「労働移動支援助成金」とは企業の経済状況が落ち込みや事業規模の縮小などに伴い、離職を余儀なくされた従業員に対し、再就職の支援やその受入れを行う事業主に支給される助成金です。
転職させる企業(送り出し企業)だけでなく、転職者を受け入れる企業(受入れ企業)にもメリットのある助成金です。
労働移動支援助成金は早期雇入れ支援コースと再就職支援コースの2つのコースがあります。
今回は、労働移動支援助成金の中身をわかりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。
まず、早期雇入れ支援コースについて解説します。
概要
早期雇入れ支援コースとは、再就職援助計画などの対象者を離職後3か月以内に期間の定めのない労働者として雇い入れ、継続して雇用することが確実である事業主に対して助成されます。
主な受給要件
受給するためには、次の措置をとることが必要です。
①支給対象者を離職日の翌日から3か月以内に期間の定めのない労働者で雇い入れること。
有期雇用契約で雇い入れた後に期間の定めのない労働者として雇い入れた場合や紹介予定派遣で雇い入れた場合には支給対象となりません。
②支給対象者を一般被保険者又は高年齢被保険者として雇い入れること。
支給決定時までに事業主都合による解雇等により支給対象者を雇用しなくなった場合は、支給されません。
出典元:厚生労働省 労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)
「支給対象者」となる方
以下の全てに該当する方。
①離職から3か月以内に期間の定めのない労働者として雇い入れられること
②申請事業主に雇い入れられる直前の離職の際に「再就職援助計画」または「求職活動支援書」の対象者となっていること
③雇用されていた事業主の事業所への復帰の見込みがないこと
受給額
令和3年4月1日以降に提出された再就職援助計画等の対象者を雇い入れた場合
早期雇入れ支援
①通常助成
支給対象者1人につき30万円が支給されます。
②優遇助成
生産指標等により一定の成長性が認められる事業所の事業主が、REVIC(株式会社地域経済活性化支援機構)、中小企業再生支援協議会等による事業再生・再構築・転廃業の支援を受けている事業所等から離職した方を雇い入れた場合、支給対象者1人につき40万円が支給されます。
さらに、優遇助成に該当する場合であって、雇入れの1年後に賃金が2%以上アップした場合、支給対象者1人につき60万円(雇入れから6か月経過後に40万円(第1回申請)、さらに6か月経過後に20万円(第2回申請))が支給されます。
また、優遇助成に該当する場合であって、新型コロナウイルス感染症の影響による事業規模の縮小等により、雇入れた事業所と異なる業種(大分類)の事業所を離職した雇入れ日において45歳以上の者を雇入れた場合には、支給対象者1人につき40万円を加算されます。
出典元:厚生労働省 労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)
人材育成支援
早期雇入れ支援の支給対象となる方に職業訓練を実施した場合、<表>の額を上乗せして支給します。
訓練の種類
|
助成対象 | 支給額(通常助成) | 支給額:優遇助成 | 支給額:優遇助成(賃金上昇区分) |
---|---|---|---|---|
Off-JT | 賃金助成 | 1時間あたり900円 | 1時間あたり1,000円 | 1時間あたり1,100円 |
訓練経費助成 | 実費相当額 上限30万円 | 実費相当額 上限40万円 | 実費相当額 上限50万円 | |
OJT | 訓練実施助成 | 1時間あたり800円 | 1時間あたり900円 | 1時間あたり1,000円 |
出典元:厚生労働省 労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)
再就職支援コース
次に、再就職支援コースについて解説します。
概要
事業規模の縮小等により離職を余儀なくされる労働者等に対する再就職支援を職業紹介事業者に委託したり、求職活動のための休暇の付与や再就職のための訓練を教育訓練施設等に委託して実施した事業主に、助成金が支給されます。
受給を希望する場合は、「再就職支援計画」を作成し公共職業安定所長の認定を受けるか、もしくは「求職活動支援基本計画書」を作成し、都道府県労働局に提出する必要があります。
①再就職支援 | 離職する労働者の再就職支援を職業紹介事業者に委託して再就職を実現させた場合の助成 | |
訓練 | 再就職支援の一部として訓練を実施した場合、助成金を上乗せします | |
グループワーク | 再就職支援の一部としてグループワークを実施した場合、助成金を上乗せします | |
②休暇付与支援 | 離職が決定している労働者に対して求職活動のための休暇を与えた場合の助成 | |
③職業訓練実施支援 | 離職する労働者の再就職のための訓練を教育訓練施設等に委託して実施する場合の助成 |
主な受給要件
支給対象となる労働者は、次の①~⑦の全てを満たしている方です。
①本コースの支給申請を行う事業主(以下「申請事業主」といいます)の作成する「再就職援助計画」または「求職活動支援書」の対象者であること
②申請事業主に雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として継続して雇用された期間が1年以上の方であること
再就職支援の委託日、休暇付与支援の休暇初日、教育訓練施設等への委託契約日(委託契約によらない場合は教育訓練施設等への訓練申込日)のそれぞれ前日時点で1年以上あることが必要。
③申請事業主の事業所へ復帰の見込みがないこと
④それぞれ以下の時点で再就職先が未定であること、またはこれに準ずる状況にあること
・「再就職支援」を実施する場合は、当該委託契約日時点
・「休暇付与支援」を実施する場合は、休暇の初日時点
・「職業訓練実施支援」を実施する場合は、当該委託契約日(委託契約によらない場合は教育訓練施設等への訓練申込日)時点
⑤職業紹介事業者によって退職勧奨を受けたと受け止めている方でないこと
⑥申請事業主によって退職強要を受けたと受け止めている方でないこと
⑦職業紹介事業者に対する委託により行われる再就職支援を受けている方の場合は、当該職業紹介事業者の行う再就職支援を受けることについて承諾している方であること
受給額
支給対象者1人あたり以下の金額が支給されます。ただし、1年度1事業所あたり500人を限度とします。
再就職の支援を職業紹介事業者に委託する場合
支給対象となる方の再就職を実現させた場合に以下の金額が支給されます。
支給対象となる方の再就職を実現させた場合に以下の金額が支給されます。
中小企業事業主 【45歳以上の対象者】 |
中小企業事業主以外 【45歳以上の対象者】 |
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再就職支援 |
通常 | (委託費用-訓練実施に係る費用-グループワーク加算の額) ×1/2【2/3】 |
(委託費用-訓練実施に係る費用-グループワーク加算の額) ×1/4【1/3】 |
特例区分 | (委託費用-訓練実施に係る費用-グループワーク加算の額) ×2/3【4/5】 |
(委託費用-訓練実施に係る費用-グループワーク加算の額) ×1/3【2/5】 |
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訓練やグループワークの実施を委託した場合 <訓練> 訓練実施に係る費用×2/3を加算(上限30万円) <グループワーク> 3回以上で1万円を加算 |
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求職活動のための休暇を付与する場合
再就職実現時に、当該休暇1日当たり5,000円(中小企業事業主については8,000円)を助成(180日分が上限)します。
さらに、支給対象者の離職の日の翌日から起算して1か月以内に再就職が実現した場合、支給対象者1人につき10万円を加算します。
離職する労働者の再就職のための訓練を教育訓練施設等に委託して実施する場合
再就職実現時に、訓練実施に係る費用の2/3を助成します。(上限30万円)
まとめ
今回は、「労働移動支援助成金」について紹介しました。
企業業績が悪化した場合、「労働移動支援助成金」活用することは、労働者にとってはとてもありがたいです。
ぜひ、「労働移動支援助成金」を活用してみてください。
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