#補助金クラウド

省エネ補助金採択結果を徹底解説!

公開日 2023/06/15
更新日 2023/10/27
この記事は約10分で読めます。

※記事内容は、記事更新日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。

エネルギー価格の高騰が続くなか、省エネ設備・機器への更新に取り組む事業者を支援する補助金として注目を集めているのが、通称「省エネ補助金」です。令和4年度補正予算においては、以下の補助事業が該当します。

  • ・令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業
    ・令和4年度補正予算 省エネルギー設備への更新を促進するための補助金(省エネルギー投資促進支援事業費補助金、省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金)

令和5年10月17日には、省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金 3次公募の採択結果が公表されました。そこで本記事では、省エネ補助金の採択結果について詳しく解説します。

スポンサーリンク
補助金クラウド 事業再構築補助金
スポンサーリンク
事業再構築補助金

令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業

出典:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金

本事業は、個人事業主を含む国内事業者の省エネルギー対策(「指定設備」「EMS機器」の導入)を支援するものです。省エネルギー性能の高いユーティリティ設備・生産設備等への更新、計測・見える化・制御等の機能を備えたエネルギーマネジメントシステムの導入により省エネルギー効果の要件を満たす事業の経費を補助します。

省エネ補助金全体には、以下、A~Dの大きく4つの事業区分があります。

  • A. 先進事業
  • B. オーダーメイド型事業
  • C. 指定設備導入事業
  • D. エネルギー需要最適化対策事業

このうち、「令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業」は、「C. 指定設備導入事業」「D. エネルギー需要最適化対策事業」で構成されます。

各事業概要

ここでは、「C. 指定設備導入事業」「D. エネルギー需要最適化対策事業」の概要、補助率や補助上限金額について解説します。

(C)指定設備導入事業

「C. 指定設備導入事業」の補助対象設備は、一般社団法人 環境共創イニシアチブ(以下、SII)があらかじめ定めたエネルギー消費効率等の基準を満たし、SIIが補助対象設備として登録及び公表したもののみとなります。

この補助対象設備への更新が、本事業の申請要件となります。補助対象となる指定設備は、以下のページに掲載されています。

高効率空調や業務用給湯器といったユーティリティ設備、工作機械やプラスチック機械といった生産設備が対象で、メーカーや品番が指定されているので、設備更新及び本補助事業への申請を検討の際は、ご参照ください。

指定設備一覧:https://sii.or.jp/shitei04r/search/

補助率 1/3以内 ※令和4年度予算では定額でしたが、補正予算から変更
補助上限額 1億円/事業全体

(D)エネルギー需要最適化対策事業(エネマネ事業)

「D. エネルギー需要最適化対策事業」の補助対象設備は、SIIが補助対象設備として公表したエネルギー・マネジメント・システム(EMS)です。

申請には、以下いずれかの要件を満たす必要があります。

① 「EMSの制御効果と計測に基づく運用改善効果」により、原油換算量ベースで計画省エネルギー率が2%以上
② 申請者が自ら定め、合理的な説明が可能な計測・制御の範囲内で、「EMSの制御効果と計測に基づく運用改善効果」により原油換算量ベースで計画省エネルギー率が2%以上

補助率 中小企業者等 1/2以内, 大企業・その他 1/3以内
補助上限額 1億円/事業全体

参照:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業

採択結果

出典:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金 新規採択事業の結果について

「C. 指定設備導入事業」は1次公募においては1,920件の申請のうち1,307件が採択され、採択率は約68.1%でしたが、2次公募では1,622件の申請のうち1,515件が採択され、採択率は約93.4%にのぼりました。

また、「D. エネルギー需要最適化対策事業」についてはC事業との組み合わせ申請で、3件の申請に留まりましたが、全件が採択に至りました。

出典:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金 新規採択事業の結果について

なお、「C. 指定設備導入事業」におけるユーティリティ設備と生産設備、その他SIIが認めた高性能な設備の詳細な内訳は上表のとおりです。高効率空調や変圧器、盛業機能付きLED照明器具などは採択率が高く、高効率空調においては採択件数も著しく多いことがわかります。

同様に、生産設備では工作機械が申請件数に対して採択率が高く、その他SIIが認めた高性能な設備ではすべての設備が採択されていることがわかりますが、いずれの設備も70%以上の高採択率となっています。

令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業

出典:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業

本事業は、個人事業主を含む国内事業者の省エネルギー対策(「先進設備・システム」「オーダーメイド型設備」「EMS機器」の導入)を支援するものです。

導入ポテンシャルの拡大等を見込める先進的な設備・システムの導入、機械設計が伴うオーダーメイド型設備への更新やプロセス改修、計測・見える化・制御等の機能を備えたエネルギーマネジメントシステムを導入を支援します。

本事業は、4つの事業区分のうち、「A. 先進事業」「B. オーダーメイド型事業」「D. エネルギー需要最適化対策事業」で構成されます。

各事業概要

ここでは、「A. 先進事業」「B. オーダーメイド型事業」「D. エネルギー需要最適化対策事業」の概要、補助率や補助上限金額について解説します。

(A)先進事業

本事業の対象設備は、SIIがホームページで先進設備・システムとして公表したもののみです。補助対象設備のメーカー、該当製番などは、以下のページに公開されています。
対象設備一覧:https://sii.or.jp/senshin04r/system/search

なお、資源エネルギー庁に設置された「先進的な省エネ技術等に係る技術評価委員会」において決定した審査項目に則り、SIIが設置した外部審査委員会で審査・採択した先進設備・システムへ更新等する事業であることが申請要件です。

補助率 中小企業者等 2/3以内、大企業・その他 1/2以内
補助上限額 15億円/年度(非化石転換設備の場合は20億円)

(B)オーダーメイド型事業

機械設計を伴う設備、または事業者の使用目的に合わせて設計・製造する設備等であって、設計図書等の納品物があるものが対象設備となります。

想定設備は、以下のとおりです。
① 新規設計の設備 (フルオーダー品)
使用用途等に応じて、設備全体のエネルギー消費効率等を考慮して新たに設計・製造した 設備

② 類似設計の設備 (カスタマイズ品)
既存機器・システムを応用、又は組み合わせて特別な仕様の部品等を製造するために設計 した設備等

③ システム設計を伴う設備 (生産設備等を組み合わせた製造ライン)
製造工場等において、各工程で使用する生産設備等を組み合わせて設計した製造ライン

④ システム設計を伴う設備 (自動化装置等を組み合わせた製造ライン)
製造した加工品の作業工程を自動化するために、搬送機械等と上記①又は②の設備を連携 させて設計した製造ライン

既存設備を機械設計が伴う設備又は事業者の使用目的や用途に合わせて設計・製造する設備等へ更新等することにより 、原油換算量ベースで指定要件を満たす事業です。

上記のようなオーダーメイド型設備へ更新等する事業であることが、申請要件となります。

補助率 中小企業者等 1/2以内、大企業・その他 1/3以内
※投資回収年数7年未満の事業は、中小企業者等 1/3以内、大企業・その他で 1/4以内
補助上限額 15億円/年度(非化石転換設備の場合は20億円)

(D)エネルギー需要最適化対策事業(エネマネ事業)

補助対象設備は、SIIが補助対象設備として公表したエネルギーマネジメントシステムです。

SIIに登録されたエネマネ事業者と「エネルギー管理支援サービス」を契約し、SIIに登録されたEMSを用いて、より効果的に省エネルギー化及びエネルギー需要最適化を図る事業であることが申請要件です。

補助率 中小企業者等 1/2以内, 大企業・その他 1/3以内
補助上限額 1億円/年度

参照:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業

採択結果

参照:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業 新規採択事業の結果について

1次公募では3事業あわせた申請件数は12件と少ないものの11件が採択され、採択率は約91.7%と高採択率となりました。しかし、2次公募では申請件数9件、採択件数4件といずれも下がり、採択率は約44.4%に急低下しました。

過去公募との比較 

過去に実施された、以下3事業において共通であり、採択規模が大きい「C:指定設備導入事業」の結果を比較してみましょう。

  • 令和3年度補正 省エネルギー投資促進支援事業
  • 令和4年度 先進的省エネルギー投資促進支援事業
  • 令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業

申請・採択結果概要

申請件数 採択件数 採択率 採択金額 計画省エネ量
①令和3年度補正
省エネルギー投資促進支援事業
1,106件 974件 88.1% 87.3億円 13,860.0kl

②令和4年度
先進的省エネルギー投資促進支援事業

1,594件 828件 51.9% 53.8億円 15,738.5kl
③令和4年度補正予算
省エネルギー投資促進支援事業
1,920件 1,307件 68.1% 129.6億円 20,785.6kl

※ 「計画省エネ量」は採択事業の合計値(以下同)

申請件数は増加傾向にあり、①は1,106件、②は1,594件、そして③は1,920件にのぼっています。

採択率は①が88.1%と圧倒的に高い結果となっていますが、採択金額は直近実施された③が過去最高となり、前回の2倍以上の金額となっています。同様に、計画省エネ量も③がもっとも高い結果となりました。

採択事業概要

指定設備導入事業 平均省エネ率
(%)
平均省エネ量
(kl)
平均経費当たり省エネ量
(kl/千万円)
①令和3年度補正
省エネルギー投資促進支援事業
35.9% 14.2kl 9.8kl/千万円

②令和4年度
先進的省エネルギー投資促進支援事業

41.0% 19.0kl 16.6kl/千万円
③令和4年度補正予算
省エネルギー投資促進支援事業
39.2% 15.9kl 8.4kl/千万円
③-2 令和4年度補正予算
省エネルギー投資促進支援事業/2次公募
31.3% 8.6kl 6.6kl/千万円

※ 省エネ率、省エネ量、経費当たり省エネ量の平均値は、採択事業における各申請の合計値を採択件数で割った値

平均省エネ率は、いずれも35-40%前後と大きな差はありませんが、平均経費当たり省エネ量は②が16.6kl/千万円と突出していることがわかります。直近行われた③はその約半分の結果となり、2次公募である③-2は省エネ量がさらに低下しています。

参照:令和3年度補正 省エネルギー投資促進支援事業 採択結果

参照:令和4年度 先進的省エネルギー投資促進支援事業 採択結果

参照:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業 採択結果

公募スケジュール 

令和5年11月2日まで「令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」の4次公募が行われています。なお、「令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業」の3次公募実施予定はありません。

まとめ

「省エネ補助金」の採択結果の解説とあわせ、過去の採択結果との比較を行いました。

本補助金は、省エネ設備・機器への更新に取り組む事業者を支援するものです。省エネ設備への更新にかかる費用が補助されるだけでなく、設備の入れ替えによってランニングコストとなるエネルギーコストも抑えられます。

今後の設備更新をご検討中の場合は、ぜひ、本補助金の活用をご検討ください。

監修佐藤淳 / 公認会計士
中小企業庁認定 経営革新等支援機関 有限責任監査法人トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu)の東京オフィスに6年間、シアトルオフィスに2年間勤務。 2015年よりアジア最大級の独立系コンサルティングファームの日本オフィスにて事業戦略の構築支援、M&Aアドバイザリー、自己勘定投資の業務に従事。 2017年 自身で旅行スタートアップ(Stayway)を立ち上げ資金調達をした経験を生かしながら、補助金・ファイナンス・M&Aのサポートを実施

運営からのお知らせ