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リスキリングとは、デジタル化をはじめとする大きな変化に対応するための知識や技術を学び直すことを意味します。
世界経済会議(ダボス会議)では平成30年からリスキリングの重要性が提唱されているほか、日本では令和4年に今後5年間で1兆円をリスキリングに投資する計画が示されました。
こうした動きから、従業員に対するリスキリングを検討する企業が増えています。そこでこの記事では、リスキリングにつかえるおすすめの補助金・助成金を8つ紹介します。
リスキリングとは
リスキリング(Re-skilling)とは、スキルを習得し直すという意味です。
また経済産業省が公表しているプレゼンテーション資料には、リスキリングについて“新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、 必要なスキルを獲得する/させること”と記載されています。
さらに、“近年では、特にデジタル化と同時に生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わるであろう職業につくためのスキル習得を指すことが増えている”としています。
具体的には、ITスキルやマーケティングスキル、マネジメントスキル、語学力などの習得が考えられます。
企業にとっては、従業員のリスキリングを推進することで業務効率化や生産性向上が期待できる、コストを抑えてDX人材の不足に対応できるなどのメリットがあります。
こうした背景から、近年、企業におけるリスキリングの取り組みが重要視されています。
出典:経済産業省 リクルートワークス研究所 石原直子 人事研究センター長/主幹研究員 リスキリングとは -DX時代の人材戦略と世界の潮流-
リスキリングにつかえる!おすすめ補助金・助成金(国主管)
国や自治体が多くの補助金・助成金を通じて、企業のリスキリングを支援しています。ここではその補助金・助成金のうち、国が主管するものを3つ紹介します。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、事業主等が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合等に助成する厚生労働省主管の助成金です。
以下、6つのコースがあります。
・人材育成支援コース |
人材育成支援コース
雇用する被保険者に対して、職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練、非正規雇用労働者を対象とした正社員化を目指す訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するものです。
・賃金助成額・経費助成率・OJT実施助成額
出典:厚生労働省 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内
掲載ページ:厚生労働省 人材開発支援助成金
賃金助成額は通常の場合 760円(1人1時間当たり)、賃金要件等を満たす場合は960円。ただし、中小企業以外の場合は、それぞれ半額になります。
経費助成率は、訓練の種類や対象となる労働者によって異なり、45~70%。中小企業以外の場合は、助成率が低くなる場合があります。賃金要件等を満たす場合はアップする場合があります。
OJT実施助成額は、10〜20万円。中小企業以外の場合は、助成額が低くなり、賃金要件等を満たす場合はアップする場合があります。
参照:厚生労働省 人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内
掲載ページ:厚生労働省 人材開発支援助成金
教育訓練休暇等付与コース
有給教育訓練休暇制度(3年間で5日以上)を導入し、労働者がその休暇を取得して訓練を受けた場合に助成します。
・賃金助成額・経費助成率・OJT実施助成額
経費助成率は30万円、賃金要件等を満たす場合は36万円。
人への投資促進コース
デジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成します。
・賃金助成額・経費助成率・OJT実施助成額
賃金助成額は訓練の種類によって異なり、760~960円(1人1時間当たり)。ただし、中小企業以外の場合は、減額される場合があります。
経費助成率は、①から④の訓練では、45~75%。中小企業以外の場合は、助成率が低くなるケースがあります。賃金要件等を満たす場合はアップする場合があります。
⑤の経費助成率は通常のケースで20万円、賃金要件等を満たす場合は24万円。
OJT実施助成額は、20万円。中小企業以外の場合は、助成額が低くなり、賃金要件等を満たす場合はアップする場合があります。
事業展開等リスキリング支援コース
新規事業の立ち上げなどの事業展開等に伴い、新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成します。
・賃金助成額
960円(中小企業以外は480円)
・経費助成率
75%(中小企業以外は60%)
建設労働者認定訓練コース
認定職業訓練または指導員訓練のうち建設関連の訓練を実施した場合の訓練経費の一部や、建設労働者に有給で認定訓練を受講させた場合の訓練期間中の賃金の一部を助成するものです。
・助成率、助成額
掲載ページ:厚生労働省 建設事業主等に対する助成金 パンフレット
助成率:助成対象経費の1/6
助成額:賃金助成は、1日当たり3,800円。賃金要件等の条件を満たした場合の割増分は1日当たり1,000円。支給上限額は1年で1,000万円です。
掲載ページ:厚生労働省 建設事業主等に対する助成金 パンフレット
建設労働者技能実習コース
雇用する建設労働者に技能向上のための実習を有給で受講させた場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成します。
・経費助成
掲載ページ:厚生労働省 建設事業主等に対する助成金 パンフレット
支給対象費用の9/20~3/4(雇用保険被保険者の数や年齢、また建設労働者が女性である場合などによって異なる)
上限額は1つの技能実習について、1人あたり10万円まで。
・賃金助成
掲載ページ:厚生労働省 建設事業主等に対する助成金 パンフレット
雇用保険被保険者数20人以下の場合1日当たり8,550円
雇用する雇用保険被保険者数21人以上の場合1日当たり7,600円
※建設キャリアアップシステム技能者情報登録者である場合は増額されます。
掲載ページ:厚生労働省 建設事業主等に対する助成金 パンフレット
業務改善助成金
業務改善助成金は、生産性向上に資する設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額(各コースに定める金額)以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するものです。
・助成上限額・助成率
助成上限額は最低賃金の引き上げ額と引き上げる労働者の数によって異なります。事業場規模が30人未満の事業者の場合、上限額は60〜600万円、事業場規模が30人以上の場合は30〜600万円です。
助成率は、事業場内最低賃金の額によって異なります。
事業場内最低賃金 |
900円未満 |
900円以上950円未満 |
950円以上 |
助成率 |
9/10 |
4/5(9/10) |
3/4(4/5) |
※括弧内は生産性要件を満たした場合の助成率です。
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業
補助事業者が実施する専門家への「キャリア相談対応」、「リスキリング提供」、「転職支援」、転職後の「フォローアップ」に要する経費を支援します。
令和6年9月17日時点で4次公募までが終了しており、5次公募に関する概要・スケジュール等は、詳細が決まり次第、キャリアアップ支援事業のホームページで公開予定です。
・補助額・補助率
補助金の支払額は、補助率に加え、補助対象経費ごとに算出されます。
補助率は対象となる経費の種類によって異なります。
1. キャリア相談、転職支援、求人開拓等に係る人件費:1/2以内
2. 外部の専門家がキャリア相談を行う場合の謝金:1/2以内
3. 補助員人件費:7/10以内
4. 広告費、システム構 築・運営費等:7/10以内
5. 個人がリスキリングのための講座等を受講する際の費用の負担軽減費用:リスキリング講座の提供価格の1/2相当額
参照:リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業ホームページ
リスキリングを通じたキャリアアップ 支援事業費補助金 (四次公募) 公募要領
リスキリングにつかえる!おすすめ補助金・助成金(自治体主管)
リスキリングに使える補助金・助成金のうち、自治体が主管するものを5つ紹介します。目安として、補助金額45万円以上のものを中心に厳選しています。
DXリスキリング助成金(東京都)
東京都内の中小企業等がその雇用する労働者に対して、デジタルトランスフォ ーメーションに関する研修を実施した際の経費の一部を助成するものです。
助成対象経費は受講者1人1研修単位で金額が算出できるもののみで、具体的には受講料や教科書及び教材代、研修に付随する登録料・管理料等が挙げられます。
・助成額・助成限度額
助成額:助成対象経費の3/4(上限75,000円/1人1研修)
助成限度額:1申請企業等あたり100万円
※上限額に達するまで複数回の申請が可能です。
事業内スキルアップ助成金(東京都)
東京都内の中小企業等が雇用する労働者に対して、短時間の研修を実施した際の経費の一部を助成することで、企業における従業員の職業能力の開発、向上を促進することを目指します。
・助成額・助成限度額
助成額:助成対象受講者数×研修時間数×760円
助成限度額:150万円(事業外スキルアップ助成金と合わせた金額)
参照:公益財団法人 東京しごと財団 事業内スキルアップ助成金
魅力ある職場づくり推進奨励金(東京都)
本事業は、都内中小企業等の労働生産性を高め、持続的な成長を促すために、専門家の派遣を受けて、職場環境の改善や人材育成、結婚から子育てまでのライフステージの支援、賃金の引上げなどの制度の構築や取組を支援することにより、従業員のエンゲージメント向上に向けた職場環境づくりの取組をした企業に対して奨励金を支給する事業です。
※エンゲージメントとは、従業員が仕事へのやりがいを感じ、組織や仕事に主体的に貢献しようとする意欲や姿勢を示す概念です。従業員のエンゲージメントが向上すると、企業の生産性向上につながると期待されています。
・補助対象事業
2回の専門家の派遣を受け、全部で15ある取組のうち2つ以上を実施した場合に奨励金を支給します。この取組のひとつに「リスキリング・資格取得支援制度」があります。
リスキリング・資格取得支援制度は、従業員が自ら学ぶ機会の確保のために、大学や教育訓練機関など外部機関を活用したリスキリングや資格取得を支援する制度です。
・補助上限額
取組内容に応じて最大130万円
参照:公益財団法人 東京しごと財団 魅力ある職場づくり推進奨励金
地域産業リスキリング実践支援事業費補助金(愛媛県)
愛媛県内の企業がDXを実践できる社内人材を育成するため、研修等に要する経費を補助することで、リスキリングを実践する企業を支援し、県内産業DXのさらなる促進を図ります。
従業員のDXに関する専門知識及び技能の習得に寄与する集合研修又はeラーニングを利用した講座の受講費及びそれに付随する教材費、従業員のITパスポート取得の際に必要となる試験の受験手数料や試験対策講座の受講費・教材費が対象経費となります。
・補助額・補助率
補助率:対象経費の1/2
補助限度額:1社当たり45万円(ただし、1人当たり15万円を限度とする)
半導体人材リスキリング支援事業補助金(宮崎県)
宮崎県内で半導体事業に関わる企業および半導体事業への参入を目指す企業における専門人材の育成確保を図るための事業です。
半導体関連人材の育成を目的として県外で実施される研修等に自社の従業員等を参加させる企業に対し、研修参加に要する経費の一部を支援します。
・補助額・補助率
補助率:1/2以内
補助上限額:参加者1人当たり10万円
まとめ
この記事では、従業員のリスキリングに取り組む企業が使える補助金・助成金を紹介しました。
補助金・助成金を活用して、ぜひ、DX時代に対応した人材育成に取り組んでください。
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