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事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するための企業の思い切った事業再構築を支援する制度です。
計7つの申請枠があるうち、「グリーン成長枠」は2050年カーボンニュートラルを見据えた企業の技術開発から設備投資までのさまざまな取り組みに対するサポートの一環として、令和3年度補正予算より新設されました。
そこでこの記事では、「グリーン成長枠」について掘り下げて解説します。
グリーン成長枠の概要
グリーン成長枠は、研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う中小企業等の事業再構築を支援するものです。
申請類型をスタンダード類型と、要件を緩和したエントリー類型に分けて、それぞれ定めた補助率・補助上限金額で成長枠(旧 通常枠)よりも優遇して支援します。
<エントリーとスタンダードの主な違い>
エントリー | スタンダード | |
要件 | 1年以上の研究開発・技術開発 又は 従業員の5%以上に対する年間20時間 以上の人材育成 |
2年以上の研究開発・技術開発 又は 従業員の10%以上に対する年間20時間 以上の人材育成 |
補助上限額 | 中小企業:最大8,000万円 中堅企業:最大1億円 |
中小企業:最大1億円 中堅企業:最大1.5億円 |
なお、エントリー・スタンダードそれぞれに、付加価値額、研究開発・技術開発や人材育成の実施規模・実施時間数等の申請要件を定めています。
補助率・補助上限額
エントリー | スタンダード | |
補助率 | 中小企業者等 1/2 (大規模な賃上げ(※)を行う場合は 2/3) 中堅企業等 1/3 (大規模な賃上げ(※)を行う場合は 1/2) (※)事業終了時点で、①事業場内最低賃金+45 円、②給与支給総額+6%を達成すること。 |
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補助上限額 | 中小企業者等 【従業員数 20人以下】100万円 ~ 4,000万円 【従業員数 21~50人】100万円 ~ 6,000万円 【従業員数 51人以上】100万円 ~ 8,000万円 中堅企業等 100万円 ~ 1億円 |
中小企業者等 100万円 ~ 1億円 中堅企業者等 100万円 ~ 1.5億円 |
- グリーン成長枠の補助率・補助上限額は上図のとおりです。なお、グリーン成長枠に申請する事業者は、上乗せ枠である「卒業促進枠」または「大規模賃金引上促進枠」に追加で申請可能です。
卒業促進枠では、中小企業等から卒業し、中堅企業等に成長する場合に上限を2倍に引き上げます。また大規模賃金引上促進枠では、大規模な賃金引上げを行う場合に上限金額に最大3,000万円を上乗せします。
ただし、卒業促進枠・大規模賃金引上枠の両方に追加申請することはできないのでご注意ください。
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補助対象経費
グリーン成長枠における補助対象経費は、次のとおりです。
※エントリー・スタンダード共通- ・建物費
・機械装置・システム構築費(リース料を含む)
・技術導入費
・専門家経費
・運搬費
・クラウドサービス利用費
・外注費
・知的財産権等関連経費
・広告宣伝・販売促進費
・研修費
- ・建物費
グリーン成長枠のポイント
ここでは、グリーン成長枠の特徴ともいえるポイントについて紹介します。
エントリー類型とスタンダード類型がある
既述のとおりグリーン成長枠には、研究開発等の要件を緩和した類型である「エントリー」と、従来型の「スタンダード」があり、要件や補助上限額が異なります。
グリーン成長戦略「実行計画」14分野に関連する取り組みを支援
出典:経済産業省 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略
グリーン成長枠では、研究開発・技術開発又は人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野に関連する取り組みを行う事業者を支援します。
グリーン成長戦略(2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略)は、2050年までに二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を達成するために、国が定めた政策です。
このうち、今後の成長が期待される14の産業分野として、「エネルギー関連産業」の4分野、「輸送・製造関連産業」の7分野、「家庭・オフィス関連産業」の3分野が選定されています。
上限2回まで採択可能
出典:事業再構築補助金の概要
事業再構築補助金では、原則として、1事業者につき補助金交付候補者としての採択は1回に限られています。
しかし、グリーン成長枠、産業構造転換枠及びサプライチェーン強靱化枠については、一定の条件下で過去補助金交付候補者として採択された事業者の再申請・補助金交付候補者としての採択が認められています。
ただし、支援を受けることができる回数は2回までとしています。
グリーン成長枠の想定事例
経済産業省は、グリーン成長枠における想定事例集を公開しています。ここでは、公開されている事例のうち、主な事例の概要について紹介します。
①洋上風力・太陽光・地熱産業(次世代再生可能エネルギー)
洋上風力・太陽光・地熱産業(次世代再生可能エネルギー)のうち、洋上風力の事例として、製造業の新分野展開が挙げられています。
製造業を営む事業者が長年培ってきた難切削加工技術のノウハウを活かして、脱炭素社会への切り札となる洋上風力設備部品の製造という新分野展開を行う事例が紹介されています。
⑤自動車・蓄電池・インフラ・SC/VC産業
自動車・蓄電池・インフラ・SC/VC産業のうち、自動車については、自動車産業における電動化を推進し、2050 年の自動車のライフサイクル全体でのカーボンニュートラル化を目指しています。
想定事例には、製造事業者が電動車向け部品の開発・試作に踏み切ること、整備・販売事業者がEV(電気自動車)や燃料電池車への整備へ事業展開するといった新分野展開が挙げられています。
また同時に、 新事業を成功させるため、電動車において求められる部品や性能について、外部の専門家を招聘して研修を行うことも例示しています。
⑥半導体・情報通信産業
半導体・情報通信産業のうち、情報通信産業の事例として、設備工事業における新分野展開が挙げられています。具体的には、電気工事事業者がこれまで電気工事業で培ったノウハウを活かし、既存顧客を対象に設計からソフトウェア提供、保守までを行うデジタル化支援事業への進出を挙げています。
また同時に、自社スタッフがソフトウェアメーカへ出向し、持ち帰ったノウハウを通じて社内人材の育成を行うことも例示しています。
⑪カーボンリサイクル・マテリアル産業
カーボンリサイクル・マテリアル産業の想定事例には、製造業の新分野展開が示されています。
普通セメントの製造を行っていた事業者が、低炭素型セメントの製造に必要な製造設備の導入・改修などによる事業再構築を図る場合が挙げられています。また、当該技術者向けの品質管理方法の人材育成も本事例に含んでいます。
⑬資源循環関連産業
資源循環関連産業においては、小売業の業種転換を例に示しています。
中古車の販売を行っていた事業者が、能動的に商品開発・販売を行う事業として、地域の食品廃棄物等を活用したバイオプラスチック製造業への転換を図る事例を挙げています。また、実施にあたり、バイオプラスチック製造の高度化に向けた技術開発を行います。
弊社採択事例
当社(株)Staywayの支援・採択事例のうち、事業再構築補助金 グリーン成長枠の事例を紹介します。
支援企業:株式会社フェイガー(代表取締役・石崎貴紘様)
2022年7月に設立したスタートアップ企業であり、脱炭素の取り組みを進める事業者と、その取り組みを応援する事業者を繋ぐサポート事業を展開しています。
設立初年度の脱炭素スタートアップ事業が、グリーン成長枠にて採択されました。以下の記事では、支援内容の詳細や石崎様の感想等をインタビュー形式で紹介しています。ぜひ、ご参照ください。
参照:申請経験ゼロ、設立初年度の脱炭素スタートアップが事業再構築補助金グリーン枠に採択された理由とは?
申請スケジュール
2023年8月時点で実施している、第11回公募のスケジュールは以下のとおりです。
公募開始:令和5年8月10日(木)
申請受付:調整中
応募締切:令和5年10月6日(金)18:00
まとめ
事業再構築補助金におけるグリーン成長枠について解説しました。
事業再構築補助金への申請を検討している方のうち、グリーン分野に関する取り組みを行っている方はぜひ、グリーン成長枠への申請をご検討ください。
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