※記事内容は、令和7年11月17日時点の情報です。最新の情報は、必ず公式HPをご確認ください。
「中小企業新事業進出補助金」(以下、新事業進出補助金)は、新しい市場や事業分野への挑戦を後押しする制度です。
設備投資や人材確保などに活用できる資金として、事業のスタートや拡大に役立ちます。
この記事では、新事業進出補助金の採択を目指す事業者に向けて、申請時に押さえておくべき4つの重要なポイントを解説します。
1. 新規性・市場性を明確に示す
新事業進出補助金で採択されるためには、単に新しい取り組みであるだけでは不十分です。
審査では、どの市場に向けてどのような価値を提供するのか、既存事業との差別化や付加価値の高さが明確になっていることが重視されます。
どの市場をターゲットにしているのか
申請事業が狙う市場は、既存の顧客層とは異なることが求められます。
たとえば、製造業がBtoBからBtoCへ展開するケースや、地域密着型サービスが全国展開を目指すケースなど、対象市場の転換が明確であることが重要です。 市場規模や成長性、競合状況などを客観的データで補足し、説得力のある市場選定を行うことが求められます。
既存事業との違いは何か
補助対象となるのは、既存事業の延長ではなく「新事業」です。
製品・サービスの内容、提供方法、顧客層、収益構造などにおいて、既存事業と明確な違いがあることを示す必要があります。
・これまで扱っていない商材
・新たな販売チャネル
・異なる業界への参入
など、差別化ポイントを具体的に記述することが採択のポイントです。
高水準の高付加価値化を図るものであることを明確化
新事業が単なる売上増加ではなく、付加価値の向上につながることを明確に示す必要があります。
・DX導入による生産性向上
・地域資源の活用による独自性の創出
・健康・環境志向
など政策連動型のテーマを取り入れることで、事業の社会的意義や持続可能性を強調できます。付加価値額の増加見込みや、賃上げへの波及効果も加えて記載すると効果的です。
2. 実現可能性を数字で示す
新事業進出補助金の審査では、計画の新規性だけでなく、実行可能性の高さが重要視されます。
審査では「本当に事業が成功するか」を数字や根拠をもとに判断するため、売上予測や人材体制、実行スケジュールなどを明確に示すことがポイントです。
売上・利益などの見込みを根拠付けて説明する
売上や利益の見込みを提示する際は、根拠を伴ったデータが重要です。
市場規模・ターゲット顧客数・競合状況・価格設定などを組み合わせて算出した数値を示すと、計画の現実性が伝わります。単なる希望的観測ではなく、論理的な根拠を提示することで、事業の収益性と持続可能性が評価されます。
スキルを持った人材が揃っていることを明確に記載する
事業の実行には、専門知識や経験を持つ人材の存在が不可欠です。
代表者やプロジェクトメンバーの経歴・保有資格・過去の実績などを記載し、事業遂行能力を客観的に示すことがポイントです。特に新分野への進出では、外部人材の活用や研修計画も含めて、体制の充実度を明確にすることが求められます。
無理のない計画であることを明確化する
事業スケジュールや資金計画が現実的であるかどうかも審査の重要なポイントです。
スケジュールの無理のなさ・資金繰りの安定性・段階的な実行体制などを明示することで、計画の信頼性が高まります。過剰な投資や短期的な成果を求めすぎる計画はリスクと見なされるため、着実な進行を前提とした設計が必要です。
3. 地域性・社会性を示す
新事業進出補助金では、地域経済や社会への貢献度も重要な審査ポイントです。
単なる企業の利益追求ではなく、地域雇用の創出、経済波及効果、環境・社会課題への対応など、公共性のある取り組みが高く評価されます。
地域雇用の創出をアピールする
新事業によって新たな雇用が生まれる場合は、職種・人数・雇用時期などを明示することがポイントです。
常勤・パートタイムを含む雇用人数や、地元採用の比率を明確化することで、地域社会への貢献度をアピールできます。地元人材の採用や若年層・女性・高齢者の雇用促進など、地域の雇用課題に応える内容は加点要素になります。
地域の経済波及効果等をアピールする
事業が地域経済にどのような影響を与えるかを示すことも重要です。
地元企業との取引拡大・観光客の誘致・地域資源の活用など、経済活動の広がりを具体的に示すと、地域全体に利益をもたらす事業であることが伝わります。数値や過去事例を用いると、説得力が増します。
環境・社会課題への貢献をアピールする
新事業が環境や社会課題の解決につながる点も評価対象です。
CO2排出削減・廃棄物の再利用・地域福祉への貢献・災害対応力の強化など、SDGsに関連する取り組みは政策的にも評価されやすくなります。社会的意義を示すことで、補助金の公共性要件にも合致します。
4. 加点項目をできる限りおさえる
採択率を上げるうえで、加点項目の有無は重要な要素です。
新事業進出補助金では、一定の社会的取組みや認証を受けている事業者に対し、審査時の加点が行われます。条件を満たしていれば、申請内容そのものに加えて評価がプラスされるため、該当する項目はできる限り押さえておくことが採択のポイントです。
①パートナーシップ構築宣言加点
大企業と中小企業の協働を促すパートナーシップ構築宣言を公表している企業は、加点の対象です。
取引の適正化やサプライチェーン全体の価値向上に取り組む姿勢が評価されます。公表状況が明確に確認できるため、早めの登録がおすすめです。
②くるみん加点
子育て支援や柔軟な働き方に積極的な企業として、「トライくるみん」「くるみん」「プラチナくるみん」のいずれかの認定を受けている場合は、加点の対象になります。
ワーク・ライフ・バランスを重視する姿勢が高く評価される項目です。
認定企業は厚生労働省の両立支援のひろばで確認が可能です。
参照:厚生労働省 くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて
③えるぼし加点
女性の活躍推進に関する法律に基づき、「えるぼし」「プラチナえるぼし」の認定を受けている事業者は加点の対象です。
女性登用やキャリア支援、職場環境の整備など、具体的な取り組み実績を持つ企業として信頼性が高いと判断されます。
参照:厚生労働省 女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)
④アトツギ甲子園
アトツギ甲子園とは、中小企業の後継者が新規事業に挑戦する姿を発信するイベントのことです。
アトツギ甲子園に出場した事業者は、挑戦意欲や事業承継後の革新性が評価され、加点対象となります。
後継者による新たな価値創出を支援する観点から、補助金制度でも積極的な姿勢が加点に反映されます。
参照:経済産業省 第6回「アトツギ甲子園」へのエントリーを募集します
⑤健康経営優良法人加点
健康経営優良法人とは、従業員の健康管理を経営的視点で捉え、戦略的に取り組む企業に対して認定される制度です。
健康経営優良法人認定を受けている事業者は、加点対象となります。
従業員の健康を重視する企業は、持続可能な成長が期待されるため、補助金審査でも高く評価されます。
⑥技術情報管理認証制度加点
技術情報管理認証制度は、企業が技術情報の適切な管理体制を整備していることを第三者が認証する制度です。
認証を取得している事業者は、情報漏洩リスクへの対応力があると見なされ、採択時の加点対象となります。
知的財産や技術力を軸に事業を展開したい企業にとって、信頼性を示す有効な手段のひとつです。
⑦成長加速化マッチングサービス加点
成長加速化マッチングサービスは、中小企業の成長課題に対して専門家や支援機関とのマッチングを促進するプラットフォームです。
成長加速化マッチングサービスに会員登録し、挑戦課題を登録している事業者は加点対象となります。
外部連携による成長戦略の構築に積極的な姿勢が評価されます。
⑧再生事業者加点
中小企業活性化協議会や中小機構などの支援を受け、再生計画を策定中または過去3年以内に策定済である企業は加点対象です。
経営再建に向けて具体的に動いている点が評価されます。
再起を目指す企業にとって、再挑戦を後押しする制度です。
参照: 中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出促進補助金 公募要領(第2回)
掲載ページ:中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出補助金 資料ダウンロード
⑨特定事業者加点
公募要領に定められた特定事業者に該当する事業者は、加点対象です。
特定事業者とは、地域経済や雇用への影響が大きい事業者など、政策的に支援が必要とされる企業を指します。

画像引用:中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出促進補助金 公募要領(第2回)
掲載ページ:中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出補助金 資料ダウンロード
上記の条件に該当することで、審査上有利になります。
参照: 中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出促進補助金 公募要領(第2回)
掲載ページ:中小企業基盤整備機構 中小企業新事業進出補助金 資料ダウンロード
まとめ
この記事では、新事業進出補助金の採択に向けたポイントについて解説しました。
採択のカギは「根拠 × 実現性 × 社会性」であり、製品および市場の新規性を明確に記載し、実施体制などから実現可能性を裏付け、社会的意義を示すことが重要です。今後、新事業や新市場への挑戦を検討されている場合は、ぜひ、本補助金の活用もあわせてご検討ください。








関連する補助金