要:塩分は必須な栄養素である一方で、過剰摂取により高血圧をはじめとする種々の生活習慣病や重篤な疾患の発症リスクをもたらす側面がある。食塩過剰摂取は日本だけでなく世界でも問題視されており、健康被害のみならず医療費増大の一因ともなっている。我々はこれまでにない革新的な塩分吸収抑制技術を高度化させるとともに、食品開発へ取り入れることで世界の塩分過剰による問題を解決し、健康社会の実現に貢献する。
参照:中小企業庁 令和5年度予算「成長型中小企業等研究開発支援事業」の補助事業者を採択しました
採択状況(令和5年度 第2回)
公募期間:令和5年6月6日~7月24日
申請件数:76件(通常枠75件、出資獲得枠1件)
採択件数:41件(いずれも通常枠)の事業を採択しました。
採択率:約53.9% (通常枠 約54.7%、出資獲得枠 0%)
第1回と比較すると申請件数・採択件数ともに大幅に下がったものの、採択率が上がりました。一方、出資獲得枠の申請件数は1件にとどまり、採択には至りませんでした。
採択事例
<通常枠>(岩手県)
研究開発計画名:畑作物由来微生物の活用による未利用バイオマスの高付加価値化
研究の概要:規格外農産物や食品飲料製造工程から発生する残渣などの未利用バイオマスを原料として、発酵アップサイクル技術により、サステナブルな化粧品原料素材を上市する。具体的には、ファーメンステーション社がもつ未利用バイオマスの糖化技術と農研機構が保有する畑作物由来酵母の発酵技術の組み合わせで、米ヌカから、化粧品素材として有望なバイオジオール等の機能性化合物の量産製造プロセスを確立する。
<通常枠>(大阪府)
研究開発計画名:高病原性鳥インフルエンザ対策用光触媒搭載機器の開発
研究の概要:昨今、高病原性鳥インフルエンザの流行で、養鶏場での大量殺処分が頻発している。当社は過去に空気中エアロゾル内のSARS-CoV-2の光触媒による不活化を検証済みで、本事業では養鶏場での設置に適した光触媒除菌脱臭機を開発し、高病原性鳥インフルエンザウイルスの不活化と、農場での卵生産性影響を評価する。本成果は高病原性鳥インフルエンザの発生を抑制し、家禽肉や卵製品の安定供給に資するものである。
参照:中小企業庁 令和5年度予算「成長型中小企業等研究開発支援事業」(第2回)の補助事業者を採択しました
最後に
今回は令和6年度「成長型中小企業等研究開発支援事業」について、解説しました。
申請のハードルが高い事業ではありますが、申請枠によっては最大3億円の補助金が受けられる事業です。
費用の掛かる研究開発において、インパクトのある補助事業となりますので、ぜひお役立てください。
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