事業再構築補助金とは、政府・経済産業省主管により実施される制度で、中小企業が新分野展開や業態転換、事業・業種転換や事業再編、またはこれらの取組を通じた規模の拡大など、思い切った事業再構築にチャレンジすることを支援するものです。
今回、その3次の公募が本年7月30日から開始されました。
事業再構築補助金3次の概要
今回の事業再構築補助金3次では、ポストコロナ・ウィズコロナ時代における経済社会の変化に対応するため、中小企業の大胆な事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的としています。
この趣旨に沿って、コロナ禍の影響で厳しい経営環境にある中小・中堅企業や個人事業主、企業組合などを対象とします。
出典:事業再構築補助金の概要(中小企業等事業再構築促進事業)(以下同様)
主な変更点
今回の事業再構築補助金3次では、対象となる中小企業における、最低賃金引上げを踏まえた見直しが主眼となっています。概要は下記のとおりです。
(1)最低賃金枠の創設
最低賃金枠を創設し、業況が厳しく(※1)、最低賃金近傍で雇用している従業員が一定割合以上(※2)の事業者について、補助率を3/4に引上げ(通常枠は2/3)、他の枠に比べて採択率を優遇する。
(※1)通常枠の要件に加え、 2020年4月以降のいずれかの月の売上高が対前年又は対前々年比で30%以上減少
(※2)2020年10月から2021年6月の間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上
(※3)従業員数規模に応じ、補助上限額最大1,500万円
(2)通常枠の補助上限額の見直し
最低賃金の引上げの負担が大きい従業員数の多い事業者に配慮するため、従業員数が51人以上の場合は、補助上限を最大8,000万円まで引き上げる(従前は最大6,000万円)。
さらに、従業員数が101人以上の場合には、補助上限を最大1億円とする(「大規模賃金引上枠」の創設(※))。
(※)事業場内最低賃金および従業員数の引上げ要件あり。
(3)その他の運用の見直し
① 売上高10%減少要件の対象期間を2020年10月以降から2020年4月以降に拡大する(※)。
(※)ただし、2020年9月以前を対象月とした場合、2020年10月以降売上高が5%以上減少していることが条件。
② 売上高は増加しているものの利益が圧迫され、業況が厳しい事業者を対象とするため、売上高10%減少要件は、付加価値額の減少でも要件を満たすこととする。
③ 本補助金を活用し、新たに取り組む事業の「新規性」の判定において、「過去に製造等した実績がない」を「コロナ前に製造等した実績がない」に改める。
2次公募から継続する点
今回の変更点とあわせ、前回の2時公募から継続する項目もあります。
次にこの内容について解説します。
緊急事態宣言特別枠
緊急事態宣言特別枠の対象となる事業者として、通常枠の申請要件を満たし、緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けたことにより、令和3年1~8月のいずれかの月の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少している事業者が対象となります。
なお、売上高に代えて付加価値額を用いることも可能です。
事業規模による条件は次のとおりです。
補助金額
従業員数5人以下:100万円~500万円
同6~20人:同100万円~1,000万円
同21人以上:同100万円~1,500万円
補助率
中小企業:3/4
中堅企業:2/3
事前着手制度
補助事業の着手(購入契約の締結等)は、原則として交付決定後となります。
公募開始後、事前着手申請を提出して承認された場合には、2月15日以降の設備の購入契約等が補助対象となり得ます。ただし、設備の購入等では入札・相見積が必要です。また、補助金申請後不採択となるリスクがあります。
注意事項
- 内容が異なる別の事業であれば、同じ事業者が異なる補助金を受けることは可能です。ただし、同一事業で複数の国の補助金を受けることはできません。また、複数回にわたり事業再構築補助金を受けることはできません。
- 不正や不当な行為があった場合は補助金返還事由となります。不正があった場合は、法令に基づく罰則が適用される可能性があります。
- 事業計画は、認定経営革新等支援機関と作成しますが、補助金の申請は、事業者自身が行う必要があります。また申請者は、事業計画の作成および実行に責任を持つ必要があります。
- 他の法人・事業者と同一、または酷似した内容の事業を故意・重過失により申請した場合には、不採択あるいは交付取り消しとなり、次回以降の公募への申請ができなくなります。
- 事業計画の策定等で外部の支援を受ける際には、提供するサービスと乖離した高額な成功報酬を請求する悪質な業者に注意する必要があります。
概要:事業目的、申請要件
上述した事業目的に沿った、詳細な申請用件は次のとおりです。
(1)売上が減少していること
2020年4月以降の連続する6ケ月間のうち、任意の3ケ月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1~3月)の同3ケ月の合計売上高と比較して10%以上減少しており、2020年10月以降の連続する6ケ月間のうち、任意の3ケ月の合計売上高が、コロナ以前の同3ケ月の合計売上高と比較して5%以上減少していること。
(2)事業再構築に取り組んでいること
事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換や事業・業種転換などを実施していること。
(3)認定経営革新等支援機関と事業計画を策定すること
事業再構築に係る事業計画を、認定経営革新等支援機関と策定すること。
補助金額が3,000万円を超える案件は、金融機関(銀行、信金、ファンド等)も参加して策定する。
金融機関が認定経営革新等支援機関を兼ねる場合は、金融機関のみで可能。
補助事業終了後3~5年で、付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(同上5.0%)以上増加の達成を見込む事業計画を策定すること。
予算額、補助額、補助率
今回補助における予算額、補助額、補助率についての詳細は下記のとおりです。
第2回まで4つのコースでしたが、 第3回からは2つのコースが新設され、合計6コースになっております。
1.通常枠・2.卒業枠・3.グローバルV字回復枠の予算額・補助額・補助率
予算額は合計1兆1,485億円が計上されています。
通常枠の補助額・補助率
- 従業員20人以下:100万円~4,000万円
- 同21人~50人:100万円~6,000万円
- 同51人以上:100万円~8,000万円
- 中小企業:2/3(6,000万円超は1/2)
- 中堅企業:1/2(4,000万円超は1/3)
卒業枠・グローバルV字回復枠の補助額・補助率
- 卒業枠(中小企業対象):補助額6,000万円超~1億円、補助率2/3
- グローバルV字回復枠(中堅企業対象):同8,000万円~1億円、1/2
4.大規模賃金引上枠の予算額・補助額・補助率
個別申請案件の予算は最大1億円まで支援します。
【要件】
通常枠の申請要件を満たし、以下の①及び②を満たすことが要件です。
① 補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度から3~5年の事業計画期間終了までの間、事業場 内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げること
② 補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度から3~5年の事業計画期間終了までの間、従業員数を年率平均1.5%以上(初年度は1.0%以上)増員させること。
- 補助対象者:従業員数101人以上の中小企業・中堅企業
- 補助金額:8,000万円超~1億円
- 補助率:中小企業・2/3(6,000万円超は1/2)、中堅企業・1/2(4,000万円超は1/3)
5.緊急事態宣言特別枠と通常枠の加点における補助額・補助率
要件と補助額・補助率は次のとおりです。
【要件】
通常枠の申請要件を満たし、かつ緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受け、令和3年1月~8月のいずれかの月の売上高が対前年又は前々年の同月比で30%以上減少している事業者が対象となります。
- 従業員数5人以下:補助金額100万円~500万円
- 同6~20人:同100万円~1,000万円
- 同21人以上:同100万円~1,500万円
- 補助率:中小企業3/4、中堅企業2/3
6.最低賃金枠での予算額・補助額・補助率
要件と補助額・補助率は次のとおりです。
【要件】
通常枠の申請要件を満たし、かつ以下の①及び②を満たすこと
①2020年10月から2021年6月までの間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること
②2020年4月以降のいずれかの月の売上高が対前年又は前々年の同月比で30%以上減少していること
- 従業員数5人以下:補助金額100万円~500万
- 同6~20人:同100万円~1,000万円
- 同21人以上:同100万円~1,500万円
- 補助率:中小企業3/4、中堅企業2/3
スケジュールと準備
第3回公募については、公募開始は本年7月30日、申請受付開始は8月下旬(予定)、応募締切は9月21日です。
申請は全て電子申請となるため、GビズIDプライムアカウントが必要となります。
最後に
一向に収束の気配をみせない新型コロナウイルスの感染拡大により、飲食や観光、宿泊業界などを中心に厳しい事業運営を余儀なくされています。
中でも経営が非常に逼迫している中小企業ですが、この支援制度を最大限活用し、事業の再構築へと注力いただければと思います。
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