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通年で公募が行われる補助金のひとつに「ものづくり補助金」があります。事業再構築補助金やIT導入補助金、小規模事業者持続化補助金と並んで注目度の高い補助金です。
令和6年2月現在、17次締切・18次締切の公募期間となっています。そこでこの記事では、これまでの公募内容から17次締切以降反映された主な変更点を解説します。
ものづくり補助金とは
ものづくり補助金の正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」で、中小企業庁と独立行政法人中小企業基盤整備機構が、中小規模事業者などを支援する目的で実施している補助金です。
雇用の多くを占める中小企業の生産性向上、持続的な賃上げに向けて、革新的な製品・サービスの開発や生産プロセス等の省力化に必要な設備投資等を支援します。
ものづくり補助金において「省力化」という言葉は、今回17次締切で初めて用いられました。人手不足解消・生産性向上に向けて、「省力化」は重要なキーワードとなっています。
令和6年2月現在、17次締切・18次締切の公募期間となっており、それぞれ対象となる申請枠が異なります。
ものづくり補助金 17次締切以降の全体像
枠・類型 | 補助上限額 ※カッコ内は大幅賃上げを行う場合 |
補助率 | |
省力化(オーダーメイド)枠 | 5人以下 750万円(1,000万円) 6~20人 1,500万円(2,000万円) 21~50人 3,000万円(4,000万円) 51~99人 5,000万円(6,500万円) 100人以上 8,000万円(1億円) |
1/2※ 小規模・再生 2/3 ※補助金額1,500万円までは1/2、1,500万円 を超える部分は1/3 |
|
製品・サービス 高付加価値化枠 |
通常類型 | 5人以下 750万円(850万円) 6~20人 1,000万円(1,250万円) 21人以上 1,250万円(2,250万円) |
1/2 小規模・再生 2/3 新型コロナ回復加速化特例 2/3 |
成長分野進出類型(DX・GX) | 5人以下 1,000万円(1,100万円) 6~20人 1,500万円(1,750万円) 21人以上 2,500万円(3,500万円) |
2/3 | |
グローバル枠 | 3,000万円(3,100万円~4,000万円) | 1/2 小規模 2/3 |
➡大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例:補助事業終了後、3~5年で大幅な賃上げに取り組む事業者(給与支給総額 年平均成長率+6%以上等)に対して、補助上限額を100万円~2,000万円上乗せ (申請枠・類型、従業員規模によって異なる。新型コロナ回復加速化特例適用事業者を除く。)
参照:経済産業省 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金について(Ver.1.0)
資料掲載ページ:中小企業庁 中小企業対策関連予算
17次締切からはこれまでの公募枠が再編され、省力化(オーダーメイド)枠、製品・サービス
高付加価値化枠が新設されました。
16次締切までの補助額は最大5,000万円でしたが、17次締切からは大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例が適用された場合、補助額は最大1億円となります。(要件・申請枠による)
各申請枠の概要は、次のとおりです。
枠・類型 | 概要 | |
省力化(オーダーメイド)枠 | 人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備 (オーダーメイド設備)の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・システム投資等を支援 |
|
製品・サービス 高付加価値化枠 |
通常類型 | 革新的な製品・サービス開発の取組みに必要な設備・システム投資等を支援 |
成長分野進出類型(DX・GX) | 今後成長が見込まれる分野(DX・GX)に資する革新的な製品・サービス開発の取組みに必要な設備・システム投資等を支援 | |
グローバル枠 | 海外事業を実施し、国内の生産性を高める取組みに必要な設備・システム投資等を支援 |
17次締切は省力化(オーダーメイド)枠のみが対象となり、18次締切は省力化(オーダーメイド)枠、製品・サービス高付加価値化枠、グローバル枠の公募を行います。
ただし、17次締切の公募に応募する事業者は、18次締切の公募には応募できませんので、ご注意ください。
ものづくり補助金 17次締切分以降の変更点
17次締切からの申請枠再編により、多くの変更点があります。主な変更点は次のとおりです。
17次締切から:申請枠の再編
既述のとおり、下表のように申請枠が再編されました。
新設 | 継続 | 廃止 |
・省力化(オーダーメイド)枠 |
・グローバル枠 | ・通常枠 → 製品・サービス高付加価値化枠(通常類型)へ ・回復型賃上げ・雇用拡大枠 ・デジタル枠 ・グリーン枠 ・グローバル市場開拓枠 |
17次締切から:大幅賃上げに係る補助上限額引き上げ特例の拡充
出典:中小企業庁 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金について(Ver.1.1)
こちらも既述のとおり、16次締切までの補助額は最大5,000万円でした。17次締切からは要件を満たした場合、補助額は最大1億円となり、上限額が大幅にアップすることとなります。(要件・申請枠による)
これは大幅賃上げに係る補助上限引き上げ特例によるもので、補助事業終了後、3~5年で大幅な賃上げに取り組む事業者(給与支給総額を年平均成長率(CAGR)6%以上増加等)には、従業員規模に応じて補助上限額を100万円~2,000万円上乗せされます。
ただし、要件未達の場合、上乗せ分については全額返還が求められますのでご注意ください。
17次締切から:口頭審査の追加
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 17次公募要領 概要版
17次締切以降、書面審査に加えて、補助申請額が一定規模以上の申請を行う事業者を対象にオンラインでの口頭審査が行われることとなりました。
※画像内の口頭審査実施日程は17次締切分の日程です。18次締切分の日程は、2024年4月24日(水)~2024年5月15日(水)※4月30日~5月2日を除く
1事業者15分程度で、事業計画について、事業の適格性、革新性、優位性、実現可能性等の観点について審査されます。
17次締切から:減点対象の追加
令和元年度補正以降に採択済みで、収益納付を行っていない事業者も減点対象となりました。収益納付とは、補助事業で一定の利益が出た場合に、交付された補助金額の一部または全額を国に返納する制度を指します。
17次締切から:金融機関からの確認書提出
ファンド等を含む金融機関からの調達を予定している場合は、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書提出が必須となりました。
18次締切から:補助対象事業
申請枠の再編に伴って補助対象事業が変わったほか、18次締切で行われる製品・サービス高付加価値化枠(通常類型)では、基本要件に加えた追加要件において従来の通常枠の記載が変更され、新たな価値の創出を伴わない設備投資の申請は不可となりました。
以下、その根拠となる記述箇所です。
(1)3~5年の事業計画期間内に、新製品・サービスの売上高の合計額が、企業全体の売上高の10%以上となる事業計画を策定すること
(2)本事業に係る資金について金融機関(ファンド等を含む。)からの調達を予定している場合は、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出いただく必要があります。金融機関は、事業所の所在地域にある必要はございませんので、任意の機関を選定してください。
※ 革新的な製品・サービス開発とは、顧客に新たな価値を提供することを目的に、導入した設備・システムを用いて、自社の技術力等を活かして製品・サービスを開発することをいいます。単に設備・システムを導入するにとどまり、製品・サービスの開発を伴わないものは該当しません。また、業種ごとに同業の中小企業(地域性の高いものについては同一地域における同業他社)において既に相当程度普及している製品・サービスの開発は該当しません。
引用:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.0版
なお、省力化に資する設備投資に関しては、ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠、または、今後公募が行われる省力化投資補助金(カタログ型)が活用可能です。
ものづくり補助金 17次締切分 公募スケジュール
公募開始 :2023年12月27日(水)17:00~
電子申請受付:2024年 2月13日(火)17:00~
申請締切 :2024年 3月 1日(金)17:00まで【厳守】
※ 17次締切分補助金交付候補者の採択発表は、2024年5月中旬頃を予定しています。
ものづくり補助金 18次締切分 公募スケジュール
公募開始 :2024年 1月 31日(水)17:00~
電子申請受付:2024年 3月 11日(月)17:00~
申請締切 :2024年 3月 27日(水)17:00まで【厳守】
※ 18次締切分補助金交付候補者の採択発表は、2024年6月下旬頃を予定しています。
※ 令和5年度補正予算に基づく公募については、本公募で終了となります。
ものづくり補助金 活用イメージ
経済産業省が公表している資料から、ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠の活用イメージを2例紹介します。
サービス業(小売・卸売)× 多関節ロボット × 人手不足
●飲料陳列や在庫品出し作業において、AIシステム化された陳列棚の在庫管理システムと、連動して動く自動搬送ロボットを導入。
●3Dカメラ技術を使用してAIが自動で商品棚の在庫量を可視化することで、従業員は遠隔で不足している商品の種類と数を把握し、従業員からの指示に従って、ロボットが売り場に自動で商品を搬送し、商品棚に陳列を行う。
物流サービス業 × 自動荷役・積替ロボット × 高齢化・人手不足対応
●取扱商品が多種多様で在庫や入出荷タイミングが不規則な物流の集荷業務において、商品の保管規模に応じ、弾力的に荷役作業をロボット化できる単機能小型ロボットユニットを導入。
●当日の出荷指示データを基に決められた全カートの積載パターンに沿って、AGVがパレット/カートを運搬、ロボットが商品をつかみ、トラックバースへ運搬するまでを全自動化した。
ものづくり補助金 過去の採択状況
令和6年6月25日に、18次締切分の採択結果が公表されました。採択結果は以下のとおりです。
公募期間:令和6年1月31日から令和6年3月27日まで
申請者数:5,777件、採択者数:2,070件、採択率:約35.8%
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以下内訳
・省力化(オーダーメイド)枠
申請者数:599件、採択者数:204件、採択率:約34.1%
・製品・サービス高付加価値化枠
申請者数:5,015件、採択者数:1,827件、採択率:約36.4%
・グローバル枠
申請者数:163件、採択者数:39件、採択率:約23.9%
最後に
今回はものづくり補助金の概要と、17次締切分以降の変更点を紹介しました。
申請枠が再編されて初めての公募となりますので、申請の際は公募要領をしっかりと読み込み、準備を進めて採択を目指しましょう!
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