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自社の技術力を活かして新たなビジネス領域へ踏み出したい都内中小企業者を対象に、「成長産業分野への事業転換に向けた製品開発支援事業」が実施されています。
本事業では、専門家によるアドバイザリー会議を経たうえで、試作品の開発・改良に要する費用の一部を助成(最大1,500万円・助成率2/3以内)する「技術開発助成金」を受けられます。
本記事では、制度の概要から申請要件・助成対象経費の詳細まで、申請を検討する方が知っておくべきポイントを解説します。
成長産業分野への事業転換に向けた製品開発支援事業とは

出典:東京都中小企業振興公社 令和8年度 成長産業分野への事業転換に向けた製品開発支援事業
「成長産業分野への事業転換に向けた製品開発支援事業」は、優れた技術力を持つ都内中小企業者が新たな成長産業分野へ参入・事業転換するための取り組みを、専門家による支援と資金助成の両面からバックアップする制度です。
実施機関は公益財団法人 東京都中小企業振興公社(以下、「公社」)です。
本事業の大きな特徴は、単なる資金助成にとどまらず、専門家が事業計画をブラッシュアップする「アドバイザリー会議」を経る2段階構造になっている点です。アドバイザリー会議で「事業の可能性がある」と評価された取り組みのみが、技術開発助成金へ申請できます。
「成長産業分野」とは
本事業では、「成長産業分野」として特定の業種・分野をあらかじめ指定していません。公社の定義では「当該企業の事業の成長に資する分野」とされており、案件ごとに審査されます。
公式の想定事例では、ロボット製造、スマート農業、医療・介護市場といった分野へのアプローチが挙げられています。
自社の強みや既存事業のノウハウを活かせる内容であれば、幅広い分野への新規参入・開発が助成金の対象となる可能性があります。
助成対象となる事業の要件
技術開発助成金の対象となる事業は、成長産業分野への「事業転換」「業種転換」または「新市場進出」のいずれかを目的とするものであり、加えて以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 具体的な事業計画、および技術的な開発・改良要素があること
- 開発・改良の主要な部分(ソフトウェア開発の場合は要件定義・基本設計・機能テスト等)を申請者自身が実施すること
- 開発・改良した最終成果物の製品化および実用化を目的とすること
- アドバイザリー会議にて「事業の可能性がある」と評価された取り組みであること
なお、設備投資や生産・量産対応を目的とする申請は対象外となります。試作品の開発・改良段階にある取り組みが本助成金の対象です。
「事業転換・業種転換・新市場進出」で想定される事例
本事業が対象とする3つの類型について、日本標準産業分類をベースにした公社の想定事例を紹介します。
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区分 |
概要 |
分類変更の有無 |
イメージ・具体例 |
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①事業転換(細分類ベースでの変更) |
新たな製品・サービスの開発により、日本標準産業分類の「中分類・小分類・細分類」のいずれかを変更すること |
あり(細分類などを変更) |
製造業の企業が、「金属用金型製造業」から「ロボット製造業」へ進出するケース |
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②業種転換(大分類ベースでの変更) |
新たな製品・サービスの開発により、日本標準産業分類の「大分類」そのものを変更すること |
あり(大分類を変更) |
製造業の企業が、ソフトウェアやデジタルサービスを開発し、「情報通信業」へ転換するケース |
|
③新市場進出(主たる事業・業種の変更なし) |
業種は変えず、既存事業の延長で新たな市場や顧客層へ展開すること |
なし |
既存技術や製品を活かして、新たなニーズ・市場へ参入するケース |
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③-1 新製品の開発による新市場進出 |
新しい製品を開発して新市場へ参入する |
なし |
草刈機メーカーが、遠隔操作できる「自動草刈機」を開発し、スマート農業市場へ参入 |
|
③-2既存製品の改良による新市場進出 |
既存製品を改良して新市場へ展開する |
なし |
一般向けマットレスを改良し、医療・介護向け市場へ展開 |
助成金の申請対象者・対象事業
技術開発助成金の申請対象者は、以下の要件をどちらも満たす必要があります。
- 都内に本店又は支店があり、実質的な事業活動を行っている中小企業者(会社及び個人事業者)
- アドバイザリー会議において「事業の可能性がある」と評価を受け、「アドバイザリー会議申込書」の内容(または会議の結果)をもとに製品またはソフトウェアの開発・改良を検討している者
上記のとおり、助成金申請にはアドバイザリー会議の通過が前提条件となります。直接助成金から申請することはできませんので注意してください。
申請までの流れ・スケジュール
本事業への申請には、一般コースと事前相談コースの2種類があります。向いているケースや特徴は以下の通りです。
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コース |
向いているケース |
特徴 |
|
一般コース |
事業の構想がある程度固まっている場合 |
アドバイザリー会議の申込みから進める |
|
事前相談コース |
構想について専門家に相談しながら進めたい場合 |
専門家への事前相談から進められる |
なお、併願での申込みはできません。


出典:東京都中小企業振興公社 令和8年度 成長産業分野への事業転換に向けた製品開発支援事業
STEP1:事前相談・調整会議(②事前相談コースのみ)
開発の構想がまだ固まっていない場合や、方向性を専門家に相談しながら整理したい場合は事前相談を利用します。
事前相談の窓口は、事業所の所在地によって異なります。
- 区部:東京商工会議所 ビジネスサポートデスク東京セントラル(TEL:03-6758-9011)
- 多摩:東京都商工会連合会 多摩・島しょ事業創造支援拠点 T²BizX(TEL:042-519-4380)
事前相談を経て「調整会議」が開催されます。調整会議による助言を受け、その内容に基づいて製品・ソフトウェアの開発や改良を検討していることが、次の「アドバイザリー会議」へ申し込むための必須条件となります。
STEP2:アドバイザリー会議
アドバイザリー会議は、本事業の核となるステップです。一般コースでは公社へ申し込んだのち「書面審査」を通過した企業が、事前相談コースでは「調整会議」で助言を経た企業が、それぞれこの会議へと進みます。
会議への参加が決まった事業者は、開催に先立って公社の専門家によるハンズオン支援(約1〜2か月間)を受けることができます。伴走支援を受けながら事業計画をさらにブラッシュアップし、会議の場で事業計画をプレゼンテーション形式で発表します。
会議後には、評価結果が記載された「結果通知書」が参加事業者へ送付されます。このアドバイザリー会議において「事業の可能性がある」と評価された場合のみ、次のステップである技術開発助成金の申請へ進むことができます。
STEP3:助成金申請
アドバイザリー会議で基準を満たす評価を得たら、いよいよ技術開発助成金の申請に移ります。
助成金の申請は、国が提供する電子申請システム「Jグランツ」によるオンライン受付です。Jグランツの利用には、事前に国の審査を経て発行される「GビズIDプライム」アカウントの取得が必須となります。
令和8年度のスケジュール(目安)
令和8年度の一般コースにおけるアドバイザリー会議の申込受付期間は、令和8年5月25日(月)〜6月12日(金)となっています。

出典:東京都中小企業振興公社 成長産業分野への事業転換に向けた製品開発支援事業 スケジュール
事前相談コースの相談受付終了日については、7月中旬が予定されていますが、明確な日時は発表されていません(令和8年5月現在)。公式サイトで最新の情報をご確認ください。なお、状況によって変更される場合があります。
助成対象となる7つの経費
技術開発助成金では、以下の7つの経費区分が助成対象となります。
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No. |
経費区分 |
内容 |
|
① |
原材料・副資材費 |
試作品の製作に直接必要な材料費・部品費 |
|
② |
機械装置・工具器具費 |
開発・改良に使用する設備・器具等の購入費(試作品製作に直接使用するものに限る) |
|
③ |
委託・外注費 |
開発の一部を外部機関・企業等に委託または外注する際の費用 |
|
④ |
産業財産権出願・導入費 |
開発成果に関する特許・実用新案等の出願・取得にかかる費用 |
|
⑤ |
専門家指導費 |
開発に関して外部専門家から受けるアドバイス・技術指導にかかる費用 |
|
⑥ |
直接人件費 |
助成事業に直接従事する従業員の人件費(タイムシート等による証明が必要) |
|
⑦ |
広報販促費 |
開発した製品の販路開拓・販売促進活動にかかる費用(展示会出展費等) |
なお、設備投資・量産対応を目的とした経費は対象外です。助成対象となるのは、あくまで試作品の開発・改良段階にかかる経費に限られます。
助成対象経費の共通ルール
助成対象経費として認められるためには、以下の共通ルールを満たしている必要があります。
- 助成事業の目標達成に直接必要で、かつ最小限の経費のみが対象となります
- 試作品等を複数製作する必要がある場合は、申請書にその理由を記載しなければなりません
- 証拠書類(領収書・契約書等)は、助成事業完了年度の翌年度から5年間保存する義務があります
経費の計上にあたっては、目的との直接的な関連性を明確に示さなければなりません。審査や事後の確認に備え、適切な書類管理を徹底しましょう。
助成金の上限額・助成率・助成対象期間
|
助成限度額 |
1,500万円 |
|
助成率 |
助成対象経費の2/3以内 |
|
助成対象期間 |
交付決定日から1年6か月以内 |
|
自己負担割合 |
助成対象経費の1/3以上 |
助成率は助成対象経費の2/3以内となっており、残りの1/3以上は申請者自身が負担する必要があります。
たとえば、助成対象経費の合計が750万円の場合、助成金額は最大500万円(750万円×2/3)となり、申請者の自己負担は250万円(750万円×1/3)となります。
国や他の公的機関の補助金・助成金について、同一の申請テーマ(開発内容)で二重に受け取ることはできません。別のテーマであれば併用可能な場合がありますが、具体的な対象範囲や判断に迷う場合は公社の担当窓口へお問い合わせください。
申請にあたっての注意点
本事業を活用するうえで、以下の点に注意が必要です。
- 同一年度内の申し込みは1回限り
- アドバイザリー会議を経ずに技術開発助成金への直接申請は不可
- GビズIDプライムの取得には時間がかかる可能性
本事業への申込および助成金への申請は、同一年度において一事業者につきそれぞれ1件のみとなっています。そのため、同年度内に一度不採択となった場合、同じ年度に再申請することはできません(※翌年度以降の公募へ再度申し込むことは可能です)。
また、助成金に申請するには、事前に「アドバイザリー会議」を通過していることが必須条件となります。
申請時に使用する国の電子申請システム「Jグランツ」の利用には、「GビズIDプライムアカウント」が必要です。国の審査を伴うためアカウント発行までに数週間程度かかる場合があるため、申請を検討している段階から早めに取得手続きを進めておくことをおすすめします。
まとめ
本記事では、「成長産業分野への事業転換に向けた製品開発支援事業」の概要から申請要件・助成対象経費までを解説しました。以下に、本事業のポイントをまとめます。
- 東京都中小企業振興公社が実施する制度で、アドバイザリー会議での評価を経て、試作品開発・改良の費用を最大1,500万円(助成率2/3以内)助成する
- 「成長産業分野」の業種指定はなく、自社の事業成長に資する分野への転換・新市場進出が幅広く対象となる
- 申請にはアドバイザリー会議の通過が必須。直接助成金から申請することはできないため、まずは事前相談またはアドバイザリー会議への申し込みから始める必要がある
申請を検討している場合は、まず公式サイトで最新の募集要項を確認し、GビズIDプライムの取得準備とあわせてお早めにご相談されることをおすすめします。
自社が本事業の対象になるか、他に適切な補助金・助成金がないかなど判断に迷われている方は、ぜひStaywayにご相談ください。
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