地球環境問題の解決へ向け、パリ協定6条を含む国際ルールの策定が推進される中、日本政府も2050年のカーボンニュートラル(※)に向け、脱炭素社会への移行を加速させる取り組みを進めています。
(※)温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること
令和4年度の概算要求から、主な省庁の取り組みについて詳しく解説します。
概算要求額
財務省は、各省庁からの令和4年度・一般会計概算要求額を取りまとめました。
総額は111兆6,559億円で、前年度(105兆4,071億円)を上回り、過去最大規模となっています。
参照:財務省
主要省庁における要求額
このうち、脱炭素へ向けた取り組みの中心となる省庁は環境省・経産省・国交省で、それぞれの概算要求額は以下のとおりです。
- 環境省:今年度4,345億円(前年度3,233億円)
- 経済産業省:同10,825億円(9,170億円)
- 国土交通省:71,249億円(60,578億円)
各省の主な取組み施策
予算要求額では国土交通省が圧倒的に多額で、経済産業省と環境省がそれに続きますが、最も多岐に渡る取組みを展開しているのは環境省です。
それぞれの取組みについて解説します。
環境省
環境省では、71件にものぼる脱炭素化事業の展開を計画しています。
参照:環境省
その中から、主な施策について取り上げて解説します。
予算額の大きい事業
地域脱炭素移行・再エネ推進交付金(要求予算額:200億)
- 目的:地域脱炭素ロードマップに基づき、脱炭素事業に意欲的に取り組む地方公共団体などを複数年度にわたって継続的かつ包括的に支援する
- 補助対象:地方公共団体等
- 実施期間:令和4年度~令和12年度
- 交付率:3/4~1/2
PPA(*)活用による、地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業(同:165億)
(*)Power Purchase Agreement(電力販売契約)
- 目的:PPAモデルを活用した自家消費型太陽光や蓄電池の導入支援を通じ、ストレージパリティの達成を目指
- 補助対象:民間事業者・団体
- 実施期間:令和3年度~令和6年度
戸建住宅ZEH(*)化等支援事業、集合住宅の省CO2化促進事業(130億)
(*)ゼロ・エネルギー・ハウス:住宅の一次エネルギーの年間消費量が概ねゼロになる住居
- 目的:ZEHを普及させ、家庭部門からのCO2排出を削減する
- 補助対象:民間事業者
- 実施期間:令和3年度~令和7年度(戸建て)、平成30年度~令和5年度(集合住宅)
中小企業向けの補助事業
企業の脱炭素経営実践促進事業(6億)
- 目的:排出削減に取り組む中小企業が、消費者や投資家・金融機関などから取組みを評価され、脱炭素経営の具体的取り組みを促進する
- 補助対象:民間事業者・団体
グリーンリカバリー(*)の実現に向けた、中小企業等向けCO2削減比例型設備導入支援事業(10億)
(*)コロナ危機から脱炭素を通して復興すること
- 目的:コロナ禍を乗り越えて脱炭素に取り組む中小企業を支援する
- 特徴:省CO2設備の導入に対して、CO2削減量に比例した補助額を支給
- 補助上限:5,000万円
工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(40億)
1.脱炭素化促進計画策定支援 (補助率: 1/2、補助上限 100万円)
対象:CO2排出量50t以上3000t未満の工場・事業場を保有する中小企業
2. 設備更新補助 (補助率: 1/3)
A. 「脱炭素化促進計画」に基づく設備更新の補助 (補助上限1億円)
B. 主要なシステム系統で「脱炭素化促進計画」に基づく 設備更新の補助
3. 目標遵守状況の把握、事例分析等参加事業者のCO2排出量等の管理等、実践例の分析・横展開の方策検討
消費者向けの事業
食とくらしの「グリーンライフポイント(*)」推進事業(10億)
(*)日常の環境配慮行動をポイントとして還元するもの
本年度はグリーンライフポイントの企画・開発に対して補助を実施
ナッジ(*)×デジタルによる脱炭素型ライフスタイル転換促進事業(22億)
(*)nudge:「そっと後押しする」意で、人々が自分自身にとって、より良い選択を自発的に取れるように手助けする政策手法
目的:炭素型のライフサイクルの転換に向けて、ナッジやBI-Techを活用すること
国民参加体験型のモデルを実証・構築する
電動車×再エネの同時導入による脱炭素型カーシェア・防災拠点化促進事業(10億)
公用車・社用車を再エネ導入とセットで電動化し、移動の脱炭素を図るとともに、遊休時には地域住民も利用可能なシェアリングを実施する
経済産業省
経済産業省の主な施策について確認します。
先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金(350億)
目的:工場や事業所のエネルギー利用効率の向上
(前年度補助内容)
(A)先進事業
上限額:15億円
補助率:中小企業2/3、大企業1/2
(B)オーダーメイド型事業
上限額:15億円
補助率:中小企業1/2、大企業1/3
(C)指定設備導入事業
上限額:1億円
設備種別、スペック毎に金額が個別設定
(D)エネマネ事業
上限額:1億円
補助率:中小企業1/2、大企業1/3
需要家主導による太陽光発電導入加速化補助金(80億)
- 目的:化石燃料への依存度を減らし、再生可能エネルギーの導入拡大を進めるにあたり、太陽光発電導入加速化補助金を実施
- 対象:一定規模以上の太陽光施設を新設する事業者
- 補助率:1/2等)
クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(334.9億)
- 目的:CO2排出量の削減のため、ガソリン車からの転換を後押しする
- 対象:電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)の購入や充電インフラ整備
- 補助率:定額、2/3、1/2等
国土交通省
国土交通省の主な取組みは次のとおりです。
既存建築物省エネ化推進事業(87.98億)
- 目的:現状利用価値が低下している建築物ストックの利用推進策として、改修を支援
- 補助内容:
建物の躯体の省エネ改修(断熱材、複層ガラス、二重サッシ、遮熱フィルム等の導入)
効率設備への改修(空調、換気、給湯、照明 等)
バリアフリー改修(廊下等の拡幅、手すりの設置、段差の解消 等)
省エネ性能の表示 - 補助上限:5,000万円(設備部分は2,500万円)
- 補助率:1/3
ZEH・ZEBの普及や木材活用、ストックの省エネ化など住宅・建築物の省エネ対策等の強化(1,384億)
概要:LCCM 住宅、ZEH、ZEB、長期優良住宅等の整備への支援等の強化や、優良な都市木造建築物等の整備や地域の気候風土に応じた建築技術・CLTなどの新たな部材を活用した、先導的な取り組みへの支援強化を行うものです。
グリーンインフラ等のインフラ・まちづくり分野におけるグリーン化の推進(204億)
概要:インフラ等を活用した太陽光発電等の地域再エネの導入・利用の拡大、道路での再生可能エネルギーの活用や道路照明の省エネ化、高度化を支援するものです。
最後に
令和4年度における脱炭素関連の補助金について解説しました。
脱炭素化・省エネは、地球温暖化の防止への取組みや、新たな成長の機会として世界規模での重要課題となっています。日本政府も、グリーン社会の実現により経済と環境の好循環が生み出されるとして、積極的な温暖化対策を推進する方向です。
こうした状況下、来年度の事業計画を策定する際には、脱炭素に関連する支援制度の活用を検討すると有益です。
関連する補助金