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令和6年12月17日に令和6年度補正予算が成立し、これまで公募が行われてきた補助金の内容変更や新規補助金の情報が順次、明らかになってきました。
ものづくり補助金においては申請枠や基本要件の見直し、最低賃金引上げ特例の適用など、複数の変更が公表されています。
そこでこの記事では、ものづくり補助金に関する令和7年以降の変更点について解説します。
ものづくり補助金とは
ものづくり補助金とは、中小企業・小規模事業者等の生産性向上や持続的な賃上げに向けた新製品・新サービスの開発に必要な設備投資等を支援する制度です。
令和2年3月10日(火)の公募開始以降、運用を変えながら実施しています。
参照:中小企業庁 令和6年度補正予算ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
掲載ページ:中小企業庁 中小企業対策関連予算
ものづくり補助金 令和7年以降の変更点
出典:中小企業庁 令和6年度補正予算 「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の概要
掲載ページ:中小企業庁 中小企業対策関連予算
ものづくり補助金 令和7年以降の公募について、これまでの公募内容から複数の変更点があります。主な変更点は次のとおりです。
申請枠の見直し
これまでの公募では、申請枠は次の3枠でした。
1. 省力化(オーダーメイド)枠
2. 製品・サービス高付加価値化枠
2-1. 通常類型
2-2. 成長分野進出類型
3. グローバル枠
このうち、「省力化(オーダーメイド)枠」が廃止となり、今後は「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」の2枠のみとなります。
最低賃金引上げ特例の適用
力強い賃上げの実現に向けて対応する中小企業等の取り組みを支援し、賃上げ環境を整備するため、最低賃金引上げ特例を創設しました。
具体的には、指定する一定期間において、3か月以上の間、地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が、全従業員数の30%以上いる事業者は、最低賃金引上げ特例として補助率を1/2から2/3に引き上げます。
ただし、小規模・再生事業者は本特例の対象外となりますのでご注意ください。
製品・サービス高付加価値化枠の従業員規模区分、上限額 一部変更
製品・サービス高付加価値化枠の補助上限額に関する「従業員規模の区分」を変更し、新たに「21~50人」「51人以上」の区分ができました。
また、この区分に対してそれぞれ補助上限額を定めています。
これまで、従業員規模の区分の最大値は「21人以上」でしたが、中小企業等の企業規模に応じた投資ニーズに対応するため変更したものです。
基本要件の見直し
基本要件のひとつとして定めている給与支給総額要件に関し、変更後の内容は、「1人あたり給与支給総額の年平均成長率が事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上又は給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加」となっています。
これまでは「事業計画期間において、給与支給総額を年平均成長率1.5%以上増加させること」となっていましたが、足下の賃上げ状況等を踏まえて変更となりました。
また、これまでは加点対象となっていた「次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等」について、令和7年の公募からは基本要件に含まれることとなりました。
「次世代育成支援対策推進法(以下、次世代法)」は、次代の社会を担う子どもの健全な育成を支援するため、平成17年に施行された10年間の時限立法(令和6年改正により令和17年3月31日まで延長)です。
この次世代法に基づいて企業は、労働者の仕事と子育てに関する「一般事業主行動計画」を策定することとなっています。
「一般事業主行動計画」は、次世代育成支援対策推進法に基づき、企業が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むに当たって、(1)計画期間、(2)目標、(3)目標達成のための対策及びその実施時期を定めるものです。
※従業員101人以上の企業には、行動計画の策定・届出、公表・周知が義務付けられています。また、従業員が0人の場合は申請ができませんのでご注意ください。
参照:こども家庭庁 次世代育成支援対策
参照:厚生労働省 次世代育成支援対策推進法
参照:厚生労働省 一般事業主行動計画の策定・届出等について
収益納付は不要
今回の運用変更により、「収益納付」は不要となりました。
これまでは収益納付義務があり、事業化状況の報告から、本事業の成果の事業化または知的財産権の譲渡または実施権設定などによって収益が得られたと認められる場合、受領した補助金の額を上限として「収益納付」しなければなりませんでした。
しかし、これについて、令和7年度の内容では、収益納付を求めないとしています。
申請方法の一部見直し
19次締切分では、申請にあたり、事業計画書の本文を電子申請システムへ入力し、その補足となる図や画像を番号を振ることで本文と連携させて A4 サイズ3ページ以内の PDF にまとめて提出することとなりました。
18次締切分までは、事業計画書をwordファイルで作成したのち、電子申請システムにPDF形式のファイルを添付する方式でした。
ものづくり補助金 令和7年以降の概要
製品・サービス高付加価値化枠 | グローバル枠 | |
概要 | 革新的な新製品・新サービス開発による高付加価値化 | 海外事業の実施による国内の生産性向上 |
補助上限額 | 5人以下 750万円 (850万円) 6~20人 1,000万円 (1,250万円) 21~50人 1,500万円 (2,500万円) 51人以上 2,500万円 (3,500万円) |
3,000万円(3,100万円~4,000万円) |
(特例措置) | 大幅賃上げ特例(補助上限額を100~1,000万円上乗せ。上記カッコ内の金額は特例適用後の上限額。最低賃金引上げ特例事業者、各申請枠の上限額に達していない場合は除く。下記①、②のいずれか一方でも未達の場合、補助金返還義務あり。) ① 給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上増加、② 事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+50円以上の水準 |
|
補助率 | 中小企業1/2、小規模・再生2/3 | 中小企業1/2、小規模2/3 |
(特例措置) | 最低賃金引上げ特例(補助率を2/3に引上げ(小規模・再生事業者は除く)。 ・ 指定する一定期間において、3か月以上地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員数の30%以上いること |
参照:中小企業庁 令和6年度補正予算ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
掲載ページ:中小企業庁 中小企業対策関連予算
基本要件
ものづくり補助金の基本要件は、次のとおりです。
以下の要件を全て満たす3~5年の事業計画書の策定及び実行
① 付加価値額の年平均成長率が+3.0%以上増加
② 1人あたり給与支給総額の年平均成長率が事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上 又は給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加
③ 事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準
④ 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表等(従業員21名以上の場合のみ)
※最低賃金引上げ特例適用事業者の場合、基本要件は①、②、④のみとする。
※ 3~5年の事業計画に基づき事業を実施していただくとともに、毎年、事業化状況報告を提出いただき、事業成果を確認します。
※ 基本要件等が未達の場合、補助金返還義務があります。
補助上限・補助率
▼補助上限額
製品・サービス高付加価値化枠:750万円~2,500万円
グローバル枠:3,000万円
大幅な賃上げに取り組む事業者を対象に、上記の補助上限額に100~1,000万円を上乗せします。つまり、ものづくり補助金全体での補助上限額は4,000万円となります。
※大幅な賃上げ:(1)給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上増加(2) 事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+50円以上の水準
※最低賃金引き上げ特例事業者、各申請枠の上限額に達していない場合は除きます。
※上記(1) (2)のいずれか一方でも未達の場合、補助金返還義務があります。
▼補助率
製品・サービス高付加価値化枠:中小企業1/2、小規模・再生2/3
グローバル枠:中小企業1/2、小規模2/3
最低賃金の引き上げに取り組む事業者を対象に、補助率を1/2から2/3に引き上げます。
最低賃金の引き上げに取り組む事業者とは、既述のとおり、指定する一定期間において、3か月以上地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員数の30%以上いる事業者を指します。
なお、本特例について、小規模・再生事業者は対象外です。
補助対象経費
ものづくり補助金の補助対象経費は、次のとおりです。
共通 | 機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費 |
グローバル枠のみ | 海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費 |
その他
既述のとおり、ものづくり補助金において、令和7年度以降は収益納付は求めません。
予算額
ものづくり補助金の予算額は、令和6年度補正予算「中小企業生産性革命推進事業」3,400億円の内数です。
生産性革命推進事業として計3,400億円を確保し、その中にものづくり補助金、IT導入補助金、 持続化補助金、事業承継・M&A補助金のほか、中小企業成長加速化補助金の予算を含んでいます。
参照:中小企業庁 令和6年度補正予算ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
掲載ページ:中小企業庁 中小企業対策関連予算
ものづくり補助金 令和7年以降の公募スケジュール
ものづくり補助金 19次締切分のスケジュールは、以下のとおりです。
・公募開始:令和7年2月14日(金)
・申請受付:令和7年4月11日(金) 17時
・応募締切:令和7年4月25日(金) 17時
ものづくり補助金 活用イメージ
経済産業省が公表している資料から、ものづくり補助金の活用イメージを2例紹介します。
製品・サービス高付加価値化枠
製品・サービス高付加価値化枠は、製品・サービス開発の取組を支援する申請枠です。
活用イメージとして、最新複合加工機を導入し、これまではできなかった精密加工が可能になり、より付加価値の高い新製品を開発する例を挙げています。
グローバル枠
グローバル枠は、海外需要開拓等の取組を支援する申請枠です。
活用イメージとして、海外市場獲得のため、新たな製造機械を導入し、新製品の開発を行うとともに、海外展示会に出展する例を挙げています。
参照:中小企業庁 令和6年度補正予算ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
掲載ページ:中小企業庁 中小企業対策関連予算
ものづくり補助金 過去の採択状況
令和6年6月25日に、18次締切分の採択結果が公表されました。採択結果は以下のとおりです。なお、今後の公募とは申請枠や要件等異なりますのでご留意ください。
公募期間:令和6年1月31日から令和6年3月27日まで
申請者数:5,777件、採択者数:2,070件、採択率:約35.8%
—
以下内訳
・省力化(オーダーメイド)枠
申請者数:599件、採択者数:204件、採択率:約34.1%
・製品・サービス高付加価値化枠
申請者数:5,015件、採択者数:1,827件、採択率:約36.4%
・グローバル枠
申請者数:163件、採択者数:39件、採択率:約23.9%

最後に
この記事では、ものづくり補助金に関する令和7年以降の変更点を解説しました。
申請枠が再編されて初めての公募となりますので、申請の際は公募要領をしっかりと読み込み、準備を進めて採択を目指しましょう!
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