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徹底解説!省エネ補助金の採択結果

公開日 2023/06/15
更新日 2024/11/01
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※記事内容は、記事更新日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。

エネルギー価格の高騰が続くなか、省エネ設備・機器への更新に取り組む事業者を支援する補助金として注目を集めているのが、通称「省エネ補助金」です。

 

過去複数年度にわたり公募実施されていて、令和5年度補正予算においては、以下2つの支援事業を総称して「省エネ補助金」と呼んでいます。

 

・令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業
・令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業

 

令和6年8月30日には、両事業 2次公募の採択結果が公表されました。そこで本記事では、省エネ補助金の採択結果について詳しく解説します。

省エネ補助金について

出典:一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII) 省エネ設備への更新支援(省エネ補助金)特設サイト

 

省エネ補助金(省エネルギー投資促進支援事業、省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業)は、以下4つの類型で構成されています。

 

Ⅰ. 工場・事業場型
Ⅱ. 電化・脱炭素燃転型

Ⅲ. 設備単位型

Ⅳ. エネルギー需要最適型

 

上図のとおり、省エネルギー投資促進支援事業、省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業それぞれの支援内容によって、該当する類型が異なります。

令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業

出典:一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII) 令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金

 

省エネルギー投資促進支援事業は、Ⅲ. 設備単位型、Ⅳ. エネルギー需要最適型で構成されています。さまざまな業種で横断的に使われる汎用的な15設備の更新に対応する補助金です。

各類型概要

ここでは、「(Ⅲ)設備単位型」「(Ⅳ)エネルギー需要最適化型」の概要、補助率や補助上限金額について解説します。

(Ⅲ)設備単位型

設備更新の際、SIIがあらかじめ定めたエネルギー消費効率等の基準を満たし、登録及び公表した設備の導入を支援するものです。

令和4年度補正予算では「(c)指定設備導入事業」の名称で実施されており、令和5年度補正予算から「(Ⅲ)設備単位型」の名称となりました。

 

設備には高効率空調や冷凍冷蔵設備などのユーティリティ設備、工作機械やプラスチック加工機械などの生産設備などがあり、メーカー名・型番などが指定されています。

 

具体的な指定設備については、以下のページでご確認ください。

指定設備一覧:https://sii.or.jp/setsubi05r/search/

 

補助率
1/3以内

▼補助金限度額
【上限額】1億円/事業全体
【下限額】30万円/事業全体

参照:一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII) 省エネ設備への更新支援(省エネ補助金)特設サイト

(Ⅳ)エネルギー需要最適化型

SIIに登録されたエネマネ事業者と「エネルギー管理支援サービス」を契約し、 SIIに登録されたEMS(エネルギーマネジメントシステム)を用いて、より効果的に省エネルギー化及びエネルギー需要最適化を図る事業です。

令和4年度補正予算では「(d)エネルギー需要最適化対策事業」の名称で実施されていて、令和5年度補正予算より「()エネルギー需要最適化型」となりました。

 

なお、この事業は、「)設備単位型」と組み合わせた場合のみ補助対象となります。

 

「()エネルギー需要最適化型」を単独で申請する場合は、「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」にて申請可能です。

 

補助率

中小企業者等:1/2以内

大企業、その他:1/3以内

▼補助金限度額
【上限額】1億円/事業全体
【下限額】100万円/事業全体

参照:一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII) 省エネ設備への更新支援(省エネ補助金)特設サイト

2次公募 採択結果

出典:令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金2次公募の交付決定について

 

令和6年8月30日に公表された2次公募の採択結果を見ると、「)設備単位型」は2,344件の申請があったうち、1,316件が採択され、採択率は56.1%となりました。

 

また、「(Ⅲ)設備単位型」「()エネルギー需要最適化型」の組み合わせ申請では5件の申請すべてが採択される結果となりました。

 

出典:令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金2次公募の交付決定について

設備ごとの申請・採択件数等は上表のとおりです。

高効率空調や冷凍冷蔵設備、制御機能付きLED照明器具は比較的申請件数が多く、採択率も高い結果となっています。

 

同様に、生産設備では工作機械が申請件数に対して採択率が高く、その他SIIが認めた高性能な設備においても採択率56.8%となり、半数以上が採択されました。

令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業

出典:令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業

 

省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業は、先進的な省エネ設備や、工場・事業場に合わせた特注品、電化や脱炭素目的の燃転を伴う設備等の更新費用の一部を支援する補助金です。

各類型概要

ここでは、「(Ⅰ)工場・事業場型」「(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型」「(Ⅳ)エネルギー需要最適化型」の概要、補助率や補助上限金額について解説します。

(Ⅰ)工場・事業場型

先進設備や、工場や事業場全体で、機器設計が伴う設備または事業者の使用目的や用途に合わせて設計・製造する設備等の、 導入を支援します。

この類型は、さらに以下の2つの事業に分かれます。

ⓐ先進設備・システムの導入
ⓑオーダーメイド型設備の導入

 

「ⓐ先進設備・システムの導入」は、資源エネルギー庁に設置された「先進的な省エネ技術等に係る技術評価委員会」において決定した審査項目に則り、SIIが設置した外部審査委員会で審査・採択した先進設備・システムへ更新等する事業です。

 

つまり、以下の対象設備一覧に掲載されている設備への更新等が、補助対象となります。

対象設備一覧:https://sii.or.jp/koujou05r/system/search

 

補助率

中小企業者等:2/3以内

大企業、その他:1/2以内

▼補助金限度額
【上限額】15億円/年度(20億円/年度)
【下限額】100万円/年度

※ 複数年度事業の1事業当たりの上限額は30億円(40億円)
※ 括弧内は非化石申請時

一方、「ⓑオーダーメイド型設備の導入」は、機械設計が伴う設備または事業者の使用目的や用途に合わせて設計・製造する設備等(オーダーメイド型設備)へ更新等する事業です。

オーダーメイド型設備、つまり特注品の申請になるため、設備一覧はありません。

補助率
中小企業者等:1/2以内
※投資回収年数7年未満の事業は1/3以内
大企業、その他:1/3以内
※投資回収年数7年未満の事業は1/4以内

▼補助金限度額
【上限額】15億円/年度(20億円/年度)
【下限額】100万円/年度

※ 複数年度事業の1事業当たりの上限額は20億円(30億円)
※ 連携事業の上限額は30億円(40億円)
※ 括弧内は非化石申請時

参照:一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII) 省エネ設備への更新支援(省エネ補助金)特設サイト

 

(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型

化石燃料から電気への転換や、より低炭素な燃料への転換等、電化や脱炭素目的の燃料転換を伴う設備等の導入を支援します。

SIIがあらかじめ定めたエネルギー消費効率等の基準を満たし、補助対象設備として登録及び公表した、以下の設備区分から選択して導入した場合、補助対象となります。

産業ヒートポンプ
業務用ヒートポンプ給湯器
・低炭素工業炉
・高効率コージェネレーション

高性能ボイラ

 

上記に該当しない場合でも、「その他SIIが認めた高性能な設備」のうち、電化・脱炭素燃転に資するとして指定した設備も対象となります。

 

具体的な指定設備については、以下のページでご確認ください。

指定設備一覧:https://sii.or.jp/setsubi05r/search/

 

(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型の補助対象設備は、上記のとおり、令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業で公開している『(Ⅲ)設備単位型』補助対象設備一覧をご確認ください。

 

補助率
1/2以内

▼補助金限度額
【上限額】 3億円/事業全体
【下限額】 30万円/事業全体
※電化する事業の1事業当たりの上限額は5億円

参照:一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII) 省エネ設備への更新支援(省エネ補助金)特設サイト

 

(Ⅳ)エネルギー需要最適化型

「省エネルギー投資促進支援事業」の「()エネルギー需要最適化型」と同じ内容ですが、本事業で組み合わせ申請する際は「(Ⅰ)工場・事業場型」または「(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型」との組み合わせ申請となります。

その際、各事業区分とエネルギー需要最適化型のそれぞれの上限額の合計を事業全体の上限額となりますのでご留意ください。

 

参照:令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金 公募要領 3次公募用

3次公募 採択結果

参照:令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業 3次公募の交付決定について

 

3次公募では、3事業あわせて46件の申請のうち、31件が採択され、採択率は67.4%となりました。2次公募の採択率は73.0%であったため、前回と比較すると低下したこととなります。

過去公募との比較 

過去に実施された、以下3事業において共通であり、採択規模の大きい「(c)指定設備導入事業」「)設備単位型」の結果を比較してみましょう。

・令和3年度補正 省エネルギー投資促進支援事業

・令和4年度 先進的省エネルギー投資促進支援事業

・令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業
・令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業

申請・採択結果概要

申請件数 採択件数 採択率 採択金額 計画省エネ量
①令和3年度補正予算
省エネルギー投資促進支援事業
1,106件 974件 88.1% 87.3億円 13,860.0kl
②令和4年度
先進的省エネルギー投資促進支援事業
1,594件 828件 51.9% 53.8億円 15,738.5kl
③令和4年度補正予算
省エネルギー投資促進支援事業 1次
1,920件 1,307件 68.1% 129.6億円 20,785.6kl
③-2 令和4年度補正予算
省エネルギー投資促進支援事業 2次
1,622件 1,515件 93.4% 95.6億円 13,040.3kl
④令和5年度補正予算
省エネルギー投資促進支援事業 1次
1,999 件 1,195 件 59.8% 146.7 億円 19,388.8 kl
④-2 令和5年度補正予算
省エネルギー投資促進支援事業 2次
2,344 件 1,316 件 56.1% 122.7 億円 15,321.4 kl

※ 「計画省エネ量」は採択事業の合計値(以下同)

①令和3年度補正予算での実施以降、申請件数は増加傾向にあり、当初1,106件だった申請件数は⑤令和5年度補正予算実施時は2,344件にのぼっています。

 

採択率は③-2が93.4%と圧倒的に高い結果となっています。

採択事業概要

指定設備導入事業 平均省エネ率
(%)
平均省エネ量
(kl)
平均経費当たり省エネ量
(kl/千万円)
①令和3年度補正
省エネルギー投資促進支援事業
35.9% 14.2kl 9.8kl/千万円
②令和4年度
先進的省エネルギー投資促進支援事業
41.0% 19.0kl 16.6kl/千万円
③令和4年度補正予算
省エネルギー投資促進支援事業
39.2% 15.9kl 8.4kl/千万円
③-2 令和4年度補正予算
省エネルギー投資促進支援事業/2次公募
31.3% 8.6kl 6.6kl/千万円
④令和5年度補正予算
省エネルギー投資促進支援事業
42.7% 16.2 kl 6.9 kl/千万円
④-2 令和5年度補正予算
省エネルギー投資促進支援事業
39.4% 11.6 kl 7.4 kl/千万円

※ 省エネ率、省エネ量、経費当たり省エネ量の平均値は、採択事業における各申請の合計値を採択件数で割った値

平均省エネ率は、いずれも35-40%前後と大きな差はありませんが、平均経費当たり省エネ量は②が16.6kl/千万円と突出していることがわかります。

 

参照:令和3年度補正 省エネルギー投資促進支援事業 採択結果

参照:令和4年度 先進的省エネルギー投資促進支援事業 採択結果

参照:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業 採択結果

参照:令和5年度補正 省エネルギー投資促進支援事業 採択結果

公募スケジュール 

現在、省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金 複数年度事業のみ4次公募実施中で、令和7年1月14日まで申請を受け付けています。

※単年度事業は令和6年10月31日をもって終了済。

 

なお、省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金は令和7年度も実施予定ですので、設備更新を予定している事業者は本補助金の活用もあわせてご検討ください。

まとめ

「省エネ補助金」の採択結果の解説とあわせ、過去の採択結果との比較を行いました。

本補助金は、省エネ設備・機器への更新に取り組む事業者を支援するものです。省エネ設備への更新にかかる費用が補助されるだけでなく、設備の入れ替えによってランニングコストとなるエネルギーコストも抑えられます。

今後の設備更新をご検討中の場合は、ぜひ、本補助金の活用をご検討ください。

監修佐藤淳 / 公認会計士
中小企業庁認定 経営革新等支援機関 有限責任監査法人トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu)の東京オフィスに6年間、シアトルオフィスに2年間勤務。 2015年よりアジア最大級の独立系コンサルティングファームの日本オフィスにて事業戦略の構築支援、M&Aアドバイザリー、自己勘定投資の業務に従事。 2017年 自身で旅行スタートアップ(Stayway)を立ち上げ資金調達をした経験を生かしながら、補助金・ファイナンス・M&Aのサポートを実施

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