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小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)は、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等が行う持続的な経営に向けた経営計画に基づく販路開拓等の取組を支援する制度です。
農業を営む事業者のみなさまも申請可能ですが、申請を検討する際にご確認いただきたい注意点があります。また、補助金の性質上、指定の要件を満たすことが必須条件となります。
そこでこの記事では、農業で小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)に申請する際の注意点や要件、採択事例について解説します。
なお、小規模事業者持続化補助金の制度全体の概要や小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)の詳細については、以下の記事で解説しています。こちらもあわせてご一読ください。

農業も申請可能「小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)」概要
掲載ページ:中小企業庁 中小企業対策関連予算
小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)は、小規模事業者が自社の経営を見直し、自らが持続的な経営に向けた経営計画を作成し、販路開拓等に取り組む場合に支援する制度です。
補助対象経費は、補助事業の遂行に必要な機械装置等の購入費やパンフレット・ポスター・チラシ等の作成および広報媒体等を活用するために支払う広報費等です。
補助上限額は、50万円です。ただし、インボイス特例の要件を満たす場合は補助上限額に50万円を上乗せ、賃上げ特例の要件を満たす場合は150万円を上乗せします。
補助率は2/3で、賃金引上げ特例を選択した事業者のうち、赤字事業者に該当する場合は3/4となります。
農業で「小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)」に申請する際の注意点
既述のとおり、小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)は、農を営む事業者も要件を満せば申請可能です。しかし、注意すべき点もあるため、ここではその注意点を2つ紹介します。
系統出荷による収入のみである個人農業者は申請不可
系統出荷による収入のみである個人農業者は補助対象者とならず、申請不可となります。これは、個人の林業・水産業者についても同様です。
系統出荷とは、農業の場合、生産農家が共同組合を通じて作物を出荷することを指します。農業の共同組合はJA(農業協同組合)として知られていますが、林業の場合はJForest(全国森林組合連合会)、漁業ではJF(漁業協同組合)等が存在します。
個人農業者の場合、これらを通じた出荷以外にも販売ルートがあること、スーパーやレストランに卸していることなどが求められます。
なお、個人農業者に該当しない小規模事業者であれば、系統出荷による収入のみでも補助対象となります。
新たに取り組む事業が1次産業に該当する場合は申請不可
小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)の補助対象事業は、策定した「経営計画」に基づいて実施する販路開拓等のための取組ですが、新たに行う事業が1次産業(農業、林業、漁業)に該当する場合は、申請対象外となります。
例として、農業を行う事業者が単に別の作物を作る、飲食店が新しく漁業を始めるなどが挙げられ、主として自家栽培・自家取得した原材料を使用して製造、加工を行っている場合は1次産業に該当すると考えます。
ただし、例外があり、同一構内に工場や作業所とみられるものがあり、そこで行う製造活動に専従の常用従業者がいる場合に限り、2次または3次産業に該当する場合があります。
補助対象となる例として、農業に取り組む事業者が、同一構内の工場において専従の常用従業員を用いて、農作物の加工や農作物を用いた料理の提供を行う場合など、2次または3次産業分野に取り組む場合に必要な経費が挙げられます。
一方、補助対象外となる例として、2次または3次産業に取り組む場合であっても、加工や料理提供の材料である農作物の生産自体に必要な経費があります。
参照:小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠> 第17回公募 公募要領
掲載ページ:(商工会議所地区)小規模持続化補助金 公式HP
農業の「小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)」申請要件
ここでは、農業で小規模事業者持続化補助金に申請する場合の主な要件について解説します。
小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)の対象者要件を満たしている
小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)の申請要件は、以下(1)から(3)のいずれも満たし、日本国内に所在する小規模事業者(日本国内に居住する個人、又は日本国内に本店を有する法人)等であることとされています。
(1)小規模事業者であること
「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律」において、業種ごとに従業員数で小規模事業者であるか否かを判断しています。
業種 人数 商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く) 常時使用する従業員の数 5人以下 サービス業のうち宿泊業・娯楽業 常時使用する従業員の数 20人以下 製造業その他 常時使用する従業員の数 20人以下 引用:小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠> 第17回公募 公募要領
掲載ページ:(商工会議所地区)小規模持続化補助金 公式HP
農業の場合、上表の「製造業その他」に分類され、常時使用する従業員の数が20人以下であれば小規模事業者該当します。このほか、以下を満たす必要があります。
(2)資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接又は間接に100%の株式を保有されていないこと(法人のみ)
(3)確定している(申告済みの)直近過去3年分の「各年」又は「各事業年度」の課税所得の年平均額が 15億円を超えていないこと
引用:小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠> 第17回公募 公募要領
掲載ページ:(商工会議所地区)小規模持続化補助金 公式HP
対象事業要件を満たす販路開拓・業務効率化のための取組である
補助対象事業要件として、以下の項目が定められており、これらの要件を満たす必要があります。
(1)策定した「経営計画」に基づいて実施する、販路開拓等のための取組であること。あるいは、販路開拓等の取組とあわせて行う業務効率化(生産性向上)のための取組であること。
(2)商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること
「商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む」とは、商工会・商工会議所による事業支援計画書(様式4)の発行及び補助事業実施における助言等の支援を受けながら事業を実施することです。
※事業支援計画書(様式4)を発行するにあたり、基本情報入力画面に記載の代表者に計画(様式2,3)等の内容について、直接確認させていただく場合がございます。
(3)補助事業実施期間内に補助事業が終了すること
補助金のお支払いをするためには、補助事業実施期間内に終了する補助事業であることが必要です。(交付決定予定:令和7年9月~事業実施期限:令和8年7月31日までの期間)
引用:小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠> 第17回公募 公募要領
掲載ページ:(商工会議所地区)小規模持続化補助金 公式HP
こうした取り組みの例として、農業では、自身の作物の販売のための販路開拓に向けた広報活動や農作業の業務効率化等を目的とした機械装置等の購入、作物を販売するためのECサイト開発等が想定されます。
農業の「小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)」採択事例
中小企業庁が運営するサイト「ミラサポPlus(プラス)」に、小規模事業者持続化補助金における農業の採択事例が掲載されています。ここではそのなかから2例を紹介します。
事例① 新製品開発による販路開拓
米消費量の少ない一人暮らしの若い女性をターゲットとした新製品を開発。曜日別にパターンを持たせた美容効果のある自社米と、各米に合う炊き方のレシピを入れて販売しました。
この製品を食に関する展示会に出品し、商談機会を獲得したり、受注を受けたりする結果へと繋がりました。
このような場合、新商品の開発費用や展示会への参加費用のほか、新たな販促用チラシを作成した場合は作成費用・送付費用などが補助対象となります。
また、店頭で販売する場合は新商品を陳列するための棚の購入費用、店舗改装なども対象経費に含まれます。
参照:ミラサポPlus 一人暮らしの女性向けの一週間分お米セットMY(米)WEEK!
事例② 大規模体験型観光農園の開業による販路開拓
鉄道会社の連結子会社が、東日本大震災からの復興の一助として地域との連携を図り、被災した広大な土地に大規模観光農園の開業を計画。
飲料メーカーや飲食会社などと実際に協業が始まり、地域のフルーツパークで生産したフルーツを使った加工品も続々と誕生しました。
その結果、大規模観光農園の開業初年度の収穫量は18.2t、レジ客数は13万人ほどと想定を上回りました。
参照:ミラサポPlus 観光農園というビジネスモデルで復興から地域貢献・農業振興へと前進
農業の「小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)」採択を有利にする「加点項目」
小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)では、事務局が申請内容を審査し、評価の高い順に採択者が決まります。
つまり、採択されるためには要件を満たし、高い評価を得る必要があります。採択の可能性を高めるポイントとして、加点適用を受けることが挙げられます。
加点項目で指定されている要件を満たす申請者は、加点適用によって評価が上がり、採択の可能性が高まります。
加点要素をひとつでも増やすことが審査を有利に進めることとなりますので、申請検討の際はぜひ加点項目の確認も行ってください。
まとめ
この記事では、農業で小規模事業者持続化補助金(一般型 通常枠)に申請する際の注意点や要件、採択事例について解説しました。
販路開拓や生産性向上のための取り組みを予定・検討している方は、ぜひ、本補助金の活用もあわせてご検討ください。

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