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新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業とは?助成対象の取組や経費など徹底解説

公開日 2024/10/25
更新日 2024/10/26
この記事は約12分で読めます。

※記事内容は、記事更新日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。

コロナ禍を経て、企業をとりまく事業環境は大きく変化しました。この変化に適応しようとする中小企業への支援策に、「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」があります。

 

年度内に複数回の公募を行っており、対象経費の幅が広く、助成限度額 800万円と比較的高額であることなどから、毎回多くの申請がある注目度の高い助成金です。

 

そこでこの記事では、「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」の助成対象となる取組や経費、申請方法などについて解説します。

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新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業とは

ポストコロナ等における事業環境の変化を課題と捉え、その対応策として、事業者が創意工夫のもと「これまで営んできた事業の深化又は発展」に取り組み、これが経営基盤の強化につながると認められた場合に、当該取組に必要な経費の一部を助成する事業です。

公益財団法人 東京都中小企業振興公社が主管しています。

参照:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 公式HP

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 取組例

本事業の対象となる取組は大きく2つに分けられ、既存事業の「深化」と「発展」となります。各取組の具体例は、次のとおりです。また、対象外の取組も例を示します。

既存事業の「深化」

既存事業の深化とは、経営基盤の強化に向け、既に営んでいる事業自体の質を高めるための取組を指します。

例として、以下のような取組が挙げられます。

・高性能な機器、設備の導入等による競争力強化の取組

・既存の商品やサービス等の品質向上の取組

・高効率機器、省エネ機器の導入等による生産性の向上の取組

既存事業の「発展」

既存事業の発展は、経営基盤の強化に向け、既に営んでいる事業を基に、新たな事業展開を図る取組を指します。

具体的には、次の取組が考えられます。

・新たな商品、サービスの開発
・商品、サービスの新たな提供方法の導入
・その他、既存事業で得た知見等に基づく新たな取組

対象外となる取組

以下のような取組は、助成の対象外です。

・申請者が営んできた事業内容との関連性が薄い、又は全く無い取組

・法令改正への対応など、義務的な取組

・単なる老朽設備の維持更新など、競争力や生産性の向上に寄与しない取組

参照:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 公式HP

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 助成対象者

本事業の助成対象者は、申請要件を満たし、東京都内で事業を行う中小企業者(個人事業主を含む)です。

申請要件

申請要件として、7項目すべての要件を満たす必要があります。このうち、本事業において、特に重要な項目は次のとおりです。

・都内の中小企業者で、大企業が実質的に経営に参画していないこと。 

 

・令和6年10月1日時点で下記ア・イのいずれかに該当し、下記ウに該当すること。
 ア 法人:本店(実施場所が都内の場合は支店でも可)の登記が都内にあること
 イ 個人事業者:納税地が都内にあること
 ウ 直近決算期の売上高が、「2019 年の決算期以降のいずれかの決算期」と比較して減少している、又は直近決算期において損失を計上していること
 ※「2019年の決算期」とは、決算月が2019年1月~12月に属する決算期とする。
 例)決算月が12月:2019年1月~12月、決算月が3月:2018年4月~2019年3月

 

・申請内容が、申請者が所有又は賃借する本社・事業所・工場等において取り組まれ、実施場所に応じて以下の条件を満たすこと。

実施場所 条件
東京都内 令和6年10月1日時点で東京都内に登記簿上の本店又は支店があること
東京都外
(神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県、
栃木県、茨城県、山梨県に所在すること)
令和6年10月1日時点で東京都内に登記簿上の本店があること

新型コロナウイルス感染症の影響で売上が減少している都内中小企業者が対象で、都内に登記簿上の本店または支店があることが要件となっています。

また、本事業は年度内に複数回の公募を行いますが、令和6年度において、本事業で1度も交付決定を受けていないことも申請要件に含んでいます。

出典:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 募集要項
掲載ページ:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 公式HP

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 助成対象経費

出典:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 募集要項
掲載ページ:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 公式HP

 

助成対象期間は交付決定日から1年間で、この期間内に契約・実施・支払が完了する経費が助成対象となります。

出典:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 募集要項
掲載ページ:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 公式HP

助成対象期間前に発注や契約をした場合や助成対象期間後に支払いとなる場合は、助成対象外となりますのでご注意ください。

 

具体的な対象経費は、既存事業を深化・発展させるために直接必要となる以下の経費のうち、審査で認められたものです。

・原材料・副資材費

機械装置・工具器具費

委託・外注費

産業財産権出願・導入費

・規格等認証・登録費

・設備等導入費

・システム等導入費

・専門家指導費

・不動産賃借料

・販売促進費

・その他経費

※委託・外注費のうち、市場調査費のみの申請はできません。また、専門家指導費、販売促進費、その他経費のみの単独申請もできません。
※販売促進費は、既存事業の「発展」による新たな商品・サービス等の販売促進経費についてのみ申請可能です。 

対象経費の詳細

各費目の詳細は、次のとおりです。

(1)原材料・副資材費

製品やサービスの改良等に直接使用し、消費する原材料、副資材、部品等の購入に要する経費です。鋼材、機械部品、電機部品、化学薬品、試験用部品などが該当します。

(2)機械装置・工具器具費

製品・サービスの改良等に直接使用する機械装置・工具器具等を新たに購入・リース・レンタルする際に要する経費です。

具体的には製造機械、計測・測定・検査機器、試作金型、治具などの購入・リース・レンタル費用等が対象となります。

(3)委託・外注費

委託・外注費は、さらに以下の4つに分類されます。

(3)-1. 委託費

自社内で直接実施できない製品やサービス改良の一部(創意工夫・検討が必要なもの)を外部の事業者などに依頼する経費。開発・試験などに要する費用が該当します。

 

(3)-2. 外注費

自社内で直接実施できない製品やサービス改良の一部部(仕様書などにおいて実施内容を具体的に指示できるもの)を外部の事業者などに依頼する経費。

試料の製造・改造・加工・分析鑑定などが該当します。

 

(3)-3. 共同研究費

共同研究契約によって共同研究を実施するために要する経費です。大学、試験研究機関等との間で共通の課題について分担して行う研究開発等がこれにあたります。

 

(3)-4. 市場調査費

本助成事業における想定顧客のニーズを調査・分析するため、外部の事業者等に依頼するために要する経費です。

具体例として、対象製品のマーケティング、モニター調査、顧客ニーズ調査などが挙げられます。なお、市場調査費のみの申請はできません。

(4)産業財産権出願・導入費

主に、以下2つの経費を指します。

・改良等をした製品・サービスに係る特許権、実用新案権、意匠権、商標権の出願に要する経費
・製品・サービスの改良等に際して必要な特許権、実用新案権、意匠権、商標権(出願、登録、存続しているもの)を他の事業者から譲渡又は実施許諾(ライセンス料含む)を受ける場合に要する経費

(5)規格等認証・登録費

改良等をした製品・サービスの規格適合、認証の申請・審査・登録に要する経費や規格等認証・登録に係る外部専門家の技術指導、研修等を受ける場合に要する経費です。

具体例として、以下の費用が挙げられます。

・認証・検査機関への申請手数料、成績証明書発行手数料、審査費用、登録証発行料、登録維持料(初回のみ)
・翻訳等、技術文書・マニュアル整備等の指導及び作成代行、外部研修の受講料、その他研修・教育費用、外部専門家の旅費交通費等

(6)設備等導入費

本事業の取組に直接必要な設備・備品などの購入費およびそれらの設置工事などに直接必要となる経費です。

例えば、設備・備品等の購入費、直接仮設費(足場代、養生費等)、労務費、電線やケーブル等の材料、運搬費、搬入・据付費、撤去費、処分費などが該当します。

(7)システム等導入費

本事業の取組に直接必要なシステム構築、ソフトウェア・ハードウェア導入、クラウド利用料などの経費です。

ソフトウェアの購入・利用に要する経費やハードウェア(機器・ロボット等)の購入・改修・リースに要する経費等のほか、助成対象期間に実施する運用・保守に要する経費等も対象となります。

(8)専門家指導費

本事業の取組について、外部の専門家から専門技術等の指導・助言を受ける場合の外部専門家への謝金・交通費等、外部研修の受講料等が対象となります。

(9)不動産賃借料

本事業の取組に必要な事務所、施設などを新たに借りる場合に要する経費が該当します。

敷金、礼金、仲介手数料、保証金、管理費、共益費、駐車場代、火災保険料、地震保険料などは対象とはなりません。

(10) 販売促進費

助成対象商品の販売を促進するための、以下の費用が対象となります。なお、販売促進費のみの申請はできません。

・自社Webサイトの制作・改修費

・紙媒体の印刷物製作費

・PR動画制作費

・広告掲載費

・リアル展示会における出展小間料

・リアル展示会の小間内の装飾委託費、展示に必要な什器・備品等のリース代、光熱水費

・リアル展示会の展示品や展示用資材、配布用印刷物等の運送委託費

・海外展示会開催期間中の展示会場における通訳費

・オンライン展示会の出展基本料

・申請者名義で自らECサイト運営者と契約し、出店する場合の初期登録料

(11)その他経費

本事業の取組に直接必要な経費で、他の経費区分に属さないものです。その他経費のみの申請はできません。

参照:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 募集要項
掲載ページ:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 公式HP

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 助成限度額・助成率

助成限度額は800万円です。また、助成率は、助成対象経費の3分の2以内です

出典:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 募集要項
掲載ページ:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 公式HP

 

例として、上図のように助成事業に必要な経費が1,700万円だった場合の申請額の計算方法は、次のとおりです。

 

まず、助成事業にかかる経費1,700万円のうち、助成対象となる経費額が1,500万円だったとします。

 

この場合、1,500万円に助成率3分の2を乗じた金額が助成額となりますが、助成限度額が800万円であるため、それを超える残り200万円は自己負担となります。

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 申請方法

申請方法は、デジタル庁が運営する電子申請システムjGrants(J グランツ)を利用した電子申請のみです。

jGrantsを利用するには「GビズID」でアカウント(gBizIDプライム)を事前に取得する必要があります。

 

申請の際はjGrants にログインし、必要事項を入力するとともに、申請書類及び必要書類をアップロードしてください。

参照:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 募集要項
掲載ページ:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 公式HP

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 申請受付期間

本事業は、令和6年10月25日時点で第7回まで実施済みです。11月1日以降も毎月募集を行う予定ですが、申請件数が各月の予定数に到達した場合、申請受付期間満了前に募集を締め切ります。

【今後の公募予定】

第7回:令和6年10月1日から(申請受付終了)

第8回(予定):令和6年11月1日から

第9回(予定):令和6年12月2日から

第10回(予定):令和7年1月6日から

第11回(予定):令和7年2月3日から

第12回(予定):令和7年3月3日から

※予算の都合などにより、予告なく募集予定を変更する場合があります。
※申請受付期間内の申請であっても、申請額の集計などにより予算に到達した場合には、受理できない場合があります。

参照:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 公式HP

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 審査方法

審査方法は、書類審査・面接審査の2段階あります。書類審査を通過した場合、面接審査の実施日・実施場所等をメールにて通知します。面接日程の変更はできないのでご注意ください。

(1)書類審査
申請書の内容について、専門家が以下の視点で審査を行います。
【審査の視点】
・発展性(既存事業の深化・発展に資する取組か)
・市場性(ポストコロナ等における事業環境の変化前後の市場分析は十分か)
・実現性(取り組むための体制は整っているか)
・優秀性(事業者としての創意工夫、今後の展望はあるか)
・自己分析力(自社の状況を適切に理解しているか)

 

なお、審査の結果、一定水準に到達せず不採択となった場合は不採択通知
を送付します。


(2)面接審査
申請書の内容に基づき、専門家による面接審査を行います。面接は特段の事情がない限り、原則、対面形式で1時間程度行います。申請書類に基づき、内容を説明してください。

 

審査の結果、一定の水準に達していると認められる場合、交付決定を行います。なお、審査の結果、一定水準に到達しない場合、申請は不採択となります。この場合、不採択通知
を送付します。

 

ただし、申請が不受理または不採択となった場合でも、次回以降の募集で再度の申請が可能です。

参照:新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 公式HP

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 採択率

過去公募における申請件数および採択率は、非公開となっています。

本事業は「助成」事業とうたっているものの、書類審査のほかに面接審査が行われることから補助金の性質に近く、審査のうえ不採択となることもあります。

 

ただ、既述のとおり、不採択となった場合でも、次回以降の募集で再申請が可能です。

新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業 予算

本事業の正確な予算についても、事務局は公表していません。そのため、おおまかな採択予定件数も不明です。

申請受付期間満了前であっても、予算終了とともに募集終了となるため、申請を検討している場合は早期に申請完了できるよう進めましょう。

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まとめ

この記事では、「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業」について解説しました。

対象経費の幅が広く、助成額が高額であるため、経営基盤の強化に取り組もうと考えている場合は、ぜひ、本事業への申請もあわせてご検討ください。

監修佐藤淳 / 公認会計士
中小企業庁認定 経営革新等支援機関 有限責任監査法人トーマツ(Deloitte Touche Tohmatsu)の東京オフィスに6年間、シアトルオフィスに2年間勤務。 2015年よりアジア最大級の独立系コンサルティングファームの日本オフィスにて事業戦略の構築支援、M&Aアドバイザリー、自己勘定投資の業務に従事。 2017年 自身で旅行スタートアップ(Stayway)を立ち上げ資金調達をした経験を生かしながら、補助金・ファイナンス・M&Aのサポートを実施

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