新型コロナウイルス感染拡大により経営環境が悪化している、中小企業等の事業再構築を支援することを主な目標とする事業再構築補助金ですが、6月の第1回に続いて9月に第2回の採択状況が公表されています。
この記事では、情報通信業における採択状況と主な事例について詳しく解説します。
情報通信業における第1回と第2回の採択状況比較サマリー
事業再構築補助金における、情報通信業の採択状況は下記のとおりです。
全業種に占める情報通信業のシェア
第1回:応募件数4.7%、採択件数3.7%
第2回:同4.6%、4.1%
採択件数
第1回:301件
第2回:386件
情報通信業においては、第1回よりも第2回のほうがシェアも向上しており、採択件数も2割以上増大しています。
情報通信業での第1回・第2回の採択事例
情報通信業における第1回、第2回の採択事例を20例取り上げます。
IT・EC・AI関連
ITやECなど、先端テクノロジーに関する分野です。
株式会社アクトラス(第1回・秋田県・緊急事態宣言特別枠)
資本金:10百万円
ECマーケットにおける商品販売を迅速化するためのデザインサポート新事業開拓
コロナの影響により受託開発の注文台数が減少しているため、これまで培った開発技術と営業活動をさらに拡充し、自社案件にとどまらず他社製品の企画段階から販売までを一貫して請け負うサービス業を展開する。
株式会社ジェーピーマネジメント(第1回・愛知県・緊急事態宣言特別枠)
資本金:9.8百万円
サスティナブルな暮らしそれに該当する商品を提案し、EC販売する事業の構築
コロナ問題で健康に関心のある消費者が増えている中、 日本ではまだ欧米基準の肥料・無添加食品などを購入できにくい環境である。同社は、サスティナブルな暮らしの提案および付随した商品を①製造②OEM③仕入れの3本立てで自社ECサイト構築を図る。
株式会社技研工房(第2回・北海道・通常枠)
資本金:3百万円
圃場向け AI予測情報提供システム事業
スマート農業の基盤となる農地の大区画化に必要となる環境計測データの収集および提供と、人工知能(AI)ナレッジマイニング手法による圃場の情報提供を行う。
株式会社DCSY(第2回・埼玉県・緊急事態宣言特別枠)
資本金:非公開
ECサイトからダイレクト出荷・システム倉庫事業戦略
ECサイトを活用する企業・通販会社を顧客として、同社の強みである販売管理ソフトを利用した、自社としてこれまで取り組んでいない倉庫事業に新たに挑戦する。
医療・介護関連
医療や介護に関する事例です。
合同会社プロジェクトリンクト事務局(第1回・愛知県・通常枠)
資本金:非公開
病院広報機能のDXを支援する地域医療ネットワークサービスの実現
病院は広告規制もあり、従来は広報誌等による一方通行の情報発信に留まっていた。本事業で構築する地域医療広報プラットフォームにより、患者・医療機関をつなぎ、最適な治療と病院の収益性確保の両立を実現する。
株式会社CRM(第1回・香川県・通常枠)
資本金:49百万円
日本初!白内障眼内レンズ管理で見えてきた医療業界へのIT開発
高齢化により白内障患者の数は急増する一方、医療現場のIT化は進んでおらず、そのことが患者や医療関係者に大きな負担となっている。同社はソフト開発を営んでいるが、今回思い切って、建設業向けソフト開発から医療向けソフト開発に舵をきり、医療界の課題解決に寄与する。
株式会社ヒルダ(第2回・東京都・緊急事態宣言特別枠)
資本金:10百万円
腸内フローラから健康増進を考える『UBANKデータシステム』の構築
UBANKデータシステムは、Uバンクプロジェクトに蓄積されつつある臨床データからの提供を受け、さらに散発的に存在し統計だっていない腸内フローラに関する国際的な研究論文を系統的、目的別に統合解析し、サービスを提供することで腸内環境の研究促進、商品開発の支援等を行う。
株式会社ユーズテック(第2回・大阪府・通常枠)
資本金:17百万円
医療ITの強みを生かしたPHR情報基盤での事業再構築の挑戦
医療IT分野で培ったノウハウを活かし、個人の健康情報を記録(PHR)し利活用するシステムを、企業・医療機関に職員健康管理サービスとして提供し、社会の課題に貢献することで事業の再構築を図る。
テレワーク・リモートワーク関連
コロナ禍で普及しているテレワークやリモートワークに関するものです。
株式会社ナムザックモバイル(第1回・福岡県・通常枠)
資本金:70百万円
リモートワークに柔軟対応の電話交換機不要の電話転送機器の開発事業
業務用の通信アプリの開発会社が、自社の強みの通信技術を用いて電話のホームゲートウェイに取り付けるだけで簡単に会社電話を自分の携帯電話に転送できる機器を開発する計画を策定。代理店を通じて小規模事業者向けに安価なサービスを提供しリモートワークの推進を図る。
株式会社エキスパート(第1回・兵庫県・緊急事態宣言特別枠)
資本金:29百万円
顧客ごとの独自システムに、テレワークで直接アクセスする事を可能にする事業
同社既存設備ではテレワークに対応したシステム開発に対応できない。この解決のため最新サーバーを導入し、今後のニーズに合致するシステム開発を今後の主力事業として育成するとともに、地域中小企業の競争力強化に貢献する。
株式会社コムスクエア(第2回・東京都・卒業枠)
資本金:300百万円
テレワーク社会の労働力管理・業務管理を可視化するテレワークビューア(仮称)の開発・提供
テレワークを、オフィスワーク同様の就業環境の把握や業務チームメンバー双方のコミュニケーションがとれるよう、PC・電話の両面から可視化するサービス・製品という新分野展開に挑戦。経営者(導入権者)・業務管理者・就業者の3者にとって安心して質の高いテレワークが推進できる新しい価値を提供する。
有限会社アシストコム(第2回・愛知県・緊急事態宣言特別枠)
資本金:3百万円
在宅勤務者をターゲットとしたストレスチェック事業の構築
新型コロナにより当社が得意とする防災の展示装置の需要が急減した。そこで、従来は紙で行っていたストレスチェックを完全自動化するシステムを開発、在宅勤務を実施している企業をターゲットに販売する。在宅勤務によりコロナ鬱が増加しており本事業に対する需要は高いため、本事業を実施することで売上が向上する。
教育関連
教育に関する分野です。
株式会社システム・エムズ(第1回・岡山県・通常枠)
資本金:10百万円
次世代MICEシステム開発と学生を対象としたIT教育サービスの提供
コロナ禍での同社主力事業の売上激減を受け、セキュリティ強化型テクノロジーセンターを新設し、新たにバーチャルMICE事業のシステム開発による売上V字回復を図る。また、同所で今後のDX進展を担う学生を対象としたIT教育の場を設けることで、同社の開発人員も確保する。
有限会社レッド・カーペット(第1回・東京都・緊急事態宣言特別枠)
資本金:3百万円
ミドルシニア層向けカルチャースクール、小学生向け学童・学習施設の運営事業
現在、洋画・邦画の配給や試写会に関するイベントのプロデュース・運営請負業を営んでおり、新分野であるミドルシニア層向けカルチャースクール、小学生向け学童・学習施設の運営事業を展開する。
株式会社アエルズ(第2回・群馬県・緊急事態宣言特別枠)
資本金:5百万円
旅行計画を用いた認知症予防のためのオンライン教室事業
旅行計画を用いた認知症予防プログラムをオンライン事業として展開。Eラーニングやビデオ会議等、オンラインで行うプラットフォームを構築する。従来のメインターゲットであった要介護高齢者から前期高齢者をターゲットに、顧客拡大を行う。
プロダクトシンク株式会社(第2回・千葉県・緊急事態宣言特別枠)
資本金:3百万円
子供向けプログラミングスクール事業の展開
6歳から18歳を対象としたオンラインのプログラミング教室を開業する。内容については、Eラーニング開発のノウハウを活用し受講生が効率よくプログラミングのスキルを身に着けられるようにカリキュラムを作成し、それに基づいて指導を行う。”
観光・宿泊関連
こちらもコロナで打撃が大きい観光や宿泊に関する事例です。
株式会社アコモ(第1回・東京都・ 緊急事態宣言特別枠)
資本金:50百万円
宿泊施設向け非接触チェックインシステム
観光産業および宿泊業界における同社の知見を活かしながら、同社の強みである低コストで機能的なウェブシステムでの事業推進を行い、新しい日常で必要で効率化を促進できるウェブサービスを提供する。
株式会社オマツリジャパン(第1回・東京都・緊急事態宣言特別枠)
資本金:1百万円
物産・観光体験販売を通じた祭り応援WEBプラットフォーム事業
売上の一部が祭り主催者への寄付になる応援消費をテーマとして、祭り主催者および地方自治体・観光協会・DMOとタイアップしたご当地祭りグッズ・物産品の販売や現地発着型の祭り体験観光コンテンツのチケット販売をWEBプラットフォーム上で展開する。
株式会社SDH(第2回・京都府・緊急事態宣言特別枠)
資本金:10百万円
国境を越えた「かわいい」で、日本の若者に新しい京都/関西を発信
インスタ映えするフォトジェニック空間の提供でインバウンド客に人気の施設が、日本の若者に一番人気の韓国ファッションの「韓国制服」に着目、レンタル事業に進出して、まず国内から、京都/関西観光需要を発掘する。
株式会社valo(第2回・福岡県・通常枠)
資本金:非公開
コロナ禍で集客に苦しむ観光地向けの低コストPR動画制作事業
集客に苦しむ観光地に向けて低コストでTVCMのように高品質なPR動画制作サービスを提供する。コロナ禍ではネットショップ等で土産品の販売促進や、ポストコロナに向けて観光地への集客を強化する。
最後に
中小企業等の経営改善を支援するために実施されている事業再構築補助金ですが、最先端事業分野ともいえる情報通信業における採択状況は確実に増大しています。
当該事業分野の企業は、是非この制度を活用し、経営改善を図っていただきたいものです。
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