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令和5年11月29日に令和5年度補正予算が成立しました。成立した予算には、中小企業等を支援する施策のひとつとして「ものづくり補助金」が計上されています。
本補助金の公募はこれまでにも行われてきましたが、令和5年度補正予算 17次公募からは申請枠を再編し、「省力化(オーダーメイド)枠」「製品・サービス高付加価値化枠」が新設されました。
そこでこの記事では、新設された枠のうち、最大1億円が補助される「省力化(オーダーメイド)枠」について解説します。
令和5年度補正予算 ものづくり補助金 概要
資料掲載ページ:経済産業省 令和5年度補正予算の概要
ものづくり補助金は、中小企業等が行う、革新的な製品・サービスの開発や生産プロセス等の省力化に必要な設備投資等を支援するものです。
令和5年度の公募要領では「革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援する」と書かれていましたが、令和5年度補正予算からは「改善」の代わりに「省力化」という単語が用いられています。
令和5年度補正予算分からは、主に以下3点の変更があります。申請枠が再編され、2つの枠が新設されるほか、大幅賃上げを行った場合は補助上限額が引き上げられます。
①省力化(オーダーメイド)枠の新設
②製品・サービス高付加価値化枠の新設等
③大幅賃上げに係る補助上限額引き上げ特例の拡充
参照:経済産業省 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金について(Ver.1.0)
資料掲載ページ:中小企業庁 中小企業対策関連予算
令和5年度補正予算 ものづくり補助金 省力化枠 対象事業
省力化(オーダーメイド)枠では、人手不足の解消に向けて、デジタル技術※1等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)※2の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・システム投資等を支援※3します。
なお、デジタル技術等を活用せず、単に機械装置等を導入する事業については、本事業の対象とはなりません。
※1 デジタル技術とはAI、ロボット、センサー等をいう。
※2 ロボット単体の導入ではなく、外部のシステムインテグレータ(Sier)との連携などによりロボットシステム等を構築したものをいう。
※3 基本要件に加えた追加要件あり(詳細は追って公表)
参照:経済産業省 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金について(Ver.1.0)
資料掲載ページ:中小企業庁 中小企業対策関連予算
令和5年度補正予算 ものづくり補助金 省力化枠 対象要件
ものづくり補助金における全申請枠共通の申請要件として、以下項目が掲げられています。
中小企業・小規模事業者等が、革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス等の省力化のための設備投資・システム構築を行い、以下の基本要件等を目指す3~5年の事業計画に取り組むこと。
① 付加価値額 年平均成長率3%増加
② 給与支給総額 年平均成長率1.5%増加
③ 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上
なお、申請時点で、申請要件を満たす賃金引上げ計画を策定していることが必要です。
このほか、省力化(オーダーメイド)枠独自の要件が公表されました。
【基本要件に加えた追加要件】
以下の全ての要件に該当するものであること。
(1) 3~5年の事業計画期間内に、補助事業において、設備投資前と比較して労働生産性が2倍以上となる事業計画を策定すること
※ 労働生産性は「付加価値額(付加価値額の算出が困難な場合は生産量)/(労働人数×労働時間)」とする。完全自動化の場合は「(労働人数×労働時間)」を便宜的に「0.1」とする。
(2) 3~5年の事業計画期間内に、投資回収可能な事業計画を策定すること
※ 投資回収年数は「投資額/(削減工数×人件費単価)」とする。
(3) 外部SIerを活用する場合、3~5年の事業計画期間内における保守・メンテナンス契約を中小企業等とSIer間で締結することとし、SIerは必要な保守・メンテナンス体制を整備すること
※事業終了後、実績報告時点で確認をします。
(4)本事業に係る資金について金融機関(ファンド等を含む。)からの調達を予定している場合は、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出いただく必要があります。金融機関は、事業所の所在地域にある必要はございませんので、任意の機関を選定してください。
参照:経済産業省 ものづくり補助金リーフレット
資料掲載ページ:中小企業庁 中小企業対策関連予算
令和5年度補正予算 ものづくり補助金 省力化枠 補助上限額・補助率
枠・類型 | 補助上限額 ※カッコ内は大幅賃上げを行う場合 |
補助率 | |
省力化(オーダーメイド)枠 | 5人以下 750万円(1,000万円) 6~20人 1,500万円(2,000万円) 21~50人 3,000万円(4,000万円) 51~99人 5,000万円(6,500万円) 100人以上 8,000万円(1億円) |
1/2※ 小規模・再生 2/3 ※補助金額1,500万円までは1/2、1,500万円 を超える部分は1/3 |
|
製品・サービス 高付加価値化枠 |
通常類型 | 5人以下 750万円(850万円) 6~20人 1,000万円(1,250万円) 21人以上 1,250万円(2,250万円) |
1/2 小規模・再生 2/3 新型コロナ回復加速化特例 2/3 |
成長分野進出類型(DX・GX) | 5人以下 1,000万円(1,100万円) 6~20人 1,500万円(1,750万円) 21人以上 2,500万円(3,500万円) |
2/3 | |
グローバル枠 | 3,000万円(3,100万円~4,000万円) | 1/2 小規模 2/3 |
➡大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例:補助事業終了後、3~5年で大幅な賃上げに取り組む事業者(給与支給総額 年平均成長率+6%以上等)に対して、補助上限額を100万円~2,000万円上乗せ (申請枠・類型、従業員規模によって異なる。新型コロナ回復加速化特例適用事業者を除く。)
参照:経済産業省 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金について(Ver.1.0)
資料掲載ページ:中小企業庁 中小企業対策関連予算
省力化(オーダーメイド)枠の補助上限額は従業員規模によって異なり、750万円~8,000万円となります。
ただし、大幅な賃上げを行う場合は補助上限額が引き上げられるため、基本要件に加えた追加要件も含めたすべての要件を満たす場合、最大1億円が補助されます。
出典:経済産業省 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金について(Ver.1.0)
資料掲載ページ:中小企業庁 中小企業対策関連予算
なお、補助率は原則、中小企業が1/2以内、小規模・再生2/3以内となっており、補助金額が1,500万円までのものは1/2以内、1,500万円を超える部分は1/3以内の補助率が適用されます。
令和5年度補正予算 ものづくり補助金 省力化枠 対象経費
全枠共通して、以下の費目が補助対象となります。ただし、機械装置・システム構築費の申請は必須です。
・機械装置・システム構築費
・運搬費
・技術導入費
・知的財産権等関連経費
・外注費
・専門家経費
・クラウドサービス利用料
・原材料費
令和5年度補正予算 ものづくり補助金 省力化枠 活用イメージ
省力化(オーダーメイド)枠活用イメージとして、次の例が挙げられています。
熟練技術者が手作業で行っていた組立工程に、システムインテグレータ(SIer)と共同で開発したAIや画像
判別技術を用いた自動組立ロボットを導入し、完全自動化・24時間操業を実現。組立工程における生産性
が向上するとともに、熟練技術者は付加価値の高い業務に従事することが可能となった。引用:経済産業省 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金について(Ver.1.0)
資料掲載ページ:中小企業庁 中小企業対策関連予算
令和5年度補正予算 ものづくり補助金 省力化枠 公募スケジュール
17次締切分の実施スケジュールは、以下のとおりです。
公募開始 :2023年12月27日(水)17:00~
電子申請受付:2024年 2月13日(火)17:00~
申請締切 :2024年 3月 1日(金)17:00まで【厳守】
補助事業実施期間内(最遅で2024年12月10日まで)に、発注・納入・検収・支払等の全ての事業の手続きを完了
し、実績報告書を提出すること(事務局による補助事業者に対する補助金交付等のスケジュールの都合上、補助事業
実施期間の延長を行うことはできません)。
※本事業は、以前の締切回で不採択となった場合も、再度申請することが可能です。ただし、当該公募の応募締切日を起点に10ヶ月以内にものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(以下、本事業とします。)の交付決定を受けた場合や過去の補助事業実績報告書を未提出の事業者は申請ができません。
※ 製品・サービス高付加価値化枠、グローバル枠は、17次締切分の募集を行いません。
(18次締切は省力化(オーダーメイド)枠、製品・サービス高付加価値化枠、グローバル枠を公募予定)
※ 17次締切の公募に応募する事業者は、18次締切の公募には応募できませんので、ご注意ください。
令和5年度補正予算 ものづくり補助金 事前準備から事業終了までの流れ
資料掲載ページ:中小企業庁 中小企業対策関連予算
事前準備から事業終了までの流れは、次のとおりです。補助事業の実績報告は、令和6年12月10日までに行う必要があります。
「省力化(オーダーメイド)枠」の公募が行われる17次締切では、令和6年5月中旬ごろに補助金の交付候補者が決定する予定です。
その後、発注先の選定や見積もり、支払いまでを行い、同年12月10日までに実績報告を行う必要があります。本枠はオーダーメイドの設備購入を対象としていることを鑑みると非常にタイトなスケジュールですのでご注意ください。
■事前準備
・課題の把握
・解決策の検討
■公募開始~交付候補者決定
・公募要領公開(申請受付開始)
・公募締切(事業計画審査)
・交付候補者決定
■交付決定~補助事業実施
・交付申請・決定
・補助事業開始(事業実施、中間検査、実績報告、確定検査)
・補助額の確定
・補助金の請求
・補助金の支払い
■補助期間終了後~
・事業化状況報告
・知的財産等報告
令和5年度補正予算 ものづくり補助金 申請手続
申請手続きは、以下のとおりです。
①公募要領で補助対象者、申請要件、対象経費、スケジュール等を確認
②GビズIDを取得のうえ、電子申請システムにより申請
※②のとおり、本補助金の申請にはGビズID(アカウント)の取得が必要です。ID取得に一定期間を要しますので、お早めにお手続き下さい。
まとめ
今回は、令和5年度補正予算 ものづくり補助金に新設された「省力化(オーダーメイド)枠」について解説しました。生産性向上や持続的な賃上げ、省力化等に取り組む事業者の皆様は、ぜひ、ご活用ください。
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