※記事内容は、記事更新日時点の情報です。最新の情報は、必ず省庁や自治体の公式HPをご確認ください。
物流業界では、配送日数の短縮、配送コストの削減、災害発生時のリスク分散といった目的で、物流施設の新設を検討することがあります。
しかし、新設する場合には、土地代や工事費、設備費など高額な初期費用が発生するため、国や自治体が企業の取り組みを支援する目的で補助金を設けています。
そこで本記事では、物流施設の新設に使える補助金を紹介します。
物流施設新設に使える補助金(国主管)
物流施設の新設に使える補助金のうち、国が主管するものは、主に2つあります。
中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金
出典:経済産業省 令和5年度補正予算の事業概要 (PR資料)
地域の雇用を支える中堅・中小企業が、足元の人手不足等の課題に対応し、成長していくことを目指して行う大規模投資を促進することで、地方における持続的な賃上げを実現することを目的としています。
常時使用する従業員数が2,000人以下の会社等が要件を満たす場合に補助するもので、建物費として専ら補助事業のために使用される生産施設や加工施設、倉庫等の建設、増築、改修、中古建物の取得に要する経費などが対象となります。
また、以下の2つが主な要件です。
①投資額10億円以上
②補助事業終了後3年間の賃上げ率が、直近5年間の最低賃金の伸び率以上
令和5年度補正予算から創設され、公募期間は令和6年3月6日から令和6年4月30日までです。
補助率・補助上限額
補助率:1/3
補助上限額:50億円
参照:中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金 公式HP
食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業
出典:農林水産省 食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業
本事業は、農林水産物や食品の輸出を拡大するために、海外向けにHACCP(ハサップ)に対応した施設・機器の整備等を支援するものです。
HACCPとは、食品の製造過程で危害となる要因を分析し、原材料の仕入れから製品の出荷までの全工程を通じてリスクとなる要因を排除・低減して安全性を高める衛生管理の手法です。
食品製造工場だけでなく、食品の流通過程で利用される倉庫や物流施設の新設・増築(掛かり増し部分)、改修などが補助対象経費となります。
補助率・補助上限額
補助率:1/2以内
補助上限額:5億円(下限250万円)
参照:農林水産省 食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業
物流施設新設に使える補助金(自治体主管)
続いて、物流施設新設に使える補助金のうち、自治体が主管するものを紹介します。本記事公開時点で公募実施中の補助金、かつ、主要都市に関わるものを厳選しています。
北海道:企業立地促進補助金
札幌を除く北海道内に物流施設、工場、コールセンターなどを新設する企業に対し、補助金を交付するものです。物流施設を新設する場合、高度物流関連事業者が補助対象です。
本補助金では、「土地」の取得費用等は対象になりません。
補助要件
投資額:20億円以上
雇用増:20人以上
補助率・補助上限額
補助率:工場等の新設又は増設をするために必要な施設に対する投資額等の10%
補助上限額:5億円(10年間での通算限度額は同一企業につき6.5億円)
青森県:産業立地促進費補助金
製造業や医療・健康福祉関連業種及び農商工連携関連業種を対象に、工場等の新増設に係る設備投資として要する土地の取得経費、建物・機械設備の取得経費を補助するものです。
物流関連業種の場合、新設に限り補助対象となります。
補助要件
設備投資額:1億円以上
雇用増:10人以上
補助対象経費
・土地の取得経費(金矢工業団地に限る)
・建物・機械設備の取得(新設の場合はリースを含む)経費
※土地リース制度を活用し、建物等を取得する場合も補助対象
補助率・補助上限額
補助率:投資額の5%
補助上限額:3億円
秋田県:はばたく中小企業投資促進事業補助金
中小企業の秋田県内への工場立地や施設整備のための設備投資を支援するものです。
道路貨物運送業、倉庫業、卸売業等のうち、県を越えた広域物流ネットワークを構築する企業等が対象です。
補助要件
・操業時までの投下固定資産額が、土地代を除き1億円以上3億円未満
・操業後1年以内の新規常用雇用者数が5人以上
※投下固定資産額とは、事業所を新設・増設する際に取得した土地・家屋・償却資産の合計額です。
補助対象経費
事業の用に供する資産で、法人税法施行令第13条に規定される以下の減価償却資産
①建物及びその附属設備
②構築物
③機械及び装置
④工具、器具及び備品
⑤無形固定資産(ソフトウェアのみ)
補助率・補助上限額
補助率:土地代を除く投下固定資産額の10%
補助上限額:3,000万円
山形県:企業立地促進補助金
山形県の誘致により、県外から新たに進出する企業が県内に用地を取得し工場や倉庫を設置する場合に補助金を交付します。
※物流関連施設の新設の場合、①一般の新設と②賃貸・リースの場合で補助の要件・金額等が異なります。
①一般の場合(県内に用地を取得し、物流関連施設を設置する場合)
補助要件
・土地を除く固定資産の取得額:3億円以上
・新規地元常用雇用者(人員移転含む)が5名以上(補助金が3億円を超える場合は20名以上)
・用地取得から1年以内に着手し、2年(対象経費が15億円を超える場合は3年)以内の操業
補助対象経費
・土地を除く固定資産の取得額
補助率
・対象経費が15億円以下の部分は15%
・対象経費が15億円を超える部分は5%
補助上限額
・補助要件の新規地元常用雇用者が5名以上の場合は3億円
・補助要件の新規地元常用雇用者が20名以上の場合は10億円
②賃貸・リースの場合(県内に物流関連施設を設置する場合)
補助要件
人員移転を含む新規地元常用雇用者:5名以上
補助対象経費
・建物・設備の賃貸・リース額
補助率・補助上限額
補助率:20%
補助上限額:なし
富山県:物流業務施設立地助成金
富山県内で物流施設の新規立地または増設に伴う投資額や新規雇用者数に応じて助成金を交付するものです。
補助要件
投資額:5億円以上
新規雇用:10人以上
・その他の要件
立地要件:港湾・インターチェンジ・鉄道貨物駅等から周辺5kmの区域内
施設:保管・配送にとどまらず、在庫管理や検品、梱包など物流機能の高度化に資する施設
補助対象経費
土地、建物、設備(ただし設備のみの取得は除く)
補助率・補助上限額
補助率:5%
補助上限額:1億円
石川県:雇用拡大関連企業立地促進補助金
雇用の増加・定着、創業・起業・スタートアップ、設備投資、販路拡大などを目的として企業を誘致するための補助金です。
補助要件
投資額:1億円以上
新規地元雇用者数+県外からの移転従業員数:15人以上
補助対象経費
物流施設等の新設または増設に要する経費
補助率
・投資額の5%
・上記に加えて、新規地元雇用者数×50万円と県外からの移転従業員数×25万円を加算
補助上限額
5億円
福井県:企業誘致補助金
企業が県内に工場やオフィスを設置する際の土地取得経費、工場等建設経費、機械設備の取得経費などを支援する補助金です。
原則、福井県内で事業を開始してから10年以内の県外企業が補助対象ですが、物流関連産業の場合、県内で事業を開始して10年を超える県外企業や県内の企業も補助対象となります。
補助要件
投資額:5億円以上
新規雇用:20人以上
補助対象経費
・土地取得造成経費
・工場等建設経費
・機械装置等取得経費
補助率・補助上限額
補助率:20%
補助上限額:6億円
参照:福井県 企業誘致補助金
山梨県:産業集積促進助成金(製造業)
山梨県内で新たに工場等を設置した場合に投資経費の一部を助成します。
補助要件
次の条件をすべて満たすもの
(1)県内において土地または借地権(設定期間が20年以上のものに限る。ただし、医療機器関連産業、水素・燃料電池関連産業であって、知事が認めるものについては設定期間が20年以上のものに限る。)を取得して工場等を設置し、操業を開始すること
(2)投下固定資産額(土地取得費を除く)が3億円以上であること
(3)操業から1年以内に常時雇用労働者が10人以上増加すること(データセンターは5人以上)
補助対象経費
建物・機械設備等の投資経費
補助率
(1)新たに土地を取得し工場等を建設する場合(取得から3年以内の操業)
投下固定資産額(土地取得費を除く)の4%
(2)自社所有地に工場等を建設し、操業する場合
投下固定資産額(土地取得費を除く)の2%
(3)空き工場等を取得し操業する場合
投下固定資産額(土地取得費を除く)のうち建物2%、機械・設備4%
補助上限額
(1)県外からの新規立地のケース
投下固定資産額が200億円以下の場合は7.5億円
投下固定資産額が200億円を超える場合は50億円
(2)県内企業のケース
投下固定資産額が200億円以下の場合は3億円
投下固定資産額が200億円を超える場合は50億円
岐阜県:企業立地促進事業補助金
企業の立地を推進するため、一般製造業の事業所・研究所の設置費用を助成するものです。
補助要件
以下の条件をすべて満たすこと
(1)初期投下固定資産額(土地・建物・償却資産)が10億円以上
(2)新規地元常用雇用者(正社員で県内に住所を有する者、又は事業所新設に伴い県外から転入する者)が10人以上
(3)建物着工90日前に指定申請書を提出していること
(4)事業所を設置する市町村の優遇策の適用を受けていること
(5)岐阜県から他の補助金など税財政優遇策の適用を受けていないこと
(6)岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進企業の登録を受けていること
(7)同一敷地内で本補助金の交付を受けていないこと
補助対象経費
事業所等の設置費用
補助率
(1)土地・家屋・償却資産取得の場合、初期投下固定資産額の1/10以内
(2)事業所賃借の場合(延床面積1万㎡を超える物流施設への入居のみ対象)
A.操業後12ヶ月以内の事業所賃借料の1/2以内
B.新規地元常用雇用者1名につき30万円
補助上限額
(1)土地・家屋・償却資産取得の場合、5億円
(2)事業所賃借の場合、上記補助率のA.事業所賃借料に関しては500万円でAとBの合計額については6,000万円まで(操業後12ヶ月以内)
静岡県:新規産業立地事業費補助金
工場、研究所、物流施設等を新設又は増設する場合に、設備投資(建物及び機械装置) に対して補助する制度です。
補助要件
・設備投資額5億円以上
・次のいずれかに該当すること
-補助対象施設及び県内全事業所でそれぞれ1人以上
-補助対象施設及び県内全事業所で雇用維持 かつ県内全事業所で生産性向上10%以上
・補助金交付年度の翌年度から3年間、維持することが必要
補助対象経費
固定資産台帳の「建物」「建物付属設備」「機械装置」に計上されているもの
補助率
補助率:原則7%
補助上限額:
奈良県:企業立地促進補助金
奈良県内に工場や研究所、特定の物流施設等を立地する場合、補助金を交付するものです。
補助要件
着工の日から起算して3年以内に、A又はBいずれの要件を満たして操業を開始する事業であること
A.固定資産投資額(土地の取得に要する経費を除く)が5億円以上かつ県内の新規常用雇用者が10人以上かつ県内総従業者数10人以上純増
B.常用雇用者が100人以上かつ県内総従業者数100人以上純増
補助対象経費
工場や倉庫等を新規に立地または拡張するために必要な費用
補助率・補助上限額
補助率:固定資産投資額の10%(※要件により加算あり)
補助上限額:2億円
香川県:企業誘致助成制度
香川県内に工場や物流拠点施設等を設置する企業に助成金を交付するものです。
※物流施設の場合、賃貸は対象外
以下、物流拠点施設の場合
補助要件
・1回目:土地を除く投下固定資産額が5億円以上
・2回目以降:土地を除く投下固定資産額が10億円以上
・新規常用雇用者数が10人以上
補助対象経費
投下固定資産額、人件費
補助率
・1回目:投下固定資産額の10%
・2回目以降:投下固定資産額の5%
・11人目以降の新規常用雇用者数×50万円
・51人目以降の新規常用雇用者数×100万円
補助上限額
5億円
参照:香川県 企業誘致助成制度
熊本県:地場企業立地促進補助金
熊本県経済の活性化及び雇用の確保を図るため、地場企業の県内における工場や物流施設等の新増設に対して補助が行われます。
以下、物流施設の場合
補助要件
以下の3つの要件をすべて満たすこと
(1)投下固定資産額(土地代除く)3億円以上
(2)新規雇用5人以上
(3)経営力向上計画に記載した計画終了時の目標達成、または先端設備導入計画に記載した計画終了時の目標達成
補助対象経費
投下固定資産額等
補助率・補助上限額
補助率:投下固定資産額等の3%
補助上限額:1億円
大分県:産業立地促進補助金
企業の設備投資を促進し、雇用の創出と産業の更なる集積を図るため、工場等を大分県内に設置する企業に対して、補助金を交付するものです。
補助要件
・以下の(1)~(3)に該当するか、または(2)及び(3)に該当すること(両者の場合で補助率・補助金額が異なる)
(1)設備投資額3億円以上
(2)工場等の設置に伴う新規従事者数が5名(大分市は10人)以上
(3)用地取得(賃貸)後、3年以内に工場等の建設に着手すること
(県及び県土地開発公社が造成した団地は5年以内)
補助対象経費
事業の用に直接供する費用
補助率
・補助要件(1)~(3)に該当する場合は、設備投資額×3%+新規従事者×50万円
(過疎地域に立地の場合、新規従事者×30万円(限度額3,000万円)を加算)
・補助要件の(2)及び(3)に該当する場合は、新規従事者×30万円
補助上限額
3億円
まとめ
この記事では、物流施設を新設する際に使える補助金について解説しました。
記事内で紹介した補助金のほか、各市区町からも物流施設新設に使える補助金が出ています。ぜひ、事業の維持・拡大に補助金をお役立てください。
関連する補助金